無個性オリ主が共にヒーロー目指す!   作:チェリオ

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第67話 I・アイランドへ

 窮鼠猫を噛む―――いいや、火事場の馬鹿力と言う奴か。

 追い詰められたヒーローとは厄介なモノさ。

 己の身命すら捨ててでも文字通り決死の覚悟と言う奴で立ち向かって来る。

 オールマイト、彼が良い例だろう。

 彼一人のおかげで手塩に掛けていた僕の部下も個性もすり減らされ、随分としてやられたものだよ。

 だから僕は―――使える人間と個性を求めていた。

 減ったら補充するのは当然だろ?

 

 オールマイトの事もあって強個性はどうしても欲しかった。

 部下に与えるも自身で使うにしても。

 そんなある時、彼の事を知った。

 個性もヒーローとしての意思も強い彼を知ったのは、彼がオールマイトの協力者として私を追っていたからだ。

 彼自身はオールマイト程ではないが、それでも部下と協力組織をかなり潰してくれたよ。

 ただ彼は強個性を持っている割には使いこなせていなかった。

 怠けていた訳でも個性に頼り切っていた訳でもない。

 使いこなすだけの才能を持ち合わせていなかった………それだけの話。

 ゆえに勿体ないと思った。

 あの個性を手にしたのなら私はオールマイトを返り討ちにするのも容易い。

 

 それに弱点もあった。 

 ヒーロー一族出身であるも一族からは冷遇され、護るべき存在を傍らに置いていた。

 付け入るには充分過ぎる程だった。

 彼を疎む一族の人間に声を掛けて手駒とし、オールマイトが離れている隙を突いて妻子を襲撃。

 誘拐して取引材料にしようと計画したが、ヒーロー登録していないだけで妻の方もかなりの個性を持っていた。

 別に無理に欲しいという程では無かったが……。

 

 おかげで手間取った結果、彼が到着してしまった。

 僕は彼の目の前で瀕死の重傷にした彼の妻を示して提案した。

 彼女を助け助けたくば僕に協力すべきだと。

 素直に言う事を聞くとは思えなかったが、それがいけなかったのだろう。

 

 彼は覚醒した。

 妻子を助ける為に、多くの人を護るために、そして僕を殺す為に。

 驚いたよ。

 その場に用意していた手駒は勿論、部下も文字通り(・・・・)磨り潰され、弾かれ、吹き飛ばされ、破裂させられた。

 ヒーローと呼ぶには血生臭く、ヴィランと称するのは生易しい。

 心躍ったよ。

 こんな人材がいたのかと。

 持ち得る手段を全て無効化され、攻撃の全てを操られ、策も個性も数も何もかもを踏み潰されてしまった。

 

 もしもあの場に彼の妻子がいなければ僕はあの場で死んでいただろう。

 同時にリスクを背負ってでも僕自身が出向くべきと思った直感は正しかった。

 

 瀕死の状態で動けない彼の妻を盾に取った瞬間出来た彼の大きな隙。

 それを見逃さずに急所を突いて死に体にする事が出来た。

 完全に死ななければ後はどうとでも出来る。

 目の前で、この身で味わう事になった個性を手に入れるという高揚感は凄まじかった。

 だからこそ僕は―――…。

 

 

 

 周りに並ぶ電子機器に囲まれた薄暗い一室で目を覚ます。

 懐かしくも忌々しい光景を夢に見た男―――オール・フォー・ワンは小さく息を吐く。

 

 もう少しで手が届いた筈だった。

 死に体の彼が最後の最後に個性を暴走させ、個性因子どころか肉体も残さずに逝った。

 あと少し判断が遅れていれば巻き込まれていた所だったよ。

 だけど戦闘行動に支障が出る程の怪我を負った状態で、事件を聞き及んだオールマイトが向かって来ていると聞けば即座に引くしかない。

 本当に惜しい事をしたものだ……。

 そっと左腕を撫でていると“ドクター”と呼ばれる男がはてと首を傾げる。

 

「何処か痛むのかな?」 

「あぁ、ドクター。懐かしい夢を見ていたよ」

「夢?」

()が疼くようだ」

 

 そっと撫でる部位に視線を向けるも怪我など後も残っていない。

 すでに治療を終えて完治した上に、傷跡も残っていない傷。

 あの出来事は存在しない傷の疼きを感じる程に深く刻み込まれた。

 

「せめてあの子供が個性を受け継いでおればな」

 

 ドクターは心底残念そうに口にした。

 彼の個性も遺体(・・)も手に入らなかったが、希望として子供がいた事に注目した。

 親から子に個性が引き継がれるばかりか、さらに強く濃くなって受け継ぐ場合が多い。

 こっそりと目を付けて表に出ないように調査した結果は、“無個性”という残念極まるものであったのは苦い思い出だ。

 

「最近死柄木がその少年の事を気に掛けていてね。いやはや、因果と言う奴なのかなこれは?」

「繋がりが多過ぎて死柄木だけではないのだろうに」

「ははは、そう言われればそうなんだけどね」

 

 ニタリと笑う。

 あの無個性の少年が雄英に居ると報告を受けた時は耳を疑い、大いに笑ったものだ。

 さらに死柄木のヴィラン連合による襲撃や保須市、雄英体育祭での活躍を聞いて勿体ない事をしてしまったんだと嘆いたものさ。

 彼ならば良い駒になったかも知れないのに……と。

 そうなったらオールマイトがどんな反応を示してくれたのか。

 想像しただけで可笑しくて堪らなかった。

 

「例の件、そのままで良いのか?」

 

 クツクツと嗤っているとドクターの問いかけで意識を戻す。

 ドクターが言っているのはつい最近用意したちょっとしたサプライズ(・・・・・)の事だろうと理解した。

 不出来で計画自体にそれほど関心もなかったが、副産物として面白いと思ったからこそ協力を申し出た訳だが、どう転ぶか楽しみで仕方がない。

 

「本当なら見物だけでもしたかったが仕方ないよ。ふふふ、どんな表情を浮かべてくれるんだろうか―――オールマイト」

 

 静かにオールマイトから憎まれ、オールマイトを恨む巨悪は静かに笑う。

 

 

 

 

 

 

 妙な悪寒を感じてオールマイトはブルリと震えた。

 彼は現在八木 俊典としてではなくオールマイトとしてI・アイランドに訪れていた。

 

 まだオールマイトが“平和の象徴”と呼ばれるよりも以前。

 アメリカに留学していた頃にとある人物と運命的な出会いを果たす。

 学友で親友、様々なアイテムとコスチュームを作ってオールマイトのルーキー時代を支えた相棒であった“デヴィット・シールド”。

 現在、彼は世界屈指の科学者としてI・アイランドにて日夜研究に励んでいる。

 

 そんな彼に御呼ばれしたのかと言えば違う。

 オールマイトを招待したのはデヴィット・シールドの娘、メリッサ・シールド。

 彼女に会うのも久方振りで、親友のデヴィットにもだが彼女に会うのも楽しみでならない。

 

 チケットには同伴者もとあったので後継である緑谷を連れ、待ち合わせの場所に向かおうとするも、I・アイランド空港に降り立ったところで熱烈な歓迎を受け足止め。

 オールマイトもファンサービスにしっかりと答えるので、集まった観衆の相手と求められるサインの対応をにこやかに熟し、巻き込まれる形となった緑谷は揉みくちゃにされてえらい目にあってしまっていたが……。

 

「あそこまで足止めされるとは……約束の時間に遅れてしまう所だった」 

 

 先程の悪寒は何だったのだろうかと首を傾げつつ、至る所に頂いた真っ赤な口紅のキスマークを拭き取って行く。

 正直な話、I・エキスポが開催されるとは言え、一般公開前のプレオープンでこれほどの来場者がいるとは思っていなかった。

 

「約束?」

「古くからの親友と再会したくてね」

「オールマイトの古くからの親友!!」

 

 眼をキラキラさせて誰なんだろうと興奮気味な緑谷に対して、オールマイトはまず一つ説明というか口止めをしておかなければならなかった。

 親友で相棒であるがデビットは個性“ワン・フォー・オール”の事は知らないと言う事。

 誰とは伝えていなくても「親友と称した人物なのに?」―――と疑問符を浮かべていたが、逆に親友だからこそワン・フォー・オールの秘密を教えて巻き込みたくないのだ。

 訳を話したところ理解と決意の色を浮かべ、返事としてはそれで十分。

 

 遠くよりビヨヨ~ンとバネが伸び縮みするような音が耳に届き、周囲を見渡すと坂を上り下りする階段の左右に咲き誇る花々と眺めたり通りがかった人々などがいる中、ホッピングで跳ねながら向かって来る少女が目に付いた。

 

「おじ様~」

「あぁ、メリッサ!」

 

 ホッピングで跳ねた勢いで跳び付いて来た少女――メリッサ・シールドを受け止める。

 年月が経つのは早いものだ。

 前までは小さなお嬢さんだったのが今や立派な女性だ。

 

 相も変わらずデイブ(デヴィット)が研究で忙しい事や、彼女がアカデミーの三年生であるなど話に華を咲かし始めたところで、放置されてどうしようと言わんばかりの表情を浮かべる緑谷少年が目に映り、しまったと苦笑いを一つ零して二人に紹介する。

 

「おっと、紹介しよう。彼女は私の親友の娘の――」

「始めまして、メリッサ・シールドです。緑谷 出久君、だよね?」

「え、僕の事を知っているんですか?」

「雄英体育祭見ましたから」

 

 見られて嬉しかったのか、それとも恥ずかしかったのか。

 頬を軽く染めながら、後頭部を掻く。

 照れ隠しだったのだが宜しくとメリッサから握手を求められていた事に遅れて気付き、オールマイトもだが緑谷もヒーローコスチュームを着用していた為に慌ててグローブを外して答える。

 

「雄英高校ヒーロー科一年A組、緑谷 出久です」

 

 握手を交わす二人。

 それも束の間、メリッサの目が変わったのをオールマイトは気付いた。

 まだ十代の少年の手はごつごつと逞しく、薄っすらだけど怪我が伺える。

 

 さすが将来有望な科学者の卵と言うべきだろう。

 もう研究者としての分析が始まっていた。

 個性に身体が耐えきれていないのを見抜き、補助機能の無いオーソドックスなコスチュームの問題点と改善点を頭の中で洗い出す。

 思考しながら観察するのに集中し過ぎて、メリッサは距離感を物理的な詰め過ぎていた。

 それは緑谷少年には毒であり、顔を真っ赤にするどころか目を回している。

 

「おっほん!メリッサ、その辺で」

「あ!ごめんなさい、つい」

 

 わざとらしく咳払いするとメリッサも気付いて我に返った。

 

「それにしてもメリッサも見ていたんだね。雄英体育祭」

「リアルタイムではなくてハイライトでしたけど。今年は特に有名でしたから」

「有名?」

「一年の部で優勝した子が無個性で」

「扇動少年の事だね」

「こっちでもニュースで取り上げられたり、ネットでも結構色々書かれてて、無個性の希望だとか―――でも…」

 

 明るく言っていたメリッサの表情が曇り、口籠ってしまった……。

 その反応に知らず首を傾げるオールマイトに、反して緑谷は暗い顔を浮かべた。

 良い意味でも悪い意味でもあの体育祭の事は騒がれた。

 無個性だからヒーローには成れないという概念が広まっている中、一種の希望を示した行為として称える者も多くいたが、何も知らず家が裕福でプロヒーローの家系である事を羨み、個性持ちが無個性に負ける筈がないと八百長を疑うネット上の書き込みもあったのも知っていた。

 友人が記事になっているだけに気になって観た緑谷は当時、そんな声もあるんだと怒りと悲しみを同時に感じ取った。

 

 

 もしもむーくんが知ったら何て言うんだろうか……。

 ―――あ?言いたい奴には言いたいように言わしときゃあ良いだろ。そんな気にするような事か?

 なんか大丈夫そうな気がする。

 

 

 感情を表情に出していた為、一人百面相をしていた緑谷にオールマイトもメリッサも苦笑いを浮かべてしまう。

 

「そういえばデイヴは何処に?」

「研究室に。長年研究していた仕事がひと段落したお祝いと、サプライズを兼ねてマイトおじさまを招待したの」

「そう言う事か」

 

 驚く親友の顔を想像しながらオールマイトはニカリと笑い、メリッサは「早くパパを喜ばせよう」とホッピングを手に取ると巻尺のようにコンパクト(・・・・・・・・・・・)に仕舞い、二人を目的地であるデヴィット・シールドの研究室へと案内するのである。

 

 

 

  

 I・エキスポでは様々な催し物が行われていた。

 世界最高峰の科学者が制作した発明品が並ぶサポートアイテムの展示から、個性に反応または対応したアート的なものから遊具的なアトラクション施設まで存在する。

 遊びにしても見物にしても一日では足りないぐらいだ。 

 一般公開前で結構な来客数があるのだから、これが公開された後では比にならない数になるのは想像に容易い。

 プレオープン前のチケットを入手、もしくは招待された客人は見て回るなら今のうちにと会場を周る。

 そんな中、訪れた扇動 無一はどんな催し物も無視して別のモノに興味を向けていた。

 

 今生でも騒がれる存在ではあるが、前世の記憶を持っている扇動にはより鮮烈で、驚愕に値する衝撃であった。

 ショッピングモールで死柄木に出会った時も驚きはしたが、あの時は寧ろ少し会話してみたい欲と緑谷が絡まれていた事でそれ処ではなかった。

 遠巻きながら少しだけ目線を上げ、見上げるように対象をキラキラとした目で見続ける。

  

 ごつごつとした表皮。

 顎辺りまで続く口に鋭い牙が覗く。

 長く太い強靭な尻尾を揺らし、力強い眼光が周囲を見渡す。

 オールマイトとは別の意味で圧倒的な存在感を放つ。

 

「――ゴ●ラだ…」

 

 特撮――それも怪獣映画として名立たる有名なタイトルが一つ。

 身長は四メートルほどにスケールダウンして、羽織やズボンを着用している以外は前世の記憶にある●ジラそのもの。

 感嘆の声を漏らすその後ろで発目 明は首を傾げる。

 

「ゴジ●ではなくゴジロですよ。怪獣ヒーローの」

「ゴジロ……熱線とか吐いたりするのかな?」

「さぁ?」

「もしかして俺が知らないだけで他にも怪獣ヒーローが居たりするのか?ガ●ラとか―――」

「良いから早く行きますよ!」

 

 早く早くと急かすように発目は扇動の手を引いてサポートアイテムが展示されている会場へ向かう。

 まるで子供の手を引く親を連想させる光景に周囲の視線が自然と集まる。

 当の本人達は我関せずと言った風で微塵も気にせず、扇動に至っては片手で携帯電話を使って検索を掛けつつ引かれるままに付いて行く。

 

 I・アイランドに出発前にパワーローダーは危惧しており、何度も何度も発目から目を離すなとフリ(・・)にしか聞こえない程に扇動に注意をしていたが、真逆な光景は予見できなかっただろう。

 

「へぇ、元々日本だったのがアメリカに拠点を移したのか。あっち(前世)もそうだったがこちら(今生)でもそうなんだな」

「そんなにあのヒーロー好きなんですか?」

「好き嫌いというか懐かしさが強いかな」

「知り合いだったんですか?」

「いいや。初見だし初めて知った」

「そうなんですね」

 

 普通なら会話の矛盾に疑問が上がるところだが、気に留めずに発目はすんなりと流す。

 扇動が関心を抱いた事に興味を示すも、今は遠目ながら見え始めた展示感情に意識が向き始めている。

 ――っとそこでグルンと振り返った。

 

「扇動さん、仮面だけでも取りませんか?」

「ホテルでも言ったろ。騒ぎは面倒だって。発目だって嫌だっただろうに」

「それはそうなんですが………目立てると思うんです!」

「出来るだけ希望は叶えてやりたいが回り辛くなるぞ。それでも良いのか?」

「では、諦めます!」

 

 今年の雄英体育祭一年の部は無個性が優勝して話題になったけれど、それほどではないだろうと思い込んでいた本人を他所に、意外に世界でも知っている人は多かったらしい。

 私服姿で降り立った扇動は道中「活躍見たよ!」とか「写真撮っても良い?」みたいな好意的な人に声を掛けられて、予約していたホテルに辿り着くまで想定外に時間が掛かってしまった。

 これからI・エキスポを見て回るにあたって、度々同じ目に会うと回るのもままならないと持って来ていたヒーローコスチューム“ウィザード”で顔も隠して出歩いているのだ。

 一瞬ながら扇動の知名度を使っての宣伝を思いつくも、サポートアイテムを見て回るのに邪魔されるのも嫌だと発目はあっさりと提案を引っ込めた。

 

「それにアレに比べたら俺なんて宣伝効果薄いって」

 

 そう言って示すのはモニター。

 天気やイベント、ニュースなどを流している中に、見知ったオールマイトと緑谷の姿が映し出される。

 どうもテレビ局がI・エキスポの取材に訪れており、偶然ながらI・アイランド空港から出て来たオールマイトと遭遇。

 取材しようと駆け寄るテレビ局に人気からわいわいと集まる周囲の人々。

 アレに比べたら微々たるものだろうと扇動は巻き込まれて揉みくちゃにされる緑谷に苦笑する。

 

(熱烈な歓迎を受けてるな八木さん。まるでシューンコップ(銀河英雄伝説)連隊長みたいだな)

 

 などと流れる映像を眺めながらそんな感想を抱きつつ、視線をモニターから前に向けるとまた遠くに先のゴジロが僅かながら視界に入った。

 Mt.レディに比べたら小さいが、それでも四メートルほどもあればやけに目立つ。

 二度目ゆえに最初程の感情は昂らずとも、ゴジロから思い出されるゴ●ラとアメリカで活動している点から、ふと脳裏をあるモノが過る。

 

「I・アイランドって海に囲まれてるけど魚市場とかあるかな」

「魚が食べたいんですか?」

「ゴジロ……だっけ?色々思い出してたらマグロ食いたくなってきた」

「良いですね!見て回ったら海鮮食べましょう!」

「店探しとくか」

 

 懐かしい前世の記憶から昼食を決めた扇動に乗った発目は、展示会場で心行くまで意見を交えながらサポートアイテムを見て回るのであった。

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