無個性オリ主が共にヒーロー目指す!   作:チェリオ

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 投稿遅れました…。
 まだ本調子には程遠い状況なので、次回投稿がまた遅れるかも知れません。
 遅れないようにはしたいのですが…。


第08話 無個性と元無個性の体力テスト 後編

 ヒーロー科1-A組は、入学式をすっ飛ばしてグラウンドにて個性使用の体力テストを行っていた。

 すでに50メートル走、握力測定、立ち幅跳び、反復横跳び、ボール投げなど半分以上が済み、残る三種目となったが暫し休憩が入り中断となった。

 僅かながらスタミナを回復して次の種目に備える中で僕―――緑谷 出久は毒黒く変色した人差し指の痛みに耐えていた。

 

 僕の個性は憧れのヒーローであるオールマイトより受け継いだ“ワン・フォー・オール”。

 オールマイトによりマンツーマンで鍛えられた肉体は、強大過ぎる個性を受け入れる“器”とはなったけれども、自然に使用するまでには至っておらず、個性有の体力テストでは行動不能になる博打(個性の使用)は打てない。

 …が、それまでヒーローらしき結果が出せず、焦った結果は相澤先生の叱責。

 

 ―――また(・・)行動不能になって誰かに助けて貰うつもりか?

 

 昔オールマイトは一人で大災害から千人以上を救出したという伝説を創り出した。

 同じ蛮勇でも僕のは一人を助けて木偶の棒になるだけと…。

 

 言われて強く実感する。

 雄英高校の実技試験にて、オールマイトによって身体は鍛えられたが戦う心積もりが微塵も出来ていなかった緑谷は、会場を動き回るだけでポイントを得れずにかなり焦っていた。

 そんな最中、一人の少女が巨大な0P仮想敵が崩した瓦礫に挟まり、身動きが取れなくなったのを目撃して、ヘドロ事件同様に頭より先に身体が反応して助けに行ったのだ。

 個性“ワン・フォー・オール”は強大で、両足に力を込めれば0P仮想敵の頭部まで跳び、拳の一振りで撃破するに至る。

 緑谷は一人の少女の窮地を救った。

 だがしかし、肉体の限界を超える個性の使用の代償は両足と右腕の複雑骨折。

 さらに助ける事ばかりに全てが向いていた為に、跳んだあとの着地などは全く考えに無かった。

 両足も利き腕も使えない状態で痛みに苛まれる思考では、着地すら怪しい状態。

 まさに一人を助けて木偶の棒になった瞬間だ。

 そして助けた女の子によって自由落下していた自分は助けられた。

 

 体験したがゆえに強く理解し、だからこそ必死に考える。

 個性を使っても身体は壊れて行動不能にならず、高い記録を叩き出す方法。

 無い物強請りしても仕方がない。

 ならあるモノを絞って最善を尽くすしかないんだ。

 思い至ったのはボールを投げる瞬間、人差し指だけ(・・)個性を使用する事。

 人差し指は酷い状態になったけど記録は出せて僕は十二分に動ける。

 

 で、今に至る訳なんだけどやっぱり痛い。

 

 「なんでいつもいつも怪我すんのかなぁ」

 「むーくん!?」

 「動くな。人差し指伸ばしてろ」

 

 指の痛みに耐えているとむーくんが苦笑いしながら、手にしていたポーチから色々と取り出す。

 痛む指をひんやり冷やし、添木をして包帯できつくならない程度でしっかりと結ぶ。

 手慣れた応急治療に気が付いた何人かが興味深そうに眺める。

 まったく気にする素振りを見せずに淡々と済ます。

 

 「一応言っとくけど出来るなら人差し指を心臓より上に挙げとけ。腫れを多少は抑えれるから。どうせ保健室は体力テスト後に行くんだろ?」

 「うん、心配かけてごめんね…」

 「まったくだ…けど、さっきのは凄かった。格好良すぎて心が震えたよ」

 「あ、ありがとうむーくんっ!?」

 「頑張れよイズク」

 

 礼を言うも頭が揺れるほどのデコピンを喰らわされ、指の次に痛む額を撫でる。

 応援を最後に述べてポーチに取り出した医療品を仕舞い込む。

 その様子を眺めていると雄英高校受験日に出会った女の子が心配そうに駆け寄ってきてくれた。

 

 「指大丈夫?」

 「う、うん。大丈夫です!」

 

 心配そうに覗き込んできた彼女―――麗日 お茶子の顔がすぐ近くに寄せられた事で女の子に慣れていない緑谷の顔は真っ赤に染まる。

 麗日と緑谷が出会ったのは雄英高校受験日の門の前。

 躓いて転びかけた緑谷を、個性“無重力”で麗日が助けたのだ。

 実技試験では同じ会場であり、先に挙げた(書いた)話に出た女の子とは彼女の事である。

 互いに互いを助けてくれた人として強い意識を向けている。

 さらに母親以外に女性と関りがなく、女性慣れしていない緑谷は分け隔てなく接してくれる麗日の性格に、若干押され気味ながらも嬉しく思っている。

 

 「大丈夫なわけあるか。馬鹿が」

 「いはいほふーふん(痛いよむーくん)

 「仲良いんやね」

 「まぁな。とはいっても小学生の頃に転校してからは離れ離れだったがな」

 

 照れ隠しを孕んだ回答に応急手当てしたむーくんがジト目で頬を抓る。

 痛い痛いと口にするもむにむにと摘ままれたまま。

 仲良さげな様子にクスリと麗日が微笑み、照れ臭く緑谷も笑みを浮かべる。

 

 「扇動君、彼の指は大丈夫かい?」

 「ンなわけねぇだろ。内部出血は酷いし、骨にも異常ありそうだよ」

 「遠目でしたけど手慣れていますのね」

 「天哉にお嬢(・・)か」

 「その呼び方止めて下さい。私には八百万 百(ヤオヨロズ モモ)という名前が…」

 「すまん、すまん」

 

 指の具合を気にした飯田 天哉と応急処置の手際に感心した八百万 百。

 飯田とは実技試験会場が一緒だった事と説明時に注意を受けたことでよく覚えていたが、八百万とはクラスで顔を見た程度で全く知らない。

 親し気に話す様子からむーくんの知り合いらしい。

 

 「二人共むーくんの知り合いですか?」

 「以前パーティでお会いしまして」

 「君もか。俺もヒーローが集まったパーティで出会ったんだ」

 「パーティ?」

 「えぇ、確か扇動さんのお爺様が船舶関係の会社を持っていたかと」

 「そうなのか?俺はプロヒーローと聞いたが」

 

 緑谷は二人の口から出てくる事実にきょとんとしてしまう。

 お爺さんがプロヒーローだったとか、会社経営をしているだとか、それ以前にお爺さんの話自体初耳だ。

 よくよく考えてみれば話を聞いてもらう事がほとんどで、たぶん聞けば答えてくれるだろうけど自ら話していた事は確かに無かった。

 小学校を転校した理由ですら“家庭の都合”としか聞いておらず、詳しくは緑谷も爆豪も聞かされていない。

 …ただ転校の話を聞いた母が薄っすらと悲しそうな表情を浮かべていたのを思い出す。

 

 「へぇ、クラスの中で扇動の知り合い多いんだ」

 「貴方達もですの?」

 「俺達は実技試験でな。もう一人B組にも居るけど」

 「扇動ちゃんと一緒に(・・・)あの0Pを倒したのよ」

 「(ちげ)ェよ。あれはお前さん達の活躍であって俺は入ってねぇって」

 「もう、そうやって否定して」

 

 わいわいと楽し気に話していると賑やかさに惹かれてクラスメイトもなんだなんだと近寄って来る。

 

 「やっぱすげぇんだな。今んところ記録だって上位に全部食い込んでるしな」

 「そりゃあ実技含めて一位で通過したって言ってたもん」

 「マジか!?」

 

 周りの皆がむーくんが一位通過だったことを知って関心する中、僕一人だけは顔を青ざめて硬直した。

 何故なら自分とむーくんの幼馴染であるかっちゃんは、完璧主義でなんでも喧嘩で勝てなかったむーくんを超えようと闘志を燃やしている。

 勿論入試を受けるからには一位を狙っていたに違いない。

 そんな彼が誰が一位だったかを知れば、その行動は火を見るより明らかだ。

 

 「テメェかぁあああああああ!!」

 

 グラウンドに響き渡る爆発と怒声。

 砲弾のように飛び出したかっちゃんに対して、むーくんはすぐさま構える。

 …が、伸ばした手は届く事無く、何本もの布が絡まって動けなくなった。

 炭素繊維に特殊合金を編み込んだ帯状の捕縛武器“操縛布”。

 ヒーロー名“イレイザーヘッド”こと相澤先生の近距離捕縛武器が完全に動きを固定し、睨まれている限りは“抹消”の個性によりかっちゃんの“爆破”の個性は封じられたままで抵抗らしい抵抗が全く出来ていない。

 

 「何度も何度も個性使わせるなよ――――俺はドライアイなんだ!!」

  (((個性凄いのに勿体ない!!)))

 

 全員が同じ思いを抱きながら爆豪を捕縛した相澤先生を見て、鎖で繋がれた猛獣のような爆豪に視線を向ける。

 今にも噛みつきそうな形相も身動きが取れず、扇動がゆっくりと近づくとむすっとしながら目を背けた。

 落ち着きを取り戻したとして操縛布から解放された爆豪は、何故か(・・・)扇動にガンを飛ばしてくる。

 

 「そろそろ続きが始まるだろうし、爆弾を抱えたままでは難しいな」

 「むーくん?」

 「爆発させるのも一種の手だが今は無理か」

 

 爆発させると聞いて昔のように喧嘩をする気なのかと脳裏に過ったが、気配を察した相澤先生の睨みもあってか肩を竦ませて諦めたようだ。

 

 「で、どうしたんだよ」

 「……テメェは知ってたのかよ?」

 「イズクの事か?」

 「決まってんだろボケ!ついこないだまで道端の石っころの癖だったのに…」

 「その言い方気に入らねぇな。けど納得はした…が、納得させれるだけの答えは持ってないぞ。俺だって今日目の当たりにしたんだから。――ってかずっと一緒だったお前さんが知らなかったのかよ」

 

 非常に後ろめたい…。

 二人には伝えておきたかった。

 しかしこの個性を話すのは大きな危険を伴う。

 決して二人が信用できないという訳ではないが、話す事は真実を語ってくれたオールマイトを裏切る事になりかねない。

 感情が渦巻く中、扇動は淡々と続ける。

 

 「予想だけど良いか?」

 「…ああ」

 「多分あの個性最近発現したものだろう。それもあのヘドロ事件以降にだ。なぁ?」

 「え、あ!う、うん………」

 「個性が発現だぁ!?あり得ねぇ。個性の発現ってのは―――」

 「四歳までに発現するってのが通説だ。だけど何事にも例外は存在する。イズクはそんな例外だったって事だろ」

 「…クソデクがァ……!今まで俺を騙していやがったのかぁ!?」

 「あんな馬鹿正直なイズクが数年もお前を騙しきれるかよ。それともお前さんの目は節穴だったのか?」

 「アァ!?テメェ、喧嘩売ってんなら言い値で買ってやんよォ……!!」

 「ばぁか。こんなところで売るかよ。代わりに勝負といかないか」

 「ああ?勝負だぁ?」

 「この体力テストの順位勝負」

 

 怪訝な顔を浮かべた後、獰猛な笑みを浮かべられた。

 小学校以来越えるべき相手として認識していた相手から吹っ掛けられたのだ。

 同時に扇動の気遣いに感謝する。

 完全にかっちゃんの意識が僕からむーくんに逸れた。

 酷く心を抉る視線が緩和されたことは有難いのだけど、なんだからしく(・・・)無い。

 人を煽るようにして諭す事は確かにあった。

 けど興奮気味に人を煽って乗らせるというのは…。

 

 「……上等だ!残り三つ圧勝してブチ殺してやるよ!!………にしてもらしくねぇな。テメェから吹っ掛けて来るなんてな」

 「ちょっと昂ってしかたねぇんだ」

 

 同じく思っていたかっちゃんの言葉にむーくんは意味ありげな笑みを浮かべてこちらを見た。

 それが何を意味していたのか問いかける前に、ため息交じりに相澤先生が声をあげる。

 

 「そろそろ再開するぞ。次は上体起こしだ」

 「そうだ、他の皆も乗らねぇか?」

 「えぇ…?面白がってっとまた怒られるんじゃあ…」

 「そりゃあ面白半分で言うからだろ。俺が言ってんのは上目指す為の本気の勝負だ」

 

 急な振りに異論が上がるも止めに入らない相澤先生の反応と、挑発するように「どうする?」と視線を向けて問いかけると、感化される何人かが(切島や芦戸など)「やってやるぜ!」とやる気に満ちて乗ってきた(・・・・・)

 勿論それは僕も同じだ。

 ぎゅっと握り締めた拳から痛みが響き渡るも、やる気に満ちた想いは燻ぶったままだ。

 

 残る種目は上体起こしに長座体前屈、持久走の三つ。

 やる気に溢れた緑谷であったが、走る度に発生する振動で痛みに苦しんで十二分に本領を発揮することは出来ず、決して記録が伸びる事は無かった。

 この三種目については個性が合わない者が多く、扇動がほぼトップを独占する事となる。

 持久走では爆豪に飯田、轟が個性を使って速度をあげるも途中で個性を使わなくなり、ほとんど速度を落とさずに全力疾走に近い扇動に抜かれて行った。

 その扇動はバイクを個性によって創造した八百万に追い付けずに持久走では二位となる。

 

 持久走を終えた皆はそれぞれ疲れを見せており、扇動も呼吸する度に肩を大きく上下させるほど息を荒くし、汗だくになるほど疲弊していた。

 

 「はぁ…はぁ…はぁ…、少し無理を…ッしたか…。“たかが数キロ走ったくらいで痛めるような内臓は持っていないよ”とか言ってみたかったな…」

 

 何かを呟いて地面に大の字に寝転がった扇動に、緑谷を含めた何人かが歩み寄る。

 皆も疲れてはいるものの、扇動程に倒れ込むほど疲弊している訳ではなかった。

 ゆえに異常にも見える必死過ぎる行動を一人が問いかける。

 

 「ねぇ……、扇動ちゃんはどうしてそこまで勝ちに拘るの?」

 

 倒れ込んだ扇動の顔を覗き込むように蛙吹が問い、ゆっくりと深呼吸を繰り返して息を整えながら、照れ臭そうに頬を掻きながら答える。

 

 「あー…人の言葉を借りるなら“負けたくないことに理由っている?”」

 

 緑谷は先ほどはらしくないと思ったが、僕が知らない誰かの言葉を使う事に対しては昔のままだな、とほくそ笑んだ。

 ちなみに相澤先生の除籍処分発言はやる気を出させる為の合理的嘘だったとの事で、最下位であった緑谷は驚愕で画風が変わるほどのリアクションをしながら、除籍されなかったことに心の底から安堵するのであった。

 

 

 

 

 

 

 体力テストの結果を順位にして生徒に見せ、最下位は見込み無しで除籍処分はやる気を出させる為の合理的虚偽だったと()を吐き、今後のカリキュラムなどの書類が教室に用意してある事と緑谷に保健室利用書を渡してその場を離れた相澤 消太は校舎裏へと進んで行った。

 

 「相澤君の嘘吐き!

 

 にっかりと力強い笑顔を浮かべたオールマイトが待ち構えていた。

 入学式では新任の先生の挨拶もあるだろうし、それが終わったとしても新任として覚える仕事は多くある。

 なのに何しているんだかこの人は…。

 

 「見てたんですね。暇なんですか?」

 「合理的虚偽って!エイプリルフールはとっくに過ぎてるぜ」

 

 嫌味も込めたこちらの言葉はどうやら届かないようだ。

 嬉しそうに語ろうとする彼に呆れ交じりの視線を向け、無駄と肩を竦めて視線を向ける。

 

 「君は去年の担当する筈だった一年一クラス全員を除籍処分にしている。見込みゼロと判断すれば迷いなく斬り捨てる君が前言撤回。それはつまり君も緑谷少年に(・・・・・・・)可能性を感じたからだろう!?」

 

 言いたい事は複数あるが、まず最初に気になったのはオールマイトが漏らした一言だ。

 

 「…君()?随分と緑谷に肩入れしているんですね?」

 

 教師として一人の生徒に肩入れするというのは決して良いことではない。

 人間である事から誰かを贔屓する事は大なり小なり発生する。―――だが、無意識にも口に出す程に強く贔屓するというのは非合理的で大問題だ。

 あからさまに動揺する様子も相まって深いため息を吐き出す。

 

 「ゼロ(・・)では無かった。それだけです」

 

 そう、ゼロではなかった。

 夢を抱くのは勝手だ。

 教師として夢―――ヒーローを目指すというのであれば、全力で試練を与えて叶えられるように後押ししよう。

 だが、夢を追うにしてもヒーローは危険な職だ。

 実力主義で成り立っている。

 見込みのない者を鍛えて運よくヒーローに成れたとしても、ヴィランとの戦いや大災害などで命を落とす事になるだろう。

 

 「見込みがない者はいつでも切り捨てます。半端に夢を追わせる事ほど残酷な事はない…」

 

 想いが籠った一言にオールマイトは去るべく歩き始めた相澤を見送る。

 その相澤は二人の生徒に思考を向けていた。

 強力過ぎる個性を扱いきれずに怪我を負ってしまう緑谷 出久。

 無個性ながら身体能力は他の生徒より何歩も抜きんでていた扇動 無一。

 どちらも体力テストの途中記録と実技試験の映像から、薄っすらと切り捨てるだろうと思っていた。

 しかし奴らは見込み(・・・)を示した。

 

 緑谷の課題はまずあの扱い切れていない個性を扱い切れるようにする事。

 それさえ出来れば出来る事は多い。

 扇動に関しては現状見込み有でも、今後考えを改めない限り(・・・・・・・・・)は切り捨てる事になるだろう。

 そんな事を思いながら相澤は、無意識に(・・・・)若干ながらの笑みを浮かべるだった。

 

 

 

 

 

 

 入学初日を終え、祖父流拳との会食を済ませた扇動 無一は自宅にて、今日一日を振り返って思案を深める。

 

 入学式やガイダンスを無駄(・・)として省き、執り行われた個性有の体力テストは得るものが多かった。

 まず自身の実力の再確認と、ヒーローのスタートラインに立ったばかりのクラスメイトに対してどの程度渡り合えるか。

 扇動 無一の自己評価としては最低限…。

 身体能力のみで対峙したところほぼ圧倒出来たのは良かったが、種目に有用な個性持ちが相手だと勝つことは出来なかった。

 さすがに個性の壁はそう簡単に超えられそうもない。

 ヒーローを目指すにしても、この先に控えている学校行事“雄英体育祭”の事を考えると今まで以上に鍛え直す必要性を確認できたのは上々と思うべきか…。

 

 雄英体育祭では同じクラスメイトと競い合う事も考えると、非力な(・・・)無個性としては策を練らねばならず、情報の入手は最重要課題となるだろう。

 とは言っても本日の体力テストで大まかなデータは集まったので、あとは細かな詳細を詰めていくだけなんだけどな。

 芦戸と蛙吹、瀬呂は実技試験の際に、爆豪は以前から知っているのでとりあえず置いておく。

 麗日は見たところボール投げと50m走の様子から対象を“浮遊”または“重さの軽減”、飯田は脹脛の気筒が現れ速度を得る速度特化。轟は“氷結”で八百万は“創造”と言ったところだろう。

 他にも何人かは個性を使用していたが、種目に合わずに個性を使用できなかった者も居た。

 そういった者は以前芦戸に言ったように“名は体を表す”に当てて予想するしかない。

 

 前世と異なるこの世界ではその言葉通りに名前が個性や人物を現している事が多い。

 “尻尾”が生えている()白や耳たぶにプラグの形になっている()郎、身体が透明の葉()とか。

 中には個性を使用できず、名前から判断し辛い者も居たがそれこそ今後に期待だな。

 

 「にしてもお嬢に轟の個性は凄かったな」

 

 パーティで世間話した程度でしか接点は無かった八百万の多種多様な物を創造する個性に、自身が接触している物を通して氷結及び氷を生成する轟の個性。

 両者とも非常に応用の利くもので羨ましい限りだ。

 特に轟の個性は凍らせるという単純なものではなく、氷を連続で作り出す事で移動にも使っていた。

 身体能力も高い上に早い移動手段、相手を凍らせるという方法で直接戦闘から捕縛する事も容易であろう。

 出来れば体育祭では敵対することなく済ませたいが、今から個性込みであれだけの能力を持っているのだから、上がってこない事の方があり得ない。

 まぁ、あの二人に対しては弱点も多少透けたから手も無い事も無いか…。

 

 八百万は握力測定時に複数の万力、ボール投げではアームストロング砲らしい砲、持久走ではバイクを創り出したが、物が大きくなるにつれて創り出すのに時間が掛かる上に、創り出すたびに若干ながら顔色が悪くなったようだった。

 創造するには何かしら体力か体調に関わる代償を払わなければならないのだろう。

 轟に至っては持久走で八百万や俺に敗北した事から個性の長時間使用は出来ないようだ。

 個性を使用した時の速度を考えると即席のバイク程度(・・)に後れを取る筈がない。

 勿論俺にもだが…。

 

 一息ついて珈琲に口を付けた無一は、体力テスト終了時の相澤先生を思い出して苦笑する。

 

 「なにが合理的虚偽だ。あの狸教師め…」

 

 あの目は虚偽など含んでいない。

 確実に切る気満々だったと見える。

 そこは認められたと誇るべきだろうな。

 個性持ちは能力強化を図れば今後の伸びる余地が大いにある。

 対して個性の無い俺では伸ばせる部分は限られている為、切り捨てられてもおかしくは無かった…。

 

 安堵と共に憧れのヒーローに認められたという思いが歓喜に繋がる。

 …とは言えその感情に浸っては居られない。

 

 喉に小骨が突き刺さったように疑念が残る。

 イズクの“個性”の事だ。

 爆豪にはああ言って見せたがそれが事実かどうかは疑ってはいる。

 個性を得たのはつい最近である事は間違いない。

 もしも以前から隠し持っていたのならイズクの性格を鑑みて“ヘドロ事件”の際に使わないなどあり得ない。

 自身が罰せられようとも助けにいかない訳がないのだ。

 

 「例外中の例外…あり得なくもないが、アイツの周りで何も無い(・・・・)ってのがおかしい」

 

 麗日という少女と天哉の証言を信じるのなら、イズクは個性を把握したうえで0P仮想敵に挑んだようだが、挑む前は仮想敵に怯んでいたと同実技会場に居た青山が教えてくれた。

 肉体が耐えきれない超パワーの個性、または肉体を代価にして超強化を得る個性と言ったところか。

 0P仮想敵で使用して、それまでは使用しなかった事から最低でも自損する事実は知っていたと見て良いだろう。

 ならば自損すると知ったのは何時だ?

 代償にすれば巨大な仮想敵さえ倒せると理解したのは何処でだ?

 

 矛盾…。

 個性の性質を知っていながら、それを知る機会が無いのだ。

 ヘドロ事件からイズクの様子を爆豪に聞いたところ、見ていた訳ではないが反抗する態度や授業中に居眠りをしていた程度の情報ばかりで大怪我を負ったとか暫く学校を休んだというのは無かったとの事。

 事故で個性を発現させてしまい、その威力を暴発させて大怪我を負ったというのなら、話の内容からニュースに取り上げられてもおかしくない。

 だが、そんなニュースはネットを調べても見つかりはしなかった。

 

 病院の検査で個性の有無は調べられてもそれが何なのかまでは詳細を示せるわけもない。

 考え込むだけ矛盾点が浮上しては未消化のまま脳内を漂う。

 

 「少し調べてみるか…」

 

 現状解らないだけで調べられない訳ではない。

 体力テスト中、物陰から巨体を隠しきれていないオールマイトが様子を伺っていた事は解っている。

 あんな妙な気配(・・・・)を漂わされれば嫌でも気づくというもの。

 

 これは勘違いかも知れない。

 ただ単に気になったから伺いに来たのかも知れない。

 が、オールマイトの個性も超絶なパワーを振るうものである事から、繋がりを疑うなという方が難しい。

 無論オールマイトが個性を使用する度に大怪我を負う話を聞いた事はないが、疑いを晴らすべく調べるのも悪くない。

 違ったら別から調べれば良い。

 

 空にした珈琲カップを置き、キーボードを叩いて情報の海(ネット)から必要な情報を探るのであった。




 たかが数キロ走ったくらいで痛めるような内臓は持っていないよ
 【物語シリーズセカンドシーズン 花物語するがデビル】神原駿河より

 負けたくないことに理由っている?
 【ハイキュー】日向翔陽より
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