那田蜘蛛山の中腹。母鬼を倒した四人は、山の中を流れる小川に出ていた。
善逸「小川だ・・」
ブロリー「炭治郎、この水は飲めるんですかぁ?」
炭治郎「飲めないですよ!?お腹壊すので絶対にやめてくださいね!?」
ブロリー「へあっ!?ははははい・・」
ブロリーは水が飲めるか炭治郎に聞いたところ、炭治郎からすごい剣幕で警告してきたのでブロリー本人も焦っていた。その時、バシャッと何者かが水を踏む音がした。四人が顔を向けると、そこには蜘蛛鬼一族の一人、姉蜘蛛鬼がいたのだ。
善逸「イヤアアア!!また出た!!」
姉蜘蛛鬼「!!」
炭治郎(鬼!?この山に流れる匂いのせいで、全く気づかなかった!!)
伊之助「おおお!!ぶった斬ってやるぜ!!鬼コラ!!」
炭治郎「伊之助!!」
伊之助は獲物を見つけるやいなや、逃げようとする姉蜘蛛鬼に斬りかかっていった。姉鬼は振り返ると叫んだ。
姉蜘蛛鬼「お父さん!!」
伊之助「誰が父さんだ!!」
姉蜘蛛鬼が叫んだ直後、伊之助に被さる大きな黒い影、その正体は蜘蛛鬼の中でも一際大きな体格を持つ父蜘蛛鬼であった。父蜘蛛鬼は炭治郎達に威嚇するように雄叫びをあげる。炭治郎と伊之助はヤバい気配をびんびんと感じた。
善逸「ギャアアア!!デカいよ!!デカいよ!!」
父蜘蛛鬼「オ゛レの家族に゛近づくな!!」ドゴォ!!
父蜘蛛鬼が放ったストレートパンチが伊之助がいた岩を粉々に砕いた。その隙を突いて炭治郎が攻撃を仕掛ける。
炭治郎「水の呼吸!弐の型!水車!」ガキッ
しっかりと頸を狙って刃を振ったのだが、父蜘蛛鬼は腕でガードしていた。それだけではない、身体が頑丈で刃が通らないのだ。その事に動揺して、動きが止まった炭治郎を父蜘蛛鬼は見逃さず、ストレートパンチを放とうとするが、今度は伊之助が動きを止めた。
伊之助「硬えええ!!」
しかし、それでも父蜘蛛鬼の身体は斬れず二人の身体を掴むと、上空へと投げ飛ばす。そして標的が伊之助へと変わり、力が入ってない腕に殴られただけで後ろへと飛ばされた。
伊之助(いってえええ!!力が乗りきってねぇ腕に当たっただけでこの威力!!)
炭治郎「水の呼吸!弐の型・改!横水車!」ギャ ギイイイイイ
炭治郎は近くにあった木を斬って、父蜘蛛鬼を下敷きにすることで動きを止める。
父蜘蛛鬼「ガァア!!」
伊之助(アイツが木を斬ったのか!?やるなクソーッ!)
炭治郎「水の呼吸!拾の型!・・」
しかし父蜘蛛鬼は木を掴むとそれを振り回し、炭治郎と近くにいた善逸にも当たり、二人は吹き飛ばされてしまった。
伊之助「健太郎ーっ!紋逸ーっ!」
ブロリー「炭治郎!善逸!」
善逸「うわあああ!!」
炭治郎「伊之助死ぬな!!そいつは十二鬼月だ!!俺が戻るまで絶対に死ぬな!!ブロリーさん!!伊之助をよろしくお願いします!!」
炭治郎は飛ばされながらもブロリーと伊之助に向かって叫んだ。
善逸side
善逸はかなり飛ばされて、地面にすごい勢いで激突しそうになるも、受け身を取ることで衝撃を最低限にまで和らげた。
善逸「痛い!あのでかい化け物!少しは手加減を知らないのか!?いやそんなこと言ってる場合じゃない!!ヤバい!ブロリーさん達とはぐれてしまった!!それだけじゃない!炭治郎の奴禰豆子ちゃん持ったまま吹き飛ばされやがった!禰豆子ちゃんにまで危害が及んだらどうするんだ!とんでもねぇ炭治郎だ!」
とりあえずわめいてみるものの、近くには鬼や人間の音は一切聞こえない。
善逸「やってる場合じゃない・・早くブロリーさん達と合流しないと・・俺が死ぬ!」
善逸はブロリー達と合流するために山の中を歩きだした。
しばらく時間が経つも、炭治郎や伊之助の人間はおろか、鬼の音すらいまだに聞こえてこなかった。おまけに何かチクッとした感覚に襲われ、それが善逸の怒りをさらに倍増させた。
善逸「いてっ・・・・」
善逸は痛みを感じた手を見て何もなかったことにすら腹を立てていた。
善逸(なんかチクッとしたーー!!なんじゃああもーー!!腹立つううーー!!)「炭治郎達も見つかんないし最悪だよ!どこ行ったのよどっちよ!!そしてくさいんだよこの辺!!くさい!!もう泣きたい!!蜘蛛がカサカサする音がすごい気持ち悪いし!いや蜘蛛も一生懸命生きてるんだろうけどさ!」
善逸は後ろから大きめの蜘蛛の音を感じとり、振り返り様に怒鳴った。
善逸「もーーっ!!うるさいよ!じっとしてて!!」
善逸はそこでこの世のものとは思えない蜘蛛がいることに気づいた。その蜘蛛は顔が人間のものだったのだ。それを見た善逸は山の木々を掻き分けるように駆け抜けた。
善逸「こんなことある!?人面なんですけど人面蜘蛛なんですけど!!どういうことこれどういうこと!?夢であれ夢であれ夢であれよお願い!!夢であってくれたら俺頑張るから!起きたとき禰豆子ちゃんの膝枕だったりしたらもうすごい頑張る!畑を耕します一反でも二反でも耕してみせる!!悪夢から覚めてくれぇーーっ!!」
しかし、現実は非常である。善逸の目の前に、蜘蛛にされかけている大量の人間と一軒家が蜘蛛の糸に吊るされているのだ。
善逸(何あれ何あれ何あれ!!人間が蜘蛛にされてんの!?家浮いてるの!?チラチラ見えるけど糸?)
家の中から今までとは比べ物にならないくらいの大きな人面蜘蛛が糸を伝って出てきた。蜘蛛一族の一人、兄蜘蛛鬼である。糸にぶら下がったままくるくると回っている。はっきり言って気持ち悪いのだ。
善逸「・・俺お前みたいなやつとは口利かないからな!!」
善逸はきびを返し、走り出す。それを見た兄蜘蛛鬼はニヤニヤと笑っている。
兄蜘蛛鬼「くふっ。逃げても無駄だぜ。お前はもう負けてる。」
善逸「話しかけんなよ!!嫌いなんだよお前みたいな奴!!」
兄蜘蛛鬼「手を見てみなくふふっ。」
善逸「はぁ!?手!?手がなにさ!!」
言われた通り手を見てみると、青く腫れ上がっていた。さっき蜘蛛に噛まれたことによる毒だったのだ。
兄蜘蛛鬼「毒だよ。咬まれたろ?蜘蛛に、お前も蜘蛛になる毒だ。くふっくふふっ。四半刻後には俺の奴隷となって地を這うんだ…」
さらに時計を取り出すと丁寧に説明をした。善逸は顔面が青ざめていき、やがて発狂した。
善逸「ギャアアッギャーッ!!」ダッ
兄蜘蛛鬼「逃げても・・「無駄ねハイハイ!!わぎゃってんだよ!わかってんの!」
そして近くにあった木に登った。それを見た兄蜘蛛鬼は善逸を嘲笑った。
兄蜘蛛鬼「ハハハハ!!何してるんだお前。」
善逸「うるせーよ!!うるせぇ!!」
兄蜘蛛鬼「怯えることはないぞぉ、毒が回りきって蜘蛛になったら知能もなくなる。」
善逸「いや、だからそれが嫌なんだわそれが!!なんでわかんないのお前さ・・友達・恋人いないだろ嫌われるよ!!」
兄蜘蛛鬼「・・・・」カチーン
善逸「ひいいいひいいい嫌だ嫌だァ!あんなふうになりたくないひいいい!!」ぶんぶん
このときの善逸は昔の事を思い出していた。女に金を貢がされて借金していた所を育ての師範が立て替えてくれたことから始まり、厳しい修行から何度も逃げ出す善逸をたった一人だけ見限らずに連れ戻していた。善逸にとっては修行は辛くて嫌だが何度でも連れ戻すことがとても嬉しかったのだ。髪の色も、修行から逃げ出し、木に登っていた所を雷に打たれたことで変わったのだ。善逸はそんな自分が嫌いだった。本当はちゃんとした人間になりたかったのだ。
善逸「でもさぁ俺だって一生懸命に頑張ってるよ!!なのに最期髪ずる抜けで化け物になんの!?嘘でしょ!?」
兄蜘蛛鬼(何なんだコイツは・・)
カサカサ
善逸「!!」
ふと下から音が聞こえて下を見てみると、さっきの人面蜘蛛が木を登ってきたのだ。
善逸「ヒギャッ・・登ってくんなよ!ちょっとでいいから一人にして!!ちょっとでいいから!」ブチブチ
頭に触れていた手を離すと、髪が抵抗もなくごっそりと抜けた。それを見た善逸はみるみる顔が青ざめていった。
善逸(もう、この段階で抜けるの?毛の抜け始め!あいつさっき説明しなかった!!)「ぱうっ・・・・」きゅー
恐怖が最高潮に達した善逸は、木の上に仰向けになる形で気絶した。それを見た兄蜘蛛鬼は呆れていた。
兄蜘蛛鬼(なんだこいつは?俺達一族を殺しに来た鬼狩りではないのか?失神?なんという腰抜けだ。)
しかし木から落下している時、善逸の様子が変わる。なんと、眠ったまま呼吸を使い、兄蜘蛛鬼を斬りかかっていったのだ。
善逸「雷の呼吸!壱の型!霹靂一閃!」シイイイイ
兄蜘蛛鬼「!?斑毒痰!」ブー
善逸の変わった様子に木をも溶かす強力な毒を放つも、身をよじられ簡単に避けられる。しかし、兄蜘蛛鬼はあることに気づいた。
善逸「雷の呼吸!壱の型!霹靂一閃!」シイイイイ
兄蜘蛛鬼(全く同じ構えを何度もしている!!ハハハ間違いないこいつ・・一つの技しか使えないんだ!)ニタァ
兄蜘蛛鬼の推測通り、善逸は雷の呼吸の壱の型しか使えない。だが、その動きは洗練されており、並大抵の努力ではすることができないような動きだった。そう、善逸の師範は壱の型しか使えないのならば、それを極限まで磨いて極め抜けと指導されていたのだ。今は毒で身体の動きも鈍くなっていくなか、善逸は一つの剣撃に力を込めた。
善逸「雷の呼吸!壱の型!霹靂一閃!六連!」ドドドドド!!
善逸の動きは雷の如く、素早く的確に、兄蜘蛛鬼の頸を跳ねることに成功した。
兄蜘蛛鬼(!?!?斬られたのか?俺が?斬られた?アイツに?)「バカな!!毒でろくに手足が動かせない奴にいいいい!!!」
兄蜘蛛鬼は善逸に恨み節を吐いて絶命した。しかし、善逸の身体の毒は消えず、もう手足がろくに動かなかった。呼吸で少しでも進行を遅らせようと息を整えた。しかし、時間が経つにつれ、呼吸もうまくできなくなってきていた。そしてそのまま気を失いそうになったとき
しのぶ「もしもーし。大丈夫ですか?」ひらり
鬼殺隊の柱の一人、胡蝶しのぶが蝶の如く舞うように現れたのだ。そして応急処置を施されたあと、胡蝶しのぶは去っていった。
ブロリー・伊之助side
炭治郎が吹き飛ばされたあと、ブロリーは怒りに震えていた。それもそのはずである。ブロリーは炭治郎と禰豆子の事を心の底から信頼していたからだ。何故信頼しあえる仲になったのか、それは鱗滝左近次に認められた日の翌日の事。
―――鱗滝左近次の家に着いたブロリーと炭治郎は、禰豆子を交えて自分の力の事を説明していた。
ブロリー「炭治郎と禰豆子は覚えているか?俺がムシケラを殺したときに金髪の姿になったことを。」
炭治郎「!!はい!はっきりと覚えていますよ!そういえばまだ説明されてませんでした。指しさえなければ教えてくださいませんか?」
禰豆子「ムー!」こくこく
ブロリー「・・あれはスーパーサイヤ人と言う形態だ。普段の姿と比べて何十倍にもパワー、スピード、スタミナ、戦闘力が増した姿なのだ。」
炭治郎「!戦闘力を・・上げた姿・・!」
ブロリー「それだけじゃない。俺の力である気ですら飛躍的に上がるからな。これの威力も増す。」ポウ
ブロリーは自分の掌に緑色の気でできた球を作り出す。そしてそれを炭治郎達に見せる。
炭治郎「ブロリーさんの力・・!」
禰豆子「ムー・・!」
禰豆子がブロリーの緑色の球に触ろうとするがすぐにブロリーは消す。
ブロリー「触っては駄目だ、怪我する。」
禰豆子「!!・・ムー・・」
炭治郎はスーパーサイヤ人についても驚いていたが、それ以上に気になることがあった。それは説明しているブロリーから漂う悲しみの匂いだった。炭治郎はそれに戸惑っていたが、やがて意を決してブロリーに聞いた。
炭治郎「ブロリーさん、貴方からはすごい悲しみの匂いがします。その力の説明を始めてから、悲しみの匂いが漂ってました。もしよろしければ、話してくださいませんか?微力だとしても、俺は貴方の力になりたいんです。」
それはブロリーにとっては魅力的な言葉だったのだが、同時に怖くもあった。自分のことを知られたら、また裏切られて一人になってしまうのかもしれないと。だが、炭治郎の鋭い視線に折れたブロリーはやがて話し出した。
ブロリー「・・俺はサイヤ人と言う戦闘民族だ。それは炭治郎も知っているだろう?」
炭治郎「はい!説明されましたから!」
ブロリー「サイヤ人が宇宙人だと言ったら?」
炭治郎「!・・薄々感じてはいました。普通の人間ではない時点でどこか別の場所からやって来たんだと。」
ブロリー「そうか・・ここからが俺の過去になる。」
宇宙人と言うことで拒まなかった炭治郎に対して、心の奥底にわずかな希望を持ちながらブロリーは話し始める。
ブロリー「・・赤ん坊の頃の俺は、他の誰よりも戦闘力が高かった。それも周りの大人よりもだ。そしてその力を恐れた王家のやつらは俺を殺そうとした・・」
炭治郎「!!」
そう、ブロリーは生まれた時から戦闘力が非常に高かったのだ。普通のサイヤ人の大人は平均的に2000~3000程であり、エリートクラスでも4000くらいだ。しかし、赤ん坊なのにも関わらず戦闘力が10000となれば、いかに異常なのかがよく分かる。その力を懸念した王家ベジータ王は、いずれ王家を脅かす存在になるかもしれないと判断し、ブロリーを抹殺しようとしたのだ。その時のブロリーの父、パラガスが必死に説得を試みたが、逆にベジータ王の逆鱗に触れることになり、親子共々瀕死の重体を負わされゴミのように捨てられてしまったのだ。
ブロリー「だが、俺達サイヤ人の星が滅ぼされたときに俺はこの姿に覚醒してなんとか脱出できた。だが幼少期の俺はこの力を制御できなかった・・サイヤ人の本能の赴くままに破壊行為を繰り返した・・俺は成長するに連れて徐々に制御できるようになっていったんだ。俺の親父は、俺が破壊行為をしても叱るだけでなにもしなかった!俺を殺さないと信用してたんだ・・だが、ある日・・!」
炭治郎(!!・・匂いが変わった!?今度は、恨みと憎しみの匂い!!)
ブロリー「親父は、俺の力を恐れて俺に制御装置をつけてきた!そこから俺は親父の道具になった。自由を奪われた!その時から俺は何もかもがどうでもよくなった。全てを本能に任せて破壊してしまおうと思った!」
炭治郎「自分の息子を・・道具としてしか見ていなかった・・だと・・!?」
炭治郎は、ブロリーを道具としてしか見ていなかったこの場にはいないパラガスに対して怒りを覚えていた。そしてブロリーも、当時の事を思い出し、恨みを込めながらほぼ叫ぶように語った。
ブロリー「操られている俺ではそんなことは不可能だった・・だが、それも突如終わった!赤ん坊の頃俺を泣かせた奴、カカロットに再び出会ったんだ!俺はそいつに対する恨みのお陰で親父のコントロールから解放されたんだ!本当の自由を手に入れることが出来たんだ!まずは恨みの対象であるカカロットを血祭りにあげるところから始めた。俺は圧倒していた!だが、親父はコントロールを外れた俺を置き去りにして自分だけ彗星と衝突しそうな星から脱出しようとしてたんだ!!」
炭治郎「!!息子を・・見捨てた・・!!?」
ブロリー「そうだ・・俺は見殺しにしようと捨てられそうになった・・もう親父にはなんの未練もなかった!親父が乗り込んだ一人用のポッドごと殺したんだからな!!」
炭治郎「!!実の・・父親を!?」
禰豆子「!!」
ブロリー「フン!もはやあんなのは俺の親父なんかじゃない!その後俺はカカロットをも殺そうとした・・恨みの対象さえいなくなれば、もう俺が恐れるものは全てなくなると思ったんだ・・だが、カカロットが仲間のパワーを吸収して形勢が変わった。俺はカカロットに負けたんだ・・生死の境をさ迷ったんだ。その後俺は、もうひとつあった一人用のポッドに乗り込んで地球に向かったんだ。だが、地球でもカカロットの息子らと共に地球を追い出され、太陽に激突して俺は殺されたかと思ったんだ。そして気づいたら炭治郎達に助けられていたんだ。」
炭治郎・禰豆子「・・・・」
ブロリーは自分の過去を全てぶちまけると、炭治郎達の方を見る。二人は、ブロリーの悲惨すぎる人生に目を見開いたまま固まり、言葉を失っていた。思い空気の中、口火を切ったのは禰豆子だった。ゆっくりと立ち上がり、ブロリーのそばまで歩いてくると、ブロリーを優しく抱き締めたのだ。
ブロリー「!?」
禰豆子「・・んー・・」ポロポロ
なんと、禰豆子は泣いていたのだ。幻滅されるとばかり思っていたブロリーは当然困惑する。
ブロリー「禰豆子・・?」
炭治郎「ブロリーさん!」
突然の炭治郎の声にブロリーがそっちを向くと、炭治郎も涙を流していた。目元をぬぐいながらブロリーに言った。
炭治郎「ずっと辛かったんですね・・確かに父親を殺したり、関係のない場所まで破壊するのはやりすぎだと思います・・でも、多分俺も同じ境遇にあったらブロリーさんと同じ事をすると思うので。」
ブロリーは驚いた。今までいつも自分の力のことが解られると、待っている仕打ちは拒まれるか利用しようとするかのどちらかだったのだ。だが、炭治郎と禰豆子はそのどちらでもない同情しながら受け入れているのだ。信じられないものを見た表情をしながらブロリーは恐る恐る尋ねる。
ブロリー「・・のか?」
炭治郎「はい?」
ブロリー「俺が怖くないのか!?俺の力は全てを破壊できるんだぞ!!怖くないのか?」
ブロリーの問いに対して炭治郎は一度うつむき、再び顔をあげるその表情は柔らかく温かい満面の笑みだった。
炭治郎「確かにそれはとてつもない力です。でももうブロリーさんは制御できるじゃないですか。それにその力を俺と禰豆子を守るために使ってくれましたよね?なのでもう脅威ではありませんよ。もうブロリーさんは俺の大切な仲間ですから。」ニコッ
ブロリー「ぐ・・ぐあああ・・う゛ああああーー!!」
生まれて始めて受け入れられたことを実感したブロリーは抱き締めてくる禰豆子を抱き締め返し号泣した。今まで溜まりにたまった悲しみや怒りをぶちまけるように泣き晴らした。破壊の限りを尽くす伝説のスーパーサイヤ人も、心の底では常に孤独だったことに悲しんでいたのだ。周りの家庭は、笑い合いながら楽しそうに幸せに過ごしていたが、自分の家族や周りの奴等が向けてくる視線はいつも拒絶か私利私欲のために利用を考えているかのどちらかでしかなかった。しかし、目の前にいる二人は、拒絶も利用もせず、ただ温かく受け入れたのだ。ブロリーは生まれて始めて心の底から信頼しあえる、守りたいと思える本当の仲間を手に入れることができたのだ。このときからブロリーは、破壊の力をこの二人を守るために使うと心に決め、現在に至るのだ。
―――そんな炭治郎を吹き飛ばした父蜘蛛鬼は、ブロリーにとって血祭りの対象でしかなかった。気を高め今にも飛びかからんとするが、その前に伊之助が飛び出した。
伊之助「オラアアア!!」ガキン
ブロリー「!!」
伊之助「カロリー!!お前ばかりにいい思いはさせないぜぇ!!オラアア!!」ギャリィン!!
しかし、それでも父蜘蛛鬼の身体は一本の日輪刀では斬れなかった。すると伊之助はすかさず、もう一本の日輪刀で更に叩き、腕を斬り落としたのだ。
伊之助「しゃアア斬れたアア!!簡単なことなんだよ!一本で斬れなければその刀をブッ叩いて斬ればいいんだよ!!だって俺刀二本持ってるもん!ウハハハハ!!最強!!」
すると何を思ったのか、父蜘蛛鬼は逃げ出した。それを見た伊之助は青筋を浮かべて激怒する。
父蜘蛛鬼「・・・・」ダッ
伊之助「何逃げてんだコラアアア!!」ダッ
ブロリー「お前らどこへ行くんだぁ?」
伊之助は父蜘蛛鬼の後を追いかけていってブロリーがその場に取り残された。伊之助は木の上にいた父蜘蛛鬼を見つける。その身体は震えていることに気づいた。
伊之助「!!フハハハ!!俺に恐れをなして震えてやがる!」
だが、父蜘蛛鬼は脱皮して前よりも更に大きな姿になって伊之助の前に降りてきた。
伊之助(いや、デカくなりすぎだろ。やべぇぞこれは。ダメだ勝てねぇ・・俺は殺される・・)
しかし、脳裏に炭治郎やひさの記憶がよみがえる。絶対に死ぬなという二人の直訳の意味が、伊之助の原動力になった。
伊之助(絶対に負けねぇ!)「俺は鬼殺隊の嘴平伊之助だ!!かかってきやがれゴミクソが!!」
父蜘蛛鬼の素早い動きに翻弄されるも、伊之助は宙へ跳んだ拍子に頸を狙った。
伊之助「獣の呼吸!参の牙!喰い裂き!」バキン!
しかし、父蜘蛛鬼の頸は斬れずに伊之助の日輪刀の方が折れた。その事に動揺した伊之助は動きを止めてしまった。その隙を父蜘蛛鬼は見逃さず、木に叩きつけた後頚椎を握り潰そうと伊之助の頸を持ち上げる。
父蜘蛛鬼「オ゛レの家族に近づくな゛アアア!!」ミシミシ
伊之助(ダメだ・・殺される・・)
伊之助が己の死を悟り、一瞬走馬灯を見た。伊之助の母親が涙を流して泣きながら自分に何度も謝っていた。最も、自身は猪によって育てられたと思ってるので、その人物が誰なのかは伊之助にはわからなかった。それ以外にも、自分に優しくしてくれた炭治郎と善逸、藤の花の家紋の家主であるひさの姿が脳裏によぎった。もう諦めかけたそのときだった。
伊之助(誰だ・・)
ブロリー「でやあああ!!」ドカッ
ブロリーが伊之助の頸を締め上げていた腕を蹴りあげ、伊之助を解放させたのだ。そして父蜘蛛鬼を睨み付けて言った。
伊之助「パセ・・リー・・!」
ブロリー「・・お前が誰の親父なのかは知らん。だが、俺はお前のような雑魚の相手をしている暇は、無い!!」ゴオオオオ
伊之助「!!」
ブロリーは気を高めながら父蜘蛛鬼に突っ込んでいく、伊之助にはブロリーの父蜘蛛鬼をも凌ぐ威圧感と気配に圧倒されていた。
ブロリー「デヤァッ!!」バキッ!!ドカッ!!
父蜘蛛鬼「!!」
父蜘蛛鬼にストレートパンチを顔面にめり込ませた後、地面に手をついて父蜘蛛鬼の身体を空中へと蹴り飛ばす。そして両手にそれぞれ気弾を作る。
ブロリー「破壊の呼吸!肆の型!ダブルイレイザーキャノン!」ポーヒーポーヒー
父蜘蛛鬼「があああああ!!」ドカーン デデーン☆
ブロリーの放った二つの気弾は、父蜘蛛鬼を跡形もなく消し飛ばしたのだ。自分が頸を斬る事に苦戦した相手をいとも簡単に倒してしまう実力を見て、普段なら強者と戦うことに喜びを感じる伊之助だが、このときばかりは戦意を喪失していた。
ブロリー「うおおおおお!!!炭治郎はどこだぁーーー!!!」ビュオオオオ!
父蜘蛛鬼を倒したブロリーはそのまま炭治郎の気を感じる方向へ雄叫びをあげながら飛んでいった。取り残された伊之助は自分とブロリーとの間に力の差を痛感して意気消沈としていた。そしてその様子を見ていた者がいた。
義勇「・・・・」
炭治郎を鬼殺隊に導いた張本人、冨岡義勇はブロリーが雄叫びをあげながら飛び去って行くのを終始見ていた。ブロリーを見つけたときは、斬りかかろうとしたものの、刀を抜いた時に鬼とはわずかに違う気配に気づいたのだ。そのため、様子見をしていたのだ。義勇は沈んでいる伊之助を尻目にブロリーの飛んでいった方向に走り去って行くのだった。
炭治郎・禰豆子side
父鬼に吹き飛ばされた後の炭治郎は信じられないものをみていた。
姉蜘蛛鬼「ギャアア!!」
炭治郎「!?」
なんと姉蜘蛛鬼の顔を累が糸で刻んでいたのだ。家族同然と言える関係なのにも関わらずそのような光景を目にした炭治郎は怒りをぶつけた。
炭治郎「何してるんだ・・!!仲間じゃないのか!!」
累「仲間?そんな薄っぺらなものと同じにするな。僕たちは家族だ、強い絆で結ばれているんだ。それにこれは僕と姉さんの問題だよ。余計な口出しするなら刻むから。」
姉蜘蛛鬼「・・・・」
累は自分たちのことを家族だと言っていたが、炭治郎はその主張を否定した。
炭治郎「家族も仲間も強い絆で結ばれていれば、どちらも同じように尊い。血の繋がりが無ければ薄っぺらだなんてそんなことはない!!それから、強い絆で結ばれている者は信頼の匂いがする!だけどお前たちからは、恐怖と憎しみと嫌悪の匂いしかしない!こんなものを絆とは言わない!紛い物・・偽物だ!!」
そのとき、累を見つけて斬りかかろうとした隊員がいたが、一瞬でサイコロステーキの如くバラバラにされたのだ。そして炭治郎に振り返り、凄い殺気を放ちながら聞き返す。
累「お前、今何て言ったの?」ゴゴゴゴゴゴ
しかし、炭治郎は怯まずに否定をやめない。真剣な表情で累に抗議する。
炭治郎「何度でも言ってやる!お前の絆は偽物だ!!」
炭治郎の強気な姿勢に、累は呆れたようにため息をつき、再び炭治郎を睨み付ける。
累「お前は一息では殺さないからね。うんとズタズタにした後で刻んでやる。でもさっきの言葉を取り消せば一息で殺してあげるよ。」
炭治郎「取り消さない!俺の言ったことは間違ってない!!おかしいのはお前だ!間違っているのはお前だ!!」
累が糸を張り、炭治郎がそれを斬ろうとする。しかし
炭治郎「水の呼吸!壱の型!水面斬り!」バキン
累(思ったより頭が回る奴だ。恐怖に怯まない。・・まぁ関係無いけどね。)
炭治郎(刀が折れた!!信じられない・・!!この子の操る糸は、さっき斬れなかった鬼の身体よりも硬いのか!?)
刀が折れてそれに動揺した炭治郎に、隙ができてしまった。累はそれを見逃さず、炭治郎の前に大量の糸で刻もうとする。
炭治郎(避けきれない!!)
炭治郎は己の死を覚悟し目をつぶるが、いつまでたっても痛みはこない。目を開けて見てみると、禰豆子が炭治郎を庇って糸に斬られていたのだ。
炭治郎「禰豆子!!」
禰豆子「ム・・ん・・」
炭治郎は禰豆子を抱えると、近くの木に寄りかからせた。その表情はとても申し訳無さそうだった。
炭治郎「禰豆子・・禰豆子!兄ちゃんをかばって・・ごめんな・・」
炭治郎達の様子を見ていた累が、二人を指差し、ワナワナと震えた。
累「兄妹か?」
炭治郎「だったら何だ!!」
炭治郎の突き放しを肯定ととらえた累は、右手で口元を抑え、考えている。
累「兄妹・・兄妹・・妹は鬼になっているな・・それでも一緒にいる・・妹は兄を庇った・・身を挺して・・本物の絆だ!!欲しい・・!!」
姉蜘蛛鬼「!!る、累!ちょっと待って!!待ってよお願い!私が姉さんよ!姉さんを捨てないで!!」
炭治郎と禰豆子の絆を見た累は羨ましがって欲すと、姉蜘蛛鬼が懇願の声を上げるが、それは累の逆鱗に触れるだけだった。
累「うるさい黙れ!!」バラ
炭治郎「!?」
累が右腕を振るうと、姉蜘蛛鬼の頸と共に周りの木々も斬り倒された。
累「結局お前達は自分の役割をこなせなかった・・いつも・・どんな時も・・」
姉蜘蛛鬼「待って・・ちゃんと私は姉さんだったでしょ?挽回させてよ・・」
累「・・だったら今、山の中をチョロチョロする奴らを殺してこい。そうしたらさっきのことも許してやる。」
姉蜘蛛鬼「わ、わかった・・殺してくるわ。」
姉蜘蛛鬼は累に怯えながら、指示された条件を達成するために頸を繋げながら去っていった。そして姿が見えなくなると、累は炭治郎に話しかける。
累「坊や、話をしよう。」
炭治郎(話・・!?)
累「僕はね、感動したんだよ。君たちの絆を見て。体が震えた。この感動を表す言葉はきっとこの世に無いと思う。でも君たちは僕に殺されるしかない。でも回避する方法が一つだけある。"君の妹を僕に頂戴。"大人しく渡せば命だけは助けてあげる。」
炭治郎「そんなことを承知するはずがないだろう!それに禰豆子は物じゃない!!自分の意思も想いもあるんだ!お前の妹になんてなりやしない!」
累「大丈夫だよ。僕の方が強いんだ。恐怖の絆だよ。逆らうとどうなるかちゃんと教える。」
累の主張に、炭治郎は遂にキレて折れた刀を向けて怒鳴った。
炭治郎「ふざけるのも大概にしろ!!恐怖でがんじがらめに縛りつけることを家族の絆とは言わない!その根本的な心得違いを正さなければお前の欲しい物は手に入らないぞ!!禰豆子をお前なんかに渡さない!」
累「いいよ。お前を殺して力ずくで奪うから。」
炭治郎「俺が先にお前の頸を斬る。」
累「威勢がいいなぁ、できるならやってごらん。十二鬼月である僕に・・勝てるならね。」
累は自身の目にある数字を炭治郎に見せる。そこには下弦の伍と刻まれていた。その言葉と共に戦いの火蓋が切っておとされた。一瞬の間に禰豆子に糸を絡ませると、そのまま引っ張り自身へと引き寄せる。
炭治郎「禰豆子!!」
累「さぁもう奪ったよ。自分の役割を自覚した?」
炭治郎「放せ!!」
累「逆らわなければ命は助けてやるって言ってるのに・・」
しかし、禰豆子は鬼特有の爪で累の顔を引っ掻く。累は無表情のまま更に糸を禰豆子に繋げた。出血するほどきつく絡ませていたのだ。そしてそのまま上空へと引っ張りあげる。血がたりなくなったせいか、禰豆子は気を失った。
炭治郎「ねっ、禰豆子!!」
累「このくらいで死にはしないだろ。鬼なんだから。でもやっぱりきちんと教えないとだめだね、暫くは失血させよう。それでも従順にならないようなら、日の出までこのままにして少し炙る。」
炭治郎は自身に感情を高ぶらせるなと言い聞かせ、冷静に累の頸を狙う。
炭治郎「全集中!水の呼吸!拾の型!生生流転!」
身体の回転数が増えて強くなっていく剣擊で、張り巡らされている糸を斬って行くが。
累「ねぇ、糸の強度はこれが限界だと思ってるの?血鬼術・刻糸牢!」
累の両手が赤くなると、先ほどよりも更に強い糸が蜘蛛の巣状で炭治郎に襲いかかる。これを斬るには回転が足りず、炭治郎は本能的に死を感じた。
そのとき走馬灯を見た。幼少期の炭治郎が、父が舞を舞っている姿だった。この舞は、『ヒノカミ神楽』という正しい呼吸をすることにより、長時間舞うことで祈りをする竈門家の伝統であった。父親である炭十郎が炭治郎に教えていた。
炭十郎「どれだけ動いても疲れない息の仕方があるんだよ。正しい呼吸が出来るようになれば炭治郎もずっと舞えるよ。寒さなんて平気になる。この神楽と耳飾りだけは必ず、途切れずに継承していってくれ、約束なんだ。」
炭十郎が炭治郎に託した伝統を思いだし、現在の状況を打ち破ろうとする。
炭治郎の呼吸が水から変わった。
炭治郎「ヒノカミ神楽!円舞!」バラ
累「!!」
ヒノカミ神楽の呼吸は、累の血鬼術である糸を斬ったが、それでもすぐに新しい糸によりなかなか届かない。炭治郎は、相討ちを覚悟で禰豆子を守るために腕を動かす。一方、失血により気を失った禰豆子も暗闇にあった意識に、突如として母親の竈門葵枝の幻が語りかける。
葵枝「禰豆子・・禰豆子、起きて。今の禰豆子ならできる・・頑張って。お兄ちゃんまで死んでしまうわよ・・」
幻とはいえ、自身の母親の悲しみの表情は、禰豆子にとって許せるものではなかった。母が流した涙を見て、禰豆子の意識は戻り、累と戦っている炭治郎を見つける。そして援護と救出するために右腕に力を込めて握ると、鬼特有の異能の力を発揮した。
禰豆子「んー!!」(血鬼術!爆血!!)ボォォォ!
累が張った糸は禰豆子を捕まえた糸と全く同じものだった。そのため禰豆子の血が染み込んでおり、瞬く間に糸全体に火が燃え広がったのだ。糸は炎に弱い。炭治郎が触れただけで焼き切れたのだ。
累(馬鹿な!!糸が焼き切れ・・だが糸を切ったところで僕の頸は斬れない。鋼糸よりも僕の体の方が硬いんだ。)
累の思惑通り炭治郎の刀は最初、頸にあたると、硬さもあって動きが止められる。しかし、炭治郎の日輪刀にも禰豆子の血が付着していた。日輪刀が燃えだすと、加速する。
炭治郎「俺と禰豆子の絆は誰にも、引き裂けない!!」
そのまま炎を帯びた日輪刀を振り切り、累の頸を撥ね飛ばしたのだった。こうして蜘蛛の家族の鬼は全員倒した・・かに見えていた。
今後のブロリーの変身形態はスーパーサイヤ人、伝説のスーパーサイヤ人ですが、それ以外の形態(スーパーサイヤ人3、スーパーサイヤ人4フルパワー等)を取り入れようかどうかは迷っています。是非希望をコメントで、伝えてくれたらと思っております。では、また次回。