ここは無限城と呼ばれる巨大な城の中である。鬼殺隊の本部が産屋敷の屋敷であるように、ここは鬼の始祖鬼舞辻無惨や十二鬼月を始めとした鬼たちの巣窟なのだ。そしてここに琵琶をならしている女の鬼がいた。彼女は鳴女と呼ばれており、琵琶を鳴らすことで無限城の空間を自在に操る血鬼術を持っていた。
ベベンベンベン
彼女が琵琶を鳴らすと鬼一体が召喚され、突然のことにその鬼は驚いていた。その間にも鳴女は更に琵琶を鳴らす。
ベベンベンベン
そして合計五体の鬼が同じ空間へと呼び出された。その鬼達には共通点があり、全員が十二鬼月の下弦の鬼なのだ。下弦の壱、魘夢・下弦の弐、轆轤・下弦の参、病葉・下弦の肆、零余子・下弦の陸、釜鵺と上弦の鬼はどこにもいなかった。そして五体の前に一人の女性が現れた。
釜鵺(何だこの女は?誰だ?)
釜鵺が突如現れた女に不信感を抱いていると、その女性は口を開いた。
無惨「頭を垂れてつくばえ、平伏せよ。」
「「!!」」ババッ
その女性の招待は、鬼の始祖鬼舞辻無惨であった。擬態しているため、誰一人として見抜けなかったのだ。
釜鵺(無惨様だ・・無惨様の声。わからなかった。姿も気配も以前と違う。凄まじい精度の擬態。)
零余子「も、申し訳ございません。お姿も気配も異なっていらしたので・・」
無惨「誰が喋って良いと言った?」
零余子「!!」ガタガタ
無惨「貴様共のくだらぬ意思で物を言うな。私に聞かれたことにのみ答えよ。累が殺された、下弦の伍だ。」
無惨は他の鬼達に一切の有無を言わさずに淡々と語り始める。自分の意思を押しつけるその様は、現代社会で言うパワハラというものである。そのまま淡々とそれまでの経緯を語り始める。
無惨「貴様共の足りぬ頭でも理解できるように私がハナから全て説明してやる、ありがたく思え。私は以前浅草で耳に花札のような飾りをつけた鬼狩りと金の首飾りをつけた男に出会った。鬼狩りはともかく、男の方は私を凌ぐ程の強さを持っていた。私はあの男が鬼狩りであることを考慮して、十二鬼月の上弦下弦問わず全員にふんだんに血を分けてやった。私は優しいから貴様共にあの男を殺せと無謀なことは言わない。だが累は奴を傷つける所か、ダメージを負わせることすらかなわず一撃で殺された。あれだけ私が血を分けてやったにもかかわらずだ。
私が問いたいのは一つのみ、何故下弦の鬼はそれ程まで弱いのか。」
無惨は相当怒っているのか、顔中に血管が浮き出ていた。姿が見えなくても、怒っていることを威圧感と気配でわかる下弦の鬼は壱を除いて震えていた。
無惨「十二鬼月に数えられたからと言って終わりではない。そこから始まりだ。より人を喰らい、より強くなり、私の役に立つための始まり。百歩譲って金の首飾りの男のことは上弦ですら葬ることはほぼ不可能だ、だが傷つけることくらいは出来ると私は踏んでいる。しかし下弦はどうか?あの男所か鬼狩りの柱を葬ることすらままならない。何度入れ替わった?」
釜鵺(そんなことを俺たちに言われても・・)
無惨「"そんなことを俺たちに言われても"何だ?言ってみろ。」
釜鵺(!?思考が・・読めるのか?まずい・・)ギクッ
無惨「何がまずい?言ってみろ。」
無惨は左腕を巨大な肉の塊に変えると、そのまま釜鵺を掴んで締め上げる。本能的に死を感じた釜鵺は許しを求めた。
釜鵺「お許しくださいませ!鬼舞辻様どうか!どうかお慈悲を!申し訳ありません!申し訳ありません!申し訳・・」ぐちゃバリバリバリ
無惨の腕から伸びた肉壁が突如巨大な口に変わり、そのまま釜鵺は無惨に喰われ生涯を終えた。その光景を見ていた他の下弦の鬼達はみんな青ざめていた。
無惨「私よりも鬼がりの方が怖いか?」
零余子「!!」ギクッ
無惨が次に問いかけたのは零余子に対する鬼殺隊と遭遇したときにいつも逃げようとする姿勢だった。
無惨「お前はいつも鬼狩りの柱と遭遇した場合逃亡しようと思っているな。」
零余子「いいえ思ってません!!私は貴方様のために命をかけて戦います!」
無惨「・・・・お前は私の言うことを否定するのか?」グシャ
しかし必死の説得もむなしく失敗に終わり、無惨の理不尽な物言いで無様に殺された。
病葉(もうダメだぁ・・おしまいだぁ・・思考は読まれ、肯定しても否定しても殺される。にげるんだぁ・・勝てるわけがないYO・・)
無惨「何処へ行くつもりだ?まさか私から逃げられると思ってるわけではあるまいな?」
病葉「!!いいえ!貴方様の役に立つために鬼狩り共を葬る準備です!」
無惨「・・・・鳴女の血鬼術で出した一人用の襖でか?」グシャ
病葉は逃げようとするのを無惨に思考を読まれ、断末魔を上げる間もなく喰い殺された。
無惨「もはや、十二鬼月は上弦のみで良いと思っている。下弦の鬼は解体する。最期に何か言い残すことはあるか?」
無惨の声にいち早く反応したのは下弦の弐である轆轤である無惨の役に立つと必死に抗議をする。
轆轤「私はまだお役に立てます!もう少しだけ御猶予を戴けるならば、必ずお役に!」
無惨「具体的にどれ程の猶予を?お前はどのような役に立てる?今のお前の力でどれ程のことができる?」
轆轤「血を・・!!貴方様の血を分けて戴ければ!私は必ず"血に順応してみせます!より強力な鬼となり戦い・・ふおお!?」
ガシッ キーン ドゴーン!!
全て言い終わる前に無惨は轆轤の頸を掴んで無限城の壁に叩きつけた。壁にめり込んだ轆轤を中心に大きなクレーターができていた。そのまま更に締め上げながら、怒りで顔中に血管を浮かび上がらせ、無惨は口を開いた。
無惨「なぜ私がお前の指図で血を与えねばならんのだ?甚だ図々しい。身の程を弁えろ。」ビキビキ
轆轤「・・・・!違います!!違います!!私は!」
無惨「黙れ。何も違わない。私は何も間違えない。全ての決定権は私に有り、私の言うことは絶対である。お前の意思など知ったことではない、私の意思こそが全てだ。お前に拒否する権利はない。私が"正しい"と言ったことが"正しい"のだ。お前は私に指図した。死に値する。」
無惨はそのままもう片方の腕を、先ほどと同じように肉壁を作り、逃げることすらままならず喰い殺された。最後に残った下弦の壱、厭夢にも同様の事を聞く。
無惨「最期に言い残すことは?」
厭夢「そうですね。ほう・・私は夢見心地で御座います。貴方様直々に手を下して戴けること。他の鬼たちの断末魔を聞けて楽しかった。幸せでした。人の不幸や苦しみを見るのが大好きなので、夢に見るほど好きなので、私を最後まで残してくださってありがとう。」
無惨「・・・・」
ドギュ!!ドクンドクン
無惨はしばらく黙りこんだ後、肉壁となった自身の腕を鋭利な刃に変えて、厭夢の頸元に突き刺した。そしてそこから大量の血を入れたのだ。厭夢はあまりにも多すぎる無惨の血に苦しみの声を上げる。
厭夢「ガア ア゛ッ アア゛」
無惨「気に入った。私の血をふんだんに分けてやろう。ただしお前は血の量に耐えきれず死ぬかもしれない。だが"順応"出来たならば、さらなる強さを手に入れるだろう。そして私の役に立て。鬼狩りの柱を殺せ。そしてあの金の首飾りの男に重傷の一つくらい負わせてこい。耳に花札のような飾りをつけた鬼狩りを殺せばもっと血を分けてやる。」
ベンベベンベン
鳴女が再び琵琶を鳴らすと、無限城にいた無惨はもとの場所に戻っていき、厭夢は動けなかった為、無理矢理夜の商店街に落とされた。厭夢の頭に無惨の記憶が流れ込み、市松模様の羽織を着た炭治郎と、そのとなりにいる金の首飾りをつけたサイヤ人、ブロリーの姿が映し出された。
厭夢「うふ、うふふ。柱と、この子供を殺してこの男に重傷を負わせればもっと血を戴ける・・夢心地だ・・!!」
まだ二人に遭遇すらしていない為、"捕らぬ狸の皮算用"ではあるが、この二人を葬ることを想像して止まらない厭夢は、ずっと倒れこんだままニヤニヤと物思いに耽っているのであった。
今回はかなり文字数が少なくなってしまいました。申し訳ありません。次回からはまた10000文字前後を目指して書いていきます。それではまた次回。