伝説の超鬼殺隊員   作:ツキリョー

32 / 49
第三十二話です。今回は原作にはない展開が含まれています。それでも大丈夫な方は本編へどうぞ。


思いの激突!しのぶVSブロリー!

柱稽古が始まり、鬼殺隊全体の底上げが始まった。その事について話し合っている善逸と炭治郎だったが、そのテンションは天と地だった。

 

善逸「~~らしいよ・・」

 

炭治郎「そうなんだ!凄いな。」

 

善逸「何も凄くねぇわ最悪だよ地獄じゃん・・誰なんだよ考えた奴、死んでくれよ。」

 

炭治郎「こらっ・・自分よりも格上の相手の人と手合わせしてもらえるって上達の近道なんだぞ。自分よりも強い人と対峙するとそれをグングン吸収して強くなれるんだから。」熱弁!

 

しかし、炭治郎の熱弁が善逸の逆鱗に触れたのか、顔中の血管を浮かべながら炭治郎の額を噛った。

 

善逸「そんな前向きなこと言うんであれば俺とお前の仲も今日これまでだな!!お前はいいだろうよまだ骨折治ってねぇからぬくぬくぬくぬく寝とけばいいんだからよ!!俺はもう行かなきゃならねぇんだぞわかるかこの気持ち!!」ゴリィ

 

炭治郎「いたたた・・!ごめんごめん。あっ、でも善逸」

善逸「俺に話しかけるんじゃねぇ・・!!」

 

炭治郎「いやいや待ってくれ。俺も師範や善逸の呼吸のコツを使って鬼と戦うこともあるんだ。その度に呼吸を教えてくれた善逸には感謝してるんだよ。勿論善逸みたいな速さではなかったんだけど、本当にありがとう。人と人の繋がりが窮地を救ってくれることもあるから、柱稽古で学んだことは全部きっと良い未来に繋がっていくと思うよ。」

 

善逸「・・馬鹿野郎お前っ・・そんなことで俺の機嫌が直ると思うなよ!!」ニッコニコォ

 

炭治郎(あっご機嫌だよかった。)ホッ

 

善逸は口ではまだ不機嫌みたいに言っているが、その顔は満面の笑みを浮かべていてすっかり機嫌が直っていることがわかった。ちょうどその時、炭治郎の鎹鴉が物凄い勢いで飛んできて炭治郎の額に嘴を思いっきり刺した。

 

鎹鴉「カアアアアッ!!」グッサー

 

炭治郎「ギャアアッうわぁ血が出た。急に何するんだよ酷いな!」

 

鎹鴉「カーーッオ館様カラノ手紙ダ!!至急読ムノダ!!」

 

炭治郎「手紙?俺に?わざわざ?えー何だろう?」

 

耀哉直筆の手紙を鎹鴉から受け取った炭治郎は、開封して中身を読み上げるのだった。

一方、既に始まっている柱稽古では大半の隊士が天元のところで指導を受けていた。

 

天元「遅い遅い遅い遅い!何してんのお前ら!?意味わかんねぇんだけど!!まず基礎体力が無さすぎるわ!!走るとかいう単純なことがさ!こんなに遅かったら上弦に勝つなんて夢のまた夢よ!?」

 

天元が鬼の形相で竹刀を構えて質が悪い隊士達に呆れ返っていた。まず基礎体力の向上をここで行うのだ。

 

天元「ハイハイハイ地面舐めなくていいから!まだ休憩じゃねぇんだよもう一本走れ!!」

 

殆どが今天元のしごきを受けているが、その後は蜜璃による地獄の柔軟、無一郎による高速移動の稽古、小芭内による太刀筋の矯正、実弥による無限打ち込み稽古、行冥による筋肉強化訓練、そして最後はブロリーによる上弦と同等かそれ以上の鬼と遭遇を想定した実戦訓練である。柱にしてみても次から次へとかかってくる隊士を相手することでさらなる体力向上が見込めるのだ。その過程で得た情報は隊士全体に伝達、共有で力を上げているのだ。しかしただ一人、義勇を除いて。

炭治郎side

 

耀哉からの手紙を読んだ炭治郎は義勇の住んでいる水屋敷へと来ていた。

 

炭治郎「ごめんくださーい、冨岡さーん、こんにちはー、すみませーん、義勇さーん俺ですー、竈門炭治郎ですー、こんにちはー、じゃあ入りますー。」

 

義勇(入ります?いや・・帰りますだな聞き間違いだ・・)

 

しかし、扉から炭治郎がヒョコっと顔をだし、普段表情が変わらないことで有名だった義勇が物凄く驚いた表情をしたのだった。そして炭治郎はにこやかに、義勇は無表情で事の経緯を話していた。

 

炭治郎「~~ていう感じでみんなで稽古してるんですけど。」

 

義勇「知ってる。」(近い。)

 

炭治郎「あっ知ってたんですね、よかった。俺あと七日で復帰許可が出るから稽古つけてもらっていいですか?」

 

義勇「つけない。」

 

炭治郎「どうしてですか?じんわり怒っている匂いがするんですけど何に怒ってるんですか?」

 

義勇は炭治郎の依頼を一蹴する。それと炭治郎は義勇から怒りの匂いを感じ取って何故怒っているのかも聞いた。

 

義勇「お前が水の呼吸を極めなかったことを怒ってる。お前は水柱にならなければならなかった。」

 

炭治郎「それは申し訳なかったです。でも鱗滝さんとも話したんですけど、使っている呼吸を変えたり新しい呼吸を派生させるのは珍しいことじゃないそうなので、特に水の呼吸は技が基礎に沿ったものだから派生した呼吸も多いって。」

 

義勇「そんなことを言ってるんじゃない。水柱が不在の今、一刻も早く誰かが水柱にならなければならない。」

 

炭治郎「?水柱が不在??義勇さんがいるじゃないですか?」

 

義勇「俺は水柱じゃない。帰れ。」

 

炭治郎は義勇の発言を理解することはできなかった。しかし耀哉の手紙の内容を思い出した。"炭治郎、怪我の具合はどうだい?義勇と話がしたいんだけど、今の私はとても手が離せそうにないんだ。今はとても大事な時だから、みんなで一丸となって頑張りたいと思っているんだ。義勇と話をしてやってくれないだろうか?どうしても独りで後ろを向いてしまう義勇が、前を向けるように根気強く話をしてやってくれないか?"と耀哉は炭治郎に期待を寄せていた。

 

炭治郎「はい!!」グッ

 

しかし、炭治郎は根気強く話し合うという言葉を額面通りに受け取った。その結果、昼夜問わずに義勇の背中を追いかけるようになった。

 

炭治郎「義勇さん、どうしましたか?義勇さん。」

 

義勇「・・!」

 

それは端から見ればストーカーそのものであり、場所までつけ回るのだ。あるときでは一日中水屋敷に居座ったり、厠までついてくることもあった。これには本心では他の仲間達と仲良くしたいと思っている義勇ですら、鬱陶しさのあまり微かに苛立ちを覚えるほどであった。

 

義勇(・・これは一生続くのだろうか?話したらつきまとうのをやめてくれるのだろうか?)

 

炭治郎が義勇の後を雛鳥のようについて回る。それが四日続き、根負けした義勇は話すことを決めた。

 

義勇「はー・・俺は最終選別を突破していない。」

 

炭治郎「えっ?最終選別って藤の花の山のですか?」

 

義勇「そうだ。あの年に俺は、俺と同じく鬼に身内を殺された少年・・錆兎という宍色の髪の少年と共に選別を受けた。」

 

炭治郎「・・!」

 

炭治郎はとても驚いた。かつてブロリーと共に狭霧山で稽古をつけてもらったことがあるからだ。選別で対峙した手鬼の情報により錆兎は故人になっていたことが明らかになったが、まさか義勇と同い年だとは思わなかったのだ。

 

義勇「十三歳だった。同じ年で天涯孤独、すぐに仲良くなった。錆兎は正義感が強く心の優しい少年だった。あの年の選別で死んだのは錆兎一人だけだ。彼があの山の鬼を殆ど一人で倒してしまったんだ。錆兎以外の全員が選別に受かった。俺は最初に襲いかかって来た鬼に怪我を負わされて朦朧としていた。その時も錆兎が助けてくれた。錆兎は俺を別の少年に預けて、助けを呼ぶ声の方へ行ってしまった。気がついた時には選別が終わっていた。俺は確かに七日間生き延びて選別に受かったが、一体の鬼も倒さず助けられただけの人間が、果たして選別を通ったと言えるだろうか?俺は水柱になっていい人間じゃない。そもそも柱達と対等に肩を並べていい人間ですらない。俺は彼らとは違う、本来なら鬼殺隊に俺の居場所はない。」

 

義勇は実弥やしのぶ、その他の柱達の決して見下してなどいなかった。それどころか自分の手の届かない存在だと思っていたのだ。今の自分は後継の水柱が現れるまでの仮の柱だと自分を卑下していた。自分は柱に相応しくないと思っている義勇は柱合会議にも消極的でこの稽古にも参加しようとしなかった。それがわかった炭治郎は涙を浮かべた。

 

義勇「自分の師範に稽古をつけてもらえ。それが一番いい。俺には教えることなどない。・・ブロリーならお前を始めとして他の隊士達もいい方向へ導ける。もう俺に構うな、時間の無駄だ。」

 

それだけを言うと、義勇は今度こそ去ろうとした。炭治郎は義勇の残されたものの気持ちが痛いほどよくわかるため、共感して涙を流していた。

 

炭治郎(きっと、義勇さんは自分が死ねば良かったと思っているんだなぁ。痛いほどよくわかる。自分よりも生きていて欲しかった大事な人が自分よりも早く死んでしまったり、それこそ自分を守って死んだりしたらえぐられるように辛い。"錆兎"狭霧山で俺に稽古をつけてくれた少年。不思議な体験だった。もう死んでしまったはずの彼らが、俺を助けてくれた。そうか錆兎は、義勇さんと一緒に選別を受けたのか。生きていたら義勇さんと同じくらいの年になる人。凄いなぁ凄いなぁ。選別の時みんなを助けたんだ。師範を彷彿とさせるなぁ。俺にはできなかった、自分を守るのが精一杯で。錆兎が生きていたらきっと凄い剣士になっていただろうなぁ。それもあって義勇さんは自分が死んだら良かったと思っているんだ。わかる、だって俺も同じことを思った。)

 

炭治郎は今は亡き家族のことを思い出していた。あのときのことをふと思い出しては後悔の繰り返しだったからだ。"あのときしっかり帰っていれば自分が死ぬだけで済んだんじゃないか"と。しかし、炭治郎はかつて自分が刀鍛治の里に住んでいる少年、小鉄に言ったことを思い出した。"志半ばで死ぬかもしれない。でも必ず誰かがやりとげてくれると信じてる。俺たちが繋いだ命が必ず鬼舞辻を倒してくれるはず"と繋いでいき、引き継ぐことでいつか目標を達成できると説得していたことを。

 

炭治郎(でもどんなに惨めでも恥ずかしくても生きていかなくちゃならない。本人は認めてないけど柱になるまで義勇さんが、どれだけ自分を叱咤して叩き上げてきたのか、どれだけ苦しい思いをしてきたことか。義勇さんのことを何も知らない俺が、とやかく言えることじゃない。だけど・・だけど・・どうしても一つだけ聞きたいことがある。)「ぎ、義勇さん!義勇さんは・・義勇さんは錆兎から託されたものを繋いでいかないんですか?」

 

義勇「!!」パアン

 

義勇は突如として左頬を張り飛ばされた衝撃を覚えた、いや思い出したのだ。錆兎と友達になったときに言われたことを。

―――それはまだ左近次のところに錆兎と指導を受け始めた頃。最愛の姉を殺された義勇は未だに立ち直れておらず、"姉の代わりに自分が死ねば良かった"と言った義勇に激情した錆兎が殴り飛ばしたのだった。

 

パアン ドッ

 

義勇「さ・・錆兎・・」

 

錆兎「自分が死ねば良かったなんて、二度と言うなよ。もし言ったらお前とはそれまでだ。友達をやめる。翌日に祝言を挙げるはずだったお前の姉も、そんなことは承知の上で鬼からお前を隠して守っているんだ。他の誰でもないお前が・・お前の姉を冒涜するな。お前は絶対死ぬんじゃない。姉が繋いでくれた命を、託された未来をお前も繋ぐんだ、義勇。」

 

―――

 

この出来事は義勇にとって立ち直るきっかけになった大切なことだった。今の今まで思い出せなかったことを後悔していた。思いだしたくなかったのだ。そうしてしまうと悲しすぎて何もできなくなるから。だが、このときの義勇は炭治郎の言葉で本当に大切なことを思い出すことが出来たのだ。

 

義勇(蔦子姉さん、錆兎、未熟でごめん・・)

 

炭治郎(どうしよう、酷いこと言っちゃったかな?義勇さん既に大分ションボリ状態だったようだし、追い討ちかけてしまったのかな?そうだ早食い勝負をするのはどうだろう。俺が勝ったら元気だして稽古しませんか?みたいな。俺はまだ復帰許可おりてないから手合わせ的なことはできないし、義勇さん寡黙だけど早食いならしゃべる必要ないし名案だな!)

 

義勇は錆兎のやり取りを思い出して、託されたものを繋いでいく決心をした。炭治郎を振り替えると、大分スッキリした表情で稽古に参加すると伝えようとしたが

 

義勇「炭治郎、遅れてしまったが俺も稽古に参加」

炭治郎「義勇さん、ざるそば早食い勝負をしませんか?」

 

義勇(何故だ?)

 

このときの義勇は炭治郎が勝手に屋敷に入ってきたときよりも驚いた表情をした。しかし二人は本当にざるそばを食べに行ったのだった。

義勇も加わって本格的に柱稽古が進み始めた。しかしその一方でしのぶはある行動を起こそうとしていた。しのぶは仏壇の前で本来の勝ち気な表情をしていた。

 

しのぶ(落ちついて、大丈夫よ。姉さん私を落ちつかせて。感情の制御ができないのは未熟者。未熟者です。)「ふー、ふうう。」

 

しかし深く深呼吸をするといつも通りの笑顔を顔に張り付けた。そこへカナヲが報告に来ていた。

 

カナヲ「師範、お戻りでしたか。私はこれから風柱様の稽古に行って参ります。」

 

しのぶ「そう。」

 

カナヲ「師範の稽古は岩柱様の後でよろしいですか?」

 

しのぶ「私は今回の柱稽古には参加できません。」

 

カナヲ「え・・ど・・どうして・・」

 

しのぶ「カナヲ、こっちへ。」

 

しのぶはカナヲを部屋に招き入れたが、表情は以前として厳しいままだった。

 

カナヲ「あの・・あの、私もっと師範と稽古したいです。」もじもじ

 

カナヲが伝えたのは自分の気持ちだった。炭治郎の助言で心の声を聞くようになり、素直になってきたのだ。これを聞いたしのぶは、心の底からの笑みを浮かべた。

 

しのぶ「・・カナヲも随分自分の気持ちを素直に言えるようになりましたね。・・いい兆しです。やはり良い頃合いだわ。」

 

カナヲ「?」

 

しのぶ「私の姉、カナエを殺した、その鬼の殺し方について話しておきましょう。」

 

今、しのぶはカナヲに玉砕覚悟の作戦を伝えようとしているのだった。

 

ブロリーside

 

炭治郎が義勇について回っている一方で、ブロリーは蝶屋敷へと来ていた。本来は実戦稽古を担当するはずなのだが、最後に回されたため未だに暇だというのと、どれ程の力で戦えばいいのかよくわかっていないこともあってしのぶに聞きに来たのだ。

 

ブロリー(実戦訓練をしろと言われても勝手がわからん。しのぶに聞きに行くか。)

 

アオイ「あっ破壊柱様、どのようなご用で?」

 

ブロリー「稽古について確認したいことがあるからな。しのぶはどこにいるかわかるか?」

 

アオイ「しのぶ様なら今自分の部屋にいるかと思われます。」

 

ブロリー「そうか。感謝する。」

 

アオイから居場所を聞いたブロリーはしのぶとカナヲがいる部屋へと近づいていくと、中から話し声が聞こえてきた。

 

しのぶ「もし姉を殺した上弦の弐と巡り合い、私とカナヲの二人で戦うことが出来たなら、まず第一の条件として、私は鬼に喰われて死ななければなりません。」

 

ブロリー(は?)

 

カナヲ「どうしてですか?一緒に戦えばきっとか、勝て・・」

 

しのぶ「そのような甘い考えは今すぐこの場で捨てなさい。」

 

カナヲ「!」ビクッ

 

ブロリー(何ぃ!?・・何故わざわざ死ぬ必要がある?)

 

しのぶ「上弦の強さは少なくとも柱三人分に匹敵します。しかし、姉からの情報によればその上弦の弐、女を喰うことに異様な執着があり意地汚ならしい。身体能力が高く、優秀な肉体を持つ"柱"加えて"女"であればまず間違いなく喰うでしょう。」

 

カナヲ(嫌だ、嫌だ・・)

 

しのぶ「現在私の体は、血液・内臓爪の先に至るまで高濃度の藤の花の毒が回っている状態です。」

 

カナヲ「じゃあ私も・・」

 

しのぶ「無理ですね、まず間に合わない。この状態になるまで一年以上、藤の花の毒を摂取し続けなければならない。しかもこの試みの最初の被験者が私です。今後どのような副作用が出るのか、そしてまた上弦や鬼舞辻に通用するのか全くわからない。私の刀で一度に打ち込める毒の量はせいぜい五十ミリ、しかし、今の私を喰った場合にその鬼が喰らう毒の量は、私の全体重三十七キロ分、致死量のおよそ七百倍です。それでも確実に殺せる保証はありません。少なくてもお館様は無理だと判断している。」

 

カナヲ「それなら・・どうして・・」

 

しのぶ「それにこれはブロリーさんのためでもあるのです。確実に鬼舞辻をブロリーさんの手で葬るためには上弦との戦いで怪我を負わせるわけにはいきません。これは最小限にまでリスクを抑えた戦いなのです。だから仮に毒が効き始めたとしても、油断なりません。やはり確実なのは頚の切断、必ず私が鬼を弱らせるから、カナヲが頚を斬って止めを刺してね。」

 

ブロリー「・・!」ビキッ

 

しのぶは悲しそうにカナヲに伝え、カナヲは大量の冷や汗をかいていた。そして部屋の外ではブロリーがしのぶが自分のために死ぬと言ったことに怒り、青筋を浮かべて部屋に入った。

 

ブロリー「おい。」ゴゴゴ

 

しのぶ「!ブロリーさん?」

 

カナヲ「!破壊柱様?」

 

しのぶとカナヲはブロリーがいて話をずっときいていたことに気づいておらず、驚いた表情をしていた。

 

ブロリー「何が喰われて死ななければならないだ!何が俺のためだ!」

 

しのぶ「!・・全部聞いていたんですね、ならば話は早いです。貴方が出来るだけ鬼舞辻との戦いに備えられるようにこの方法で戦います。わかってください。」

 

ブロリー「わからんな!俺のための犠牲などいらん!俺は残りの上弦も鬼舞辻も全て倒す!」

 

しのぶはブロリーのその言葉を聞くと、いつもの笑顔が消えて鋭い顔つきになってブロリーを睨み付けた。

 

しのぶ「ブロリーさん!何を言ってるんですか!確かに貴方なら鬼舞辻を倒せます!ですが上弦と戦ったあとすぐに鬼舞辻と戦うようなことになれば、貴方が殺される可能性も零ではないんですよ!」

 

ブロリー「殺される可能性があるだと?それがどうした?そんなことを恐れて戦ったことなど一度もない!それに俺が連戦で上弦に怪我させられて鬼舞辻に殺されたのなら、俺がその程度の実力だったというだけだ。」

 

しのぶ「なっ!?」

 

ブロリーは残りの全ての鬼を倒す気でいるのだ。それどころか自分が死ぬ可能性が少しでもあることに"それは弱い自分が悪い"と言わんばかりに言いはなったのだ。これに驚いたしのぶは意味を理解すると青筋を浮かべて怒り狂った。

 

しのぶ「ふざけないでください!!どうして自分の命を軽視するんですか!?貴方を大切に思ってる人は沢山いるのに!!」

 

しのぶは怒りをぶつけてブロリーを怒鳴り付けた。しかし、ブロリーはそれすらも鼻で笑った。

 

ブロリー「フン!カナヲに無駄死にの作戦を伝えてそれを行おうとしている今のしのぶには言われたくないな。」

 

しのぶ「!・・無駄死に・・ですって!!?」ギリッ

 

しのぶは自分の作戦を"無駄死に"と言われたことに青筋を立ててブロリーを強く睨み付けた。最もブロリーは腕を組んで余裕の表情をしていたが。

 

ブロリー「本当の事だろう?死ぬ必要がないのにわざわざ犠牲になることを無駄死にと言わずになんと言う?それからお前が俺のためだと言うなら、上弦の弐を生きたまま倒して鬼舞辻とやらのムシケラと戦う方がよっぽど俺のためになるぞ。お前がやろうとしているのはただ逃げているだけだ。」

 

しのぶ「!!!」バッ

 

ヒョイ

 

それだけではなく、ブロリーは逃げているだけと一蹴して言いはなった。それを聞いたしのぶは遂に我慢できなくなってブロリーに平手打ちしようと飛びかかった。しかし、ブロリーは軽く上半身を捻って避ける。

 

しのぶ「・・ふざけ・・ないで・・ふざけないで!!ふざけるなー!!私の策が"逃げ"?"無駄死に"?取り消してください!取り消しなさい!!ブロリーさん!!」

 

カナヲ「!」オロオロ

 

ブロリー「取り消せ?出来ぬぅ!!貴様の姉、カナエと言ったか?そいつが貴様自身がやろうとしていることを許すとでも思っていたのか?少なくとも俺が身内なら破壊してでも止めるがな!」

 

それを聞いたしのぶは思わず日輪刀を抜いてブロリーに矛先を向けた。そして鬼と戦うときのような呼吸までもを使い始めたのだ。

 

しのぶ「蟲の呼吸!蝶ノ舞・戯れ!」ヒュオオ

 

ブロリー「!フン!」ガシッ

 

カナヲ「!」ビクッ

 

しのぶは藤の花の毒がたっぷりと染み込んだ日輪刀で本気でブロリーを毒殺するつもりで刺しにかかる。ブロリーには毒も通用しないしそもそも日輪刀も刺さらない。まず今行っている稽古をしているわけでもないのに真剣を隊員に向けている。もはや隊律違反そのものだが、今のしのぶにはそれすら認識する余裕もないほど冷静さを失っていた。カナヲがオロオロと狼狽えているがそれはブロリーの目にもしのぶの目にも入らない。そして最愛の姉のことを言われたしのぶは怒りで更に顔を歪めた。

 

しのぶ「うるさい・・うるさい!!貴方に姉さんの何がわかると言うのですか!!姉さんの思いも笑顔も何も知らない癖に!全てわかったように抜かさないでください!!」

 

ブロリー「俺はしのぶから姉については何も教えられてないからな、知らなくて当然だろう?知っていたら逆に怪しまれるな。」

 

しのぶはカナエの事を知らなくて当然と言い放つブロリーに血が出そうな程唇を噛んで大声で叫んで語った。

 

しのぶ「・・ならば教えてあげますよ!!よろしいですか!カナエ姉さんは誰にでも優しくて美しくてとても強い人だった!!鬼殺隊に入って直ぐに遭遇した下弦の鬼をたった一人で返り討ちにした!その功績もあって普通なら五年はかかる柱の地位にわずか二ヶ月で上り詰めた。『歴代最強の女柱』『鬼殺隊最強の女性』とすら言われていた!当時の私は悲鳴嶼さんを除いて姉さんよりも強いやつなんていないと思ってた!鬼舞辻を倒してこの戦いを終わらせるのは姉さんだと信じて疑わなかった!なのに・・なのに・・!ぅ・・ぐ・・う゛あああぁぁぁーーっ!!」

 

しのぶは当時の残酷な光景を思い出したのか日輪刀を落としてその場に崩れ落ちて泣き叫んだ。ブロリーはそんなしのぶに少し胸の内が締め付けられる感覚になり、カナヲも顔を俯かせて肩を震わせていた。

 

しのぶ「う・・ひぐ・・それでも柱数人分に匹敵すると言われている上弦の弐には敵わなかった!私は急いで現場に駆け付けたけど姉さんは既に息を引き取る寸前だった!もうどうあがいても助からない状態だったの!そして私の腕の中で亡くなった!その時に私は決意したんです!必ず私の手で仇を取るって!死ぬ間際に私に鬼殺隊を辞めてほしいと言ったカナエ姉さんの思いに初めて背いたの!でも非力な私じゃ上弦はおろか雑魚鬼の頚すら斬ることが出来ない!だから・・この方法しかないの!この・・方法しか・・私は仇を・・討てない・・!私が・・この体を・・全てを投げ打ってでも・・仇を取ると・・誓ったのに・・なのに・・なのに・・!!」

 

しのぶはギリッとブロリーを睨み付ける。その瞳には、今までブロリーに対して隠されてきた嫉妬や渇望、羨望に染まっていた。そして今までの気持ちをぶつけるように泣き叫んだ。

 

しのぶ「貴方が鬼殺隊に入ってしまった・・!不思議な力で次から次へと上弦を倒し、私の薬剤では治療は愚か退行すらさせることも出来なかった鬼舞辻の呪いを消し去った貴方が、羨ましくて妬ましくて憎くて仕方なかった・・!貴方があのとき来てくれれば・・!姉さんは助かったかもしれない・・!貴方がもっと早く鬼殺隊に入っていれば・・!もっと沢山の命を救えたかもしれない・・!そう考えると貴方が悪くなくても憎かった・・!"どうしてあのとき来てくれなかったの"ってずっと思ってた・・!上弦を倒す貴方を見て、私は貴方が上弦の弐をも簡単に殺せると確信した!私はやっと覚悟を決められたのに・・!一年間ずっと苦労してきたのに・・!これ以上私を追い詰めないでください・・私の手で仇を討ちたいの・・姉さんの元に逝きたいんです・・」ポロポロ

 

しのぶは最初こそブロリーに嫉妬や渇望の感情をぶつけていたが、後半になるとやがて勢い衰えて弱々しく涙を流していた。ブロリーは今まで黙って静かに話を聞いていたが、最後の方に出てきたのが本心だと気づいた。そしてようやくブロリーは口を開いた。

 

ブロリー「・・それがしのぶの本心か。お前が姉に会いたいのとなんとしても上弦の弐を殺したいという思いは理解した。だがそれでも俺は納得することは出来んな。お前は今ここにいるカナヲやアオイ達を置いて死ぬつもりなのか?」

 

しのぶ「!」ハッ

 

ブロリーの言葉にしのぶはハッとして周りを見回した。すると最初はこの場にはブロリーとしのぶを除くとカナヲしか居なかったのに、今ではアオイ、なほ、すみ、きよの全ての蝶屋敷の住人が泣きながらブロリーとしのぶの口論を静観していた。血の繋がりはなくてもしのぶにとってはかけがえのない妹達である。

 

しのぶ「みんな・・」

 

ブロリー「お前は姉が殺されて死んだのが悲しくなかったのか?」

 

しのぶ「!・・そんなわけ!

ブロリー「そんなわけないのなら何故その時の悲しみをまたカナヲやアオイ達に味わわせようとしているんだぁ?お前だけじゃなくカナヲやアオイ達も悲しんだはずだ。」

 

しのぶ「・・!!」

 

ブロリーに悲しくないのかと聞かれ、しのぶはすぐさま反論しようとした。しかし、更にブロリーに正論をいわれて何も言い返せなくなった。ブロリーが作り出した合間を見てアオイ達も声をあげた。

 

アオイ「死なないでくださいしのぶ様!私たちにとって貴女は命の恩人です!だから死なないでください!」

しのぶ「アオイ・・」

 

きよ「家族が死ぬのはもう見たくないです!」

なほ「お願いします考え直して!」

すみ「大切な人が死ぬのはもう嫌です!死なないで!」

しのぶ「きよ、すみ、なほ・・」

 

しのぶは大切な家族から死なないでと懇願されることに動揺して決意が大きく揺れていた。それを見計らったブロリーはこっそりカナヲに耳打ちする。

 

ブロリー「カナヲ、お前の気持ちも伝えてやれ」ボソッ

カナヲ「!」コクコク

 

カナヲは凄い勢いで頷いて一歩前に出た。その表情は強い気持ちでうっすら涙目になっていた。

 

カナヲ「師範!」

 

しのぶ「!っ!?」

 

カナヲがしのぶを呼び、しのぶがそちらへと顔を向ける。するとそこには"今までに見たことがない程の強い感情が表情に出ているカナヲ"がいた。普段感情が出にくいカナヲがこれほど表情豊かになっている。それにしのぶは驚いた。

 

カナヲ「ごめんなさい師範!ですが私は先ほどの師範の策には乗りたくないです!師範に死んでほしくないので!」

 

カナヲの強い気持ちを聞いたしのぶの心は遂に折れ、真剣を落として崩れ落ちて弱々しく泣いた。

 

しのぶ「うぅ・・う゛あああぁぁっ・・それなら・・ひぐ・・私は・・どうすれば・・いいの・・?もう・・何が正しいのか・・わかんないよぉ・・」

 

その様子はまるで母親を探す迷子の子供のようであった。弱々しく泣くしのぶにこの場の空気は重くなる。しかし、この空気を破ったのはブロリーだった。

 

ブロリー「しのぶ、わからないのなら俺を頼ればいいだろう。この俺を誰だと思っている?『伝説のスーパーサイヤ人』ブロリーです。気が済むまで俺に感情も気持ちもぶつけてこい!俺がお前を導いてやる!」

 

しのぶ「うぅ・・う゛あああぁぁーーっ!!ブロリーさん!ブロリーさん!う゛あああぁぁーっ!!」ガバッ

 

しのぶはブロリーに駆け寄って抱き着くとそのまま号泣した。それにつられてカナヲやアオイ達も同じように涙を流して泣いているのだった。

ブロリーとしのぶの一頓着から数刻後、破壊柱のブロリーと蟲柱のしのぶは縁側に腰を掛けていた。

 

しのぶ「ブロリーさん。さっきはすみませんでした・・私は感情のまま貴方に刀を向けてしまい隊律違反を起こしてしまいました・・柱として恥ずかしい限りです・・私も未熟者ですね・・」

 

ブロリー「気にすることはない。俺も普段なら見れないしのぶが見れて案外楽しかったぞ。それに感情や気持ちをぶつけてこいと言っただろ?俺の前くらい未熟でいろ。」

 

しのぶ「未熟でいろ?どうしてですか?」

 

ブロリー「その方が本心のしのぶが見れるだろう?導くと言ったからにはしのぶの本心を良い方へと導きたいと思ってるからな?」

 

ブロリーの言葉にしのぶは再び涙を流した。それにブロリーは狼狽えた。

 

しのぶ「・・」ポロポロ

 

ブロリー「!大丈夫か!?どこか

しのぶ「違うの!嬉しい・・!とっても嬉しいの・・!」

 

今のしのぶの涙は歓喜の涙だったのだ。そしてそのまましのぶはブロリーに密着して体を預けて寄りかかった。

 

ブロリー「何してるんだぁ?」

 

しのぶ「良いじゃないですか。」ギュー

 

ブロリー「・・・・」ポワワワワワ

 

しのぶ「!何を・・!」

 

ブロリーは抱き着いているしのぶに自身の気を送り込んだのだ。しのぶの体を流れていた藤の花の毒はきれいさっぱり失くなったのだった。

 

ブロリー「俺の気でお前の毒を解毒した。いつどうなるかわからない恐怖などと戦う必要などないからな。」

 

しのぶ「!・・もう、本当になんでもありですね・・///」

 

ブロリーのもはやなんでも出来る気に呆れ返るしのぶだが、しのぶはブロリーの体を抱き締める。その時しのぶは自分の心の変化に気づいた。ブロリーに全く嫉妬も渇望もしなくなっていたのだ。それに変わりに浮き上がって来たのはたったひとつの感情だった。ブロリーを見るとくっつきたくなり、離れるとかなり寂しい気持ちになる。それが"恋心"だと気づくのに時間はかからなかった。

 

しのぶ(・・ブロリーさんを見ると胸が高鳴る///鼓動も早くなってる///・・ずっとブロリーさんのそばにいたい・・///これが恋心なのね///私はブロリーさんのことが好き・・///)

 

しかし、自覚はしているがとりあえず今は何故蝶屋敷に来たのかを疑問に思っているため、そちらを優先的に聞くようにした。

 

しのぶ「そういえば今日ブロリーさんは何故蝶屋敷に来ていたのですか?」

 

ブロリー「!あぁそうだ。しのぶに聞こうと思っていたのだ。実戦稽古といっても何をやってやれば良いのだ?指導のやり方を聞きに来たんだが。」

 

しのぶ「その事ですか。いつも炭治郎君とやっている通りの戦い方をすれば良いんですよ。規則としてはそうですね、貴方の頚に刀が当てられたら合格で稽古終了というのはどうでしょう?」

 

ブロリー「なるほど、実際のムシケラ共も頚が弱点だからな。よしそれで行こう。感謝するぞしのぶ。それとしのぶは何を稽古するんだ?」

 

しのぶ「そうですねぇ。遅れてしまいましたが、私は貴方のひとつ前にしてもらっておさらい稽古をしたいと思います。物事の復習は大事ですからね。私のあとにブロリーさんのもとへ行かせます。」

 

ブロリー「いいだろう。そうこなくっちゃ面白くない。フフフ!」

 

そしてブロリーが蝶屋敷へと来た当初の目的は達成したのだが、それでもしのぶは"じーっと"ブロリーの方を顔を赤らめながら見つめていた。それを見たブロリーは疑問をぶつけた。

 

ブロリー「どうしたんだぁしのぶ?俺の方をずっと見て、なにかついているのか?」

 

しのぶ「!・・もう!鈍いですねぇ!こうなったら強行手段です!」

 

しのぶが照れ顔で叫ぶと、ブロリーの真横にたってなんとそのままブロリーの頬に口付けた。

 

ブロリー「・・へぁっ!?しのぶ!?」

 

しのぶ「その・・私は貴方が好きです!///ブロリーさん!///」

 

しのぶはブロリーに告白し、ストレートに好意をぶつけられたブロリーは人生で一度もこんな経験などしたことなかったので、生まれて初めて"混乱"というものを覚えたのだった。




ということで今回はしのぶさんの救済話でした。葛藤する女性を助け出すブロリーが見たかったので書いてしまいました。後悔はありません。それではまた次回。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。