鬼殺隊の隊員が柱稽古に参加している一方で、一羽の鎹鴉が二人の鬼のもとへと向かった。それは産屋敷直々の鴉である。そしてその二人の鬼というのは珠世と愈史朗の事である。耀哉直々の伝言を伝えに来たのだ。珠世は現在、ブロリーから提供してもらった血を研究していてその成果がちょうど出たところである。
珠世(・・!これは!?フ・・フフフ・・ブロリーさんの体はやはり不思議なんですね。もし今のブロリーさんと鬼舞辻が遭遇することがあれば・・その時があの臆病者の最期よ!それと前から研究していた分裂を防ぐ薬が今のところ順調に進んでいる!引導を渡せる準備がもうすぐ整う!アハハハハ!)
愈史朗「珠世様、何か良いことがありましたか?物凄く微笑んでいましたが。」(嗜虐的な笑みを浮かべる珠世様も美しい。)
珠世「・・彼は、ブロリーさんはとても凄い方なのですね。愈史朗。彼の体質についてわかりました。」
愈史朗「体質、ですか?」
珠世「彼の体質はどんなに強力な鬼の血鬼術も通用しないものだったのです。それにあの時私と愈史朗を鬼舞辻の刺客から守ってくれた際に見せたあの不思議な力、あれは鬼舞辻の細胞を根本から破壊し尽くし、再生力を著しく低下させることができます。つまりどんな鬼でもブロリーさんの攻撃を食らえば簡単に倒せることになります。愈史朗も見たでしょう?茶々丸の視覚を通してブロリーさんが上弦を既に四体も倒しているところを。」
愈史朗「はい!上弦の血鬼術が効いていなかったことも存じております!」(熱心に語る珠世様も美しい。)
珠世「その事から推測すると、おそらくブロリーさんは残りの上弦や鬼舞辻ですら敵ではないのです!そして私が研究を続けている分裂を防ぐ薬。これの研究が今のところ順調に進んでいます!次にブロリーさんと鬼舞辻が遭遇することがあれば、その時があの臆病者の最期よ!引導を渡せる準備が整う!アハハハハハハ!!」
愈史朗「た、珠世様・・!」(狂ったように笑う珠世様も美しい。)
珠世はブロリーの力が鬼舞辻を凌ぐものだと確信して、自身の悲願がもうすぐそばに迫っていることに歓喜して狂ったように笑っていたのだ。そこへこの屋敷の窓辺に一羽の鎹鴉が停まった。この鎹鴉は産屋敷の刺客であり、この度耀哉が禰豆子の件を含めて協力を仰げると判断して捜索を依頼したのだ。そしてようやく珠世と愈史朗の二人を見つけ出して接触を試みたのである。
鎹鴉「こんばんは珠世さん。物騒ですよ、夜に窓を開け放っておくのは。でも今日は本当に月が美しい夜だ。初めまして、吾輩は産屋敷耀哉の使いの者です。」
珠世「!」
愈史朗「鬼狩りの当主の・・!」
二人は代々鬼殺隊の当主は産屋敷家が担っていることを知っていたので、鬼である自分達への突然の訪問に警戒を隠さない。それでも産屋敷の鎹鴉はお構いなしに続けた。
鎹鴉「いやあしかし隠れるのが御上手ですな。貴女を見つけるのにずいぶんと時間がかかってしまいました。」
珠世「・・・・どうしてここが・・わかったのですか?」
鎹鴉「人間の人脈ですね。貴女が買ったこの家の元の持ち主を特定しました。それから昼間の内に愈史朗君の視覚を把握。」
愈史朗(!・・着けられていたのか!)
鎹鴉「吾輩は訓練を受けているとはいえただの鴉。そもそもそこまで警戒されない。貴女方に危害を加えるつもりはないので安心してほしい。」
愈史朗「俺たち鬼が鬼狩りの刺客の言うことを信じると思ってるのか!?」
珠世「愈史朗、よしなさい。・・では何の御用でしょうか?」
珠世は威嚇の如くきつく当たる愈史朗を咎めこそはするものの、それでも警戒心は全く緩まない。
鎹鴉「ふむ。不信感でいっぱいの様子、無理もない。吾輩が炭治郎のように貴女から信用を得るのは難しいですねやはり・・」
珠世(どういった腹積もりなの?産屋敷・・何か騙そうとしている?)
愈史朗「おい鴉!あまりそこに長居すると鬼舞辻の刺客に見つかるかもしれないだろ!用件だけ伝えてとっとと消えろ。」
鎹鴉「・・確かにそれは不味い。では用件を話しましょうか。鬼殺隊にも鬼の体と薬学に精通している子がいるのですよ。禰豆子の変貌も含めて一緒に調べていただきたい。鬼舞辻無惨を倒すために協力しませんか?産屋敷邸にいらしてください。」
珠世(鬼である私を鬼殺隊の本拠地へ・・!?)ドクン
珠世は産屋敷の使いの鴉から突然の申し出を受けて脂汗をかいていた。そして愈史朗が珠世に否定の意思を示して止めようとする。
愈史朗「珠世様!そのような危険な誘いに乗るのはやめましょう!奴らは見境なく鬼を倒そうとする連中です!珠世様の身にも危害を加えるに決まっています!信用に値しません!我々は我々で行動しましょう!それが妥当です!」
珠世「・・・・」
珠世は目を瞑ってしばらく考えるような素振りを見せていた。そして何かを決意するように目を開くと産屋敷の鎹鴉に伝える。
珠世「・・わかりました。伺いましょう。」
愈史朗「珠世様・・!」
愈史朗は産屋敷邸に行くことを決意したことに絶望の表情を浮かべた。珠世はそれに気づいていたがそれでも覚悟を決めた目をしていた。
鎹鴉「ありがとうございます。では早速この朗報を本部へと持って帰ってから改めてお迎えに参ります。」
珠世「待ってください!」
鎹鴉は早速この屋敷を飛び立とうとしたがその前に珠世が引き留める。
鎹鴉「?どうかしましたか珠世さん?」
珠世「・・一つだけ条件をつけていただきたいのです。」
鎹鴉「条件?」
珠世「はい・・炭治郎さんもしくはブロリーさんがそちらにいますね。その二人を護衛につけていただきたいのです。」
鎹鴉「・・わかりました。検討しましょう。」
それだけを言い残すと産屋敷の鎹鴉は今度こそ飛び去って行った。二人きりになったところで愈史朗が抗議の声をあげた。
愈史朗「珠世様!何故あのような決断をしたのですか!?さっきも言いましたよね?奴らは見境なく鬼だとわかれば殺そうとする連中です!危険極まりない!どうかお考え直しください!」
珠世「・・愈史朗、私は鬼舞辻との戦いが起こればそこで道連れになっても良いと思っているほどの覚悟を持っています。しかし、実際に戦闘になれば今の私たちには戦う術を一切持っていない。結局の所は鬼殺隊を頼るしかないのです。いずれはこうなることは薄々感じていましたから。それに未だに炭治郎さんが禰豆子さんの血を提供できている。これはつまり鬼殺隊に認められていることになると確信できませんか?」
愈史朗「!・・それは・・」
珠世「安心しなさい愈史朗。もし仮に産屋敷が炭治郎さんとブロリーさんが護衛につくことを拒否した場合はこの話はなかったことにしますから。」
愈史朗「・・わかりました。」
愈史朗は珠世の覚悟と交渉が決裂した場合も考えて行動したことに安堵して"珠世様の指示に従おう。"と心に決めたのだった。
場所が変わって産屋敷邸。今ここには柱の二人と一人の隊員が庭で耀哉の到着を待機していた。その三人とは、しのぶ、ブロリー、炭治郎の三人である。炭治郎は怪我が完治してこれから柱稽古を受けようとした時に鎹鴉に呼び出され、しのぶとブロリーはこれから自分達の所へ来るであろう隊員を待っているときに呼び出されて今に至るのだ。
しのぶ「炭治郎君にブロリーさん。何故私たちは呼び出されたのでしょうか?」
炭治郎「俺にはさっぱりわからないですね。師範は何かご存知ですか?」
ブロリー「知るわけ無いだろう。柱とやらが俺としのぶしかいないのは他の奴らには言ってはいけないってことなのか?」
しのぶ「・・そうですね。その可能性が高いでしょう。もしかしたら何かの指令なのかもしれません。」
ひなき・にちか「「お館様のおなりです!」」
三人が自分達の呼ばれた理由を考察していると、ひなきとにちかが耀哉が来たことを伝える。襖のおくからは耀哉がブロリーによって症状が一時的に完治して活気溢れた足取りでゆっくりと歩いて来た。そして耀哉が姿を現すとしのぶと炭治郎は膝をついて頭を垂れた。相変わらずブロリーは立ったままだった。
耀哉「おはよう、しのぶ、炭治郎、ブロリー、今日は突然呼び出して済まなかった。そして集まってくれてありがとう。」
しのぶ「お館様の命とあらば何処へいようと迅速に駆けつけます。」
耀哉「ありがとうしのぶ。」
ブロリー「耀哉、何故今日俺たちを呼んだんだぁ?三人しかいないということは口外してはいけないようなことなのかぁ?」
耀哉「そうだね。今日君たちを呼んだのは"あること"をしてほしいからなんだ。」
炭治郎「"あること"ですか?」
耀哉「珠世さんという鬼の護衛になってここへ連れてきて欲しいんだ。」
しのぶ「なっ・・!(鬼を・・!?)」
炭治郎・ブロリー「「珠世さん!/珠世!」」
しのぶ「!!・・炭治郎君、ブロリーさん、その鬼をご存知なのですか?」
炭治郎「はい!珠世さんは禰豆子と同じで人を喰わない方で少量の血だけで生活してるんです。そして人を助けるために医療をしています。」
ブロリー「それに鬼舞辻とやらを抹殺したいとも言ってたな。」
しのぶ「人を喰わずに助ける・・?医療に精通している鬼・・?えっええ!?」
しのぶはブロリーと炭治郎から出された情報があまりにも多くて処理が追い付かず、混乱して目を回し始める。それに気づいたブロリーがしのぶの背中を擦った。
ブロリー「しのぶ、深呼吸をしろ。落ち着け。」
しのぶ「そっそうですね。スーッフーッスーッフーッ・・すみませんお館様、見苦しいところをお見せしてしまいました。」
耀哉「気にしてないよしのぶ。私の方こそいきなり驚かせるようなことを言ってしまって済まなかった。珠世さんのことはさっき炭治郎とブロリーが言ったことが事実だ。炭治郎とブロリーは珠世さんの護衛になった後に、しのぶには鬼を倒すための薬を珠世さんと共同開発して欲しいんだ。」
炭治郎「俺と師範が護衛ですか?」
耀哉「そう、炭治郎とブロリーは珠世さんと遭遇したことがある上に禰豆子を人間に戻すために仲良くしてもらってると聞いたよ。だからこそ珠世さんも信頼しているであろう炭治郎とブロリーに護衛を頼みたいんだ。」
ブロリー「・・いいだろう。その護衛とやらをやってやろうではないか。禰豆子と炭治郎の為になるなら安いものだ。」
しのぶ「!?ブロリーさん!?」
しのぶは耀哉の依頼を承諾したブロリーに驚いて抗議の声をあげた。
しのぶ「そんなに簡単に決めてもいいのですか?相手は鬼なんですよ?鬼は平気で嘘をつくんです!闇雲に決めるのは危険です!もっと慎重に選択してからでも!」
ブロリー「しのぶ、お前がどれほどムシケラ共を憎んでいるのかはあの時わかったつもりだ。本当は嫌なんだろ?それを知っている耀哉が鬼の珠世との協力を仰いだ。それはしのぶが凄く期待されているということだ。俺もだがな。」
しのぶ「・・お館様とブロリーさんが、期待してくれてる・・」
ブロリー「それにしのぶは鬼は平気で嘘をつくと言ったな。そんなことは俺もわかっている。俺も最初は警戒した。だが珠世だけは違った。炭治郎と俺を信用して協力してくれることを約束してくれた。もし珠世が裏切ったり何か危害を加えることがあれば俺が血祭りにあげるだけだぁ!」
しのぶ「・・わかりました。ブロリーさんがそこまで太鼓判を押すなら私も信用することにします。それにブロリーさんがいれば安心ですから。」ニコッ
ブロリー「フフフ!そう来なくっちゃ面白くない。」(珠世が裏切らないと確信しているからこの事が言えたのだがな。)」
耀哉「結論は出たかな?その様子だと認めてくれるみたいだね。」
しのぶ「はい、私はお館様のご意見のままに珠世さんと薬の共同開発をします。」
耀哉「ありがとうしのぶ。そう言ってくれて私も安心したよ。では、炭治郎、しのぶ、ブロリー、珠世さんの護衛と薬の開発をお願いね。」
炭治郎・しのぶ「「御意。」」
ブロリー「はい・・」
三人は耀哉からの依頼を承諾した上でその日はお開きになるのだった。
その日の夜、ブロリーと炭治郎はしのぶがいる蝶屋敷へとやってきた。理由は鎹鴉から珠世達は今日来るということを伝えられて護衛の役割を果たすために来たのだ。三人は庭で合流して、挨拶を済ませていた。
しのぶ「炭治郎君、ブロリーさん、本日はよろしくお願いします。」
ブロリー「しのぶもな。」
炭治郎「はい!よろしくお願いします!」
三人は色々と話し合いながら時を過ごしていたが、ブロリーがしのぶの笑顔が今までと同じ仮面のものだと気づいた。
ブロリー「しのぶ、無理していないか?」
しのぶ「!!・・やっぱり敵いませんね。ブロリーさんには。」
ブロリーに指摘されたしのぶは一度俯くと、再び顔を上げる。そこには不安に支配された表情を浮かべたしのぶがいた。
しのぶ「・・ブロリーさん・・私・・不安なんです・・姉の夢である鬼と仲良くすること・・禰豆子さん以外でそれが叶いそうな存在がもう目の前にいるのに・・私の鬼に対する憎悪と方向性の行き違いとかでお館様や貴方の期待を裏切ってしまうことが・・本当に怖くて・・私・・本当に珠世さんと薬の共同開発・・出来るのでしょうか・・?」
ブロリー「しのぶ、耀哉も俺もしのぶなら大丈夫だと思って任せているのだ。お前が持つ薬学の知識はこの鬼殺隊の誰と比べても飛び抜けて凄いものだ。しのぶにしか出来ないことだ。だから耀哉はお前にこの事を任せたのだ。もし憎悪が勝って暴走したなら俺が止めてやる。もし方向性が違えば俺が正してやる。だからお前は協力して薬を作ることだけを考えれば良い。俺がお前を導いてやる。」
しのぶ「ブロリーさん・・!・・はい!ありがとうございます!」
しのぶはブロリーに支えてもらっていると実感し、先程までの不安の表情はなくなり、自信に満ちた顔つきに変わった。
炭治郎「あっ、師範、来たみたいですよ。」
するとそこにずっと門から外を見ていた炭治郎が声をかける。それにつられてブロリーもしのぶも門の先を見た。遠くから紺の着物を着た色白の女性と目付きが鋭い男性が向かってくるのがわかった。そして蝶屋敷の門の前までやってくると、まず炭治郎が二人に挨拶をした。
炭治郎「珠世さん!愈史朗さん!お久しぶりです。ご無沙汰してます。」
珠世「はい、お久しぶりですね。炭治郎さん。」ニコッ
愈史朗「フン。こんな形で再会するとは思わなかったな。」
ブロリー「久しいな。元気そうでいいなぁ。」
珠世「!・・ブロリーさん!」ギュウウ
ブロリー「へぁっ!?」
しのぶ・愈史朗「「!!?」」
なんと珠世は、炭治郎の挨拶の後にブロリーに気づいていきなり満面の笑みを浮かべて抱きついたのだ。当然そんなことをされると思ってなかったブロリーは驚いて固まった。そしてブロリーと珠世をそれぞれ心から思っているしのぶと愈史朗は、一瞬何が起こったのか理解できずに頭が真っ白になって固まったが、やがて状況を理解すると怒りでドス黒いオーラを放った。
愈史朗「サイヤ人、何をしている?珠世様から離れろ・・!」ゴゴゴゴゴ
しのぶ「ブロリーさんに何してる?鬼、今すぐ離れないと毒を打ち込むわ・・!」ゴゴゴゴゴ
愈史朗がものすごい殺気を放ち、しのぶに至っては日輪刀を構える始末である。これはまずいと思ったのか炭治郎がしのぶを止めようとする。
炭治郎「しのぶさん、駄目です!珠世さんと愈史朗さんに手を出しては行けません!日輪刀をしまってください!」
しのぶ「・・炭治郎君、邪魔をしないでください。少しでも鬼を信用しようと思った私が愚かでした。それにこの鬼はよほどの自殺志願者か愚か者と見ました。」
愈史朗「貴様・・珠世様を侮辱する気か?珠世様に到底及ばない醜女の分際で。」
しのぶ「・・いいでしょう。あの雌鬼の前に貴男から倒してあげましょう。」
愈史朗としのぶの殺気同士がぶつかり合い、お互いに目線で火花を散らす。どちらかが少しでも動けばすぐさま果たし合いになりそうな雰囲気に炭治郎が二人の間に割って入った。
炭治郎「しのぶさん!愈史朗さんも落ち着いてください!こんなことをしても何も解決しませんよ!」
しのぶと愈史朗の間に入ったことで二人の殺気が同時に炭治郎へと向いた。炭治郎は般若に囲まれてるような感覚に恐怖を覚えながらも、震えそうになる体を必死に抑えて二人を止める。
炭治郎(怖い・・でも止めないと!)「しのぶさん!お館様の期待を自分で裏切るつもりなんですか!?」
しのぶ「!」
炭治郎「愈史朗さんもこんなことをして珠世さんの信頼を失くす気ですか!?」
愈史朗「!」
炭治郎の叫びが届いたのか、二人から殺気が無くなっていく。そして静寂を破ったのはしのぶだった。
しのぶ「・・そうですね。熱くなりすぎたみたいです。少し頭を冷やします。・・ごめんなさいね。えっと愈史朗さんでしたっけ?」
愈史朗「はぁ・・俺も頭に血が昇りすぎてたようだ。悪かったな鬼狩りの柱。」
二人は口では謝罪しているもののそれは心が全くこもっていないものだとはっきりとわかった。炭治郎はそれを指摘しようかとも思ったが、鬼を憎むしのぶと珠世以外の全てと関わることを嫌う愈史朗、すぐさま再燃することが目に見えたためやめることにした。そして炭治郎は切り替えて珠世とブロリーに視線を向けた。
炭治郎「珠世さん、師範に何してるんですか?師範が物凄く困惑した匂いがしてます。一度離れてください。」
珠世「あっ!?そっそうですね!///」
炭治郎の指摘に我に返った珠世は慌ててブロリーから離れると、顔を真っ赤に染めて恥ずかしがった。
珠世「すっすみません///私ったら///彼の血から得た研究成果で舞い上がってしまって///ついつい抱きついてしまって///・・ごめんなさいブロリーさん///驚かせてしまって・・///」
ブロリー「・・少し驚いたが、それくらいの事では俺は怒らん。気にしなくていい。」
珠世がブロリーに慌てて謝罪していると、スタスタとやってきたしのぶが怒りを必死に抑えるために笑顔の仮面を張りつけながら挨拶する。
しのぶ「・・初めまして珠世さん。私は鬼殺隊蟲柱の胡蝶しのぶです。この度貴女と薬の共同開発をするようお館様の指示により、協力させていただく者です。よろしくお願いします。」ペコッ
珠世「初めまして。私は珠世といいます。今回の協力を承りました医療に精通する鬼です。よろしくお願いします。」ペコッ
愈史朗「・・愈史朗だ。俺は本来この事には反対だったのだが、珠世様の決意のもと来てやったのだ。少しは感謝しろよお前ら。」
珠世「愈史朗!よしなさい!」
しのぶ「・・・・」ゴゴゴゴゴ
ブロリー「しのぶ、言われたことをいちいち気にしなくていいぞ。ああは言ってるが根はいいやつだ。気楽に構えたらいい。」
しのぶ「わかりました。確かにそうですね。気にしてたら疲れてしまいます。ブロリーさん、ありがとうございます。」
しのぶは珠世以上に自分を気遣ってくれていることに気づいて、彼女の怒りは何処かへと飛んでしまい、今は上機嫌になっていた。
しのぶ「では珠世さん。蝶屋敷を案内します。ついてきてください。」
珠世「はい、よろしくお願いします。」ペコッ
しのぶ、ブロリー、珠世、愈史朗、そして炭治郎の順で屋敷の中を入っていく。ブロリーと炭治郎が二人を挟むようにして移動しているのは護衛の役割があるからである。途中、アオイやカナヲ、なほ、すみ、きよの全員に会ったがその都度しのぶが説明をして禰豆子と同様に安全な鬼と理解させていった。そして沢山の試験管や資料が置いてある部屋に到着した。
しのぶ「こちらが今回貴女と共同作業をするための部屋になります。医療に精通していると聞いたので大丈夫だと思いますが、いじる際は気をつけてくださいね。」
珠世「わかりました。何から何までありがとうございます。」
珠世は部屋のものの使用許可を出してくれたしのぶに感謝して再度お礼を言った。そして早速薬の開発に取りかかったもののなかなか成果が出ずに苦しんでいた。そんな中、珠世がしのぶに声をかけた。
珠世「・・しのぶさん、少し気分転換をしましょう。」
しのぶ「気分転換・・ですか?」
珠世「はい、行き詰まったところを焦っても、何も変わりません。少し落ち着いてからまた再開しましょう。」
しのぶ「・・確かに一理ありますね。わかりました。気分転換でもしましょう。アオイ、この方達を客室まで案内してあげてください。ブロリーさんと炭治郎君もこちらへ。珠世さん、愈史朗さん、貴女方もどうぞ。」
アオイ「かしこまりました。こちらです。」
アオイはブロリー、珠世、愈史朗、炭治郎、しのぶの五人を客室まで案内すると、慣れた手付きで五人分の粗茶を用意した。
アオイ「粗茶ですが。」
珠世「ありがとうございます。」
珠世は出してもらった緑茶を躊躇無く飲んだ。それを見たしのぶは驚いて声をかけた。
しのぶ「!珠世さん、お茶飲めるんですか?」
珠世「はい、飲めます。そういえば話していませんでしたね。私は鬼舞辻の呪いを外した後に体を随分弄って少量の人の血のみで生きていけるようにしました。そのときに人が飲む飲み物なら飲めるようになったのです。」
ブロリー「フハハハ!茶を飲めるように変えるとはな、流石珠世と褒めてやりたいところだぁ!」
珠世「!ありがとうございますブロリーさん。///」ニコッ
愈史朗「!」(照れている珠世様は滅多に見られないぞ!ブロリー!礼を言うぞ!)
ブロリーに褒められた珠世は心底嬉しそうに微笑み、顔を朱らめて礼を言った。それを見た愈史朗はいいものを見たような表情をして心の中でブロリーに礼を言った。
しのぶ(珠世さん・・ブロリーさんと話しているとき、凄く微笑んでいる・・ブロリーさんとの関係はなんなの?まさか・・恋人・・?いいえ、ブロリーさんに限ってそれはないはず・・けれどもしかしたら・・!)
しのぶはブロリーと珠世が談笑しているのを見て面白いはずもなく、ずっと二人の関係性について考えていた。そして少し時間が経ってしのぶは決意した。
しのぶ(本人に聞いてみましょう。それが一番手っ取り早い。それに確信を持てる答えを得られる。そうとわかれば早速行動よ。)「皆さん、少し珠世さんと愈史朗さんでお話がしたいので少し席を外してもらってよろしいですか?」
ブロリー「一人で大丈夫か?」
しのぶ「大丈夫です!少し聞きたいことがあるだけなので。」ニコッ
ブロリー「・・わかった。いくぞ炭治郎。」
炭治郎「師範、ですが・・!」
ブロリー「しのぶが大丈夫だと言ってるなら大丈夫だろう。しのぶは柱だから相応の実力もある。問題はない。それとも炭治郎はしのぶが信じれないとでも言うのか?」
炭治郎「!・・いいえ、俺はしのぶさんを信じてます。禰豆子のことも受け入れてくれましたし。」
ブロリー「フハハハ!よく言った炭治郎!いくぞ!」
炭治郎「はい!師範!」
ブロリーと炭治郎が部屋から出ていくのを見届けたしのぶは心の中でブロリーに感謝しながら二人に向き合った。
しのぶ(ブロリーさん、ありがとうございます。)
愈史朗「なんだ貴様。俺と珠世様だけここに残したのはどういう了見だ?俺達を鬼だからという理由で殺すつもりか?まともに上弦を倒せない分際で!」
珠世「愈史朗!よしなさい!」
愈史朗「珠世様!しかし・・!」
珠世「しのぶさん、私たちを呼び止めた理由は別の理由でしょう?何か聞きたいことがあるのではないですか?答えられる範囲ならお答えさせていただきますので、何なりとお聞きください。」
しのぶ「わかりました。では単刀直入にお聞きいたします。ブロリーさんとはどのような関係なのですか?」
珠世「・・・・はい?」
珠世は想像とは全然違う質問に、その意味が理解できずに聞き返した。それでもしのぶは真剣な表情で続けた。
珠世「えっと・・どういうことでしょうか?」
しのぶ「お館様からお聞きしたのですが、貴方と炭治郎君、そしてブロリーさんとは随分仲良くさせてもらっているみたいですが少々気になりまして、ですのでお答えください。ブロリーさんとはどのような関係なのですか?」
珠世「・・素敵な方で、鬼舞辻を倒すための良き理解者であり協力者ですね。」
しのぶ「それだけですか?」
珠世「それだけとは?」
しのぶ「許嫁や恋人などの関係ではないのですか?」
珠世「・・えっ///ええっ!?///」
愈史朗「なんだと貴様!ふざけるな!珠世様があのサイヤ人にそんな思いを抱いているわけ無いだろーー!!!」
しのぶのストレートな発言に珠世は顔を真っ赤にして狼狽え、愈史朗もしのぶの言葉を信じたくないあまり声をあげて抗議した。
珠世「愈史朗!止めなさい!・・しのぶさん、私とブロリーさんは恋人でもなんでもありません。ただ本当に協力しているだけです。」
珠世はブロリーとの恋人関係を否定した。それを聞いたしのぶは笑顔ながら青筋を立てて殺気を放った。
しのぶ「じゃあ何故貴女はさっきブロリーさんに抱きついたんですか?それに貴女も心底嬉しそうな顔をしていましたよ。ただの協力者ならあんなことをしなくても良かったのでは?」ゴゴゴゴゴ
珠世「・・確かにあれは自分でもやりすぎたと思って反省しています・・彼の力があれば鬼舞辻を倒せると確信してつい舞い上がってしまいました・・ご気分を損ねたのなら謝ります。すみませんでした。」ペコッ
珠世はさっきブロリーに抱きついたことは流石に反省しており、しのぶに心からの謝罪をした。それを聞いたしのぶは引っ掛かっていたものが取れたようなスッキリとした表情をした。そして珠世に告げた。
しのぶ「私もブロリーさんの恋人ではありませんが、いつか必ず彼の心を鷲掴みにします!」
珠世「!・・ふふっ頑張ってくださいね。」
しのぶの宣言を聞いた珠世は、本気なのを感じとって笑顔で応援しようと決めたのだった。そこからはトントン拍子で薬の開発が進み、護衛の役目を終えたブロリーは屋敷に戻り、炭治郎は天元の元に稽古をしに行くのだった。
なかなか原作が進みません笑。恐らく次回は炭治郎視点になるかと思います。自分も久々に投稿できたことを嬉しく思います。それではまた次回。