炭治郎が遂に最後の柱、ブロリーによる実戦稽古が始まり、先に対峙していたカナヲと合流し、共に協力しながら『伝説のスーパーサイヤ人』形態のブロリーと戦っていた。
ガガガガガガ!ガキン!
炭治郎「水の呼吸!弐の型!水車!」
カナヲ「花の呼吸、肆の型、紅花衣。」
ブロリー「ぬうう!」ガン ガン
炭治郎とカナヲは体を回転させて斬りつける技を使ってブロリーの頚元を狙うが両腕についた籠手で受け止められる。技が通用しなかったと解釈した二人はブロリーから即座に距離を取り、再び別の技を出した。
カナヲ「花の呼吸、伍の型、徒の芍薬。」
炭治郎「ヒノカミ神楽!輝輝恩光!」
ブロリー「フン!こんなもの!」ガシッ! ガッ!
次は間合いを詰めて目に見えない速さで斬りつけようとするが、今度はブロリーに二本の木刀を捕まれる。そして
ブロリー「デヤァッ!!」ドゴォ!ブオン!
ブロリーは片方の木刀を引き寄せて炭治郎に膝蹴りを入れ、その勢いで体の向きを反対にするとカナヲにラリアットを決めた。
炭治郎「がぁぁぁぁあああ!!?」
カナヲ「きゃぁぁぁあああ!!?」
受け身を取ることも出来なかった二人はそのまま地面を転がった。あくまでこれは稽古である為、ブロリーによる直接攻撃で致命傷を負うことは無いものの、何度も地面や壁に叩きつけられていては体が傷ついて悲鳴を上げる。今の炭治郎とカナヲは立っているのもやっとであるくらいの満身創痍になっていた。
ブロリー「フフフ!どうした、もう終わりか?この程度で上弦のムシケラを倒せるとでも思っているのか?」
カナヲ「はぁ・・はぁ・・やっぱり強い・・!」
炭治郎「はぁ・・はぁ・・師範は流石だ・・!」
ブロリー(だが、お前達もここまでついてくるとはな、流石だと誉めてやりたい!)
カナヲと炭治郎は柱の中でも飛び抜けて強いブロリーの実力に驚愕していた。一方のブロリーも自身の力の100分の1も出していないとはいえ、他の隊員は少しカウンターしただけで気絶したのに対してここまでついてくる炭治郎とカナヲに感心していた。
カナヲ「破壊柱様・・少しの手加減をお願いします・・」
ブロリー「手加減ってなんだ?」
炭治郎「知らないんですか!?」
ブロリー「俺はまだ100分の1の力も出してないが更にどうやって加減しろというんだぁ?」
カナヲ「う・・嘘・・これで・・100分の1・・!?」
炭治郎(やっぱり師範は手加減してくれていたんだ・・!俺は師範が全然力を出してないのにそれにすら着いていけないのか!)
カナヲは既にブロリーがかなり力を抑えて戦っていたことを知って絶望し、炭治郎は自分を叱責していた。そんな後ろ向きな思考になっている二人にブロリーは問いかけた。
ブロリー「炭治郎にカナヲ、お前達の上弦のムシケラや鬼舞辻を倒したいという思いはその程度か?」
炭治郎・カナヲ「「!!」」
ブロリーの問いかけに二人は鬼殺隊に入った原点を振り返った。カナヲは自分を引き取ってくれたカナエを殺し、蝶屋敷の住人達を苦しめた鬼を許せずに自分の意思で鬼殺隊に入ったことを。炭治郎は鬼になった禰豆子を人間に戻すため、そして大切な家族の仇を取るために鬼殺隊に入ったことを思い出したのだ。
カナヲ「・・私は・・師範やアオイ達を悲しませたり苦しめる鬼が許せない・・!カナエ姉さんの仇は上弦の弐・・!絶対にしのぶ姉さんと共に倒す・・!その思いはこんなものじゃない・・!」すくっ
炭治郎「俺は、禰豆子を絶対に人間に戻すんだ・・!周りの人から何て言われようと絶対に諦めない・・!俺なら出来る!」すくっ
二人はさっきとはうって変わってやる気と覚悟に満ち溢れている表情になった。満身創痍になりながらもそれが気にならないほどの強さをブロリーは二人から感じ取った。
炭治郎「師範!俺はまだやれます!」
カナヲ「破壊柱様!続きをお願いします!」
ブロリー「フハハハハ!その意気だ!」
二人とブロリーは再びぶつかり合おうとしたが、それは突如聞こえてきた声に遮られた。
伊之助「フハハハ!!半々羽織としのぶんとこの稽古を終わらせて今到着したぜェ!!」
炭治郎「伊之助!」
それは義勇としのぶの所での稽古を終えた伊之助である。行冥の所で炭治郎に先越された伊之助は悔しさで闘争心を奮い立たせてすぐに合格を貰ったのだ。そして伊之助も炭治郎と同じように五感の一つが優れていて全集中・常中をも習得している。その為、義勇としのぶの稽古を短時間で合格したのだ。
伊之助「権八朗とハナヲもいたのか!ここではどんなことをやるんだ!俺様に教えろ!」
カナヲ(ハナヲじゃなくてカナヲなんだけど・・)
炭治郎「ここでは師範との実戦稽古をするんだ!師範の頚に木刀を当てれば合格みたいなんだ!」
伊之助「グワハハハハ!!なるほどな簡単だぜ!セロリーは一人なのに対して俺達は三人だ!合格してくれって言ってるようなもんだぜェ!」
ブロリー「伊之助も戦うのか?」
伊之助「おうよ!ブロリー!今日こそ決着をつけてやる!今度こそお前を倒す!」
ブロリー「フフフ!そう来なくっちゃ面白くない。」
伊之助の大胆な宣戦布告にブロリーも不敵な笑みを浮かべて答えた。そして伊之助の隣に炭治郎とカナヲが並んだ。
炭治郎「伊之助!俺も一緒に師範と戦うぞ!」
カナヲ「私も行く・・!」
伊之助「おう!」
ブロリー「フハハハハ!そうだ!かかってくるがいい!」
炭治郎達三人は同時に動きだし、今度はブロリーを取り囲むように移動すると斬りかかった。
炭治郎「水の呼吸!壱の型!水面斬り!」
カナヲ「花の呼吸、陸の型、渦桃。」
伊之助「獣の呼吸!捌の牙!爆裂猛進!」
ブロリー「フン!無駄だ!」ガキッ ガン ガン
しかし、一人増えたことで自身の力の出力を少しだけ上げたブロリーは最初に斬りかかって来た炭治郎の攻撃を止めるとそのまま受け流し、カナヲと伊之助の攻撃を両腕で止めた。
カナヲ「!」グイッ
伊之助「!オラァ!」グルン
そのままブロリーはカナヲと伊之助の木刀を掴んで再び投げ飛ばそうと試みる。だが、カナヲは"同じ手は喰らわない"と言わんばかりに木刀でブロリーの腕を突き放すと即座に距離を取った。伊之助にも蹴りを入れようとするが、いち早くそれを察知した伊之助は体を回転させてブロリーと距離を取った。
ブロリー(ほう、今度は喰らわなかったか。学んでいるようだな。面白い!)
カナヲ(くっ・・今度は違う方法で攻めたけど、やっぱり通用しなかった。破壊柱様の稽古はやっぱり一筋縄では行かないわ・・)
伊之助(がぁぁぁぁ!!やっぱ強ええええ!!違うやり方で当てようとしたのに何で効かねぇんだ!腹立つぜ!)
ブロリー(ん?炭治郎はどこへ行った?・・!)「はぁ!」ゴォ
ブロリーがカナヲと伊之助と戦っている途中で炭治郎の姿がないことに気がつく。その時、自身の後ろから何かが向かってくる気配を感じて素手での防御は間に合わないと判断し、バリアを張った。その正体は炭治郎である。ブロリーがカナヲと伊之助に集中している間に気付かれないように背後に回り込んでいたのだ。バリアを張ったことで炭治郎の攻撃は防がれた。それに気づいて素早く距離を取った炭治郎は悔しそうな顔をして、ブロリーは素手だけでなく力を使わせたことに感心した。
ブロリー「フハハハハ!!炭治郎!今のは危なかったぞ!誉めてやろう!」
炭治郎「!やっぱり師範は凄い。完全に気配を消したつもりだったのに・・」
ブロリー「こんな方法を思いつくとは流石俺の継子だ。だが、炭治郎があと少しで俺を倒せそうだからって、何度も同じ手を喰らうと思うなよ!」バッ ドゴゴゴゴゴォ
「「「「「ぎゃぁぁぁぁ!」」」」」
ブロリーが炭治郎について誉めていると、地面に倒れていた隊士数人が立ち上がった。炭治郎の取った方法を見て、今の背中ががら空きのブロリーを打ち取れると考えたのだ。しかし、ブロリーは既に後ろの隊士達が起き上がったことも自分を狙っていることも見抜いていたのだ。なので振り向き際に拳を振り抜いて隊士達を再び地面へと叩きつけた。
ブロリー「フヒヒヒヒ!この俺を甘く見たな!」
伊之助「どこ見てんだ!お前の相手は俺達だ!」
炭治郎「行きますよ!師範!」
カナヲ「今度こそは合格を貰います。破壊柱様!」
ブロリー「いいだろう!俺を失望させるなよ!」
炭治郎達はブロリーに向かっていったものの、結局この日は誰もブロリーの頚に木刀を当てることが出来ずに全員失敗に終わったのだった。
翌日。夜の間に玄弥と善逸も合流し、遂に新人五感組が揃ったのだった。
炭治郎「よし!今日も師範と実戦稽古だ!」
カナヲ「うん・・!今日こそは・・!」
伊之助「よっしゃああ!やってやるぜェ!」
玄弥「破壊柱さんは本来俺らの同期なんだ!絶対にここで追い付く!」
善逸「ブロリーさん。行きます!」
ブロリー「玄弥と善逸も加わったのか。善逸は少し変わったか?」
善逸「いいえ、俺は俺のやるべき事をはっきりさせただけです。そのためにもブロリーさんの稽古に参加します。」
ブロリー「よくわからないがお前が戦う意思を見せていることはわかった。気に入ったぞ。さぁ来い!」
ブロリーには善逸が何故ここまで雰囲気が変わったのかを気づくはずもないが、以前とは違って善逸がやる気に満ち溢れていることに喜ぶのだった。更に二人増えたが、ブロリーは『伝説のスーパーサイヤ人』である。力の出力を少し上げただけで簡単に五人を手も足も出ない状態にまで持っていることが出来るのだ。
ブロリー「ぐぎぃぃぃぃ!」ドゴォ ドカッ
炭治郎「ぐぁぁぁぁ!?」
カナヲ「ぐ・・うぅ・・」
ブロリー「デヤァッ!」ドカッ バコッ
善逸「うわぁぁぁ!?」
伊之助「がぁぁぁぁ!」
ブロリー「フン!」ブオン
玄弥「あぁぁぁぁ!」
ブロリーは炭治郎とカナヲに裏拳と蹴りを捩じ込み、善逸と伊之助の片方を蹴り上げて片方を地面に叩きつけ、玄弥にラリアットを決めた。いくら力を抑えているとはいえ、ブロリーの攻撃をまともに喰らっている五人は既に険しい顔をしていて肩で息をしていた。
ブロリー「その程度か?本当の戦いでムシケラ共が今の俺のように待ってくれてると思うのか?お前達はこの程度で倒れる程雑魚ではない筈だ。」
炭治郎(!そうだ!本当の鬼が待ってくれる筈もない!本物の鬼と対峙しているつもりでやらないと!)「師範!まだ動けます!」
カナヲ(!破壊柱様のお陰でしのぶ姉さんの捨て身の策を止めることが出来た。でもその分、生きたまま勝つというのは更に難易度が上がった。全員で生きる為にも私がやらなきゃ!)「私も終わってません・・!」
善逸(!俺はあいつを・・!獪岳を殺すためにブロリーさんの所にまで稽古に来たんだ!絶対に諦めない!)「俺は俺のやるべき事をやるために動く!」
伊之助(!ここで絶対にアイツに追い付くと決めたんだ!この程度でへこたれてる場合じゃねぇ!)「全然余裕だゴラァ!」
玄弥(!兄貴に認めて貰うためにも絶対に合格する!そしていつか兄貴に謝るんだ!)「まだまだ行ける!」
ブロリー「そうだ!もっと気を高まらせろ!フハハハハ!」
ブロリーに渇を入れられた五人は再び闘志を燃やして稽古に挑んだ、それは日が暮れるまで続くのだった。そして日が沈み、辺りが少し暗くなり始めた頃。
ブロリー「・・!」
ブロリーは何かの気を感じて思わず動きを止めた。炭治郎達はそれを見逃さずに木刀を振り抜いた。
バシイイイッ
ブロリー「ぬぅっ・・!」
炭治郎・カナヲ「「あっ!!」」
善逸・伊之助・玄弥「「「!!」」」
五本の木刀は見事にブロリーの頚を捉えていた。それを見た炭治郎達は目を輝かせ、ブロリーは悔しさもあったがそれ以上に五人が合格した嬉しさも混じったような表情になって告げた。
ブロリー「・・合格だ。よくやったと誉めてやりたい!」
伊之助「よっしゃああ!!勝ったぜえええ!!」
玄弥「よし!!これで更にまた強くなれた!!」
善逸「ひぃぃぃ!もう疲れたぁぁぁぁ!」
伊之助・玄弥・善逸の三人は合格した余韻に浸っていたが、長い間ブロリーと一緒にいる炭治郎と視力がずば抜けて良いカナヲは、ブロリーが動きを止めた事に疑問を感じていた。
炭治郎(最後の最後、師範の動きが止まったように見えた・・何かあったのかな?)
カナヲ(破壊柱様・・何で最後の最後に止まったのかな?何かに気づいた表情をしていた・・)
ブロリー「・・・」ポワワワワ
ブロリーは満身創痍になっている五人に自身の気を分け与えると、傷ついた五人の体はたちまち治った。
カナヲ(!何これ!すごい!)
伊之助「流石俺様の好敵手だぜ!」
玄弥(刀鍛冶の里の時に見せたあの力は、傷を癒すことも出来るのか・・!)
そして全員が元気になったのを確認したブロリーは、突如空中に浮いてそのままどこかへ飛んで行こうとした。
炭治郎「!師範!どこに行くんですか?」
ブロリー「俺は少し用が出来た。俺の訓練はこれで終わりだ。」
ビュオオオオ
ブロリーはそれだけ言い残すとものすごい速さでどこかへ飛んでいってしまった。その方向には、なんと鬼殺隊の本部である産屋敷邸がある方だったのだ。
―――
場所は変わって産屋敷邸。完全に日が沈み、月が綺麗に輝く夜。産屋敷耀哉は妻のあまねと並んで縁側に立っていた。そして一人の訪問者と向かい合っていたのだ。
耀哉「・・やあ、来たのかい。・・初めましてだね、鬼舞辻無惨。」
無惨「・・呪いが解けているのか。産屋敷。」
その相手は鬼舞辻無惨であった。鳴女の血鬼術で産屋敷邸の場所を突き止めた無惨は、自らの足を運んで息の根を止めに来たのだ。そして耀哉が元気そうに立っているのを見て無惨は不快感を隠そうともせずに顔をしかめていた。
あまね(この男性が・・鬼舞辻無惨・・!)
耀哉「ついに私の元へ来た・・今、目の前に・・鬼舞辻無惨・・我が一族が、鬼殺隊が、千年追い続けた鬼・・」
耀哉は顔の表情では優しく微笑んでいるように見えるが、目が笑っていない。その内心では激しい憎悪と嫌悪感に包まれていた。
耀哉「見た目だと、二十代半ばから後半に見えるね。でも鬼特有の紅梅色の瞳と瞳孔が縦長だね。・・君は必ず来ると思っていた。君は私に、産屋敷一族に酷く腹を立てていただろうから・・私だけは君が、君自身が殺しに来ると思っていた。」
無惨「私は心底興醒めしたよ、産屋敷。身の程も弁えず千年にも渡り、私の邪魔ばかりしてきた一族の長がこのザマとは。私の呪い苦からは解放されたかもしれないが、それでもお前の体は病弱で醜い。そこら中にいる人間の男の方がまだマシだ。」
耀哉「そうだろうね・・私は、半年も前には・・医者から数日で死ぬと言われていた。それでも私は以前より元気になって生きている。医者は腰を抜かしていた。元気になれたのはブロリーのお陰だ。それと君を倒したいという一心も一緒にね。無惨。」
無惨「・・あの男か。その儚い夢も今宵潰えたな。お前はこれから私が殺す。」
耀哉「・・君は知らないかもしれないが、君と私は同じ血筋なんだよ。君が生まれたのは、千年以上も前の事だろうから私と君の血はもう近くないけれど・・」
無惨「何の感情も湧かないな。お前は何が言いたいのだ?」
無惨は心底わからないといった顔をする。しかし、それでも耀哉はゆっくりと続ける。
耀哉「君のような怪物を一族から出してしまったせいで、私の一族は呪われていた。生まれてくる子供達は病弱ですぐに死んでしまう・・一族がいよいよ絶えかけたとき、神主から助言を受けた。"同じ血筋から鬼が出ている。その者を倒すために心血を注ぎなさい。そうすれば一族は絶えない"と。代々神職の一族から妻を貰い、子供も死にづらくなったがそれでも我が一族の誰も、三十年と生きられない・・」
耀哉は自分の祖先達の事を思い出して悲しそうな顔をするが、そんなことは関係ないとばかりに無惨は告げた。
無惨「迷言もここに極まれりだな、反吐が出る。あの男がせっかく貴様を呪いから解放したようだが、その病は頭には回ったままなのか?そんな事柄には何の因果関係もなし。なぜなら、私には何の天罰も下っていない。何百何千という人間を殺しても私は許されている。この千年、神も仏も見たことがない。」
耀哉「・・君はそのようにものを考えるんだね。だが、私には私の考え方がある。無惨、君の夢は何だい?この千年間、君は一体どんな夢を見てるいるのかな?」
無惨「・・・・」(・・奇妙な感覚だ。あれ程目障りだった鬼殺隊の元凶を目の前にして憎しみが湧かない。むしろ、この奇妙な懐かしさ、安堵感・・気色が悪い。)
無惨が庭を見ると、耀哉の娘であるにちかとひなきが歌を歌いながら紙風船で遊んでいた。今の産屋敷邸にはこの四人しかおらず、その事を気配で読み取っている無惨は気味悪く感じていた。
無惨(そしてこの屋敷には四人しか人間がいない。産屋敷と妻、子供二人だけ、護衛も何もない・・)
耀哉「当てようか?無惨。君の心が私にはわかるよ。君は永遠を夢見ている。不滅を夢見ている。」
無惨「!・・その通りだ。そしてそれは間もなく叶う。禰豆子を手に入れさえすれば。」
耀哉「君の夢は叶わないよ、無惨。」
無惨「禰豆子の隠し場所に随分と自信があるようだな。しかし、お前と違い私にはたっぷりと時間がある。」
耀哉「君は思い違いをしている。」
無惨「なんだと?」
耀哉「私は永遠が何か、知っている。永遠というのは人の想いだ。人の想いこそが永遠であり、不滅なんだよ。」
無惨「下らぬ・・お前の話には辟易する。」
耀哉の言葉に、無惨は強い不快感を露にした。しかし、耀哉は構わずに続けた。
耀哉「この千年間、鬼殺隊は無くならなかった。可哀想な子供達は大勢死んだが、決してなくならなかった。その事実は今君が下らないと言った。人の想いが不滅であることを証明している。大切な人の命を理不尽に奪った者を許さないという想いは永遠だ。君は誰にも許されていない。この千年間一度も。そして君はね、無惨。何度も何度も虎の尾を踏み、龍の逆鱗に触れている。その結果、ブロリーという破壊の悪魔を敵に回した。本来ならば一生眠ってた筈の彼らを君は起こした。彼らはずっと君を睨んでるよ。絶対に逃がすまいと。私を殺した所で鬼殺隊は痛くも痒くもない。私自身はそれほど重要じゃないんだよ。この人の想いと繋がりが君には理解できないだろうね無惨。なぜなら君達は、"君が死ねば全ての鬼が滅ぶんだろう?"だからこそブロリーを最大限に警戒している。」
無惨「黙れ。」ゴゴゴゴゴ
耀哉の推測は当たっていた。無惨が死ねば全ての鬼が滅び、ブロリーが無惨よりも強いことを確信していた。図星を突かれた無惨は殺気を露にした。
耀哉「空気が揺らいだね。図星だったのかな?」
無惨「黙れ!」ゴゴゴゴゴ
耀哉「うん、もういいよ。ずっと君に言いたかったことは言えた。最期にひとつだけいいかい?私自身はそれほど重要でないと言ったが、私の死が無意味は訳ではない。私は幸運なことに鬼殺隊、特に柱の子たちから慕って貰っている。つまり、私が死ねば今まで以上に鬼殺隊の士気があがる。」
無惨は一瞬で産屋敷との間合いを詰めると、鬼特有の鋭い爪に変化させた手を耀哉の頚元にかけようとした。
無惨「話は終わりだな?」
耀哉「ああ、こんなに話を聞いてくれるとは思わなかったな。ありがとう、無惨。」
耀哉は、産屋敷邸全体に仕掛けた爆薬を爆発させようとしていたのだった。
―――
ブロリーは、産屋敷邸の方角から妙な気配を感じて自分の屋敷を飛び出し、今は産屋敷邸の上空に佇んでいた。
ブロリー(俺が感じた変な気はここからだ。ここは耀哉の屋敷だな。・・んん?耀哉とあまね、それと庭で遊んでいる娘二人の他に誰かいるな。)
縁側に立っている耀哉とあまね、そして庭で遊ぶにちかとひなきの他に、無惨がいるのを見つけたのだ。それに対してブロリーは違和感を感じていた。
ブロリー(鬼舞辻無惨か、何故ここにいる?いや、そんなことよりもムシケラが屋敷にいるというのに義勇もしのぶも杏寿郎も天元もいないな。どういうことだ?耀哉ははっきり言って体が弱い。目に字が書いてあるムシケラはおろか、ただの雑魚にも勝てないだろう。珠世と愈史郎を呼んだときも俺と炭治郎が護衛とやらになった位だ。・・そう言えば前にしのぶが言ってたな。耀哉の屋敷は俺以外は知らないと。それを考えるとこれは当然の事なのか?だが、それにしても誰一人護衛とやらをつけないのはおかしい。)
ブロリーが違和感を拭うために様々なことを考えているうちに、無惨が耀哉との距離を一瞬で詰めたのを見た。
ブロリー(ん?無惨が耀哉との距離を詰めたな。あいつ、耀哉を殺すつもりだな?今からでも間に合うが、俺が感じたのは無惨の気配ではない。一体なんなんだぁ?・・!!あいつ、耀哉!)「チィッ!!」バビュンッ!
ブロリーは自分の屋敷にいたときに感じた気配と無惨の気配は、別物だと理解していた。ブロリーが感じてた気配は、産屋敷邸全体から出ていたのだ。そしてそれはブロリー自身にとても身に覚えがあるものだった。かつて自分が南の銀河を破壊し尽くしているとき、気弾を星に当てる度にそこが爆発を起こすのだ。それを何度も繰り返してきたブロリーは、産屋敷邸全体に仕掛けられた爆薬がもう爆発するのを感じ取っていたのだ。それと同時に、その場を離れようともしない耀哉とあまね、にちか、ひなきの四人が、無惨を爆発に巻き込んでもろとも死のうと考えていたことを察したのだ。それを止めるためにブロリーは急降下して産屋敷邸に飛び込んだ。
ブロリー「デヤァッ!!」ガバッ
にちか・ひなき「「!?」」
ドゴォッ!!
無惨「ぐぅ!?・・!ブロリー・・!」
耀哉「えっ・・?ブロリー?」
あまね「!?」
ブロリーはひなきとにちかを両脇に抱えると、縁側に上がっていた無惨を庭へと蹴り飛ばし、耀哉とあまねに覆い被さるように上がり込んだ。そして
ドオオオオン!!!
産屋敷邸全体に爆薬による大きな爆発音が響き渡ったのだった。
―――
時は少し遡り、ブロリーがまだ産屋敷邸の上空にいたとき、他の柱達は冷や汗をかきながら全速力で産屋敷邸へと向かっていた。彼らは鎹鴉からの報告を受けて鬼が襲撃したという情報を得たのだ。
鎹鴉「緊急招集ーーッ!!緊急招集ーーッ!!産屋敷邸襲撃ッ・・産屋敷邸襲撃ィ!!」
実弥(お館様・・!!)
小芭内(早く・・!!早く!!)
天元(お館様・・!どうか無事でいてくれ・・!!)
蜜璃(お館様!!)
無一郎(・・ッ!)
しのぶ(お館様・・!)
義勇(・・・!)
炭治郎(間に合えっ・・!!!)
柱達や炭治郎の思いは皆、耀哉の無事を祈って襲撃した鬼を殺すことだった。柱の中の誰よりも耀哉を慕っている実弥は、間に合うと自分に言い聞かせて、速度を落とすこと無く森を走り抜けていた。
実弥(お館様!お館様!見えた!!屋敷だ!!大丈夫!間に合う!間に合っ・・)
ドオオオオン!!!
しかし、実弥をはじめとした他の柱達が森を抜けて産屋敷邸全体が見えたときに、無情にも屋敷は大爆発を起こしたのだ。
実弥(!!!ッ)
無一郎(!!)
蜜璃「キャアッ!!?」
小芭内(ッ!!)
しのぶ(・・ッお館様・・!)
天元「ッ・・あ・・ああッ・・!!」
義勇(・・・・ッ)
炭治郎(爆薬・・!!大量の・・!!肉の焼けつく匂い!!)
柱達は間に合わなかったことと耀哉を助けられなかったことに絶望するが、その気持ちを押し殺して足を止めることはなかった。産屋敷邸が炎に包まれ、無惨も体の至るところが欠損していた。
無惨「ぐっ!産ッ屋敷ィィッ!!」
しかし、無惨は鬼の始祖である。その再生速度は他の鬼の比ではなく、もう既にほぼほぼ完治の状態にまでなろうとしていた。そして無惨はブロリーが耀哉と共に爆発に巻き込まれたのを確認したのだ。
無惨(何か仕掛けてくるとは思っていた、しかしこれ程とは。爆薬の中にも細かい撒菱のような物が入って殺傷力が上げられている、一秒でも私の再生を遅らせるために。つまりまだ何かある、産屋敷はこの後まだ何かするつもりだ。人の気配が集結しつつある。恐らくは柱。だがこれではない、もっと別の何か。自分自分を囮に使ったのだあの腹黒は。私への怒りと憎しみが蝮のように、真っ黒な腹の中で蜷局を巻いていた。あれだけの殺意をあの若さで見事に隠し抜いたのは驚嘆に値する。妻と子供は承知の上だったのか?)
無惨は耀哉の執念と常識を逸した行動に驚きと不快感を露にしたが、ブロリーも巻き込まれたことを確認して笑った。
無惨(だが、想定外の形とは言えあの男が、ブロリーがこの爆発に巻き込まれた!奴は私より強いとは言えど、決して不死身ではない。あの力は脅威だが、私の体をここまで欠損させた爆発に巻き込まれれば生きて帰ることはまずない。後は禰豆子を探して取り込むだけだ。産屋敷にしてはよくやったな。私の手間をわざわざ省いてくれたのだからな。)
ブロリーが死んだと確信をもった無惨は、上機嫌になりながらも周りへの警戒を怠ること無く見渡していた。そして無惨の回りにふよふよと浮かぶ肉の塊がいくつも現れた。
無惨(肉の種子、血鬼術!!)
ビシイ!
そして肉の塊は大きくて太い棘の大木のようになり、体中を貫通したことで無惨は身動きが取れなくなった。
無惨(固定された!誰の血鬼術だこれは?肉の中でも棘が細かく枝分かれして抜けない。いや、問題ない。大した量じゃない。吸収すれば良い。)
ズグン
無惨が肉の種子を吸収しようとしたとき、自身の腹部に重い衝撃を感じた。見てみると、珠世が拳を腹に突き入れていたのだ。
無惨「珠世!!なぜお前がここに・・」
珠世「この棘の血鬼術は貴方が浅草で鬼にした人のものですよ!」
無惨は珠世の服に沢山の札が着いているのを見つけた。それは愈史郎の目眩ましようの血鬼術であった。
無惨(目眩ましの血鬼術で近づいたな。・・目的は?何をした?何のためにこの女は・・)
珠世「吸収しましたね無惨、私の拳を。拳の中に何が入っていたと思いますか?鬼を人に戻す薬ですよ!どうですか?効いてきましたか?」
無惨「そんなものができるはずは・・!」
珠世「完成したのですよ!状況が随分変わった!私の力だけでは無理でしたが!」
無惨「・・お前も大概しつこい女だな珠世、逆恨みも甚だしい!お前の夫と子供を殺したのは誰だ?私か?違うだろう、他ならぬお前自身だ!お前が食い殺した!」
珠世「そんなことがわかっていれば、私は鬼になどならなかった!!病で死にたくないと言ったのは!!子供が大人になるのを見届けたかったからだ!!」
珠世は人間の時は不治の病で命は長くないと医者に言われたのだ。自身の息子の成長を見たかった珠世は、無惨の口車に乗ってしまったのだ。そして鬼になった珠世は、理性を失わせる飢餓状態に耐えられずに夫と息子を喰い殺してしまったのだ。その時のことを思い出しているのか、珠世は涙を流しながら無惨に怒鳴る。しかし、無惨は気にも止めずに楽しそうに続けた。
無惨「その後も大勢の人間を殺していたが、あれは私の見た幻か?楽しそうに人間を喰っていたように見えたがな!」
珠世「そうだ!自暴自棄になって大勢殺した!その罪を償うためにも、私はここでお前と死ぬ!!悲鳴嶼さんお願いします!!」
行冥「南無!阿弥陀仏!」ゴシャァ
珠世の叫び声と共に、行冥が棘のついた大きな鉄球を当てて無惨の顔面を破壊した。しかし、無惨の再生速度は他の鬼の比ではなく、瞬く間に顔が再生した。
行冥(・・やはり!!お館様の読み通り。無惨、この男は頚を斬っても死なない!!!更にこの肉体の再生速度、音からして今まで対峙した鬼の比ではない。お館様による爆破と協力者による弱体化があってもこれ程の余力を残した状態。夜明けまで、この化け物を日の差す場に拘束し続けなければならない。)
無惨「黒血枳棘。」
行冥「!岩の呼吸、参の型。岩躯の膚。」
無惨は行冥に自身の血鬼術である棘の鞭を使った。それに対して行冥は鉄球を自身の周りに振り回す技で相殺する。その時に、他の柱達もちょうど集結する。
実弥「テメェかァアア!!お館様にィイ!何しやがったァアーーー!!!」
行冥(柱達が集結!お館様の采配、見事・・!)
蜜璃「お館様ァ!!」
小芭内「お館様!」
続々と集まってきた柱達に行冥は情報を共有するべく叫んだ。
行冥「無惨だ!!鬼舞辻無惨だ!!奴は頚を斬っても死なない!!」
実弥(!!!!コイツがァ!!!)
蜜璃(あれが・・!!)
小芭内(あの男が!!)
天元(これが・・!!)
義勇(奴が・・!!)
しのぶ(鬼舞辻!?)
炭治郎「無惨!!」
無惨がいることを確認した柱達は、無惨の体を刻もうとそれぞれの型で日輪刀を構える。
無一郎「霞の呼吸、肆の型!」
しのぶ「蟲の呼吸、蝶の舞!」
小芭内「蛇の呼吸、壱の型!」
蜜璃「恋の呼吸、伍の型!」
義勇「水の呼吸、参の型!」
実弥「風の呼吸、漆の型!」
天元「音の呼吸、壱の型!」
炭治郎「ヒノカミ神楽、陽華突!」
無惨「黒血枳棘!」
しかし、無惨の血鬼術で全ての技が相殺された。そして無惨は言い放った。
無惨「これで私を追い詰めたつもりか!?産屋敷共々爆破されてブロリーが死んだ今、貴様らがこれから行くのは地獄だ!!」
その言葉に動揺したのは炭治郎としのぶだった。しのぶは顔を真っ青にして崩れ落ちそうになるのを必死に堪える。炭治郎は目に涙を貯めるも無惨に叫ぶ。
しのぶ「!!・・そ・・そんな・・」
炭治郎「ッ!・・例え師範が亡くなっても、お前の頚に刃を振るう!絶対に逃がさない!」
無惨「ブロリーさえ死ねば貴様らなど脅威ではない!ここで
「と思っていたのか!」
無惨の声を遮って突如響いた声、それは炭治郎やしのぶ、そして他の柱達にも馴染みがあるブロリーの声だった。無惨や柱達が声が聞こえた方に顔を向けると、黒煙が徐々に晴れていき、そこからはひなきとにちかを両脇に抱えて、バリアを張っている『伝説のスーパーサイヤ人』状態のブロリーがいた。そしてバリアの中には耀哉とあまねも傷一つ無い状態で守られていた。
ブロリー「この俺が屋敷の爆発くらいで死ぬと思っているのか?」
しのぶ「!ブロリーさん・・!良かった・・!」
炭治郎「!師範!無事だったんですね!良かったです!」
実弥(!お館様!無事だった!)
天元「ブロリー!ド派手によくやった!」
無一郎(ブロリーさん!すごい・・!)
無惨「!チィ!!どこまでもしぶとい忌々しい男が!鳴女!」
べべンベン!
無惨が鳴き女の名前を呼ぶと、柱と炭治郎、そして無惨の足元に血鬼術による襖が現れて開き、皆が重力にしたがって落ち始める。
無惨「目障りな鬼狩り共!!今宵皆殺しにしてやろう!!」
炭治郎「地獄に行くのはお前だ無惨!!絶対に逃がさない!必ず倒す!!」
無惨「やってみろ!できるものなら!竈門炭治郎!!」
ブロリー「炭治郎!しのぶ!」ダッ
無惨「ブロリー!貴様は来るな!!」
べべンベン
ブロリーは炭治郎達が別の場所に行くと分かり、すぐさま自分も飛び込もうとしたが、無惨に睨まれると同時に襖が閉じて入ることができなかった。そして集結した柱ではブロリーのみ、産屋敷邸へと取り残されたのだった。
最後にブロリーは置いていかれました。この小説ですが、今後も頑張って書きたいと思います。最後まで読んでくださりありがとうございました。それではまた次回。