噴煙の錬金術師   作:ひよっこ召喚士

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珍しく筆がのったと言うか、書く気になった。
前の投稿から2週間経ってないと言う私にしては超ハイペースの投稿です。
(2月中はもっとハイペースだったけどね)

そしてメリークリスマス!!
めでたいですね?いやめでたくは無いのか?いやわかんないけど、なんとなくめでたいから良いですよね。ね!!

めでたいと言えば六日前に誕生日を迎えました。今年でもう21歳……なんか一年が早くてびっくりです。どうでも良い事ですけど21歳と言えば、(21)=ロリを思い出します。

と深夜テンションで前書きにくだらない事ばかりを書きましたが全部どうでも良い事なので本編をどうぞ。あー疲れた。




10 噴煙の独白・闇夜のウロボロス

SIDE:エドワード

 

 目が覚め、意識がしっかりすると反射的に体を起こそうとしてしまい体に奔った痛みに固まった。これ以上の怪我や痛みも経験しているが唐突な痛みには流石に身じろぐことしか出来ない中で昨日の出来事を思い出し顔を顰める。

 

「あ!エドワードさん。起き上がれるようになりましたね」

「ここは?」

「ロス少尉の知人の病院です。軍の病院だと色々訊かれた時にまずいだろうと判断しまして…ここなら静かに養生できますよ」

 

 そうか……あれらが軍の関係者なのだとすれば軍の関連施設は危険かと思い至る。それにしてもあそこまで踏み込んでおいて収穫なしか……

 

「あーくそ痛ぇ……もう少しで真実とやらがつかめそうだったのに…入院なんてしてる場合じゃないよなぁ」

「「鋼の錬金術師殿!先に無礼を詫びておきます!」」

「へ?」

 

 いきなり畏まった言い方をして何事だと思っていると物凄い衝撃が頬に入った。何をされたのか理解するとどうしてそれをされたのかと疑問が浮かぶが思考は直ぐには纏まらない。

 

「あれほどアームストロング少佐が勝手な行動をするなと言ったのにあなた達は!!今回の件はあなた達に危険だと判断したから宿で大人しくしていろと言ったのに!!少佐の好意を無視した上に下手したら命を落とすところだったのよ!?まず自分はまだ子供なんだって事を認識しなさい!そしてなんでも自分達だけでやろうとしないで周りを頼りなさい……もっと大人を信用してくれもいいじゃない」

 

「以上!下官にあるまじき暴力と暴言お許しください!!」

 

 一気にまくしたてる様に伝えられた説教にはこちらを心配しての気持ちが籠っていた。そして頼られなかった大人としての想いに驚かされた。呆然とした俺は頭が真っ白になってしまったが口を動かす事は出来た。

 

「……あ…いや……オレの方が…悪かった……です」

「ビンタのおとがめは?」

「そんなもん無い無い!」

 

 オレの言葉にしては正直すぎるといっていいぐらい素直な謝罪が気づけば口から出ていた。そして先ほどのビンタの事について尋ねてきた少尉にオレの事を思ってのことだと分かってるのにとがめることなんてないと伝える。するとかなりオーバーに安堵していた。

 

「なんでそんない気ィつかうんだよ」

「一般軍人では無いとはいえ国家錬金術師は少佐相当官の地位を持っていますからね。あなたの一言で我々の首が飛ぶ事もあるんですよ」

「そんなにピリピリすること無いよ。オレは軍の地位が欲しくて国家資格を取った訳じゃないし。それに敬語も使う事ないじゃん、こんな子供に」

「あらそう?」

「いやーーー実は年下に敬語使うのえらいしんどくてさーー!!」

 

 順応早ッ!!オレが言った事とは言えこれだけ早く人への対応って変えれる物なのかと少し驚いた。とは言えこんな風に接してくれる人って中々いなかったよな。

 

「そう言えばアルは?」

「アルフォンス君はさっきオレがゲンコツかまして同じ様に説教した!おかげで手がこのザマだけどね」

「あいつかてーだろははははは、あでででであははははは……」

 

 ブロッシュ軍曹の言葉に思わず笑ってしまったが傷口が痛み、悶えながら笑うという妙な姿を披露していると、怪我から動かなくなった右腕の方へ思考が傾いた。

 

「……もう一回盛大に怒鳴られるイベントが残ってた…」

 

 このままでは満足に錬金術も使えねえし、先延ばしすることは出来ないからな。傷の事を考えるとここから動くわけにもいかないとなると連絡入れるしかないか……しょうがないと立ち上がってリゼンブールのあいつの家に電話をかけた。

 

『はいはーい、義肢装具士のロックベルでございます』

「あ、ウィンリィか?オレオレ」

『エド?めずらしいわね電話してくるなんて』

「あーーー…あのさ…実に言いにくいんだけど出張整備してくれないかなーーーって…」

『出張?』

「いや右腕を壊しちまったんだけどさ…今ちょっと訳ありでそっちに行けないんだ。中央まで来てくれないかなぁ

?」

『壊れたってどんな風に?』 

「指は動くけど腕が全く上がらない。肩が外れた感じだな」

『やっぱりダメだったか』

「は?」

『いやいやこっちの話。何か重い物持ったとか必要以上に腕を振り回したりした?』

「派手にケンカした」

 

 凄まじい怒声が聞こえてくるだろうと受話器を耳から話して覚悟を決めていると何も聞こえてこない事に疑問が湧き、言葉が出ないほどに怒らしたのかと思い戦々恐々としながら再び受話器を顔に近づけて訊ねる。

 

「……もしもし?ウィンリィ……さん?」

『……しょうがないわね中央のどこ?』

「へ?」

『出張整備引き受けたって言ってるのよ。どこに行けばいい?』

「……なんかおまえ今日はずいぶんとやさしくねえ?」

『あたしはいつだってやさしいわよ!!』

 

 オレは病院の所在を伝えたが何かあるといけないから迎えを寄越した方が良いだろうからウィンリィに分かるような目印を置いておくと伝えて、礼を言ってから電話を切った。その後でブロッシュ軍曹からの余計な絡みがあって詰まらない動揺を見せたが態度を変えずに聞き流した。すると途中の薄暗い廊下にアルの姿を見つけた。

 

「あれっアル……何やってんだそんなすみっこで…っておーい?」

 

 これ位の距離なら声が届いてると思うんだが一向に反応が返ってこない。何か考え事でもしてんのかと思いながら少し大きな声を出す準備をする。

 

「アル!」

「兄…さん」

「そんな所にいないで部屋に行かないか?」

 

 大きな声で名前を読んでようやく気付けたようだ。だけどどこか様子がおかしい気がする。部屋に一緒に行こうと誘った際にはオレの方を見ているがどこか目が合っていない様に感じる。

 

「ん?」

「……ううんなんでもない。今行く」

「?先に言ってるぞ」

 

 目を逸らすように顔を背けた仕草に違和感を覚えたが行くと言ってるから大丈夫だろう。元の身体に戻れるかもしれないって思っていたのにこれだから思う所でもあるんだろう。そう思って車いすを押されてゆっくりと病室へと戻った。

 


 

SIDE:ヒューズ

 

「だ・か・ら・よ!うちの娘が三歳になるんだよ」

 

 めでたいったらありゃしないよな。目に入れても痛くない、それどころか疲労や痛みなんかが吹き飛びそうなあの娘がついに三歳だぜ。気分も上がるったらありゃしない、家だけでなく周りも巻き込んで当日は盛り上がる予定だしな。順調に馴染んでるニーナも嬉しそうに笑ってお祝いしてくれてるしな。たしかフュームの奴も顔を出すって伝言があったな。

 

『…………ヒューズ中佐…………私は今仕事中なのだが』

「奇遇だな俺も仕事中だ。いや、もう毎日かわいいのなんのってよぉ!」

 

 仕事中だとか関係なくその愛くるしい姿が頭に浮かんで止まないぜ。語れと言われたらどれだけ時間を賭けてでも話してやるんだが中々訊いてくれる奴が居ないのが残念でならない。最近はニーナと戯れてる姿がこれまた可愛いってのによぉ。ニーナも間違いようがないくらい天使だぜ。

 

『わかったからいちいち娘自慢の電話をかけてくるな!しかも軍の回線で!』

「娘だけじゃない!妻も自慢だ!」

 

 あれほど素晴らしい女性は他に居ないと断言してやるよ。俺の家族たちは世界一って決まってるんだよ。まったく、自慢できる所しか無いのが欠点だ。どれだけ俺の舌を枯れさせるつもりなんだろうか家の家族は。

 

『………錬金術で電話口の相手を焼き殺す方法は無いものかなヒューズ』

「おーおー焔の錬金術師はこわいねぇ。っと錬金術師と言えば傷の男はどうなった?」

 

 ロイの奴、素でイラつき始めたな。自慢なのは嘘じゃねえがそろそろちゃんと情報交換といきますかね。まずは傷の男に着いてだな。こっちにいるエルリック兄弟とも無関係じゃねえしな。

 

『まだ発見されていないがかなり大規模な爆発で身元不明の遺体も大量に出てるからな。あるいはその中に……東部近隣での目撃情報も無いからやはり死んだものとする意見が大勢を占めている』

「じゃあエルリック兄弟の護衛は解けるのか?」

 

 となれば自由に動けるようになるとエドの奴は喜びそうなもんだな。ただでさえヤバい事に首を突っ込み始めてるみたいだから安全に気を配るにこしたことはねえだろうに生意気でしょうがねえな。

 

『ああ彼らが中央にいるのなら中央の担当に判断をまかせよう』

「その担当だがな。国家錬金術師を統制する上層部の奴らが傷の男に殺られて人員不足になってる」

『ほぉ…』

「マスタング大佐の中央招聘も近いって噂だぜ」

『中央か悪くないな』

 

 今のロイの技量を考えれば中央でやって行くだけならいくらでも出来る。そこから更に上へと食い掛ろうと思えばそれなりに準備がいるだろうよ。

 

「気をつけろよ。その年で上層部に食い込むとなると敵も多くなる」

『覚悟はしている』

「おまえさんを理解して支えてくれる人間を一人でも多く作っとけよ……だから早く嫁さんもらえ」

『やかましい!!』

 

 最後に茶化してやると物凄い怒声と共に電話は切られたようだ。まぁ、どっちも本心ではあるがとりあえずは味方の数は確保しておけよ。次に嫁さんだ。

 

「ヒューズ中佐~~~また家庭自慢の電話ですか?」

「何?君もうらやましい?うちの娘が三歳になるんだよ~~~~~~~~~~写真見る?見る?」

「見ません!プライベートな会話に軍の回線を使わないでくださいよもう………聞いてるこっちが恥ずかしいったら………上の人に盗聴されたら減給ものですよ!」

「減給ごときで俺の愛はとめられんのだわははははは!」

 

「あ、ロイの野郎にエドの入院の事話すの忘れてたな。まいっか」

 

 入院したことを話せばどうしてそうなったのかを伝える必要があるが俺もまだ詳細を聞けたわけじゃないからな。それにアームストロング少佐の反応を見るに軍の回線で話せそうにねえよな。っととりあえず顔を見に行ってみるとするか。

 


 

SIDE:フューム

 

 さて、エドワード君は私立病院に入院したようですね。軍の運営してる場所を選ばなかったのは良い選択です。思っていたより怪我はしていますがスーの報告でも聞いてましたが生かされる立場なんですね。

 

「どうせ釘を刺しに現れるでしょうし、機械鎧の様子を見るに整備士を呼ぶ可能性が高いから顔は出さないでおこう」

 

 そうと決まれば急ぎでやらないといけない事も無いし。先にヒューズ家に向かっておいても良いかもしれないな。そうと決まれば行動は早く、誕生日であるエリシアちゃんへのプレゼントと預けたままほったらかしのニーナへのお土産を手にヒューズ家に向かった。

 

 事前に来訪する旨は伝わって居たようでグレイシアさんに歓迎され、ニーナとアリシアちゃんにも歓迎された。誕生日プレゼントはまだ渡せないがお土産なら良いだろうと二人に渡すとともて喜ばれた。お仕事の話の中で聞くのか錬金術を見せてとエリシアちゃんに言われた。ニーナがどう思うのか不安だったが見た目が派手な物を行うと一緒に笑っていたからこれで正解だろう。

 

「早い時間からすみませんね」

「いえ、お祝いの為に来てくれたんですから。それにニーナちゃんの様子も見れた方がいいですよね?」

 

 楽しそうに遊んでいるエリシアちゃんとニーナ、そしてアレキサンダーの姿を見つめる。ニーナに暗い様子はなく、エリシアちゃんもニーナをお姉ちゃんと呼んで慕っているように見える。アレキサンダーは変わらず、楽し気な表情を浮かべて遊びに付き合っている。

 

 

「おねえちゃ、もう一回見せて!!」

「私も一緒に遊ぶ!!」

「わふわふわふ!!」

「あらあら、今はママとお話し中よ」

「大丈夫ですよ。それじゃ、今度はもう少しで帰ってくるパパを驚かせるとしようか」

「「うん!!」」「わふ!!」

 

 私は許可を貰い、彼女たちに煙を吹きかけると来ていた服に対して錬金術を発動させる。もちろん、後で戻せるように元の形は把握している。アレキサンダーには何も出来ないが二人が笑っていてアレキサンダーも楽しそうなので問題は無いだろう。そうこうしているうちにヒューズ中佐が帰って来たようで2人と1匹はグレイシアさんと一緒に玄関へと駆け出した。

 

「パパおかえりー」

「ヒューズお父さんお帰りなさい」

「あらかわいいお客さん」

「エリシアちゃん、そ、その恰好は可愛いーー!!会いたかったよ~~~~~♡もちろんニーナにも会いたかったぞ~~~♡敬礼なんかしちゃってパパの所で働くなら二人には何をしてもらおうか~?お茶を出したり、肩を揉まれたりなんかしたら仕事がめちゃくちゃ捗るんだけどな~~~~~」

 

 ヒューズさんは玄関で敬礼姿で出迎えた二人の娘に思い切り抱き着いて頬ずりを始めた。軍服をそのまま使うのは問題があるがあくまで軍服風であれば大丈夫だろう。パパの真似をしている娘たちなんてヒューズ中佐のドストライクだろう。それにしてもお客さんか、他に誰か連れてきたのか。

 

「前に話しただろ。ほらエルリック兄弟」

「ええ」

 

 そんな会話の初めの部分を聞いただけでもしやと言った嫌な予感が頭に浮かぶ。そしてそう言った嫌な予感という者ほど当たるようだ。玄関の外では和やかな会話が続いている。

 

「あれの幼馴染のウィンリィちゃん。泊まる所を探してたから連れて来た。妻のグレイシアと娘のエリシアとニーナだ。そしてペットのアレキサンダー」

「お世話になります」

「初めまして。ゆっくりしていってね」

「二人ともよろしく、エリシアちゃん今いくつ?」

「ふた……みっちゅ!」

「「や~~ん、かわいい~~~~~♡」」

「でも良いんですか?私なんかが娘さんの誕生日におよばれして」

「祝い事はみんなで分け合った方が楽しいだろ?ようこそヒューズ家へ」

 

「そうだ。もう一人お客様が来てるわよ。その服装のサプライズもその人がやってくれたの」

「ほぉ、もう来てたのか」

「他に人がいて、私邪魔じゃないですかね?」

「いや大丈夫だよ。ウィンリィちゃんと同じでエリシアのお祝いに来てくれただけだし、そんなみみっちい事を言うような奴じゃないさフューム中将は」

「フューム?……フューム・ヴィガ・ラテジスト中将ですか?」

「おっ、エドたちから聞いてたか」

「ええっと、はい……大変お世話になったと……」

「それじゃあ俺から紹介してやるよ。とりあえず中に入ろう。いつまでも玄関先に立たせるわけにはいかねえからな」

 

 はぁ、これではリゼンブールへ行かなかった意味があまりないですね。もちろん他に仕事や用事があったから行かなかったのですが、避けていた理由の一端と出くわすとは運が悪いようですね私も……

 


 

 

「エリシアちゃんお誕生日おめでとーーー!!」

 

 一斉にクラッカーが鳴らされ、温かい拍手の中でケーキに刺さったろうそくの火を消した。テーブルの上には豪華な料理が並び、全員が楽しく会話を弾ませ、主役のエリシアはプレゼントを開けて喜び、友達とおしゃべりを楽しんでいる。

 

 和やかな場に不穏な空気を持ち込む気は無いが、おずおずとこちらに話しかけようとしている姿、いや話しかけようかと悩んでいるような素振りを見せる彼女の事を無視することは出来なかった。ヒューズ中佐の紹介の最中なんかは気まずさなんて隠れもしていなかった。まぁ、対面して感傷にでも浸ったのか余計な口を零してしまったがな。

 


 

 

「よう、到着が早いなフューム。ニーナを預かって以来だが互いに壮健で何よりだ」

「ああ、そうだな」

「今日は祝いに来てくれてありがとよ。それで祝いの場に急だが招待した奴が居てよ。こっちのお前さんも目をつけてるエルリック兄弟の幼馴染だ。それでウィンリィちゃん、こっちがフューム中将だ。ロイ…マスタング大佐やホークアイ中尉とはあったことあるんだっけか、それと同じく比較的昔からの俺の友人でもある」

「フューム・ヴィガ・ラテジストだ。よろしく」

「……ウィンリィ・ロックベルです」

「ロックベルか……顔立ちは母親似だな。目の強さは父親似か……」

「……」

「およ、なんだこの空気?」

「お姉ちゃんたちどうしたの」

「なんでもないさ、パーティまでもう少し遊ぶか?」

「うん!!」

 

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 

 私と目が合い、少し見つめた後で逸らした彼女は周りの招待客と一通り話した後で飲み物を片手にその輪から離れた。そのすぐそばに立つと顔を合わせるでもなく、まるで独り言の様に口を開いた。

 

「……イシュヴァ―ルの内乱を知ってるか?」

「はい……お母さんとお父さんが話してくれました。一緒に出会えたイシュヴァ―ル人の話をよくしてます」

「多くの者はあそこを地獄と言う、軍人であろうとイシュヴァ―ル人であろうと……私と私の友人の一人はそう思う事は無かったがね」

 

 幼い私にとって錬金術は本を見る以外に初めて出会えた娯楽だった。のめり込み、成果を上げ、父に褒められた時のことは今でも覚えている。それによって軍に関わり始め、軍での仕事は私にとって当たり前の物だった。内乱でさえもその延長線でしか無かった。

 

「我が家は代々の軍人家系でまぁまぁ由緒正しい家柄でもある。今は退役したが父も軍人で中将をしていた。内乱がはじまり、父も忙しくなり、内乱がはじまって3年後には前線にこそ出ないが戦地の近くに赴いた。そして私は軍での仕事をこなし、父を追いかける形で内乱へと向かったのが私が12の時だったな」

 

 その時はまだ国家錬金術師としてでは無かったが軍人として部隊を率いて戦っていた。そして大総統令3066号、国家錬金術師を投入した殲滅戦が開始した。その時にマスタングさんやヒューズさん達と出会った。そして、私と友人は上層部からの任務を受ける事もあった。

 

「…イシュヴァ―ルにて帰国要請に従わずにイシュヴァ―ル人を治療している夫婦がいると軍でも話題になっていた。当時の上司の言葉をそのまま伝えると『二人を保護するにも敵陣の真っ直中だ。かなりの損失が見込まれる。本当に困ったものだよ。助けに行く前にその二人が偶然戦火に巻き込まれて死んだりしたらどうしよう』でしたね」

「……!?国軍の人がそんな事を!?」

「軍内での汚職でさえ珍しくも無い、上層部ではこんなことは当たり前ですよ。任務を一緒に聴いた友人が表からその地区を殲滅し、私はその騒ぎに乗じて病院まで進みました。まぁ、念のために帰国要請も伝えましたがすぐに断られましたよ。患者がいるのに離れる事は出来ないとね……意志の強い人たちでしたよ」

 

 友人の言葉をよく聞くせいか私も意志の強さと言うのを多少は尊ぶ事がある。友人は意思を貫く事を大事にしているが、私はたとえ最後に諦めてしまっとしても、その時の…一瞬の想いの強さを馬鹿には出来ないと思っている。私はあまり感情的になる事は無いから余計にそう思うのかもしれないな。

 

「無理に連れ出すのも面倒ですので任務通りに殺そうと仕掛けるとその場に居たイシュヴァ―ル人に拒まれましてね。あれが私が唯一達成できなかった任務になるんでしょうかねぇ」

「……」

「イシュヴァ―ルには武僧と呼ばれる修練を積んだ者がいて彼らは一人で軍人10人分の強さがあると言われていた。まさか先ほどまで医者夫婦を殺そうとしていた患者が邪魔をしてくるとは思わず、不意を突かれて一発喰らってしまいました。私も格闘を嗜んでいたので行動不能にはなりませんでしたが、狭い病室で複数人を相手に錬金術を使えば私にも被害が出るので、仕方なく錬金術を使わずに応戦してやりあってる内に友人の殲滅の音が届き、外から逃げる様に伝える声が病院内に響いた。そこであなたの両親は私に交渉してきた『帰国要請に応じるからここの患者さんたちに手を出さないで』と……」

 

 何故そこまでするのか不思議でしょうがなかったですね。同じアメストリス国民だから、自分たちは医者だからといった理由だけで出来るものなのかとね。下手に抵抗され続けるよりも良いと私はその提案を受け入れました。私も載せられたのかイシュヴァ―ル人たちの逃げ道を用意し、友人に口裏合わせを頼み込みましたからね。

 

 納得せずに襲い掛かってくる人は流石にどうしようもありませんでしたがね。流石に患者だからと反撃せずに殺されることは出来ませんから医者夫婦の手前、惨殺する訳にはいかないので適当に吹き飛ばして終わりにしました。……まさか生きていたとは夢にも思いませんでしたけどね。あの時は私とマスタングさんへの恨みと言いましたが、実際に恨まれてるのは私と友人でしょうね。

 

「私は……両親とエド達から話を聞いただけです。それも全部、一から百まで聞いたわけではないです。だけど、エドとアルが二人して凄い国家錬金術師だって話す人と両親が話す昔出会った軍人さん、両方ともあなたで私が見たのは子供と遊んでる優しい姿です。どれが本当なのか、どの貴女が正しいのか会ったばかりの私にはわかんないです。……フュームさんはその時の事をどう思ってるんですか?」

「……あなたの両親を殺そうとしたことを私は一切悪いとは思っていません。開き直ってるつもりはないですが、それが仕事で、それが軍人で、それが国家錬金術師です。貴女の幼馴染もそんな国家錬金術師の一人ですよ」

 

 国家錬金術師なんてそんな素晴らしい物では無く、そんな国家錬金術師の一人がエドワード君なのだと伝える。これは返事を期待したわけではない、ただ宙へと放った私の独白だ。問いかけて訊ねようと問いかけに返そうと先ほどまでの全ては独白だ。そう決めつけて勝手に喋るだけ喋ると私は彼女から距離を取った。

 

 


 

 

「そんな接点があったとはねぇ……あの時兄弟の護衛を断ったのもそれが理由か?」

「聞き耳立てるとは悪い人ですね……まあ半分程度でしょうか」

 

 渡されたグラスをそのまま受け取り中身を飲み干す、珍しく喋り過ぎたのか喉が少し乾いていたので丁度良い。戦友からの施しに素直に感謝を告げる。

 

「アイツと共感してたぐらいだし、当時は機械的な奴だとは思ってたが……それ以上に軍ってのは碌でもないな」

「それは軍人である私達を含めてですか?」

「……そうだな。結局は俺もロイもお前さんも同じ共犯者だろうよ」

 

 私は他人への関心が薄い、私が興味があるのは未知と家族が大半を占めている。だが、今の私が友人だと思っているあなたは家族に囲まれて幸せそうに笑えている。

 

「……最近何かと物騒ですからね。昔を思い出したついでに護身用にこれでも持ってたらどうですか?」

「っと、なんだこれって!?おいおい、こんなものをポンと渡すお前の方が物騒だよ」

「護身用だと言ってるでしょう。家族(幸せ)とやらを大切にするなら迷わないようにしてくださいよ。ほらっヒューズさんの家族(幸せ)が困ってるみたいですよ。行って来たらどうです?」

「ロイの奴にも言ったがお前さんも支えてくれる奴を作れよ……おーい、エリシアちゃんどうしたんだ」

 

 それはどっちの意味なのか分からないがまあ助言としてこれもまた頭の片隅にでも入れておくとしよう。それにしても先ほどまでの真剣な表情からよくまぁあんなデレデレな顔にすぐに変われるな。まあ、娘どころか浮いた話の一つも無い、とは言わないが結婚すらしてない私には理解できそうにないな。

 

「パパ!パパがくれたねずみさん動かないよう」

「あれ不良品だったかな?」

「エリシアちゃんちょっと見せてくれる?」

 

 どうしようも無いようなら直そうかと思っていたが私の出番は無いようだな。流石に機械鎧を作っているだけはある。玩具程度であれば簡単に直してみせ、子どもたちから尊敬の視線を受け取っている。そのままヒューズさんが何か話をしている様だ。フォローは任せて良さそうだと暇を潰そうとしたらふと服の端を引っ張られ、視線を向けるとニーナが居た。

 

「フュームお姉ちゃん、お喋りしようよ」

「ああ、良いですよ。何から話しましょうかねぇ……直ぐに思いつきそうにないので順番こで知りたい事を聞き合いましょうか?」

「うん、良いよ!!私は、えっと、お姉ちゃんのお仕事や錬金術について知りたい!!」

「良いですよ。それじゃあ私はニーナが普段何をやってるか、エリシアちゃんやアレキサンダーとどんな遊びをしているのか色々と教えてください」

 

 私は話しても良い仕事について面白おかしく語り、遊びで見せた時とは違い、ゆっくりと手元で私の錬金術を見せていった。積み木の形だけを変化させたり、料理を違う料理に作り変えたり、マジックの様に手の中に入った物を消して(分解)して見せたり、どれも喜んでくれたようで良かったです。

 

「お姉ちゃん凄い!!列車の中でアルお兄ちゃんと一緒に犯人を捕まえたんだあ。その時も錬金術を使ったの?」

「ええ、相手の武器の形を変えて使えなくしたり、錬金術は使い手次第で様々な顔を見せてくれます。物の形を変えるのは遊んだ時に服を変えたあれと同じですよ」

「かっこいいなー……私も錬金術覚えてお父さんやお姉ちゃんみたいに国家錬金術師に成りたいなぁ」

「ッ!!そうですねぇ…ニーナがもっと大きくなってそれでもやりたいなら教えてあげても良いですよ」

「本当!!約束だよお姉ちゃん!!」

「そうですね。約束です」

 


 

SIDE:ウィンリィ

 

「あいつの整備士やってるって?」

「ええ同じリゼンブールの生まれで家も近かったって言うのもあって」

 

 おもちゃを直した事でより懐いてくれたようでエリシアちゃんをお膝に乗せたままヒューズさんとお話をしている。今の私はちゃんと笑えているだろうか?

 

「小さい頃からいつも一緒できょうだいみたいなものですよ」

「あんなだから手間かかるだろ」

「手間かかるって言うか心配ばっかり、たまに帰って来たと思ったらおもいっきり腕壊してるし、今日も呼び出されてみればエドは大ケガで入院してるし、アルは何か悩んでるみたいだし」

 

「…エドの機械鎧…半月前に新しいのをつけてやったのに今日見たらもう傷だらけでした。おまけに身体も傷だらけで…いったいどんな生活してるんだろう。だけど何があったかなんて、概要は話しても自分達の事はあいつら絶対に言わないんですよ。元の身体に戻る旅に出る時もあいつら二人だけで決めちゃって相談もされなかったし、本当のきょうだいなら旅に出る事も、今日のケガの事もきちんと話してくれたのかな」

 

 心配してやったって全部自分たちで抱え込んで馬鹿みたいって思うのに頼ってくれない事が不安でしょうがない。私なんかじゃ支えてあげる事も出来ないんじゃないかと思ってしまい、どうしようもない思いが溢れて口から零れていく。

 

「相談しなかったんじゃなくて相談する必要が無かったんだろ」

 

 その言葉を聞いてふっと顔を上げた。ヒューズさんの言葉を聞き取れたがその意味が直ぐには分からなかった。どういう事なんですかと訊くまでも無くヒューズさんは続きを語ってくれた。

 

「ウィンリィちゃんなら言わなくてもわかってくれるって思ったんだよあいつらは」

「……言葉で示してくれなきゃわからない事もあります」

 

 一から十まで話せってわけじゃない。だけど少しくらい私に教えてくれたっていいじゃない。背負わせてくれてもいいじゃないかって思う。

 

「しょーがねえよなぁ。男ってのは言葉よりも行動で示す生き物だから。苦しい事はなるべくなら自分以外の人に背負わせたくない。心配もかけたくない。だから言わない。それでもあの兄弟が弱音を吐いたら、そん時はきっちり受け止めてやる。それでいいんじゃないか?」

 

 同じ男としての意見なのか、ヒューズさんの言葉には重みが在る様に感じた。だけどあいつらが弱音を吐くところがあまり想像できなかった。だけど、そんな時はと気を引き締めた。話し終えたタイミングでエリシアちゃんの所に子供たちが駆け寄ってきた。

 

「エリシアちゃーん!あそぼ!」

「なんだよーエリシアちゃんはボクとあそぶんだよー」

「あはは娘さんもてもてですね」

「おい小僧ども。うちの娘に手ェ出したらタダじゃおかねぇぞ!」

「ヒューズさんは行動で示しすぎ!!」

 

 本物の拳銃で子供たちを威嚇するのはダメですよ。子どもたちの顔が物凄く引き攣ってましたよ。あ、グレイシアさんに叱られて落ち込んでる。まったく、男の人ってみんなこうなのかな。気分が回復した私はそのままパーティを楽しんだ。

 


 

 

 朝のまだ日が昇って間もない時間、普段の不規則な生活のせいかふと目が覚めてしまった。水だけでも貰おうと部屋を出ると玄関の方から話し声が聞こえた。

 

「ふぅ、世話になりました」

「同じ時間に起きてる俺が言うのもなんだが早すぎだ。もう少し休めよ」

「最近の軍法会議所は私以上に働きづめだと聞いてますよ」

「傷の男のせいでな。そっちも国家錬金術師関連の仕事が多く回されてるだろ?」

「国家錬金術師の統括みたいな立ち場ですし、しわ寄せもしょうがないですよ」

「まっ、時間が出来たらまた来い、いつだろうと歓迎してやるからよ」

「そうそうそんな時間は作れそうにないですが、ありがとうございます。それでは、また」

 

 その声で直ぐに分かった。片方はヒューズさんでもう片方の声はフュームさんだ。二人の会話は友人同士が世間話をしている様な暖かさを感じた。気付いたら私は玄関の方へ足を進めていた。

 

「おはようございます」

「…ああ、おはよう」

「およ、ウィンリィちゃん早いね。おはよう」

 

 私が現れたことに驚いたというよりも意外そうな表情を浮かべたフュームさんに私も苦笑をうかべた。問い詰めようとかそう言った意思は無く、ただこの機会を逃せば次が無くなってしまう気がした。

 

「フュームさん!!」

「大きな声だな。子供たちはまだ寝てるぞ。どうした?」

「また今度、話を聞かせてください。理解できるか分かりませんがお仕事の話でも、錬金術の話でも、貴女から見たあいつらの話でも、何でもいいので……その…このままお別れってなんかいやです……」

「……ふっ、分かった。あいにくと忙しくて居るかは分らんがいつでも研究所を訪ねてくれ、何か訊きたい事があれば伝言をくれるだけでも良いから」

 

 私の声掛けで振り向き、薄っすらと笑ったフュームさんの横顔はとても綺麗だった。一方的ではない、お喋りの約束をしたフュームさんはそのまま門の方へと歩いて行った。門に手を掛けた所で身体ごと振り返った。

 

「また会いましょうウィンリィ!」

「はい!!」

 

 少し変わっていて、怖いと思う所もあって、エドよりも小さくて、誰よりも大人で、軍人で、国家錬金術師で、それで少し年上の新しい友人、その話を家に帰ったら話したいと思った。

 


 

SIDE:ヒューズ

 

 兄弟が手にした情報ってのはどでかいが厄介すぎるネタだったな。賢者の石しかり、研究所しかり、その上大総統襲来とか特別手当が欲しくなるぜ。

 

「そう言えば見ましたかリオールの暴動の記事」

「リオールの暴動?」

「ええ、レト教とか言う新興宗教が住民をだましてたってやつ、やっと治まったらしいですよ」

 

 あっ、本当だ。にしてもあちこちで人死にの事件とは世も末だな。傷の男で盛り上がってばっかいるが根本的に治安をどうにかしないと不味いんじゃないかね。東部のごたごたにロイも忙しいだろうよ。

 

「あーあ、やだねぇ。死者多数だとよ。イシュヴァ―ルやら暴動やら東部も大変だな」

「東部だけじゃないですよ。北も西も暴動だ国境だと急ににぎやかになって、そのうち国家転覆でもするんじゃないですかね」

 

 国家転覆ねぇ、このままごたごたが続いて軍が疲弊しちまえば在り得なくないってのが怖いねぇ。まったく、北に西ねぇ、国境に沿ってぐるりとあちこちで事件が起きて……いや待てよこの形どっかで……

 

「!!」

「中佐どちらへ?」

「昔の記録を調べに書庫に行って来る」

 

 おいおい、俺は専門じゃねえがこんなこと在り得るのか?急がねえとこれがマジならすぐに対処しちまわねえと大変な事になる。

 

「イシュヴァ―ルの内乱……リオールの暴動……そして……おいおいどこのどいつだこんな事考えやがるのは…早く少佐と大総統に…」

 

 書庫の扉が勢いよく閉められ、音のした方を向くとつい最近注意しなくてはいけないと情報交換したウロボロスの入れ墨を入れた女が立っていた。

 

「初めまして、それともさよならの方がいいかしら」

「イカス入れ墨してるなねぇちゃん」

「知り過ぎたわねヒューズ中佐」

 

 伸びた爪に警戒し、軌道を読んで急所を避けると同時に相手の頭に目掛けてポケットから取り出したナイフを投げつけた。そして転がるように、いや転げながら書庫の外へと飛び出した。

 

「つ…っ、くそっ!!」

 

 肩に鋭い痛みが走るが蹲ってる暇はねぇ。急いで知らせねぇといけないという義務感と得体のしれない敵への焦燥感を抱きつつ足を動かし続ける。

 

「あら、ヒューズ中佐。また家庭自慢の電話で…中佐血が!!」

「なんでもねぇ、電話借りるぞ。大総統府に」

 

 こんな大掛かりな事を本当にこそこそと出来るものなのか……あの時大総統は何て言った……『どこまで知った?場合によっては』……あの言葉がマジだとすれば、下手すれば軍上層部は真っ黒、確実に軍がやばい。軍の回線を使うのは不味い。

 

「悪い、ジャマしたな」

「え?中佐!!」

 

 急いで公衆電話を探すと東方司令部あてにかける。今すぐにロイに伝えないといけねぇんだ。早く、早く出てくれよ。ロイに伝えたら次は少佐とフュームにも……待て…待てよ…アイツが分かんねぇわけないだろ。国一番の錬金術師で、国家錬金術師の査察や各支部の視察で国中を回ってるアイツが気づかないなんてあり得るのか?アイツは滅多に留まらねぇが中央所属の中将だろ。分かんねぇ、分かんねぇよ。

 

『はい東方司令部』

「ロイ……マスタング大佐につないでくれ!」

『外線からの電話は繋げない決まりになっておりまして…』

「中央のヒューズ中佐だ!!緊急で外からかけてる!!」

『コードをお願いします』

「ああもう面倒くせェ!!『アンクル』『シュガー』『オリバー』『エイト』『ゼロ』『ゼロ』!」

『コード確認しました。しばらくお待ちください』

「早くしろ!軍がやべぇ!!」

 

 電話交換手相手に怒鳴ったってしょうがねぇのは分っているが事態は予想以上に進んでんだよ。ロイも急いできてくれ、頼む。

 

 

「受話器を置いていただけますか中佐」

 

 冷たい、平坦な口調で声が掛かる。その声は聞いたことがある声でまさかと思いつつ後ろを振り向くと見知った顔が銃をこちらに突き付けていた。 

 

「さあ、受話器を」

「ロス少尉……じゃねぇな。誰だあんた」

「誰って…マリア・ロス少尉ですよ。病院で何度もあってるで…」

「いいや違う。ロス少尉の左目の下に泣きボクロがあるんだよ!」

 

 何が起こってるのかまったくわからねえがこいつもさっきの奴の仲間に間違いはねえだろ。在り得ない位にそっくりな変装に恐ろしさが込み上げる。相手の出方を見守ってると更に在り得ない出来事が起こった。

 

「ああ、そうだっけうっかりしてたよ。これでいいかな?」

「な……」

 いきなり顔を作り直しやがった。顔に一瞬現れた痕、あれは何度も見かけたことがある。錬金術で変成した際に残る痕だった。だが、どういう事だ……あいつは顔を自由自在に作り直せるってのか!?

 

「……なんだってんだ畜生。夢でも見てるみたいだ…」

「そうだね。最高の悪夢を見てもらおうかな。頭の回転が速いばっかりにとんだ災難だったねヒューズ中佐」

「おいおい勘弁してくれよ。家で女房と子供たちが待ってるんだ……ここで死ぬわけにゃいかねぇんだよ!!」

 

 袖の中に常備しているナイフを掌に滑らせるとそれを突き刺そうと思い切り振りかぶり、振り返ったところで思わず手が止まった。

 

「その女房を刺そうっての?」

 

 相手の顔が愛するグレイシアの物へと変わっていた。目元を細めて笑うその顔は間違いなく妻の顔だ。狼狽える俺を見てグレイシアが絶対にしないであろう口元を歪めた笑みを浮かべた。

 

「いい演出だろう?ヒューズ中佐」

「……っ……くそったれ……」

 

 


 

SIDE:マスタング

 

 部屋から出た所で電話が鳴って居る事に気付く、こんな時間に誰からだろうか。上から廻される面倒な案件でなければいいがと思いつつ受話器を手に取る。

 

『中央のヒューズ中佐から一般回線で通信です』

「またヒューズか、つなげ……私だ娘自慢なら聞かんぞ!」

 

 こんな時間にわざわざ一般回線からかけてきたんだ。つまらない内容では無いだろうと思いつつ、牽制しておかないと要件そっちのけで喋り続けるからなあいつ。

 

『…………』

「?ヒューズ?」

 

 さきほど繋げた際の音はなったはずだ。それなのにいつまでたっても返事が無い事に疑問が湧く。タイミングが悪くて私の声が届かなかったのかと思いもう一度問いかけるが返事は無い。

 

「ヒューズ…おいっ!」

 

 

「ヒューズ!」

 

 

 

「ヒューズ!」

 

 

 

 

「ヒューズ!!」

 

 

 

 


 

 

 電話ボックスの周りが血で染まっている。辺りは静けさを取り戻し、風で揺れる葉の擦れる微かな音だけが響くだけだ。

 

「助けなくて良かったんですよネ」

「……ああ、見ていれば良かった。見つかれば面倒だ帰るぞ」

「ハイ」

 

 


 

SIDE:エドワード

 

「なんでまた急に師匠の所へ行こうなんて思ったの?」

 

 窓際に座り、流れていく景色を見て、久しぶりに汽車に乗った気がするなと考えていると隣に座るウィンリィから問いかけがあり、意識をそちらに向ける。

 

「理由はふたつ、ここ最近どうにも負けっぱなしでよ。とにかく強くなりたいと思ったのがひとつ」

「はぁ?ケンカに強くなりたくて行くの?あんたらケンカ馬鹿?」

「ばっきゃろー!そんな単純なもんじゃんぇや!!なんて言うかこう……ケンカだけじゃなくて中身もって言うか……なあ!」

 

 誰がバカだこの野郎、呆れた目で見るんじゃねえ。確かに腕っぷしも強くしたいがそれだけじゃねえんだよ。言葉に出てこねえがアルならわかるよな。

 

「そうそう!」

「オレはもっともっと強くなりたい!」

「うん!とにかく師匠の所に行けば強くなる気がする!」

「……ふたつめは?」

 

 強くなるってのも大きな理由だがどっちかと言うとふたつめの理由の方が大きいんだよな。師匠に頼る以外に手っ取り早い方法が見つからねぇ。

 

「人体錬成について師匠に訊く事!」

「ボクら師匠の元で修業したって言っても賢者の石や人体の錬成については教えてもらってないんだよね」

「そう賢者の石が色々とぶっそうな事になってるからさ。ここは思いきってストレートに元の身体に戻る方法を訊いてみようかと思ってんだ。もうなりふりかまってらんねーや。師匠にぶっ殺される覚悟で訊いて…訊いて…短い人生だったなアル~~」

「せめて彼女だけでも作っておきたかったよ兄さん…!!」

 

 ガチで殺されてもおかしくねえからな。師匠の教えを破っちまったオレらが全面的に悪いとはいえ、なんて切り出したらいいんだろう。どういえば半殺しで許してもらえるかなぁ。

 

「あそうだ!元気の出る物!じゃーーんアップルパイだよーー♪」

「おっ、美味そう。どうしたんだこれ」

「『途中で食べなさい』ってヒューズさんの奥さんが作ってくれたの」

「それにしても多いな」

「あはは、3人分作ってくれたみたいよ」

 

 流石にアルの事は話してねえだろうからな。オレたちの事を聞いたらそりゃ3人分作るのはしょうがねえか。にしても喰い切れるか?

 

「ボクの分も食べなよね兄さん」

「う!!病院でのし返したこのヤロー……うん美味い!」

「ヒューズさんの奥さんねすっごい料理上手なんだよ。作り方教えてもらったからアルが元の身体に戻ったら焼いてあげるね」

「……こういうのも『おふくろの味』って言うのかねぇ」

「ヒューズさんも奥さんも、エリシアちゃんもニーナちゃんも凄くいい人だった」

「ヒューズ中佐って親バカで世話焼きでうっとーしいんだよなー」

「いっつも病室に兄さんをからかいに来てたよね」

「ほんとに…………『毎日仕事で忙しい』って言いながらしょっちゅう見舞いに来てやがんの…………今度中央に行ったら何か礼をしなくちゃな…」

 


 

「殉職で二階級特進………ヒューズ准将か……私の下について助力すると言っていた奴が私より上に行ってどうするんだ。馬鹿者が」

 

 ヒューズの事件は直ぐに軍全体へと知れ渡った。中央の中佐ともなればそれだけ重要な立ち位置だ。そんな地位に居た人物が襲われたというのはそれだけ衝撃を与えた。

 

「大佐、風が出て冷えて来ましたよ。まだお戻りにならないのですか?」

「ああ、いま戻るよ」

 


 

「急に思い立ったように資料室に行くと出ていきましてね。それが私がヒューズ中佐を見た最後でした」

「何者かと争ったのか」

「ええおそらく。室内から廊下へと血痕が残されていました。そして次に向かったのが…」

 

 血痕を辿るように廊下を進み、次にヒューズが向かったのは所内の通信室だった。

 

「中佐はケガをしたまま電話をしようとして…そこで何か考えていたようです…結局どこへもかけずに…出て行ってしまったんです」

 

 最後に見るのはここか、ヒューズが東方司令部へと電話を掛けた公衆電話。その周辺には事件当時の跡がくっきりと残っている。軍法会議所で何かに気付き…所内で通信できたものをわざわざ外に出て私に連絡を取ろうとした。

 

 東方司令部の電話交換手は「軍がやばい」というヒューズの言葉を聞いている。なんだ…あいつは何を伝えようとした?軍が崩壊するような事態が進んでいるとでも…?

 

「大佐、アームストロング少佐をお連れしました」

「中佐を害したと思われる者達の目星はついております」

「ならば何故さっさと捕えない」

「目星はついておりますがどこの誰かもわからぬのです」

 

 目星は付いているが誰かも分からない。少佐の言葉を頭の中で反芻しようともその意味が全くと言っていいほど理解できない。

 

「?どういう事だ。詳しく話せ」

「できません」

「大佐である私が『話せ』と言っているのだ。上官に逆らうと言うのか!」

「話せません」

 

 少佐は元より脅しに屈するような人間では無い……となればそう言う事だろう。まったく、真っすぐすぎるのも考えものだな。

 

「…わかった呼び出してすまなかったな。もう行っていいぞ」

「はっ…そう言えば吾輩言い忘れておりました。数日前までエルリック兄弟が滞在しておりましてな」

()()()()()()()が?」

「そう、エルリック兄弟です」

「彼らの()()()はみつかったのかね?」

「いいえ、なにしろその探し物は伝説級の代物ですので」

「そうか、ありがとう」

 

 真っすぐなだけではなく、ここまで甘いとは本当に少佐は……

 

「…これといった情報は得られませんでしたね」

「いや、まったく少佐はお人よしだ。『ヒューズを害したと思われる者達』という事は相手は複数…ひょっとすると組織として動いている者達…『大佐である私の命令であろうと言う訳にはいかない』という事は私以上の地位の者が少佐に口止めしているという事…軍上層部絡みと考えていいだろう。そして『エルリック兄弟の探し物』すなわち賢者の石だ」

「あ……軍上層部にかかわる組織と賢者の石とヒューズ中佐…いったいどんなつながりが…」

「さぁな私にもさっぱりだ。だがこのままで済むものか。もうじき私は中央に異動になる」

「あら、おめでとうございます」

「渡りに船とはこの事だ。上層部を探ってヒューズを襲った奴をあぶり出してやる」

「公私混同とは貴方らしくないですね」

「『公』も『私』もあるものか、大総統の地位をもらうのもヒューズの仇を討つのも全て私一個人の意思だ!」

 

 なにからなにまで謎ばかりだがそれで諦めると言う選択肢を選べる様な人間では無いぞ。まずは下手人を探し出す事から始めよう。

 

()()()()()()()は少佐もやってくれるだろう。私は上層部に喰らい付くぞ。付いて来るか?」

「何を今更」

 

 出血量と現場で発見されたずたずたの腕が心配ではあるが、あいつがそう簡単にくたばるものか。軍が死んだものと扱おうとあいつは絶対に生きている。だからこそ私は私に出来る事をやってのける。

 

 


 

『…どこだここは、この匂い…イシュヴァ―ルか……?兄者…師父…皆どこへ』

【やあ】【まだ居ましたか】

『……何者だ。イシュヴァ―ルの民ではないな』

【私なんかは見ればわかるでしょうに】

【ああ失敬、あいさつが遅れまして】

 

【【この地区の殲滅を担当する国家錬金術師です】】

 

 過去が見せる情景と襲撃された際の記憶が一気にフラッシュバックしたと同時に目を見開いた。どうやら、死んではいないらしい。

 

「あ、起きた」

「…………生きてる」

「うん生き返ると思わなかった」

 

 治療された後だろうか、己れが寝かされている場所から考えるに今入って来た少年が助けたのか。

 

「ここはどこだ」

「イーストシティのはずれにある貧民街だよ」

「…己れは助けられたのか」

「おお感謝してくれよ。びっくりしたぞー下水道を人間が流れて来んだもんな」

「…………」

「こんなビンボーなのに人を助けてる余裕あるのかよってか?」

 

 助けてくれたことへ感謝の念を抱いてはいるが、思わず部屋を見渡してしまった。正直なぜ己れをわざわざ助けたのかは疑問でしかない。

 

「そーだなおっちゃんが普通の奴だったら身ぐるみはいでそのまま下水道にポイだな。おっちゃんイシュヴァ―ル人だろ。オレも母ちゃんがイシュヴァ―ル人なんだ!じっちゃ!生き返ったぞ」

「おお、命ひとつもうけたな若いの。おめぇさんアレだろ指名手配になってた奴じゃろ?」

「!通報するか?」

「かまえる事ぁ無い。この貧民街はイシュヴァ―ルゆかりの者ばかりじゃ。身内を売るあほうはおらんよ」

「おい、生き返ったってか!」

「兄ちゃん欲しい物あるか?つってもろくなモンありゃしねぇけどよ!」

 

 少年の呼びかけに一番に反応したご老人は指名手配の事を言ったが己れをつきだそうとはしなかった。その後もかわるがわる人が顔を覗いていく…………

 

「イシュヴァ―ルの生き残りがこんなにいるのか」

「ここだけじゃないぞい。各地に小さな集落を作ってひっそりとだが元気に生き残っておるよ。こんなスス臭い所でも住めば都っちゅーか、『世の中全て我らが神イシュヴァラの懐なり』じゃな」

「…………そうか。すまない世話になっ…………ぐうっ」

「あーあ、動いちゃだめだよ。死にかけてたんだから」

「………少年よ己れの右腕は付いているか」

「右腕?ああひどいケガだけど両手両足ちゃんと付いてるよ。でもすげぇなおっさんの右腕、入れ墨?」

「ああ、家族に貰った大切な」

 

 




フュームはパーティに出席した。
フュームはニーナに懐かれた。
フュームがウィンリィと仲良くなった。

こうして箇条書きで書いているとゲームならちゃっちゃら―と効果音が鳴りそうだなーってよく思う。

まだ全てでは無いけどイシュヴァ―ルでのフュームの動きをある程度は書けたかな?フュームは天才・異才と呼ばれるだけあって、他の人とは違う視点、感性を持っています。そして人の区別が非常に大雑把で昔は家族とそれ以外でした。今はそこに味方とか友人枠があります。

性格は合理的、機械的、現実主義と子供らしくない幼少時代でした。今もはある程度改善はされてますが、未だに感情が在る様に振る舞って合わせられるようになっただけな部分があります。

病院のエドとアルのケンカは飛ばしました。飛ばした理由は前回と同じで原作と変化が一切ないからです。

そして、今回の投稿を待っていた方たち一番の気になる点。
はい、という事でヒューズさん消息不明。
死体は見つかって無いけどと言った感じです。
先延ばしではなくきちんと理由がありますが詳しくは作中で。

傷の男の所はなんとなくこれまで省かずに入れてたから頑張って書いた。そしてトラウマの記憶に人物を追加、この冷たい人物はいったい誰なんだ……

冗談はさておいて今回はこれぐらいさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。
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