SIDE:フューム
錬金術大国と呼ばれるアメストリスと同じように東の砂漠の果てには練丹術と呼ばれる手法の違う錬金術を扱う者が済む大きな国がある。だが灼熱の大砂漠が往来を遮り、知られていても関わりのまずない国である。それ故に文化の違いも大きく、その姿なども街に居ればかなり目立つ。
「若ーーーっ!!どこに行ってしまわれたのかーーっ!!まったく!目をはなすとすぐいなくなる!」
「ま…また行きだおれてたらどうしよう……」
中でも黒装束で叫んでいる者などが居れば何事かと周りからの眼が集まるのも無理はない。にしてもスーの奴が絡みに行った奴とは違う奴に先に合うとは……それにあの二人、本場の人間だけあって慌てていてもしっかり感知しているな。
「何者だ!」
「まぁ、そうなるのもしょうがないんでしょうが、いきなりですね。ふぅー」
「この国の者は気の流れを感じる術を持っていない。何故扱える?」
「まだ気まずいだろうに兄弟に会わなくてはいけなくなって気が落ち込んでるんですよ……邪魔しないでください」
「なっ!?」
「これは……!?」
常に煙を絶やさない私の後ろを取った所で動きを封じる事は出来ない。それに体格差も相まって向こうがこちらを抑えようとすると比較的低姿勢を取らないといけないから錬金術に巻き込みやすいから助かりますね。
「拘束したのは良いですがどうしますかね」
仕事があるというのに大荷物があるというのは正直面倒ですね。とは言ってもスーの関係者でしょうし、先にこのまま連れながら兄弟の場所にでも行きましょうか。なにかと問題に巻き込まれてるようですし何か関りがあってもおかしくないでしょう。
「と思っていたら本当に出会っているとは、それにまた街の破壊ですか?あまりにも多すぎると私の方にまで苦情が入りますので気をつけてくださいね……聞こえていないようですし治療した方がいいですかねアルフォンス君?」
「……え、あ、はい。お願いします」
この前の馬鹿のせいで腕が壊れていましたからね。居るとすればウィンリィが居るであろうラッシュバレーに居るだろうと思っていたらちょうど外に出ていたウィンリィと会う事が出来、兄弟が居るであろうウィンリィが世話になっている店に行くと腕を完全に破壊したエドワード君がおり、ウィンリィが笑顔のままエドワード君を叩きのめす場に出くわした。
「いててて、治療ありがとうございます。っていうか中将、一人でこいつら二人捕まえたんですか?」
「いやぁ、本当にヨ。うちの連れはそんなに弱くないんだけどネ。こっちの国って強い人が多いのカ?」
そしてこれまたちょう良い事に私が捕まえた二人組の主を名乗る者と出会う事が出来た。捕まえた二人とはエルリック兄弟も戦っていたようだ。目の前の相手は笑いながら話しながらもいつでも剣を抜けるようにこちらを警戒してみている。さらにはどうにかして部下二人を逃がせないかと思考を巡らせている。
「そう警戒しないでくれ、リンと言ったか?」
「ああ、貴女は国で一番の錬金術師らしいネ。そちらの兄弟にも言ったけど博識な人に出会えて嬉しいヨ」
「そう言ってもらえるとこちらも嬉しいよ。シン国皇帝第十二子、リン・ヤオ皇子?」
「「はっ!?」」「えっ!?」「へー!」「ふぅん」
私がそう言った瞬間に近くに居た兄弟やウィンリィ、友人らしいパニーニャと言う少女やガーフィールと言う技師も各々反応を見せた。驚きや興味などの視線を向けられた目の前の少年の表情は芳しくない。
「どうして知ってる?まさか他の家の!!」
「その問いにはイエスと答えるが、私は別に君たちの敵ではないよ。私の友人は皇位には興味がないらしくてね。一番に「不老不死の法」とやらにたどり着いておきながらこの国で食道楽に呆けているよ」
「それを信じろと?」
「信じるしかないだろ?」
「若っダメです!!」
「我らの事は気になされるな!!」
敵ではないといっているのにこれでは私が悪いみたいに見えるではないか。兄弟たちもどうしていいのか困惑しているようだ。はぁ、と一つため息をついて拘束した二人に近づく、後ろから「やめろ!!」という声が聞こえてくるが足を止めることはない。
「やめろと言ってるだロ!!ぐっああ!!」
「「若っ!!」」
「やめてどうするっていうんですか……早とちりはやめてください」
剣を抜いてきたので迎撃してしまったが自業自得だろう。そう思いながら拘束されている二人組に煙を吹きかけるとその拘束を解いた。拘束が解かれた二人はこちらを睨んでくるがそれよりもと皇子のもとへと駆け付けた。
「ご無事ですか、若っ!!」
「我らが不甲斐ないばかりに申し訳ありませぬ!!」
「……あ、ああー、いやいい。お前らに非は無いし、中将殿にも非はなイ。勘違いするような物言いだったが早とちりで襲い掛かった俺が悪イ、にしても容赦がない一撃だったネ。まだ痛むよ」
「技で変に手を抜く方が危ないのは武術を納めてるあなた方なら分かるだろう?」
「そりゃそっか、で話してくれるんだよネ?」
「ああ、ついでにそっちで呆けている者達も聞いて行くか?」
シンと言う国はアメストリスとは在り方が根本的に違う。こっちみたいに大きな一つの民族ではなく、50からの少数民族が集まってできてる。その各民族の首長の娘が皇帝の妾として召し上げられて皇帝の子を産むそうだ。
そんだけ妾が多いと当たり前だが子供も多い、増えてなければ王子が24人、皇女が19人いるらしい。まぁ、そんなに居ると相続とかの問題も出てくる。そして最近は皇帝が病に臥せっていて、民族ごとに覇権争いが絶えないらしい。
死にかけの皇帝が望むものとなれば『不老不死の法』という訳です。皇帝からの覚えを良くしてもらうためにそれらしい物を探すのに躍起になっているのが彼等皇子や皇女です。まぁ、こんな遠く離れた国にまで来るのは珍しいと思いますがね。
「まぁ、中には皇帝の座を放棄するような者も居ますがね。部族を守るために彼らも必死だったという訳です」
「だからと言っていきなり刃を突き付けられる筋合いはねぇよな」
「まぁ、それはその通りですね。そもそもあなた方は不法入国みたいですし、相棒の頼みが無ければ憲兵につき出してますね」
賢者の石でナイーブになってる時にいきなり問われ、さらには刃を突き付けられたとなれば許せる物ではないでしょう。エドワード君からしてみれば間接的にではありますが実際に死にかけてるわけですしね。
「その相棒さんってのを知りたいネ。話の流れ的におれの兄弟のだれかだろう?」
「政敵にならないで済む部族をしってた方が動きやすいですか?まぁ、問題はないでしょう。私の相棒の名前はスー・チー、チー族出身の第三皇子ですよ」
「っ!!それが本当なら何よりの情報ダ……」
チーの一族は鉱山などの資源を多く有し、部族の中でも元から発言権が強く裕福な家だ。それが部族全体ではなくとも皇子に戦う気が無いとなれば厄介な政敵が消えてラッキーなのだろう。
「そのうち貴方を試しに現れるはずですよ。皇帝の座に興味はないが誰が皇帝になるのかは気になる様でしたから、今ももう一人のこの国にたどり着いた皇族の様子を見に行ってるみたいですからね」
「「なにっ!?」」
「どこの民族ダ……錬金術大国までくれば他の部族より優位に立てると考えていたが急ぐ必要がありそうだネ」
「スーに訊けば分かるだろうけどフェアじゃないといって教えてくれないだろうな。困ってたら助ける位はするだろうが、肝心の皇位争いの手助けは期待しない方が良い。敵意がないどころか顔も見たこと無い弟や妹の事を心配するような奴だ。出くわしたら抱きしめて頭を撫でるぐらいしてもおかしくないが、まぁ仲良くしてやってくれ」
「えぇー、いやそれはちょっと……」
「いまごろもう一人の皇女様を可愛がってる頃だろう。アレは普通の家族というのに憧れていてな。家族という物に対する行動はどこかぶっ飛んでるからな。相手を困らせていないといいが」
酒と料理がずらりと並び、とある町にある酒場にて炭鉱夫たちが小さな少女に感謝を継げながら盛りに盛り上がっていた。そしてその中心にいる少女もある意味、元気な姿を見せていた。
「いやぁ、同じシンの人間としてもそうだし、兄としても嬉しいネ。恩を忘れることなく行動するのは忘れてはいけないよメイ。それにしてもあの大砂漠を良く超えたネ。まだ小さいのに皇位なんてものの為に頑張っテ……」
「皇位なんてですっテ!?恵まれてる貴方には分かりませんがチャン家の様に弱小な家は何としてでも皇位を取らなければ滅びるしかないんです。そのために決死の覚悟で来たんです。馬鹿にしないでくださイ!!それと私を膝に乗せないでくださイ!!頭を撫でるナーーーー!!」
「はっはっは、良いじゃないか兄妹なんだからサ。それに貴方なんて他人行儀な呼び方じゃなく、お兄さんと読んでくれて良いんだヨ」
「もうイヤ…助けて…シャオメイ……」
「凄い錬金術師だと思ってたら皇女さまだったのか……スゲーな」
「俺アイツの頭踏んづけちまったんだけど大丈夫かな……」
「お前さん呼ばれてるみたいだけど行かなくても良いのか?」
「凄いねこの猫さん、それに可愛い!!」
「どこにこんなに入ってるんだろ?」
乱入者によって恩人が遠い国の皇女である事が判明しさらに盛り上がる宴、面白い恩人の兄も混ざって場は混沌としていく、そんな中で飲み物を器用に飲んでいる響く主の助けを求める声は小さな大熊猫には届かなかったようだ。
前回の後書きでバリーについても書くと言ったな。あれは嘘だ!!
まぁ、冗談はほどほどにしてあまり違いを出せそうにないというか変えなくても大丈夫そうなので飛ばしました。ロス少尉の所では絶対出るしね。
今回も短くなったし、投稿が遅れて申し訳ない限りです。やっぱりこの小説書くのに時間がかかるので何卒許してください。
そしてスー・チーについてですが民族の名称とかは判明してないし適当に考えました。皇族らしいことも出来るけどあんまり好きじゃなく、家族の事が好きで、恵まれてるからこそ普通に憧れてます。
とまぁ、それでは久しぶりにいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。