噴煙の錬金術師   作:ひよっこ召喚士

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4.5ヶ月かけないと書けないのかなって言う程に遅い更新で申し訳ありません。

またまた久しぶりですし、まだ読んでくれてる方がいるのか私でも疑問なレベルですが投稿です。

そして、何故かこれが今年最初の投稿なのであけましておめでとうございますとめちゃくちゃ遅いですが一応言っておきますね。

※一部内容を変更しました




14 暴れる者と暴く者

 

 

 

SIDE:フューム

 

 

 中央に着くやいなやエルリック兄弟とは別れる事になり、やはりあいつらに警戒されているのか直ぐに仕事へと戻された。そのせいで情報収集にも手間取る程だ。

 

「帰っきて早々に申し訳ないですね。結局まだ弟さんにも会えてないでしょう?」

 

「いえいえそういう約束ですシ、それに話してませんが途中で顔は見れましたからネ。落ち着いたら会いに行きますヨ」

 

 必然的にスーに動いてもらうことが多くなり、彼が集めた情報を聞くのだが会うだけでも手間ひまがかかるから中央は面倒だ。

 

「それなら早速聴いても良いですか?まともな情報は入りませんからね。留置所襲撃に関わる情報、それとあなたの知り合いの方についても」

 

「そっちについては棲家を見つけたヨ…っと先にちょっとこれをみてくださイ」

 

 そう言うとスーは取り出した紙にスラスラっと錬成陣を描くと紙に対して錬丹術を発動させ表面に精密な顔を浮かび上がらせた。

 

「なにやら会話をしていたようですが見覚えハ?」

 

「ファルマン准尉……ということはマスタングさんが最初から噛んでるんですか」

 

 まぁ、白か黒かは私達には最初からわかってる事だ。マスタングさんも流石に不自然さには気付いている。あれと関わりがあるなら余計に……もしや気付いてる可能性すらあるかもしれない。

 

「危ない橋を渡ってる……としか思えませんね。もしかしたら数日以内に動きがあるかもしれませんよ」

 

「ンー…仕事はしますガ、弟とその仲間をみても良いですかネ?」

 

「向こうにバレなければ、と言いたい所ですが中央だと動くかもしれない連中が面倒です」

 

 正直まだ顔が割れていない…いや、存在すら割れていないスーという手札を晒したくはない。とはいえ現状で私が出張るわけにもいかない。

 

「いや、なんとかしましょう。ですが働いて貰いますよ?」

 

「はは、流石だネ…助かル」

 

 


 

 

「やぁ、エリザベス!元気かい?」

「ああ、どうしても君の声が聴きたくなってね」

「大丈夫だよ。彼女は今休みだから」

「最近、仕事が一つ片付いてね。私の肩の荷が軽くなったから休みを取らせた」

 

「どうよあれ」

「ホークアイ中尉が休みになったとたんこれだ」

「本当にあの人、「お守り」だったんだな…」

 

 中央にやってきたマスタングさんの部屋の近くまでやってくると面白い会話が聴こえてくる。それを見張りというなの同僚が呆れた様子で見ている様だ。

 

「マスタング大佐は居るか?」

 

「ッ!!ラテジスト中将!!」

「マスタング大佐はおりますが、その……」

 

「あぁ、大丈夫だ。彼とはイシュヴァール以来の仲だ。どんな人間かは知っているよ。ご苦労」

 

「「ありがとうございます!!」」

 

 心底楽しそうに会話しており、電話先の相手と窓の外の景色に夢中になっているように見える。相変わらずやらしいと思いつつ、私は特に気にせずに彼に近づいていく。

 

「私も中央に来てから休み無しだったからね。そろそろ休暇を取ろうかと思ってる」

 

『あらどこかへおでかけ?』

 

「最近釣りにはまっててね。一緒にどうだ」

 

 すぐ近くまでくれば電話の音を多少拾うことも出来る。それも職場という騒がしさとはかけ離れた場所だから出来る事だが……

 

「釣りも良いですが先にこちらの書類を提出して貰えると助かるんですがねぇマスタング()()。あぁ、電話は切らなくて結構ですよ」

 

 私の言葉に反応すると少しだが悪い笑みを浮かべている。これでも結構関わりが深いですからね。

 

「おや、それは助かるな」

 

『ロイさん?』

 

「あぁ、いやこっちの話だ。実は上司が来てしまったね」

 

『あら、今日の電話はもうおしまいになりそう?』

 

「いやなに、古馴染みでね融通が利く相手だよ」

 

『あら、その上司さんも悪い人ね』

 

「私の方が歳は上だから少々情けない話だが、いつも助けられててね。今回もフォローしに来てくれたみたいだ」

 

「私の仕事が停滞すると困るだけですよ。ですが釣りとは中々にいい趣味ですね。どんな所でやってるんですか?」

 

 実際に書類はあるし提出が遅れてるのも事実なので困ってるのは本当だ。まぁ、色々と忙しいんでしょうがね。

 

「おすすめの釣り場かい?あそこは少し古ぼけた所だが静かでいい場所なんだ。景色もなかなか良くてねエリザベスには高台からの景観を楽しんで欲しいね。」

 

「まぁ、行くんなら気をつけてくださいよ。釣りに行って国家錬金術師が溺れ死んだなんて三流ラジオにも流せませんから……とりあえずここらの書類はチェックさせて貰いますよ」

 

 大通りから離れた場所で待ち構えて、名前からして我らの鷹は上に控えてるみたいですね。他にも二人ほど居るみたいですが……

 

『あら、それは楽しみね…っとごめんなさいロイさん。ケイト!お客様が来たわ。はいはーい。ジャクリーンを呼んで来てくれる?ジャクリーン、客が来ましたよ』

 

「お店は中々に繁盛してるみたいだね。儲かっているようなら良かったよ」

 

『そうね。今のところ問題はなくやらせてもらってるわ。ご心配ありがとう……ドッ!ガシャ!』

 

「大きな音がしたようだがどうした?」

 

『大丈夫よ。お客さんがジャクリーンにいたずらしたから少し叩いてやっただけ』

 

「相変わらず手厳しいね。エリザベス」

 

 何かしら動きはあった様ですね。そろそろ動き出した方が良いかとも思いますが、こちらの合図もまだですかっと、思っていたらちょうど来たようでマスタングさんから少し離れて話を聴きに行こう。

 

「フューム中将、研究所の方から伝言が届きました」

 

「ああ、ありがとう向こうはなんて言っていた?」

 

「ええっと『現在キメラ2体の変動を確認、錬丹術と照らし合わす必要がある』との事でした」

 

「なるほど……ありがとう」

 

 これで動き出す必要が出てきましたね。マスタングさんの方もなにやら問題が起きているようだ。

 

「マスタングさん、電話を終えたのなら少し外に出て話をしませんか?仕事の話も進めたいですし、人手が足りないのでこちらの人間も呼びますが」

 

「…!あぁそうだな。遅れてる分、急ぐとしよう」

 

 これで外に出た理由は作れるでしょう。口裏を合わせるくらいならそう難しくはない。さて、本当に忙しくなりそうだ。

 

 


 

 

 マスタングさんと共に外に出て車に飛び乗る。ここらには居ないのは確認しているが念のため姿を隠す様に身体を丸め、覗き込まれても荷物にしか見えないよう服を弄る。

 

「器用なものですね」

 

「身を隠すには便利な身体ですよ」

 

「鋼のはそんなこと絶対思わないでしょうね」

 

 小さいと言うのはそれなりに利便性があるのですが彼は自分の小ささを酷く嫌悪していますからね。何かしらトラウマでもあるのかってレベルなのは弱点に繋がるので問題ですけど。

 

「それで貴女の人手と言うのは任せても大丈夫なんですか?」

 

「武術も嗜んでますし、なんとかしますよ」

 

 特に気の技術においてはかなりの使い手だ。私もどうにか身につけはしたものの熟練度でいえばかなりの差がある。そしてなにより……

 

「あれは私の師でもありますから」

 

 マスタングさんにはまだ伏せておきたいので伝えませんが錬丹術の力量も含めればそう簡単にやられる男ではない。

 

 


 

SIDE:ホークアイ

 

 

 居場所を嗅ぎつけてやってきた男、銃弾をいくつ撃ち込んでも死ぬことなく再生する。正真正銘の化け物。身体を捕まれ、もうダメかと頭に死が過ぎったが、想像する最悪の結果は訪れなかった。

 

「かは…ごほごほっ」

 

「中尉!!大丈夫ですか?!」

 

「えぇ、なんとか。それよりも」

 

 突然、それこそ降って湧いて来たかの様に現れた存在。なにやら仮面を付けて顔を隠しているが声からして男であると推測できる。助けられはしたが何者なのか分からない現状では気を付ける必要がある。

 

「向こうは心配なさそうなんでネ。少し君の相手をやらせてもらうヨ」

 

「おまえ、なに?じゃまするな!!」

 

 丸っこい身体をした化け物は大振りな動きで仮面の男を攻撃するが身体を反らすようにほんの少し動かすだけで避けている。

 

 避けられ続けている事に苛々したのか更に攻撃を繰り返し、先程私にやろうとした時と同じ様に相手に噛み付こうともしたがそれも意味を成していない。

 

「時間稼ぎに専念しても良いんですガ、たまには私もやらせて貰いますヨ」

 

「あれは、黄色い錬成陣?」

 

「という事はあの人は錬金術師?!」

 

 さり気ない動作で懐に手を入れるとその両手には一部には赤が含まれている様ですが黄色を多く用いて錬成陣がびっしりと描かれ、掌より一回り大きいかなり厚みのある紙を親指で支えるようにそっと持っていた。

 

 錬金術が発動する際に発生する反応が仮面の男の両手から発生する。周囲への影響がどれだけあるか分からない為に近すぎず遠すぎない位置へと移り様子を窺う。光が収まったその手には……

 

「投げナイフ?!」

 

「いえ、確か苦無と呼ばれる汎用性の高い武器兼道具の様なもの…サバイバルナイフとかと近いものよ」

 

「いえ、だとしてもその材料は何処から……?」

 

 フェリー曹長の疑問も最もで私も考えていた。私は言わずもがなマスタング大佐に着いていく上で全員が触り程度の錬金術の知識は持っている。

 

 仮面の男の周囲の壁や地面に変化はない。懐に素材となるものが隠されているのか、そうでも考えないとあの武器を何処から持ってきたのかが謎になる。

 

「さて、どれだけ削れば死ぬかナ?」

 

「なに……あ?」

 

 動いたのが見えなかった……気付いた時には化け物の身体が斬り刻まれ全身から血を吹き出し、顔が線でも入ったかの様にズレていった。何をしたのかは分からなかった。ただ一つ言えるとすれば……

 

「速い」

 

 私が苦戦した相手が動くことすら許されずに斬り刻まれている。それも再生するそばから的確に腕や脚の筋を斬ることでだ。

 

 無理に動こうとすれば掌や脚を打ち込み、吹き飛ばす事で…行動へ持っていかせない徹底的な立ち回り。見える範囲だけでもそれらが流れる様に自然な動きで行われているのが分かる。

 

 危なげもなく化け物を壁際まで追い詰める。再生する化け物と言えど痛みや恐怖はあるのか、それとも再生にも限界があるのか動き自体が鈍くなった様に見える。

 

「そろそろ来るみたいなのでご退場願おうカ!」

 

 力強い声と共に苦無を投げたかと思うとそれらは化け物に刺さる事はなく、綺麗に相手の両脇へと突き刺さった。

 

 あれ程の腕前の者がミスをしたとは思えない。それならばその行動に意味がある筈だ。何かが起こる…そんな予感を感じていると最初に取り出したのと同じく錬成陣の描かれて紙を取り出し足元へと落とした。

 

「それじゃ、サヨナラ」

 

 呟くといよりは囁くと言ったほうが良い、場面が違えば優しくも思える声色で発した言葉と共に錬成反応が化け物の足元に現れると見慣れたものとよく似通った炎と音が響き、化け物は吹き飛ばされて外へと落ちていった。

 

「爆発?!大佐と同じ?!」

 

「いえ、大佐のあれは大佐だけのもの……それはありえないわ」

 

 爆発を起こす錬金術というだけならそれほど珍しくはない。大佐以外にも一人有名な国家錬金術師があの場にも居た。それに錬成反応は地面から苦無へと延びていたのが見えた。しかし、専門家ではないのは百も承知だがどの様な過程でそれが起きたのか検討もつかない。

 

「お疲れ様です」

 

「なっ?!フューム中将?!」

 

「私も居るぞ」

 

「「大佐!!」」

 

 何故ここに来たのかは問いただす必要がありますがおそらく仮面の男はフューム中将の手のものですか……どうやら私達は助かった様ですね。

 

 


 

SIDE:フューム

 

 

 私が声を掛けると誰であっても驚かれる事の方が多いですね。立場故なのかそれともタイミング悪いのか、それとも私自身の問題か。

 

「それにしても貴方にしては派手にやりましたね」

 

「合図代わりにちょうど良いかと思いましてネ」

 

 そう言って足元の紙を拾い笑ってみせる。普通の武器も使うがスーが普段から使うのは錬成陣が描かれた紙だ。

 

 ただの紙の場合もあるがさっき使ったのはリンや鉄を含ませている代物だ。だが錬成陣の大部分は染料としても使われていたトリニトロトルエンや硫黄などになる。普通に黒鉛、要するに炭素も使われている。

 

 トリニトロトルエンは爆薬だが分解すれば酸素、炭素、窒素、水素とありふれたもので、使われている元素でいえば窒素以外は紙と一緒だ。

 

 とはいえ硬化して武器にするための炭素、起爆様にとリンや硫化鉄を含ませたりとしているうちにそこそこの厚みが出たが二枚も使えば錬成反応に周りの大気も巻き込むことで手榴弾程度の爆発は起こせる。

 

 遠隔錬成に使った陣は苦無の持ち手の手前にある普段は紐を通したりして使う事もある輪だ。そこに光が通ることで影による円が作られ足元から苦無までの流れを繋げる。

 

 一枚でも目眩まし程度にはなるし、重さは200g弱と持ち歩くにもそんなに苦ではない。短い小説よりも小さいし薄い。硬化して武器として使うにも軍刀なんかは1キロを軽く超えるのを考えれば取り回しだけをみればかなりの優れものだ。

 

 まぁ中は空洞になるので耐久性は低いがそれは使いようだ。攻撃を受けたり、盾として使うのに向かないのはもちろん。攻撃においても骨を断つのすら厳しい。それでも肉を斬り裂くには十分だし、使い手が優れていればそう簡単に壊れはしない。

 

「あいつら相手ならそのまま貼り付けてやれば良かったと思いますがね」

 

「いやぁ人前ではやらない方が良いでしょウ?」

 

 ホムンクルスと言えど構成元素は変わらない。それならばそのまま錬成してやればもっと効率的に攻撃出来るが……マスタングさんの部下がいる場ではあまり適しませんか。

 

「貴方は残りますよね?」

 

「えぇ、可愛い弟とその部下が戦ってるみたいですからネ」

 

 さて向こうも落ち着いて来たみたいですし、私も下に降りますか。また車で移動になりそうですが後ろの座席でマスタングさん達がが来るのを待つとしましょうか。どうせ運転席の隣にはホークアイ中尉が座るでしょう。

 

 


 

 

SIDE:マスタング

 

 

「なんで出て来たんですか!!私達に万が一の事があっても無視していれば敵の追求を逃れられるのに!こんな所にのこのことバカですか!!」

 

「あーわかったわかった私がバカだった!!」

 

 作戦を無視して前線までやってきた事に関する叱責は耳に痛いが反省などは何時でも出来る。

 

「あ、目標が逃走開始!」

 

「むっ…よしいいぞ。巣に逃げ込めよ……」

 

 フェリー曹長から対象の動きを報告聞く。対象が動き出したからには逃がす訳にはいかない。予定通りに進めば良いのだがとりあえず話はここまでにして行くとしよう。

 

「曹長撤収だ!ゴミひとつ残すな!」

 

「はい!」

 

「ハヤテ号は曹長と一緒にいなさい!」

 

 この場はフェリー曹長に任せて中尉と共に下まで向かう。煙管のに借りを作ってしまった形になるが中尉達が無事だったことには感謝するとしよう。

 

「中尉!」

 

「はい」

 

「生きてて良かった」

 

「ご心配おかけしました」

 

 下まで降りきるとここまで乗ってきた車に中尉を載せて直接対処に当たっていたハボックの所まで行き、状況を確認する。

 

「目標は!?」

 

「バリーが追ってます。急いでください」

 

「ファルマンは留置所襲撃犯に監禁されていた事にしろ!被害者を装え!」

 

「はっ!」

 

「我々は目標を追う!」

 

 ファルマンに指示を残して直ぐにでも発進させようとしたところに聞き慣れた声と鎧の音が響く。そちらに視線を送るとアルフォンス・エルリックの姿がそこにあった。

 

「アルフォンス君何故ここに…」

 

「ヒューズさんの件と関係があるんでしょう?」

 

 何処から嗅ぎつけてやってきたのか…兄弟揃って本当に何をするのかわかったものじゃないな。こういうのに限って覚悟が決まっているから厄介だ。

 

「……来るか?」

 

「はい!」

 

 念のため尋ねると迷うことなく返事が返ってきた。無茶ばかりすると兄に苦言をていする割にはこいつも似たようなものだな。

 

「アルフォンス君を連れて行くのはまぁ良いと思いますが、この車に全員乗れますか?」

 

「「「「あっ!!」」」」

 

 煙管のに言われるまで失念していたとは……私としたことが事を急ぎ過ぎて焦りでもあったか。ふむ、時間はないしどうしたものか。

 

 


 

SIDE:フューム

 

 

「見失うなよ」

 

「逃さねぇよ!どこへ逃げたってわかるさ。げっへっへ……魂がざわついてたまんねぇぜ」

 

「市街地中心部へむかっていますね」

 

「ああ、あまり目立つのは好ましくないな」

 

 見た目を変える程度ならまだしも耐久を落とさずにサイズを大きくするだけの材料は無いので仕方ないのは分かります。どうにかスペースを確保して全員で車に載ったのは良いですがなんとも不思議な感覚ですね。

 

「大佐、さっきの黒髪の長い細身の…えーと…ウロボロスの入れ墨がある人に会った」

 

 正直なところ中々に興味深いですね。こうして体感してみると更に気になることがありますね。響き渡る声はいったい何処から発せられてるのでしょうか。

 

「前に一度大五研究所で会った事があるんだ。たしかエンヴィーって名前。その仲間と思しきグリードって人にも南部で会った」

 

 南部のあの場での出来事は色々と思うところもあるでしょうに迷わずに情報共有の為に話すことが出来るのは強いですね。まぁ、私が評価する資格など無いでしょうが。

 

人造人間(ホムンクルス)だった」

 

 次の瞬間、ギャギャギョリ!!と物凄い音を立てながら車が乱暴な動きをした。流石のマスタングさんもとんでもない情報に思考を持ってかれたんでしょうが……

 

「うぎゃおわ!!あぶねェなバカ!!」

 

「受け身を取りそこねて頭を打ち付けたのですが?」

 

「あぁ、二人ともすまない」

 

「フューム中将、大丈夫ですか?!」

 

 背が足りない故に仕方ないですが鎧の中からでは外の様子は探りにくいので車が大きく揺れた際に中から思い切り打ち付けました。

 

 アルフォンス君、心配はありがとうございます。それにしてもコレ地味に痛いですね……それだけ鎧が丈夫という事でしょう。

 

「ニャア〜」

 

「おや、あなたも心配してくれるんですか?」

 

 鎧の中に猫を入れてる事があるとは聞きましたがけっこう可愛いものですね。目的地に着くまでは無理に会話に混ざらずに待ってるとしましょう

 

 


 

 

「本当にここに入って行ったのか?」

 

「間違い無ェ」

 

「第三研究所、やはり軍の施設か。錬金術研究所は大総統府直轄だ。上層部をゆするきっかけができた……それだけなら良かったんですが、フューム中将?」

 

 アルフォンス君と一緒に猫を逃していた私にマスタングさんから少し鋭い声がかかる。何を言いたいのかは予想がつく。

 

「国家錬金術師を含め錬金術関連は全て、研究所についても貴女の担当ですよね?」

 

「はい、そういう立場には確かに居ますがそれこそ居るだけですよ。祭りの飾りとなんら変わりはありませんよ」

 

 トップに据えられてはいるのは事実だ。ただし研究施設に対しての権限こそ持っているがそれぞれの研究所の担当者との関わりは無いに等しい。私が正確に知ってるのはプロジェクト様に作られた半分、いや7割ほど私物化している新しい研究所だけだ。

 

「それでも何をしているか一切知らないなんて事は無いでしょう?」

 

「本当に知りませんよ。予想くらいなら幾らでも出来ますがね」

 

 互いに睨み合うかの様にじっと目を交わす時間が過ぎる。そんな暇は無いと思ったのかマスタングさんが折れた事でこの時間は終わった。

 

「はぁ、敵ならここまで回りくどい事はしない……そう勝手に思わせて貰うよ」

 

「ついでに無能で無いことも祈ってみたらどうですか?」

 

「有能過ぎるのも考えものに思えてきますがね」

 

 無能は何をするのか分からない、有能は何をする気なのか分からないですかね。貴方もこちら側だと思いますがね。

 

「げはははははは!!」

 

「あ……こら!!」

 

 そんなやり取りをしている間に我慢がきかなくなったのかバリーが研究所へと駆け出していき、ハボック少尉の注意も及ばす、敷地内から叫び声が聞こえ始めた。

 

「あの野郎完全に自分を見失ってやがる!!」

 

「……好都合だ」

 

「へ?」

 

「留置所襲撃犯の捕獲に出向きますか?」

 

 理由付けとしては十分でしょう。さて、本来であればスーどころか私が出てくる訳にはいかない場面です。スーは他に仮面が居るので私の手とは分からないでしょう。

 

 それに見守りを終えた後の処理は既に指示を終えている。残る問題は私がここに居るのがバレなければ関係ない。そう考えると隠して開発した小道具を取り出す。

 

「な、なんですかソレ?!」

 

「蠢いてる……」

 

「めちゃくちゃ不気味っすよ?!」

 

「煙管のそれを何に使うのかは知らんが説明を先にしてくれんか?」

 

 まぁその反応にも納得は出来る。これに限っては見た目が大衆受けしないのは理解している。瓶の中に詰め込まれたソレの見た目を説明するなら脈動する肉塊ですからね。

 

「これは変装に使う道具ですよ。動いてる様に見えますが生きてる訳では無いですから安心してください」

 

 そう言いながらそれを顔に貼り付けるとそのまま錬成して全く違う顔を作り出す。そして、その瞬間にかなりの痛みが走り顔をしかめるが気付かれる事はない。

 

「表情が動いてる様に見えますが貼り付けただけではないのか?」

 

「機械鎧と一緒ですよ。錬成時に顔の筋肉や神経と一部を繋げてるんですよ。かなりの痛みがありますがね。血は通ってないので傷をつけられると不味いですが念のため仮面を上から着ければ気付かれる事はありませんよ」

 

 切りつけられたりすれば直ぐに作り物だとバレてしまうが戦場にでも出向かない限りはそんな自体には普通は出くわさないので顔を誤魔化す程度ならこれで十分だ。

 

「声を変えてるのは自前の技術ですか、相変わらず多彩な事で……」

 

「背丈や戦い方でバレるのでは?」

 

「流石に煙管は使いません。背丈も誤魔化す方法はありますし……アァ、喋り方も変え、シンの訛りを混ぜるヨ」

 

 そう言って周囲の地面から少々岩石などを貰い受けて鎧の様ながわを、手足の延長を作り上げ、サイズを合わせた軍服を錬成して羽織る。

 

「どうやって動く気で……まさか?!錬成し続ける気ですか?!」

 

「違和感を隠す程度ダ。後は自力、内部は空洞だかラ、そこで錬成すれば外に光は漏れないヨ」

 

「中身を知ってると違和感しかないが、ばれる心配はいらなさそうだな」

 

 自身の体重をゆうに超える義手義足だが短時間なら戦闘も問題ない。さて、キツイでしょうがなんとかやるとしましょう。

 

 


 

 

SIDE:リン

 

 

 ようやくみつけた不老不死の手がかり、気配こそ普通の人間とは違う、あり得ないものだ。それだからこそ信じさせやすい。コレを連れ帰る事が出来れば一族を……

 

「っと、そう簡単にはいかないカ!」

 

「若!!」

 

「こっちは大丈夫ダ。目の前の敵に集中しロ!!」

 

 望んでいるものとはいえ、こうして敵として戦うと不老不死というのは厄介だな。いくら攻撃しても再生し、向かってくる。思いもよらない反撃を喰らいかける事もあり、集中を切らす事が出来ない。

 

 何人もの人間を押し固めたかの様なコイツラの気配は分かりやすく感知は容易い。だがこうも疲れを知らないかのように襲いかかられてはジリ貧となる。

 

 猛獣の様に迷うことなく噛み付き、喰らい殺そうとしてくる相手も恐ろしいがランファンの戦っている相手もかなりやばい。

 

 大きく動く度に地面が割れ、着地した場所がへこんでいる。それだけの質量があるという事は一撃でもまともに喰らえば死にかねない。

 

「原理が分かれば良いんだがナ」

 

 とりあえず殺されないように相手を殺し続ける。それで死ぬならばコレは不老不死足り得ない。そう割り切って戦闘を続ける。

 

 向かってくる巨体を斬りつけながら攻撃を繰り返す。喋りはすれどそこまで知能は高くないのか同じ攻撃ばかりが来るので対処だけなら不可能ではない。

 

「不味イ…っ!!」

 

 少し離れた位置で戦っているランファンが敵に捉えられたのが目に入り剣を投げて届ける事で救出を図る。どうにか上手くいったようで敵に刺さった剣を即座に使い、窮地を脱出したようだ。しかし、流石に武器無しでコイツの相手は厳しい。

 

「ランファン!!早く剣を返せ!!おねがい!!」

 

「若!!」

 

 慌てて投げ返された剣を手に取り、素早く持ち直して後ろからチャンスとばかりに大口を開けて迫ってきた男を切り抜ける。顔を半分にしても自分の手で押さえて直ぐに再生する。

 

「…もうヤダこいつ。なぁそろそろ大人しく捕まってくれないかナ。悪いようにはたぶんしないからサ」

 

 余裕とはいえない。しかし、相手がこちらを殺す気で来てるのに対して再生こそするものの何度も殺すことに成功している。これでついて来てくれれば楽なんだが……

 

「グラトニー、人が増えてきた」

 

「うん、食べていい?!」

 

「いや、飲んでいいよ」

 

「見物人もこいつらもこの嫉妬(エンヴィー)の姿を見た奴は何もかも全てだ」

 

 空気が…気配が変わったかのような錯覚を覚える。頭の中に警鐘が鳴り響き、ゾワゾワとした感覚が危険を知らせる。だが何を仕掛けてくる気なのかは分からない。ただただ不気味な雰囲気にのまれない様に意思を強く持つが、逃げの一手も考えなくてはな……

 

「流石にヤバそうなんで、ソレは止めさせて貰おうカ?」

 

 そんな事を考えていた時に何処からか声が聞こえてきたかと思うと目の前で何かを仕掛けようとしていた化け物二人に何かが突き刺さった。

 

「いでっ?!」

 

「なんだ?!こんなもの!!」

 

 それは強度はあるようだが一見するとただの紙と変わらないように見える。それほどダメージはないのか怒りながらも引き抜こうと奴らが動いた瞬間、その場に光が走った。

 

「なぁっ?!」

「あべっ?!」

 

 その光は紙が触れた所から溢れており、たった数秒の光が晴れると紙が刺さった場所が抉られたかの様に消失して奴らが身体を倒している姿があった。

 

「おいコレは?!ごっそり持っていかれたぞ?!確かあの時も……!?」

 

「うぅぅ、一気に死んじゃった……?」

 

 再生こそしているが遅い?そう感じさせるかのように慎重に動いて辺りの警戒をしている。畳み掛けるチャンスか…?

 

『何をしているのかと思っていましたが厄介な伏兵が居るようですね』

 

「!?」

 

「『プライド』か!?何しに来た!!」

 

『仕事も片付かず街中で醜態をさらし、更に我々の懐にまで侵入を許すとは情けない』

 

「懐に侵入……!!」

 

『エンヴィー、君はいささか雑すぎる。今日は引いた方が良いでしょう』

 

「でも…」

 

『黙りなさい小童が、これ以上文字通り醜態をさらすと言うのですか』

 

「……っ!!引くぞグラトニー」

 

 何処から聞こえて来てるのか分からない謎の声は目の前の二人の仲間に間違いはなさそうだ。嫌な気配の原因の一つはおそらくコイツだ。

 

「おい、命拾いしたな」

 

「どうかナ?やってみないとわからないヨ」

 

「ふん」

 

 相手は落ちていた服を拾うとそのまま揃って夜の闇へと消えていった。辺りから重い空気が消えたのを確認する。

 

「ぶはぁ!なんだありゃ!!」

 

「若!!申し訳ありません。せっかくの不老不死の手がかりを逃してしまいました」

 

「いや…奴ら何かわからないがかくし玉を持っている。まだ他に仲間がいたようだし本当に命拾いしたな」

 

 あれは今の俺達が相手にして勝てていたか正直怪しかった。強がってはみせたがあのまま戦っていたら大望を叶える前に死んでいたかもしれない。

 

「まったく……面白い奴が多いなこの国は!」

 

「それには同意するけど、まぁ悪いところではないだロ?」

 

「この声は!?」

「何奴!!」

 

「話は後にしようカ。とりあえずメシにでも行こうじゃないか可愛い弟よ?」

 

「……疲れてるし、俺も訊きたいことが幾らかあるんで喜んで行かせて貰おうかお兄さん?」

 

「若?!危険です!!」

 

「ランファン、さっきのを見ただろウ。殺す気ならさっきの隙を狙わない理由がないヨ」

 

「そういう事サ。金はそれなりにあるから遠慮せず食うと良いヨ。話はそれからダ」

 

 どんな話し合いになるかは分からないがこの地にいち早く辿り着いていた事からもその優秀さは理解出来る。実りあるものとなれば良いんだがな。とりあえず、しっかりと息を整えて落ち着くとしよう。

 

 


 

 

SIDE:フューム

 

 

 

 留置所を襲撃した殺人犯を追って来ただけの軍人とその仲間を装って研究所内に入り込むのはとても容易かった。

 

 実際に襲撃が起きており、混乱の中であったために騙すのも簡単だったのだろうが本当にスラスラと口からでまかせが出るものだとマスタングさんには感心させられる。

 

 動くのに邪魔な兵を遠くへと離し、バリーが移動していった痕跡を身内だけで追っていくとなにやら地下の怪しげな通路へと辿り着いた。

 

「バリーの奴はどっちへ行った?」

 

「二手に分かれますか?」

 

「左だネ」

 

 あまり口を出さずに黙って着いてきていた私が口を開いた事で一気に視線が集まる。何故分かるかと言うのは簡単で気配は読めなくても観察すれば痕跡はみつかる。

 

「暗がりで分かりにくいガひび割れた箇所に出来た染み、まだ新しイ。おそらくハ、バリーの肉体から落ちたものだろウ」

 

「なるほど、それならば戦力をわざわざ分散させる必要はないな。慎重に進むぞ心してかかれ」

「「「はい」」」

 

 敵の本拠地かもしれない場所を進むという事もあって警戒はどれだけしても足りないくらいだろう。マスタングさんの判断は悪くない。

 

 隊列をしっかりと作り、前後を見ながらゆっくりと進んでいくと、点々と続く真新しい血液の跡もみつかり、更に奥へと薄気味悪い施設を横目に見ながら進んでいき大きな扉のある広い空間へと出た。

 

「遅かったね姐さんたち」

 

「臭うな。これは腐敗臭か?」

 

 私は二重に仮面をつけている様なものなので感じにくいが確かに嗅ぎ慣れた死体置き場の様な臭いが辺りに広がっている。

 

「へっへっへっ、みっとも無ェ物見せちまったァ。見ろよオレの肉体。こんなに腐っちまってよゥ……バリーの肉体によそ者の魂をぶち込んだからズレが生じたんだろうよ。元々別だった物同士だ。反発して当然だわな」

 

 バリーの推測は正しく、同一のものでない限り大抵の物は反発し合う。肉体に魂、精神なんて繊細なものなんて水と油以上に否定し合う事だろう。

 

「……この身体も……鉄の塊にヒトの魂……」

 

「まさか?!」

 

「お前にも反発が?!」

 

「アルフォンスにとって一大事なのは分かるが暗い考察は後にしろ」

 

「敵が来るヨ?」

 

 私達が来た方向から足音が響いて来たのに早く気付いた私とマスタングさんが警戒を伝えると気持ちを無理やり切り替え、全員が戦闘態勢に移る。

 

「仕留めそこねた上にここへの侵入を許してしまうなんて、何をやってるのかしらあの子達は」

 

「ソラリス…なんでここに…」

 

「知り合いか!?」

 

 ふむ、ハボック少尉と彼女に接点があったのですか。あちこちでやることがあったために情報収集が少々疎かになってましたかね。

 

「ジャンとお付き合いさせてもらっているわ」

 

「おい、ウロボロスの入れ墨だぞ」

 

「…俺も今知りましたよ」

 

「ハボック少尉に近付いた目的は情報収集でしょうか」

 

 探りにかかっていた敵に逆に探られていたと知り、全員に少なからず驚きはある。特にハボック少尉の動揺は大きく見える。

 

「ソラリスねェ…似合わねぇなァ。げっへっへっ、笑っちまうぜ?ラストさんよォ!!」

 

「ナンバー66。そう…あなたをエサにまんまと釣られたって訳ね。なぜ大佐に協力したの」

 

「へっへ…オレぁこんな性格だ。元々おめェらの下でいつまでもこそこそと生きてくつもりは無かった」

 

 元々関わりがあった者同士の会話だ。なんらかの情報があるのではないかと邪魔をせずにきいている。

 

「だからってシャバに出てもおめェらの影がちらついて思いきった事ができねェ。この状況を打開するためにゃおめェらがいなくなってくれるのがありがてェのよ」

 

 犯罪者らしい身勝手な考えではあるが、あれだけ我の強い男が化け物の下で窮屈な思いをするのは耐えられないのだろう。

 

「なによりおめェさんを斬りてェ!!」

 

 世間の道徳からは少しズレているであろう欲を口にし、人斬り包丁を手に持ってラストに向けて駆け出した。

 

「断末魔を聴かせな!!ラストさんよォォ!!」

 

 振りかぶられた刃がラストに触れるかどうかといった所で鋭く伸びた爪によって鎧がバラバラに斬り裂かれた。

 

「バリーの奴……!!」

 

「……ラストと呼ばれていたな。マース・ヒューズを知っているか?」

 

「ええ、よーく知ってるわ。頭の回るいい男だったわね。止めを刺せなかったのが残念だったわ」

 

「…お前程度にやられる男ではない。知っている事を話して貰おうか」

 

 親友を傷つけた相手が目の前にいる割には冷静ですね。生きている可能性があるが故でしょうが、怒りに流されないのは良いことです。

 

「ふふ、人数差があるとはいえ人間が私達に勝てるとでも思ってるのかしら……哀れね」

 

 そういうと素早く爪を伸ばし攻撃を仕掛ける。一番初めに狙ったのはマスタングさんだった。おそらく、焔の錬金術を封じるためかその軌道は手首を斬り落とす動きをしていた。

 

「……横合いから手を出すなんて不躾ね。それにみない顔、というより仮面ね。外であの子達が相手をしている相手と同じかしら?」

 

「油断し過ぎかナ。あの女の攻撃は距離は関係ないゾ」

 

「すまない。フォロー感謝する」

 

 防いで貰わなければ今頃どうなっていたのかを考え少なからず油断していた事を自覚したのか少し苦い表現だが、これで全員気を引き締めるでしょう。

 

「外に居たやつは何回死んだと回数を気にしていた。再生にも上限があるはずだ。一気に叩くぞ!!」

 

 戦闘が始まると互いに助けあえる位置取りを心掛けるが、多方面から攻撃的した際のほうが当てることが出来ていた。

 

 それもそのはずで、とてつもなく鋭い斬撃は厄介だが、爪を伸ばしている関係上何箇所にも同時に対処するのは難しい。

 

 大きく振ることで広範囲の攻撃は可能でも多方面の攻防が出来る訳ではないのだ。攻撃を見極めるのは私の役目となり、危険な攻撃は伝達したり、先程と同じ様に妨害することに専念した。普段通り戦えないなりに貢献はしたつもりだ。

 

 ハボック少尉とホークアイ中尉の射撃での援護も効果的であり、ホムンクルスと言えど基本は人間と変わらない。そのために急所に撃ち込まれた瞬間は動きが止まる。

 

 その瞬間にマスタングさんやアルフォンス君が錬金術で大ダメージを与えることで順調に相手を削っていった。

 

「一方的にやられている割には余裕そうだな」

 

「警戒を怠るな。余裕の裏に何があってもおかしくはない」

 

「あら、分かっちゃうかしら?確かに貴方達は厄介よ。それでもそこまでよ……ここは私達の懐の中よ」

 

 ニヤリとラストが笑うと不思議な感覚に襲われた。これはなんだ……何かをしたのは分かる。だがそれが何か……いや、脚は動くのに手が動かない?!何故だ……いや、もしかしてそれが事実なら……

 

「マスタング、アルフォンス、下がレ!!」

 

「何を…?」

「フュじゃない、アルバーさんどうして?」

 

 アルバーと言うのはこの姿の時の偽名だ。敵の前で本名で呼ばれては変装の意味はない。唐突な指示に二人とも疑問を浮かべ、動きが遅い。ラストがゆっくりと爪を差し向ける。間に合うか……

 

「させるカ!!ぐっ!!」

 

「アルバー?!何を…ぐはっ!!」

 

「うわぁ?!」

 

「あらよく防いだわね。気づいたのかしら?それにしても硬いし、血が出ていない。動きが重いと思ってたけど機械鎧だったのね」

 

 無理やり身体を差し込んで幾つかは防いだがマスタングさんとアルフォンス君に爪が届いてしまい、負傷してしまった。即座に死ぬことは無いだろうが治療しなければ大佐は失血死しかねない。

 

「大佐?!」

 

「大丈夫っすか?!」

 

「馬鹿!!動きを止めるな!!」

 

「まず一人!!」

 

 今度は間に合わない…少しでも被害を無くすために攻撃の動作に入るが、一瞬の隙をついてハボック少尉に爪の一撃が深く刺さった。

 

「ちっ、重い筈なのに案外動きは速いのね」

 

「中尉!!ハボックを連れて大きく下がれ!!」

 

「はい!!」

 

 あの復活速度では銃弾も効果は薄い。ハボック少尉の命を守る為にも下がって手当に当たって貰う方が良いだろう。ただ、それが普段通りの状況であればの話である。

 

「……アルバーのおかげで急所は逃れたが、アルフォンス、平気か?」

 

「血印に影響は無いけど、腕が怪しいです」

 

 完全に防ぐことは出来なかったが致命傷でないのであれば後で対処すれば良い。今は現状を立て直すことに集中しましょう。

 

「一応確認するガ、錬金術を使えるカ?」

 

「やはり先程のはそういうことか……」

 

「錬金術が…発動しない……」

 

 ふふふと笑っていたラストの表情が蠱惑的な笑みを浮かべると追い詰めるかの様にこちらへと近寄ってくる。ラストの余裕の正体は分かりました。

 

 まさかこんな手段を持っているとは、陣に作用させる為だけでは無かったのか……挑む存在がいないが故に得られなかった情報ですが少々リスクがでかい情報収集となりましたね。

 

「力が無くなった途端に弱気になっちゃって、それもそうよね。あるのが当たり前のものが取り上げられたのだもの……まるで子供みたい。ウフフフ……終わりにしましょう?」

 

 銃での攻撃も相手の隙を作るのに役立ってはいたが、相手の攻撃を潰していた錬金術が使えないという状況で倒すのは厳しいとみな考えてしまうのか表情は悪い。

 

「前に出ようかナ?」

 

「あら、先に死にたいのかしら?肉壁になるつもりなら意味はないわよ。出入り口はこちら側、横を通り抜ける存在を許すと思って?」

 

 爪での攻撃は一瞬だ。壁を作っても数秒持てば良い方だと言うのに身体を盾にしても諸共斬り裂かれて終わりだろう。

 

「死ぬ気はないサ。それにやられるとは思わないのかナ?」

 

「あはははは!!笑わせてくれるつまらない冗談ね。死になさい!!」

 

 ラストが迷うことなくこちらへ近付き爪の一閃を繰り出す。腕は捨てて良い、ゴトッと重い音を立てて落ちると石の割れた音が響いた。

 

 何かがおかしいと流石に気付かれただろう。だが攻撃は避けた。それにラストの目の前までやってきている。大きく腕を振りかぶるが、避ける気配はない。

 

 良かった。まだ侮ってくれている様だ。次の瞬間には顔の目の前まで残った腕が迫っている。そして、錬成時にみられる反応が目の前で起こり、一気に表情が崩れた。

 

「何故?!ゴハッ!!?!」

 

「いやァ、良かったヨ。急に錬金術が使えなくなって焦ったけド、錬丹術は使えるみたいでネ」

 

 残った腕で殴りつけ。地面に叩きつけながら錬成を行い、地面に縫い付ける様に両の腕と胸の位置に杭を打ち込む。

 

「再生したければすると良いヨ。爪を動かせズ、杭に埋もレ、その場で死に続けロ!!」

 

 打ち付けられた杭から逃れようと自傷覚悟で腕を動かそうとするが再生は核があるであろう肉体側、肩から腕、手、そしてようやく爪の順番で再生する。

 

 それだけの時間があれば杭を錬成し直して縫い付け直すのには十分足りる。胸の杭から逃ればれない以上は大きく狙いがズレる事はない。

 

「な、舐めるなぁァァァァァ!!」

 

「舐め腐っていたのはそちらだろウ?終わりだ!!」

 

 杭に呑み込まれた身体を無理やり動かして起き上がり、右腕を無理やり後ろに隠して再生させ、目の前の私だけでも倒そうと爪を伸ばしたがそれが届く事は無かった。

 

「言ったでしょウ、終わりですヨ」

 

「はぁ、まんまとしてやられてわね。たかが人間と舐めすぎていたのかしら。でも私が死んでも終わらないわ。貴方達の終わりもすぐそこまで来ているのだから……」

 

 往生際が悪く、最後まで不穏な言葉を投げかけ、塵となるように身体が崩れていき、最後に露出した賢者の石が砕け、戦いは終わった。

 

「やったのか…うぅ…」

 

「大佐?!」

 

「少しふらついただけだ。血を流し過ぎた…それよりもハボックは!!」

 

「止血は済ませましたが意識が回復しません。急ぎ医療施設に運ぶ必要があります」

 

「待て待て、どちらも応急処置はするヨ。それとアルフォンス、そこで死んだふりしてるバリーの血印回収を頼んダ」

 

「えっ?!まさか鎧の破片の中に、あ!本当だ血印無事だ!!」

 

 ……気配は去って行きましたね。これで本当に落ち着けそうです。思いがけない収穫はありましたけど、秘密を暴いた結果とリスクが釣り合いませんね。

 

「さて、撤収しましょうカ」

 

 





最近、ハガレンの作品がランキングで多くみられるようになってそれを読んでるうちにようやく書く気が湧いてきた私です。便乗とかでなく、読んでるうちにそういえば、書き途中のどこまでやってたっけて思い出しただけです。(←それはそれでどうなんだ?)

4ヶ月に1話として、1年で3話……さてこの作品は何年後に完結させられるんだろうか…………考えてはいけません。まぁ、なんとかなるでしょう…たぶん…きっと…メイビー……

まぁ、冗談はさておいて死なない限りは書くのをやめる気はないので本当に気長にお待ちくださいm(_ _)m

原作との違いはバリーが回収、錬金術封じを先に知れた。とか当たりですかね。他にも細々とした要素はありますが、どう繋がるかは続きをお待ちください。

※元々はハボック少尉は無事な設定でしたが、後から変更しました。なんか前と違うと思った人は正常です。

それではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。
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