噴煙の錬金術師   作:ひよっこ召喚士

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02 捉えられない焔と煙

「うは…すげーなこりゃ……」

 

 焼けた跡と窪んだ地面を見て思わず声を上げた様だ。初めて目にしたのであれば中々にインパクトがあるだろう。

 

「大佐のアレを見るの初めてか」

「あ…ハボック少尉」

「いったい、どうやったらあんな事が出来るのですか」

 

 するとハボック少尉は丁寧に原理を教えだした。強く摩擦すると火花を発する特殊な手袋と空気中の酸素濃度の調整を錬金術で行う事で出来る。それを聞いてもどこか納得できない表情だったが、それをやってのけるのが錬金術師だと言い放つ。

 

「ちなみに大佐のとなりにいるちっこいのも国家錬金術師だ」

「え!!では、主犯を含む大半を取り押さえたっていうのは!?」

 

 信じられないという様子の他に人間じゃない者を見たかのような畏怖を隠すことなく視線を向けている。だが、その近くを歩くもう一人にも自然と目がいく。背丈で言えば鋼の錬金術師よりも少し小さいぐらいだが、何とも言えない雰囲気を纏っている。

 

「それと、あの方は?」

「さきほど、大佐に続いて『噴煙の錬金術師』と名乗っていたようですが」

 

 ハボック少尉は「ああ…」と呟くと頭を掻きながら説明を追加する。

 

「知ってる奴は少ないのもしょうがないか、大佐と同じくイシュヴァールで活躍して見せ、英雄と並ぶようにイシュヴァールの女傑と呼ばれている。幼くして書き上げた論文から学会では天才とも呼ばれている国家錬金術師、フューム・ヴィガ・ラテジスト()()だ。様々な功績があるが、最年少で中将へ上り詰めた正真正銘のエリートだ」

「中将!?」

「ちなみにまだ二十歳だったはずだ」

 

 先ほど見せた錬金術だけでも驚きだというのに年下でありながら自分たちはおろか、上司よりも上官であるという事実に目が見開いていた。

 

 

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エドSIDE

 

 大佐の仕事を助けちまったのは迂闊だったが、負担を減らしてやった分の代金を貰う権利が出来たと考えればラッキーだった。錬金術の基本は「等価交換」だからなと大佐の方を見る。

 

「今回の件でひとつ貸しができたね大佐」

「……君に借りをつくるのは気色が悪い。いいだろう何が望みだね」

「さっすが♪話が早いね。この近辺で生体錬成に詳しい図書館か錬金術師を紹介してくれないかな」

「今すぐかい?せっかちだなまったく」

 

 そう言うと棚にある資料を確認する大佐だがその手を一瞬止めて振り返った。

 

「そう言えば生体錬成だったら、さっき君たちとも話していた煙管の、いやラテジスト中将もかなり詳しいはずだぞ」

「なにぃ!?」

「彼女は研究だけでなく錬金術を用いたプロジェクトを任されているんだが、いくつか学会とも連携して立ち上げた部署があって、その中に合成獣(キメラ)を用いた研究を行っている部署とシンの練丹術も組み込んだ医療研究を行っている部署などがあったはずだ。彼女自身、少し前に有給を取って年単位で練丹術を学びに行っていたぐらいだし、そもそも錬金術においてこの国で1番の知識人は彼女だよ」

「へぇ、凄い人だったんですねぇ」

「彼女は特殊な形で国家錬金術師に成った。正式な最年少国家錬金術師は君だが、国家錬金術師足り得ると認められた年齢は彼女の方が早かったはずだ」

 

 そのことを聞き少し驚くが、国家錬金術師の試験を行った際に大佐が零した()()と言うのが中将の事なのだろう。しかし、そんなことはどうでも良い。

 

「呑気な事言ってる場合かアル!!大佐、中将が何処に行ったか分かるか?」

「彼女は結構多忙で、各司令部の視察も行っているからもうここを出ている」

「そんなぁ」

 

 せっかくのチャンスを逃したことに落胆していると、大佐がクツクツと意地の悪い笑みを浮かべている。

 

「と普段ならもう此処を発っているぐらいなのだが、不幸中の幸いと言って良いのかテロ騒ぎで列車は運休中、他の足を用意するより留まって報告書を仕上げると言って、空いてる部屋を貸し出している」

「ふざけんな!!わざわざ遠回りな言い回しをして!!で、どこなんだ?!」

「階段を下りて、右の突き当りだ。ついでにこの資料のコピーを渡してくれ、その人物も生体錬成、合成獣の研究者で『綴命(ていめい)の錬金術師』ショウ・タッカーと言う。近辺だと君たちの欲する条件に該当するのは彼位だな」

「他にも居るのか、てか何で中将に渡す必要があるんだ?」

「彼女は年一回の査定とは別に国家錬金術師の()()を請け負っている。要するに国家錬金術師に相応しいか抜き打ちでチェックを行うんだ。君も気を付けたまえ、()()()()で資格取り消しになるかもしれんぞ」

「うるせぇ、大きなお世話だ!!行くぞアル」

「待ってよ、マスタング大佐ありがとうございました」

 

 バタンと扉を閉めると渡された資料を片手に中将が居るという部屋を目指す。()()()()()()()()()と言う忠告を頭に入れはするが、錬金術の権威とも言えるような人物と知り合えた幸運を喜びながら速足で向かった。

 

 

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フュームSIDE

 

 

 貸してもらった部屋でリオールでの騒動についてとユースウェル炭鉱でのこと、それと今回のトレインジャックについてや東方司令部についてもそれなりに書いておく。国家錬金術師の報告については『焔』『鋼』に後2人か、最低でも2人は見ておきたいので資料を待っていると、トントンとノックの音が聞こえてきた。

 

「はい、どうぞ」

「フューム中将失礼します」

 

 聞こえてきた声には聞き覚えがあり、面白いと少し目を付けたエルリック兄弟が扉を開けて入ってきた。軍の資料を手に持っているのでマスタングさんのお使いだろうか。いや、それ以外にも何かありそうだね。

 

「おや、エドワード君にアルフォンス君、さっきぶりだね。何か用かい?」

「とりあえずこれ大佐から渡してくれって言われた国家錬金術師の資料を先に」

 

 ありがとうと言って資料を受け取り軽く目を通していく、『綴命』か任されている仕事柄で軍に提出されている国家錬金術師の研究については目を通しているが、色々と怪しいと思える人物の一人だ。さっと目を通し終えてからエルリック兄弟の方に視線を戻す。

 

「資料ありがとうね。それと君たちの用件は何かな?」

「はい、実は……」

 

 ふむふむ、纏めるとマスタングさんに言われて生体錬成について聞きに来たという事か……丁度良かったと言って良いのか分からないがこちらとしても色々と訊きたい事があったので、ここで話をしておくのは悪くない。

 

「それは君たちの身体に関わる事かな?」

「「!?」」

 

 歩く際の響き方からして中身の無い鎧、そして内乱に巻き込まれたという事になっている機械鎧の腕と足、そして求める生体錬成の情報、ここまで揃っていて疑問が湧かないのは真理を求める錬金術師として足り得ないだろう。

 

「ああ、私は君たちの事情は知らないが、何かしらの訳アリだろう?そして軍に提出されている情報からしてマスタングさんもグルなのは予想が付く……それでどうする?」

 

 

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エドSIDE

 

 どうする……この人は明らかに俺らの事を疑っている。それにアルの身体については確実にバレてる。気取らせるようなことは一切口にしてないのに、少ない情報から導き出して大佐の情報操作の方まで当りをつけてる。

 

「アル……」

「話しても、ううんこうなったら聞いてもらうしかないんじゃ」

「だが、大佐の話ならこの人は国家錬金術師に関する発言権が強い」

「だからこそ話すべきなんだよ。ここでだんまりを決め込む方が怪しい。僕たちをどうにかしたいのなら問答無用で報告すれば良いのにどうしたいかを訊いてくれているという事は大丈夫だよ」

 

 短い時間で中将への対応について話し合い方針を決める。じっとこちらを見据える様な中将の目を見て、不安や恐怖が無い訳では無いが此処に来てしまった時点で後戻りはできなかったんだろう。

 

「それで、決まったのかな」

「ああ、俺達については話す」

 

 母親を生き返らそうと禁忌を侵したこと、それにより俺は腕をアルは全てを真理に持っていかれたこと、俺の腕を代償にアルの魂を錬成し鎧に定着させたこと、今は体を取り戻すために賢者の石を求めて旅をしていることを話した。

 

 

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フュームSIDE

 

 

「なるほどね。禁忌とそれによって得た真理、持っていかれた身体、どれも1人の錬金術師としては興味深い……がそのまま見過ごす事が出来る内容でないのもまた事実」

 

 私がそこまで言うと、ビクリと身体を震わせる2人、年齢の割に大人びている…いや、大人にならなければいけなかったのだろうが、腹芸の方はまだまだのようだ。しかし、まあ、()()()と比べればこの子たちのやっている事なんて可愛いぐらいだ。

 

「ふふ、そう体を強張らせなくても良いさ。情報隠蔽はマスタングさんへの貸しにさせてもらうが、君たちについては報告しないでおくから安心しなさい」

「本当ですか?!」

「嘘は嫌いでね。ミスディレクションなどを利用して相手をミスリードさせる分には戦略として使うが、嘘と言うのは吐いた分だけ自身の()()が下がると考えている。世の中を生きていくためには自分と言う駒さえも賭けに出すときはやってくるものさ」

 

 まだ幼い頃に()()を見て立ち上がれる強い子だ。此処で関係を持っておくのは悪くは無い。恩を売るという名目で報告はしないが、生憎とお互いに錬金術師であるからして等価の代価を頂く必要がある。

 

「さて私よりも幼い君たちではあるが、この場にいるのは錬金術師、マスタングさんに関しては先ほど勝手に貸し1つという事にしたが、君たちには何をしてもらおうかな?」

 

 私が笑顔で言い切ると、何か嫌な物でも見たかのような顔をして冷や汗を流している。ははは、まあ自分が普通とはかけ離れているのは理解しているので追及する気は無いがそれでも失礼では無いだろうか、そこまで無理難題を押し付ける気はないさ。

 

 とはいえ、禁忌を侵したこととアルフォンス君の身体についての黙秘、そして私の持つ生体錬成の知識、貸しの1つや2つで収まる範囲では無い。

 

「まあ、禁忌や身体についてはマスタングさんの貸しに含めといてあげましょう。どちらにせよ私の研究内容を話すのなら中央にある研究室の方が良いですし直ぐにとは行きませんからね。貴方達に求める対価は今度私の仕事を手伝ってくれればいいですよ」

「えっ、そんなんで良いのか?」

 

 まあ、仕事の内容次第であるが貸しと言う自由な形ではなく、はっきりと代償を告げられるのは2人としては有り難いことだろう。

 

「ああ、私はショウ・タッカー氏の査察を終えれば中央に向かう予定で、しばらくは中央に留まっているからその間に顔を出せるようであれば連絡を入れてくれ、君の名前で連絡が来たら繋げるように伝えておく。それとショウ・タッカー氏も生体錬成については詳しいようだし、査察の手伝いと言う名目で着いてくるかい?」

「「良いのか」ですか」

「大義名分があれば事情を話さずとも資料を見れる。君達もあまり事情を知られたくはないだろ?無いとは思うが何か聞かれでもしたらマスタングさんの用意した内乱で機械鎧となった手足の回復の為とでも私から話せば納得してくれるだろう」

 

 そこまで話して「どうする?」と尋ねると是非にと言う強い返事が返ってきた。私は受け取った資料は覚えたのでマスタングさんに返してから2人を借りて行く事を告げた。貸し1つと言う事もついでに伝えておいた。物凄く苦い顔で兄弟の事を見ていて、エドワード君は素知らぬふりを、アルフォンス君は申し訳なさそうに手を合わせていたのが対照的で面白かったと記しておこう。

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