感想では土日までにはと言っていたが思ってたより早く書くことが出来た。
エドSIDE
自分のであった人がどうなるのか気になってしまい、中将に言われた通り誰かにタッカーさん……いや、タッカー
の処分の内容について聞こうと部屋に向かった。
「エドワード君!」
「あ、ホークアイ中尉」
「どうしたのこんな朝早くから」
人を使って錬成したというタッカーの凶行を聞き、夢見が悪かったので目が覚めてしまったのだ。天気も雨でらしくは無いが気分はあまりよくなかった。それでもとりあえず目的を済まそうと尋ねる事にした。
「タッカーの処分ってどうなるの?」
「タッカー氏は資格剝奪の上、中央で裁判にかけられる予定だったのだけれど……彼は死んだわ」
思いがけず予想していない事態を聞かされて唖然と固まるオレ達。段々と表情が歪み、冷や汗が流れていく。
「正式に言えば『殺された』のよ。だまっていてもいつかあなた達も知る事になるだろうから教えておくわね」
「そんな…なんで…誰に!!」
「分からないわ。私もこれから現場に行くところなのよ」
やってしまった事はとても大きい罪であると思う。しかし、それでも人が殺されて良い訳は無い。そんな思いを胸に質問を続けた。しかし、答えは返ってこない、これから向かうと聞き、考えるよりも先に声が出る。
「オレも連れてってよ!」
「ダメよ」
「どうして!!」
「見ない方が良い」
ホークアイ中尉の忠告、これはたぶん優しさなのだろう。はっきりと突き放す言葉にオレ達はそれ以上頼むことはしなかった。
「……ニーナには伝えるんですか?」
「……まだ何も分からないわ」
最後の質問に答えるとホークアイ中尉は一人歩いて行ってしまった。オレは、何もすることは出来ないのだろう。
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マスタングSIDE
「おいおい、マスタング大佐さんよ。俺ぁ生きてるタッカー氏を引き取りに来たんだが…死体を連れて帰って裁判にかけろってのか?」
中央からやってきた顔見知りと一緒に現場を見に来たが、案の定ぐちぐちと痛い所を突いてくる。しかし、これは確かにこちらの落ち度である。
「たくよ―――俺たちゃ検死するためにわざわざ中央から出向いて来たんじゃねえっつーの」
「こっちの落ち度はわかってるよヒューズ中佐。とにかく見てくれ」
「ふん…自分の妻を実験に使い、未遂とは言え娘まで手にかけようとした奴だ。神罰がくだったんだろうよ。うええ…案の定だ。外の憲兵も同じ死に方を?」
「ああ、そうだ。まるで内側から破壊されたようにバラバラだよ」
俺がそう答えると二人は確信した顔つきとなった。まあ、これだけ特徴的なら判断も出来るのだろう。
「どうだ。アームストロング少佐」
「ええ、間違いありませんな。”奴”です」
「『
「ああ、素性がわからんから俺達はそう呼んでる」
「素性どころか
「今年に入ってから国家錬金術師ばかり中央で5人、国内だと10人はやられてるな」
一応、国家錬金術師殺しと言うのは聞いたことがあったが想定よりヤバい事態にならなければいいが。
「ああ
「ここだけの話、つい5日前にグランのじじいもやられてるんだ」
「『鉄血の錬金術師』グラン准将がか!?軍隊格闘の達人だぞ!?」
この時点で警戒レベルを引き上げるには十分すぎる情報だ。あれほどの人までやられてしまう殺人鬼となれば私も気を付ける必要があるだろう。
「信じられんかもしれんがそれ位やばい奴がこの街をうろついているって事だ。悪い事は言わん、護衛を増やしてしばらく大人しくしててくれ、これは親友としての頼みでもある。ま。ここらで有名どころと言ったらタッカーとお前さんだけだろ?」
その言葉を聞きすぐにあの兄弟の姿が浮かんだ。下手すれば、いや下手しなくても…
「まずいな…エルリック兄弟がまだ宿にいるか確認しろ。至急だ!あと念のためラテジスト中将もだ!」
「おいおい、お前さんが面倒見てる鋼だけじゃなく、噴煙までいるのか!?」
「大佐、私が司令部を出る時にエルリック兄弟には会いました。そのまま大通りの方へ歩いて行ったのまでは見ています。ラテジスト中将については分かりません」
「あの兄弟はこんな時に……車を出せ!手の空いてる者は全員大通り方面だ!!」
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フュームSIDE
「スー、不穏な気配だ。念のため近くで待機だ」
「はいはイ、了解しましタ」
気ではなく、正確には勘の様な物だが……あの戦場を思い出すこの空気。
「あの兄弟は何か引き寄せるのかな」
私は駆け足でエルリック兄弟の居るであろう場所を目指した。
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エドSIDE
雨の中だという事も気にせず、座り続ける。なんとも言えない無気力感がオレを襲っている。
「兄さん」
「ん?ああ…なんだかもういっぱいいっぱいでさ、何から考えていいかわかんねーや……昨日の夜からオレ達の信じる錬金術ってなんだろう…ってずっと考えてた」
知ってるはずなんだけどな……分かんねえんだよ。いや、受け入れられなかったんだ。
「…『錬金術とは物質の内に存在する法則と流れを知り、分解し、再構築する事』」
「『この世界も法則にしたがって流れ、循環している。人が死ぬのもその流れのうち、流れを受け入れろ』
教えて貰ってたのに、既に知っていたのに、目を逸らして、都合のいい捻じ曲げた答えを信じていた。
「わかってるつもりだった。でもわかってなかったからあの時……母さんを…」
本当につもりだけだったのだろう。結局はオレはそんな強い存在ではない。悪人だと知ってても殺されたタッカーの事を聞いたときにあの錬成陣を思い出した。あいつの、あの娘の悲しい顔を想像しちまったんだ。
「そして今もどうにもならない事をどうにかできないかと考えている。オレはバカだ。あの時から少しも成長しちゃいない。はぁ…外に出れば雨と一緒に心の中のもやもやした物も少しは流れるかなと思ったけど。顔に当たる一粒すらも今はうっとうしいや」
「でも…肉体が無いボクには雨が肌を打つ感覚も無い。それはやっぱりさびしいし、つらい。兄さんボクはやっぱり元の身体に…人間に戻りたい。たとえそれが世の流れに逆らうどうにもならない事だとしても」
どうにもならない事、どうにもならないと諦めたくない事、それもが頭を駆け巡る。どうしても晴れない頭を抱え込んでいると、無数に打つ雨の中、憲兵が1人名前を呼びながら走ってきた。
「エドワードさん!エドワード・エルリックさん!!」
「…エルリック……?エドワード・エルリック……」
「ああ、無事でよかった!捜しましたよ!」
慌てたように駆け寄ってくる憲兵の話を聞くために立ち上がる。
「何?オレに用事?」
「至急本部に戻るようにとの事です。実は連続殺人犯がこの…」
「エドワード・エルリック…鋼の錬金術師!!」
憲兵の後ろまで静かに近づいてきた男、オレの方へと視線を向け確認すると、オレの錬金術師としての名を冷たく睨みながら口にする。オレは得体のしれない嫌な感覚を覚え、体が震える。コイツは危険だ。
「!!額に傷の…」
「よせ!!」
額に傷を確認し、慌てて銃を構えようとする憲兵、たぶんそれが連続殺人犯の特徴で、目の前の人物がそれなのだろう。だがそれをしてはいけない、オレは止めるように声を張り上げるが間に合わず、男は一瞬で憲兵の頭を掴むと憲兵は血を吹き出して倒れた。
なんなんだこいつは、やばい!やばい!!やばい!!!身体の芯から「逃げろ」って悲鳴をあげてんのに足が動かねぇ…!!ダメだ……死ぬ!!そう思った瞬間に時計が鐘の音を響かせ、オレの意識を戻してくれた。
「……っアル!!逃げろ!!」
「…逃がさん!」
動きだせたと共にアルと一緒に駆けだした。
「ちくしょーなんだってんだ!人にうらみ買うような事は…いっぱいしてるけど…命ねらわれるスジあいはねーぞ!!」
「兄さんこっち!」
「こんな路地に入ってどーすんだよ!?」
「いいから!」
アルの意図がつかめず、困惑していると素早く錬成陣を書き終えたアルが壁を作り出して路地に入れなくした。
「これなら追って来れないだろ」
「おお!」
冷静に状況を判断して策を練ったアルに感嘆する。しかし、造られた壁に異変が生じ、数秒も持たず壁は勢いよく破壊され男は追ってきた。
「でええええ!!!」
ヤバさを再確認して、逃走を再開させるも男は進行方向を破壊し、オレ達の逃げ道を閉ざした。
「…冗談だろ…?」
追い詰められたオレ達は振り返り、何を目的にオレを追いかけてきたのか、そして何者なのかを問いただす。
「あんた何者だ、なんでオレたちを狙う?」
「貴様ら『創る者』がいれば『壊す者』もいるという事だ」
「……」
ダメもとで訊いてみたのだが、抽象的過ぎて何が言いたいのかよく分からん。しかし、逃がしてもらえない事だけは分かり、覚悟を決める。
「やるしかねえ……ってか」
「いい度胸だ…」
手を合わせてから近くの鉄パイプを掴み剣を創る。アルは体自体が武器の様な物なのでそのまま構えた。戦う意思を見せたオレ達に対して男はニヤリと笑って返した。オレは剣を振り下ろし、アルは腕を振るうが、相手にそれが当たる事は無かった。
「だが、遅い!」
アルの胴体が先ほどの壁と同じように崩れて壊れた。それを見たオレは怒りに我を忘れて効果が無かったというのに何の工夫もせずに相手に向かって行った。そして右腕を掴まれ、ヤバいと感じたがオレの腕が破壊されることはなった。オレは動きの邪魔となる上着を脱ぎ棄てた。
「
「てめえの予定につきあってやる程お人好しじゃないんだよ!」
「兄さんダメだ逃げた方が…」
苛立ちを隠さず睨みながら手を合わせて、オートメイルを錬成し直して武器とする。未だに立ち向かう気でいるオレにアルが逃げるように告げる。だが……
「馬鹿野郎!!おまえ置いて逃げられっか!!」
「ふむ、両の手を合わす事で輪を作り循環させた力をもって錬成する訳か、ならば」
「らああああああああ!!!!」
オレの攻撃では頬を少し切るのが精いっぱいだった。振り切って伸ばした腕は意図も簡単に掴まれた。
「まずはこのうっとうしい右腕を破壊させてもらう」
原型が無くなるレベルで破壊された右腕、これではもう錬成も満足にできない。こうなってしまえばオレの……負けだ。崩れかけそうになる身体をどうにか左だけで支え、項垂れる。
「兄さん!!」
アルの叫び声が聞こえる。はは、情けねえな、オレ。オレが死んだ後、あいつはどうなるんだ。
「神に祈る間をやろう」
「あいにくだけど祈りたい神サマがいないんでね。あんたが狙ってるのはオレだけか?弟…アルも殺す気か?」
「邪魔する者があれば排除するが、今用があるのは鋼の錬金術師、貴様だけだ」
恐ろしい奴で、殺人鬼ではあるが、その言葉に嘘は感じられない。
「そうか、じゃあ約束しろ。弟には手を出さないと」
「約束は守ろう」
「兄……何言ってんだよ……兄さん何してる!早く逃げろよ!!立って逃げるんだよ、やめろ…やめてくれ、やめろおおおおおおおお!!!!」
オレが全てを諦め、男がオレの頭に手を置こうとしたその瞬間、一発の銃声が響いた。
「そこまでだ」
「彼から離れなさい」
銃を撃って注意を引いた大佐といつの間にかオレと男のすぐ近くまで来ていたもう一人、ラテジスト中将。中将に至っては男の注意が逸れてる間に煙管で地面を叩いて錬成し、男を下がらせオレを確保した。は、ははは……助かったのか。
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フュームSIDE
遅れてしまいましたが、どうにか間に合ったみたいですね。丁度いい事にマスタングさんが銃声を響かせ、注意が逸れてるのでその間に彼の近くまで近づき、錬成を行う。そして、そのまま彼を抱えると跳んで下がった。私は彼より小さいのでかなりギリギリである。アルフォンス君が置かれたままだが、あの男の狙いは国家錬金術師、危険度は低い。
「危ないところだったな鋼の」
「大佐!こいつは…」
「その男は国家錬金術師殺しの容疑者……だったがこの状況から見て確実になった。タッカーの殺害事件も貴様の犯行だな?」
マスタングさんの言葉を聞き、先ほどまで死にかけていたというのにあの男を睨みつけるエドワード君、彼は思いを力に出来る強い子だな。しかし、さっきみたいに思いが砕かれれば絶望してしまう可能性も高い、危うさを抱えた子でもある。
「…錬金術師とは元来あるべき姿の物を異形の物へと変成する者…それすなわち万物の創造主たる神への冒涜、我は神の代行者として裁きをくだす者なり」
その思想…はあ、無駄に学がある分、嫌な事にもすぐに気が付いてしまう。これは、
「それがわからない。世の中には錬金術師は数多いるが国家資格を持つ者ばかり狙うというのはどういうことだ?」
「理由ならあるでしょうよ。マスタングさん、特に私とあなたへの恨みは深いでしょうね」
「何……そういうことなのか!?」
私の言葉を聞いてマスタングさんとホークアイ中尉は直ぐに思い至ったようだ。
「民俗学や宗教なども私は齧っていてね。『元来あるべき姿の物を異形へと変成する』この後に続くのは『すなわち万物の創造主たるイシュヴァラ神への冒涜』……あなたはイシュヴァールの民ですね?」
「……その通りだ。だが、お前らアメストリスの人間がイシュヴァラ神を語るな!!!」
正解だとでも言うように男はサングラスを外してその眼を見せた。褐色の肌に赤い目、それはイシュヴァールの民の特徴だ。かつて、私と彼が多く殺した民のね。何より私はあの男と面識がある。それも2回もあっている。これで三度目、ここで決着をつけられればいいのだが。
「私は恨みから復讐に奔るのも分かるし、その復讐には正当性があると思ってる。しかし何故戦争に関わって居ない『鋼の錬金術師』までもその標的とした?」
「国家錬金術師と言う名、人ではなく兵器とする事を良しとする者もまた裁かれるべきだ」
直接関係の無い者にまで被害が及んでいる事は認められないが、彼の主張は間違っているとは思えなかった。国家錬金術師と言うのはどうにも評判が良くない。
「……ただの八つ当たりではなく、『国家錬金術師』という枠組みへの復讐もかねてか、まあ自分で蒔いた種は自分たちでどうにかさせてもらいます。そうそう、私はあなたと会ったことがありますよ?戦場で一度、そしてカンダ地区の病院で一度」
私は向こうが覚えているか分からないが、出会った時の場所を伝えた。すると相手の表情が大きく変わった。
「っ!!お前か、あの時の国家錬金術師の子供!!」
「『噴煙の錬金術師』そっちの【イシュヴァールの英雄】と呼ばれる『焔の錬金術師』と並ぶように【イシュヴァールの女傑】と呼ばれている。あの時は医者夫婦の保護で相手を出来ず逃すこととなったが、連続殺人ともなれば放っておけないな。それも直接関係の無い者へ及ぶ復讐はな……正しくあなたの復讐対象である私が相手となろう」
「危険です!大佐ほど無能にはなりませんが、貴女の錬金術は」
「そうか、こう湿ってちゃ火花は出せないし、煙も舞わないか」
何故か引き合いに出された上に無能と呼ばれたマスタングさんが落ち込んでいるが、まあ知った事ではないので無視する。ホークアイ中尉の言う通り、この雨の中じゃ、砂埃や火煙も期待できない。だが、それは私の錬金術の一面でしかない。
「私も立場がありますから無駄に死ぬような事はしませんよ。改めて、『噴煙の錬金術師』フューム・ヴィガ・ラテジスト、軍の階級は中将です」
「名は捨てた。好きに呼ぶと言い」
捨てた?イシュヴァールの民は自身の名を神から賜ったものとして誇りを持って呼ぶはずだ。その名を捨てたという事はそれだけの覚悟を、不倶戴天の決意で彼はこの場に立っているのだろう。
「では悲しき修羅よ。いざ、尋常に勝負です!!」
私はそのまま相手へと駆け出す、私の背丈は子供と変わりません。そのため非常に身軽で動きが早いに加えて的が小さく狙いにくい。となれば相手の取り回しをききにくくするために近づくのが得策です。一気に近づいて特製の鉄の仕込まれた靴で蹴りを放ち、もう一つ仕組まれている錬成陣で足の踏み込みと同時に相手の少し後ろから攻撃を放つ。
「くっ、後ろか」
相手は後ろからくる攻撃に気付くと、目の前の障害よりもただ迫ってきている後ろの攻撃の方が対処しやすいと素早く後ろの攻撃を破壊すると私から距離を取る。経験からかすぐに判断を下し、一瞬とは言え相手に背を向ける事を厭わない。これは、長引きそうだ。
「凄い、あの人あんなに強かったんだ」
「煙管のは軍隊格闘に加え、剣や銃の扱い、その他の武術も幼少期から学び、12の時には戦場に立っていた。はっきり言って天才を通り越して異才、人の枠組みから一歩飛び出ていると言われているほどだ。私でも彼女には勝てないだろ。もちろん錬金術を使っても結果は同じだ」
ナルシストが入ってるマスタングさんが自分より優れているとはっきり告げたせいでエドワード君の私を見る目がだいぶ変わった。まあ、彼の性格的に少し経てば忘れるだろう。っと、戦闘中に考え事はしてられないな。
さて、生憎の雨で砂煙や火煙は用意できないがこれだけ空気中の水分量が多ければ別の方法が取れる。私は一度距離を取ると煙管に特製の燃料と火を入れて、大きく吸い込む。そして一気に吐き出して、一時的にではあるが煙が宙を舞った。しかし、この雨ではすぐに崩れてしまうのですぐさま煙の広がった範囲を錬成する。
「これは!?」
「煙は煙でも水煙、まあ水煙はあくまで煙に見えるしぶきで、これは分解した水で作られた人工的な霧ですがね」
周囲が一気に白く染まり、手を伸ばした先も見えない位の霧で包まれる。相手はこちらを認識できないが、私はこの視界の中であっても
「ぐっ、がは、がっ、おのれえええええ」
周囲の地面や壁を錬成し、とにかく連続して攻撃を放つ。あの分解の錬成陣をどうにかしない限りは捕縛も満足に出来ないだろうが、殺すわけにはいかない。男はどうにかして抜け出そうとするが、攻撃だけでなく悟らせないように相手を囲うような壁を作ってある。私は気の流れを頼りに遠隔で錬成を繰り返すだけだ。
とは言ってもやはり天気は良くない。雨に負けて少しずつ霧が持っていかれているが、霧があるうちに錬成して更に霧を生み出す、そうすることでこの陣形が崩れる事は無い。負けてやるつもりは無いんだすまない、と考えていると男は大きく腕を振りかぶると地面へと叩きつけた。
「やられました」
私は錬成し直して霧と彼を囲っていた壁を取っ払う。すると彼がいたであろう場所を中心に大きく抉れた地面が見えた。あそこまで追いつめて置いて逃げられるとは報告書を書かないといけないな。
「地下水道に逃げられたようだな」
「はい、いくらかは勘で防いでましたが、7,8分は錬成物で殴り続けていたので、完治には数ヶ月単位でかかると思います」
「とは言っても、追うのは危険か」
「私なら可能ですが、いえ、止めておきましょう。手負いの獣ほど何をしてくるか分かりませんからね」
どうせ負けるのであればと私を道連れに地下一帯を破壊でもされれば地上にも被害が大きく出てしまう。傷を負ったあの男に隠れられると厄介ではあるが、判断を誤る訳にはいかない。
「ふむ、奴には逃げられたのか」
「おや、アームストロング少佐も来ていたんですね」
「おお、フューム中将、久しいな。中将が相手をしてくれている間に吾輩は鋼の錬金術師の弟を確保しておりました」
そう言って指し示した方向には確かにアルフォンス君が存在し、エドワード君のとなりに配置されてる。しかし、だいぶご立腹のようでなにやらエドワード君に叫びながら殴っている。あの鎧に殴られるのは痛いだろうな。
「お?終わったか?」
「ヒューズ中佐、今までどこに」
「物陰に隠れていた!」
見かけなかったのでどこに居たのかは私も気になっていたが、おいおい。マスタングさんも呆れてますよ。
「おまえなぁ。援護とかしろよ!」
「うるせぇ!!俺みたいな一般人をおまえらデタラメ人間の万国ビックリショーに巻き込むんじゃねぇ!!オラ!戦い終わったら終わったでやることあるだろ!市内緊急配備人相書きを回せよ!」
酷い言いぐさではあるが、まあ国家錬金術師と比べるのは間違いか、とは言ってもあなたもイシュヴァール経験者でしょうよ。まったく、精神的にも面倒な事になったな。周りに注目されても気にせず言い合ってた兄弟の方は話し合いを終えた様だ。
「…どうやら彼らの方は一段落といったところか」
「こっちはまだ一段落とはいかねぇだろ。やっかいな奴に狙われたもんだな」
「…イシュヴァールの民か……まだまだ荒れそうだ」
マスタングさん、ヒューズ中佐、アームストロング少佐、ホークアイ中尉そして私も。全員があの戦争を知っている故にどうにも暗い表情で、一度お開きとなった。
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エドワードSIDE
筋肉ムキムキのおっさん、アームストロング少佐というそうだが、その人がボロボロのアルを担いで連れてきてくれた。そしてほどなくしてフューム中将と傷の男の戦いは終わった。弾かれるようにオレはアルへと声をかけた。
「アルフォンス!!アル!大丈夫かおい!!」
「…この…バカ兄!!」
心配して声をかけてみれば帰って来たのは容赦のないグーパンチ、お前自分の身体が鎧だという事を忘れてないかと聞きたくなるくらいには良いダメージになった。なんでか分からず唖然とした顔でアルに向き直る。
「なんでボクが逃げろって言った時に逃げなかったんだよ」
「だからアルを置いて逃げる訳には…」
「それがバカだって言うんだーっ!!」
またまた殴られた。理由もわかった。だけどそれで納得は出来ない。
「なんでだよ!オレだけ逃げたらおまえ殺されてたかもしれないじゃんか!!」
「殺されなかったかもしれないだろ。生きのびる可能性があるのにあえて死を選ぶなんてバカのする事だ!!」
「あ…兄貴に向かってあんまりバカバカ言うなーーっ!!」
アルのいう事にも一理あり、ろくに反論できずにいて、論点をずらすが、アルはオレの胸元を掴んだ。
「何度でもいってやるさ!!生きて生きて生きのびてもっと錬金術を研究すればボク達が元の体に戻る方法も見つけられるかもしれない!!それなのにその可能性を投げ捨てて死ぬ方を選ぶなんてそんなマネは絶対に許さない!!」
そう言いきった瞬間にオレを掴んでいたアルの腕がべきッと音を立ててとれた。
「ああっ右手もげちゃったじゃないか兄さんのバカたれ!!」
それはオレのせいじゃないだろと思いつつ、先ほどまでの言い争いでようやくオレも落ち着けたみたいだ。
「はは…ボロボロだなオレ達、カッコ悪いったらありゃしねぇ」
「でも生きてる」
「うん。生きてる」
言い争いを終えたのを見て、ホークアイ中尉とハボック少尉が駆け寄ってきた。ホークアイ中尉はオレに上着を掛けてくれ、ハボック少尉はアルに肩を貸してくれた。ああ、どうにも出来なかった戦いだったが、オレ達は生きてる。とりあえずはそれで良いか。
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フュームSIDE
全員が一室に集まり、とりあえず事情を知らないエルリック兄弟にイシュヴァ―ルについての話をする事に成り、代表としてマスタングさんが概要を話している。
「イシュヴァールの民はイシュヴァラを絶対唯一の創造神とする東部の一部族だった。宗教的な価値観の違いから国側とはしばしば衝突をくりかえしていたが、13年前に軍将校があやまってイシュヴァールの子供を射殺してしまった事件を機に大規模な内乱へと爆発した。暴動は暴動を呼び、いつしか内乱の火は東部全域へと広がった。7年にもおよぶ攻防の末軍上層部から下された作戦は国家錬金術師を投入してのイシュヴァ―ル殲滅戦、戦場での実用性をためす意味合いもあったのだろう。多くの術師が人間兵器として駆り出されたよ。私もその一人だ。だからイシュヴァールの生き残りであるあの男の復讐には正当性がある」
「くだらねえ、関係ない人間も巻き込む復讐に正当性もくそもあるかよ。醜い復讐心を『神の代行人』ってオブラートに包んで崇高ぶってるだけだ」
エドワード君は彼の復讐には反対のようだ。次に意見があると口を開いたのはヒューズ中佐だ。
「だがな、錬金術を忌み嫌う者がその錬金術をもって復讐しようってんだ。なりふりかまわん人間ってのは一番やっかいで怖ぇぞ」
「反論と言う訳ではありませんが、まず彼は未だに神を捨てきれてませんが、崇高ぶってはいないですよ。イシュヴァールの民は名を神から賜ったとして誇りにしますが、彼はその名を捨てたと言いました。それは彼なりの覚悟の在り方でしょう。そして、私の記憶が間違いでなければあの刺青の錬成陣は彼の家族から贈られた形見ですからね。ある意味思いが籠ってるでしょうね」
あの男と面識があるという事を私は戦う前にも告げていたのに加え、今の発言でどういうことかと訊いてくる視線が集まったが首を横に振ってこたえる。これ以上は傷の男と私と
「どんな事情があろうと、なりふりかまってられないのはこちらも同じだ。煙管のが言う通り我々もまた死ぬわけにはいかないからな。次に会った時は問答無用で潰す」
マスタングさんが最後にまとめたが私を含めてその場にいた全員がそれに賛同した。
「さて!辛気臭ぇ話はこれで終わりだ。エルリック兄弟はこれからどうする?」
「うん……アルの鎧を直してやりたいんだけどオレこの腕じゃ術を使えないしな…」
ヒューズ中佐の言葉に心底困ったという顔で応えるエドワード君。
「吾輩が直してやろうか?」
「遠慮します」
「アルの鎧と魂の定着方法を知ってんのはオレだけだから…まずはオレの腕を元に戻さないと」
直される当人であるアルフォンス君からの否定が入ったのでその案は無しですね。それに魂の錬成が出来る人物でないと万が一が起こった際が怖いだろう。
「そうよねぇ…錬金術の使えないエドワード君なんて…」
「ただの口の悪いガキっすね」
「くそ生意気な豆だ」
「無能だな無能!」
「小さいから盾にもならないですね」
「ごめん兄さんフォロー出来ないよ」
「いじめだーー!!」
私も流れに乗って、とりあえず彼が気にしている事を口にしてみた。まあ、身長は私の方が小さいんですけどね。まあ、男の子なので気になるんでしょうけど、見た目ばかり気にしているとは小さいですね。
「しょーがない…うちの整備士の所に行ってくるか」
ヒューム中将の戦闘は主に格闘、煙管、錬金術、銃を用います。その場の状況次第では剣や槍、など他の手段を用いるかもしれませんが、基本的には上の4つです。
煙管と両足の靴、そして特製の銃弾に錬成陣が仕込まれてます。
煙管は長さや仕込んだ錬成陣の違う物でいくつか持ってる。
靴には鉄板が入ってるので普通に蹴るだけでも威力は十分。
錬金術の説明はそのうち話の中ですると思うのでそれを待ってください。どうしても待てないと言う人は感想をみてください。コピペしても良いけど面倒だし、無駄に長くなるからやめました。
傷の男がボロボロに負けておられる。視界が悪い中なら、自分は気の流れを読み取れて位置を把握、遠隔錬成が出来れば離れて攻撃、普通にこの戦法強いと思う。
煙管で燃やしてるのはイライラしてるときは煙草の事もありますが、普段は薬草などを調合した物を吸ってる。今回は戦闘に適した特製の物。戦法として煙に毒を混ぜ込むこともある。
しかし、まあ。鋼錬はセリフも動きも多いからどうしても時間が掛かる。本当にこの小説はゆっくりの投稿になります。書き途中で消えることはしませんが、そこだけは覚悟しといてください。
ではいつもの挨拶でさようなら。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。