どうしてもこの作品は書くのに時間が掛かるので、暇が出来次第書きますし、失踪することは無いのでご安心ください。
吹雪いていないことの方が珍しいぐらいの極寒の地、このブリッグズに慣れていない普通の者であれば迷って死ぬのもしょうがないだろう。しかし、私には年単位の時間をかけてようやく習得した気の流れを読む能力がある。山と言うのは流れを読み取りやすく、まず迷う心配は無いだろう。
「……連絡を入れたのは間違いだったか?」
吹雪で視界は悪いが既にここは砦の目前である。そして、周囲には取り囲むように人の気配が大量に感じ取れる。あの少将が盛大な歓待を、と言った催しを用意する人間じゃ無いのはよくよく知っている。
『撃てぇ!!』
「教育、いえ調教が行き届いてますね……」
容赦も躊躇も一切感じられない一斉射撃、それは銃だけでなく砦や戦車からの大砲なども含まれている。雪と氷の充満した環境にまだ完璧に目は慣れていない。下手に動きを止めれば面倒な事に成りそうなので壁を近くに作るべきではないだろう。
そうと決まれば素早く錬成陣を刻み込んだ銃弾を撃ち込み、足の裏に仕込んだ錬成陣から地の流れを伝って遠隔錬成を行う。私の後方にまで回って来ている人員は少ない様なので左右からの攻撃がいくらか減れば後は避けるか弾くかしながら正面突破あるのみだろうと左右に分厚い巨大な壁を築いたと同時に走り出した。
『壁が!?銃じゃダメだ!!』
『戦車部隊ぶち抜けぇ!!』
『ぶち抜いたところで攻撃出来るか!!とにかく走って回り込め!!』
『裏に火薬仕込んで倒してやれ!!』
本当にあの少将の部下だと言うのが分かる言動だ。階級的には君たちの上司よりも上なんだけど、いやだからこそ睨まれてると言うか喧嘩が絶えないんですけど、あの人とは性格的に相いれない部分も多いのでこうなるのもしょうがないのかもしれない。
さて、廻り込もうと躍起になっているが足の裏の錬成陣で雪を氷にし、足をとられること無く全速で走っている私に追いつく事は出来ないだろう。となると後は前面に用意されてる人員と砦からの援護をどうするか……流石に軍の設備を壊すわけにはいかない。そう考えていると見知った気配が図体に似合わない速度で迫ってきた。
「っと来たか、バッカニア大尉?」
重たい機械鎧から繰り出される豪快な攻撃だが戦闘用の煙管で基点となる部分を叩いて難なく捌いた。そこからは近接での戦闘になるがこちらは軍隊格闘にシンの体術なども習得しており、力で負けても技術で上回って優勢をとっている。
「さて、時間もないので退場してもらうよ」
「がっ、ぐっ、冷たぁ!?」
錬金術で煙管の先に氷を纏わせると、ハンマーの様に振り抜いて一気に吹き飛ばした。吹き飛ばす際に再度錬成を行い、バッカニア大尉の身体も氷に巻き込んだのでしばらく動けないだろう。
しかし、思いのほか時間を取られてしまった。封じていた部隊がこのままでは追いつくか……このまま戦闘に時間をとられるのも日を改めるのも今回に限っては無しだ。
面倒なので直接ここのボスを引きずり出すとしようか、あの少将は部下に任せて高みの見物と言うタイプではそもそもない。こういった手の込んだ催しを用意しているのは私への嫌がらせが全てだろう。だから、彼女が退けない状況をこちらが用意すれば良い。
周囲の雪を吹き飛ばして近づいてくる人員を妨害しつつ作戦に必要な舞台を作り上げた。舞台と言うのは例えではなく、本当の意味でステージを用意したのだ。あの少将は敵と決めた相手を自分の手で斬り伏せたいと思う人間だ。ステージの端に私が堂々と立っていれば挑発するまでも無く降りてくるだろう。
「予想を裏切らないでくれて嬉しいですよ。久しぶりですねオリヴィエ・ミラ・アームストロング少将」
「大層な物を砦の前に作ってくれたな。わざわざ自分で墓場を用意してくれるとは、捨てる手間が省けて助かるな。フューム・ヴィガ・ラテジスト中将」
互いに攻撃の範囲内に立ちながら行われる言葉での応酬、ボスの動きを遠巻きに見守る彼女の部下たちは気が気じゃなさそうだ。そんなことを考えながら、私は迫りくる刃に対して煙管を打ち付けた。
合図も無しに始まった本気の鍔迫り合い、と言っても私が持っているのは武器と言うには特殊な煙管だが、打ち合った瞬間に仕込まれている錬成陣を起動し、事前に入れておいた燃料に火を点け、特殊な煙を広げる。妙な色をした煙に対して躊躇せず飛び込み、剣を振るってそれを散らそうと動いた。
「迷いが無く、速いですね」
「お前のフィールドを作らせる訳にはいかないからな」
「これでもですか?」
煙管から噴き出した煙はあれば便利であったが無くても錬成の方法はいくらでもある。ステージを錬成したのは私だ。再錬成することで氷から雪煙を生み出す事も全く問題は無い。
ステージの至る所から噴き出した雪煙は周囲の吹雪いている気候も合わさって完全に視界を塞いでいる。とは言え、これだけで封じ込めるとは思っていない。私はこのまま攻撃に入るのでなく、あえて距離を取って待ちの姿勢をとっていると何かが私と彼女の間に投げられた。
そして次の瞬間には物凄い爆風と火が辺りにまき散らされた。きっとこちらで独自に開発されたグレネードの類だろう。雪煙は爆風で吹き飛び、火の熱で溶けて形を保てていない。もちろんこの吹雪の中で火は長続きしないが、グレネードを使い潰させると言う手段は非効率的なので同じ手を使うつもりはない。
私は錬成しながら走る事で動きの疎外になる要素を減らしており、逆に相手の足場を悪くすることも戦略的には問題ない。このステージの成分は山に含まれてる鉱石や土も使っているが殆どが氷である。摩擦の起こりにくい形状に再錬成すればどうなるかは自明の理である。
「舞台に上がったのは貴女です。ずるいとは言わないでくださいね」
「むっ!?はぁぁ!!」
「剣をそう使いますか!?っと」
相手の足場の滑りを良くしてから今度はこちらから煙管を振りかぶると、異変を感じた彼女は剣を地面に突き刺し、あえて滑る事で攻撃をくるりと躱した。すり抜け様に斬りつけて来ますが私はステージを蹴って自由に移動できるので危なげもなく避けれた。
すると彼女は私が足を置いていた場所を踏んで移動するようになった。近接戦闘を行いながら、高速で錬成を行うと言うのは作業量的に馬鹿げており、わざわざ足跡を消す程の余力はない。
そんな事をするよりはその労力を攻撃に回した方が良いに決まっており、彼女の移動を邪魔する気は無い。むしろ、自分の足跡を踏んできてくれるのであれば次の動きが読みやすい。
下手にステージに細工をし過ぎると勝負に乗って来ないので大きさや形には気を付けていたが、不自然にならないように動きの制限が叶ったので次の手を打つとしよう。
私はもう一度雪煙を生み出すと瞬時に錬成を行い、氷の刃や銃弾をこれでもかと言うぐらい降らせていく、それを少将は剣で弾きながらグレネードでまた煙を吹き飛ばした。
今度は最初にやった時と同じように煙管に火を点けて煙を生み出すと煙管を風上へと投げ捨てる。モクモクと煙を上げ続ける煙管を放置して私は錬成を行いながら近接戦闘に勤しむ、戦闘用の煙管は複数本あるため投げ捨てたのとは別ので打ち合い、また時には体術で制圧を試みる。
錬成では足場の変形、氷での攻撃、煙管の形状変化など多種多様に行い、近くに居る事でグレネードを使わせないようにし、また勝負を急ぐような動きを意識した。
それに違和感を覚えた少将は距離を取って攻撃範囲から逃れる。それを追いかけながら錬成と攻撃を繰り返す。それが数分間続くと投げ捨てた煙管からの煙が途切れた。
「煙のあるうちに仕留める気だったか?」
「いや、そんな単純な事はしませんよ。気付かれずに良かったです」
「何!?……むっ、手足が」
痺れる程度で済んでるのは風で少しは流れてしまったからでしょう。足場の変形や氷での攻撃に伴い、錬金術の質量保存の法則に基づいてステージは削れている。
生み出した煙の毒は空気より重いため、微妙にすり鉢状なステージに溜まっていった。後は自然とステージの上の方にまで毒が上がり、彼女の身体に回るのを待つだけです。
私が平然としているのは私の周囲の成分を再錬成して毒の無い形にして流していたからで、錬成による攻撃をとにかく挟んだのには不自然な錬成を誤魔化すためである。攻撃的な性格に知略の数々、正直言って彼女以上に厄介な軍人は服役中の彼位だ。
剣の扱いでは負けるだろうし、体術もリーチの関係がありほぼ互角、となると狡猾な手だが騙し討ちや罠を使う他ないだろう。ここの掟は弱肉強食、どんな手でも使って勝つ、それが相手に認めさせるための条件だ。動きの疎外がこれだけ出来ていれば後は一手ずつ詰めていくだけだ。私は彼女の剣を弾き、喉元に煙管を向けた。
「チェックメイト」
「……ちっ、相変わらず姑息だな、マイルズ引き揚げろ、これ以降は通常通り業務に当たれ!!」
彼女の用意した催しの終了の合図を訊いた私は煙管を仕舞いこんで彼女に解毒薬を渡した。しかし、後遺症が無いようなら要らんと突っぱねられた。次に会う頃には毒の耐性とか身に付けていないだろうか……彼女ならやりかねないな。
「それでわざわざ文を寄越してまで何をしにここまで来た?」
「最初からそうして訊いてくれれば助かるんですがね。野暮用ですが、とある物を預かって貰いたいんですよ」
こちらの要件を伝えると理由を教える様に要求された。家同士の繋がりを使ってでも用意してもらった機会で何を企んでいるのかと言うまあ至極もっともな疑問だろう。
「布石ですかね。それが必要になる時が来てしまうんですよ」
「相変わらず秘密の多い事だな。本当に気に入らない」
それでも断る事をしない当たり彼女は真っすぐだ。とにかく突き進む彼女の在り方は私とは決して相いれないのだと思う。私は用件は終わったと適当に話を切り上げると中央への帰路についた。
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SIDE:エドワード
「いいかい?いくよ?」
嫌だと言ってもしょうがない事だと言うのに一々訊いてくるんだからたちがわりぃ……俺はいつになく表情を歪ませて次の瞬間にやってくる痛みに備える。
「いち」
「にィの」
「さんっ!!」
「でっ!!」
ビリっとした痛みに我慢できずに声が飛び出た。こればかりはどうやっても耐えられねぇんだよなぁ。
「毎度この神経つなぐ瞬間が嫌でよ…」
「泣き言言わないの、はい動かしてみて」
他人事だと思って軽く言ってくれるが、とりあえずきちんと動いているのか動作確認をされながら新しい腕と調整された足を力を入れてみる……どうやら問題は無さそうだ。
「でもこの痛みとももうおさらばかもな。賢者の石が手に入れば元の身体に戻って万々歳だ」
「残念だねぇせっかくの金ヅルが」
「そうよ無理して戻ることないわよ。かっこいいじゃない
「機械オタクめ」
「うるさい錬金術オタク」
まったく、事情を知った上で本気で言ってそうな辺りが厄介なんだよな。悪気が無いとはいえ、好きな物を押し付けてくるのは正直面倒くせぇ。
「完成!どうだい?」
「うん、いい感じ」
「あんたの事だからどうせ日頃の手入れもサボると思ってね。今回使ってる鋼はクロームの比率を高くして錆びにくくしてみたの、そのかわり強度が下がったからあんまり無茶は……って聞きなさいよあんたは!!」
なにやら説明をしてくれていたようだが俺は3日も待たせてしまったアルの下へ駆けだした。不自由な思いをさせてしまったからすぐにでも直してやりたかった。
「鎧の破片これで全部か?」
「うん、イーストシティの憲兵さんが丁寧に拾ってくれた」
「すぐ直るのか?」
「うんちょっとコツがいるけどね」
これはアルの錬成の仕組みを知らなければ分からなくて当たり前なので普通に説明してやることにした。
「背中の内側に印があるだろ。これがアルの魂と鎧の仲立ちになってるんだ。この印を崩さないように手足を直さなきゃならない」
「血文字のようだな」
「血文字だよ、オレの血。それにしても危なかったな」
「もう少し深くえぐられてたら終わってたね!」
オレとアルの血の繋がり、アルの魂と鎧を繋ぐ鉄、それらを考慮してその時に必死に書きなぐったオレの血の血文字だ。血文字だけで顔を青くしている少佐を横目に俺らは呑気に会話を続け、久しぶりの手合わせ錬成を行った。見る見るうちに再構築されてくアルは元の姿にまで戻った。
「よしよし、んじゃ早速…」
迫ってきた鎧の腕を回って避け、振り落とされた腕を回避すると機械鎧の足で蹴りを放つ、しかしその足を軽々受け止め、そのまま掴まれてオレは宙に投げ飛ばされた。
「なんだ?兄弟喧嘩か?」
「ちがうちがう、手足の動作確認も兼ねて組手をやってるんだよ」
「それにここしばらく体を動かしてなかったからカンを取り戻さないとね」
「ほほう…ならば吾輩も協力しよう!!遠慮無用ッ!!」
言うんじゃ無かったと後悔しつつも見た目通り肉弾戦の得意な少佐との組手はいい経験に成りそうだ。それでもあの筋肉に迫られるのはどうにも暑苦しい物だった。すっかり服や顔が汚れてボロボロになった頃にその組手は終わりとなった。
「俺達の師匠が『精神を鍛えるにはまず肉体を鍛えよ』ってんでさ。こうやって日頃から鍛えておかないとならない訳よ」
「それで暇さえあれば組手をやってんの?そりゃ機械鎧もすぐ壊れるわよ」
「まあ、こっちはもうかっていいけどねぇ」
呆れた様子のウィンリィとカラカラと笑って見せるばっちゃん。呆れられようがこれがオレ達のやり方で習慣だからな。止める訳にはいかねぇからな。
「ふむしかし正論であるな。健全な精神は鍛えぬかれた美しき肉体に宿るというもの、見よ吾輩の」
「アル、そこのソース取って」
なぜああも一瞬で服を脱ぐことが出来るのか甚だ疑問だが、いちいち相手にしているのも馬鹿馬鹿しいので無視を決め込んだ。
「明日朝イチの汽車で中央に行くよ」
「そうかいまたここも静かになるねぇ」
「へへっ、元の身体に戻ったらばっちゃんもウィンリィも用無しだな!」
「言ったね小僧!」
「だいたいあたし達整備士がいないと何もできないちんくしゃは」
「ちんくしゃってなんだよ!!」
「うむ、言い得て妙なり!」
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SIDE:ウィンリィ
「あーあ、またおなか出して寝てるよ。しょうがないな」
「まるっきり
「ほんとにもー、手間のかかる兄を持つと苦労するよ」
「これじゃあどっちが兄貴かわかんないね」
背の高さとか以前に、どっちがしっかりしてるかって言ったらアルの方でしょうね。しょうがないと呆れながら私はこいつに毛布をかけてやる。
「お前たちいくつになった?」
「ボクが14で兄さんが15」
「ウィンリィと同い年なんだから確認するまでもないだろう母さん?」
「そういや、そうだったね」
まったくあれだけバカ騒ぎしていたのに寝れば大人しいもんね。連絡も無しにたまにふらっと帰ってくるだけで、国家錬金術師なんて大層な物に成ったって言うのにねぇ。
「あはは、あたしと同い年でこんなちっこきくせに”人間兵器”だなんて笑っちゃうよね……無防備に寝ちゃってさ」
「この家が安心できる場所である証拠よ」
母さんが言う通り、気を抜くことが出来てるんであれば良いんだけどね。そう思ってると、アルが何か思い出すように笑っていた。あたしもみんなも疑問を浮かべていると思い出すようにアルは語りだした。
「いやぁ『おなか出して寝て』っていえばユースウェルの炭鉱に行った時の事を思い出しちゃって、底の炭鉱の人たちが上からの締めつけで困ってて助けてくれって言われたんだけど、兄さんは最初は助ける気がさらさら無かったんだ。だけどそこの親方の『
「かっかっか!そうかい、”俺達の家”かい!」
ばっちゃんがその言葉を聞いて盛大に笑い飛ばしてみせた。確かに二人にその言葉は効くなんてもんじゃ無いでしょうね。
「そうだね……還る家の大切さや無くなるつらさはおまえ達は身に染みてるもんねぇ」
「うん、だからいつも本当の家族みたいに迎えてくれるみんなには感謝してる。口に出さないけど兄さんもね」
「エドワード君は口には出さないだろうね」
「ふふっ、やんちゃだものね」
「それでもやっぱり生まれ育った家が無いって言うのが現実なんだ。ボク達、家を焼いた事は後悔して無いけど、時々無性に泣きたくなる事があるよ。いっそ思い切って泣いちゃえばふっきれるかもしれないけど、この身体じゃ泣くに泣けない」
「泣ける身体があるのに泣かないバカもいるしね。ほんと、強がっちゃてさこのバカは……」
本当にしょうがないんだから、放ってたらすぐ死ぬんじゃないでしょうねぇ。その後もアルから旅の細かい話を聞いてその日は少し寝るのが遅くなったけど、あたしの知らない二人の事を聞き、笑っていられるこの空気を楽しむ事が出来た。
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デンと言う犬の頭に堂々と立って鶏が鳴き声を響かせた。日が昇ってすぐのまだまだ朝の早い時間に準備を整えて立っている3人と見送るために立っている3人。
「世話になったな。ばっちゃん、おじさん、おばさん」
「ああ」
「何も出来てはいないさ。体に気を付けて」
「気にせずにいつでも帰って来てね」
見送りの場に下りてきてるのは大人3人だけで幼馴染の少女の姿はそこに見えなかった。そのことに直ぐに気づいたのはアルだった。
「あれウィンリィは?」
「徹夜続きだったからまだぐっすり寝てるよ。起こして来るかい?」
「あーいいよいいよ。起きてきたら機械鎧の手入れはちゃんとしろだのあーだこーだうるさいから」
3日で機械鎧を仕上げるためにばっちゃんと共に連日寝ずに仕事をしていた彼女は未だに夢の中だと聞き、読んでくるかと訊かれたがそっけない態度で返すエド。いつ会えるのか分からないのにと少女の両親も気を遣うが彼の意思は変わらない。
「じゃあな」
「ああ、気をつけて行っといで。ボウズども、たまにはご飯食べに帰っておいでよ」
「うん、そのうちまた」
「こんな山奥にメシ食うだけに帰って来いってか」
「ふっふ…」
「?なんだよ」
暖かい声掛けにそっけなく返しているとすぐ隣の少佐が笑っていた。疑問を浮かべて振り返りながら訪ねるエドワード。
「迎えてくれる家族……帰るべき場所があるというのは幸せな事だな」
「へっ、オレたちゃ旅から旅への根無し草だよ」
「エド!アル!」
とことん捻くれた答えを返していると上の方から声が掛かった。そこにはぼさっとした寝ぐせのまま、怠そうに片手を振っている幼馴染の姿があった。
「いってらっさい」
「おう!」
エドワードが観念したかのように頭を掻いてから手を振り上げ短く応えた。それに満足した少女は笑い、それを見守っていた大人たちも笑っていた。
そんな見送りの後、日が沈み始めたころ合いに何やらタグの付けられたねじが発見されて一家全員で顔を青くさせたが、こちらからすぐに連絡を入れる手段はなく、何もない事を祈るロックベル一家だった。
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SIDE:エドワード
「早くしろよアル!」
「兄さん、そんなに急がなくても……」
「うむ、図書館は逃げる事はないぞ」
「良いから早く!」
機械鎧の修理の所為でだいぶ待たされたんだ。一秒でも早く図書館に行きたいんだよ。それにしても、ようやくだな……
「来たぜセントラル!!」
時間は3時少し過ぎたくらいだろうか、軍の方から迎えの人材がやってきた。どうやら二人は少佐の部下に当たる人らしい。
「アームストロング少佐おむかえにあがりました」
「うむ、ごくろうロス少尉、ブロッシュ軍曹」
「こちらが鋼の錬金術師でありますか?」
おっ、流石に中央になれば俺の事も耳に入るんだろうか、そう考えていたら目の前の二人は俺を通り過ぎた。
「マリア・ロスです。お会いできて光栄です!」
「デニー・ブロッシュです。いやぁ、ふたつ名通りの出で立ち!貫禄ですな!」
二人はアルに向けてそのように挨拶をしていた。俺の事は眼中にも入らないってか、おい。少佐とアルが指をさしてようやくこちらを見た。
「え?」
「あのちっこいの?」
ブチッ、誰がちっこいだコラァ!!思い切り怒りをぶつけようとするが少佐が俺の身体を掴んで止めている。まあ、直ぐに謝罪をしたから許してやるか。
「では、吾輩はこのまま中央司令部に赴くゆえ」
「え?何?ここでお別れ?おつかれさん、残念だなぁ。バイバイ!!」
「吾輩も残念だ!!まっこと楽しい旅であったぞ!!また後程会おう!!」
物凄い勢いで涙を流しながら抱き着かれた。暑苦しいのもそうだが身体からぼき、べき、みし、げしょとなってはいけない音がし出した。放せ、この筋肉ヒゲだるま!!死ぬぅ!?
「あとはまかせた!」
「「はっ!」」
その言葉で二人の仕事が少佐の迎えだけでなく、少佐の代わりの護衛である事が分かった。機械鎧が治って戦闘も出来るようになったんだから、別にいいじゃねえか。
「え?まだ護衛着けなくちゃならないのかよ」
「当然である!」
「東方司令部の報告によると傷の男もまだ掴まっていないそうですし、事態が落ち着くまで私たちが護衛を引き受ける事になってます」
「少佐程頼りにならないかもしれませんが腕には自信がありますので安心してください」
移動しながらそのような説明を受けた。と言うよりもまだ捕まってねえのか、あのクソ大佐め、ちゃんと仕事しやがれよな。
「しょーがないなぁ……」
「『よろしくお願いします』だろ兄さん」
「兄……!?」
「ええとこの鎧の方は弟さん……?」
「それにしても何故鎧のお姿で……?」
まあ、パッと見て兄弟にすら見えにくいだろうなぁと思っているとそんなことを訊かれて、つい俺達は顔を見合わせた。数秒の沈黙の後で同時に口を開いた。
「「趣味で」」
もうちょいましな言い訳もあっただろうが、咄嗟に出てきたのがこれだった。俺たちは怪しい目で見られながら、こそこそと会話をされる空気に耐えられず、見えてきた図書館らしき場所に話題を移した。
「ああ、あれが国内最大の蔵書量を誇る国立中央図書館です。全蔵書を読み切るには人生を百回くりかえしてもまだ足りないと言われている様です。そしてその西隣に位置する建物がお二方の目的とする第一分館、ここには様々な研究資料や過去の記録、各種名簿が収められて……いるの……ですが……つい先日の不審火によって中の蔵書事全焼してしまいました」
目的を目の前にして、手掛かりが失われたかも知れない現実に俺もアルも顔を青くさせ、固まってしまった。どうして、せっかくのマルコーさんの厚意だったってのに……
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SIDE:傷の男
ボロボロとなった身体と服をそのままに下水道を歩いて行く。今となっては形見である腕が無事だったのは良かったが、このままでは何も出来ないだろう。どこか、身を隠して休める場所を見つけなくてはな。
「忘れないぞ、フューム・ヴィガ・ラテジスト……お前をこの手で必ず」
故郷をもう一人の錬金術師と共に破壊した事、家族を殺した事、あの心優しい医者を殺そうとした事、どれもこれも決して許されていい事ではない。
「……?」
怒りに震え、覚悟を決め直していた俺は歩くのを一度止めて振り返った。歩く音とネズミの様な小動物しかいない様な場所で異様な不気味さを身に纏った化け物が現れ、静かに襲い掛かってきた。
「くっ!?」
ただでさえ『噴煙の錬金術師』にやられた怪我が痛むと言うのに、その襲撃者は人間離れした動きでこちらを殺そうと向かって来た。破壊の右手で頭を掴み、そのまま壊し、安どしているとそのまますぐに体を掴まれた。
「ぐはぁ!?」
確かに破壊した、そしてその証拠と言わんばかりに周囲には奴の血がこれでもかと言うぐらい流れていた。しかし、その傷の跡すら目の前の化け物には残っていない。
身体の内側が握りつぶされていくのを感じ、すぐさま狙いを相手の腕に変え、倒れ込むように後ろに下がると今度は後ろの壁が切り刻まれた。死に体だがどうにか逃げるが、意識も朦朧としてきた。
死ぬわけにはいかないと咄嗟に壁を壊して逃走経路を確保しようと動いた。しかし、破壊した壁の向こうに地下に張り巡らされたガス管の一部を一緒に掘り当ててしまう。次の瞬間には凄まじい衝撃が身体に伝わり、俺の意識は消えた。
フュームとオリヴィエは一方的に少将の方が嫌ってますが、昔からの知り合いですし、仲が悪い訳では無いんですよね。
ちなみにアームストロング家で一番仲が良いのはキャスリン、軍の仕事関係でよく合うのが少佐、ライバル的なのがオリヴィエといった感じで家同士の関わりが深いんですよね。
最初のオリジナル部分以外原作と変わらないんですよね。変化の無い部分を削っても良いんじゃないかと言う話を友人としたんですが、出来る限りそのままで行きたいんですよね。
でも研究所に入る前に、賢者の石の資料の写しに5日、情報を調べるのに10日かかるから、その間にフュームも戻ってくるのでオリジナル展開になりそうですね。
その後もどうしようかな。ヒューズ中佐については既に決めてる、ラッシュバレーは行く必要性無いし、なんとなく二人の師匠とは出会わない方が良い気がするんですよね。参加するとしたらグリードの討伐かな。その更に後のシンの王族組がやってきたぐらいから本格的にオリジナル部分が増えてく予定。
まあ、予定で決まってても書く時間が無いんですけどねぇ。
気長に書いて行くので、お待ちください。
読んでくれている方々に多大なる感謝を。