Re:上から目線の魔術師の異世界生活   作:npd writer

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今回は少し短めです。

とある原作人物が登場してきますよ〜


十話 宣戦布告

朝を迎えた事で行動を再開する魔獣の軍団。大小様々なサイズな魔獣が一同にうじゃうじゃと動くその様は、歴戦の兵士でさえ恐怖に震える有様だ。

 

その魔獣軍団の中心、岩豚(ワッグ・ピッグ)の上には三つ編みをお下げにした少女がいる。幼い翡翠色の目には似合わぬ残忍な感情を忍ばせているが、それをひた隠すように彼女の可愛らしい見た目に合う相応しい白い長袖のシャツや濃い紺のフリルの付いたワンピースが、彼女の可憐さを引き立てている。下には暗く彩度の低い赤と濃く明度の低い赤のラインが入ったタイツに、紺色のブーツを履いており、一見すると何処かのお嬢様にも見えなくはない。

 

岩豚に乗りながら足をパタパタと動かす魔獣の操り手である少女は、木々が開けて、日光が差し込む空間に到達する。

その場所には、大きな岩が一つのみ置かれているのみの一見すると普通の光景だが、彼女は怪訝そうな目線を岩に向けた。彼女の視線の先には見たことのない青い服を着て、その上から赤いマントを羽織る謎の男性が座っていたのである。

 

「意外だな。てっきり村々を襲う異常者だから頭のイカれたサイコパス野郎が来ると思っていたが、まさか幼女とはな。その年でこれほどの事をやってのけるとは、そのように立派に教育した親の顔を見てみたいものだな」

 

両者が互いに睨み合う中、開口一番口を開いたのは男性の方だった。口元の髭が丁寧に整えられているその見た目から、不潔感を周りに感じさせないよう心掛けていることが窺えることとは裏腹に、彼の口から飛んできたのは辛辣な言葉。彼お得意の皮肉を込めた洗礼だ。

 

「あらあ。私が、そのサイコパスヤロウじゃなくて残念だったのかしらあ。おじ様は。私もてっきり殺り甲斐のある筋骨隆々な戦士が来ると思ったのに、まさかマントを着こなす魔導師が来るなんてえ。予想もしなかった登場に驚きだわあ」

 

岩に座っていた男性の辛口ジョークに応戦するかのように少女に語りかける。男性、ストレンジの事を初見で魔術師に近い分類である魔導師であると見抜くあたり、幼い年ながら随分と多くの場数を踏んでいる事をストレンジは察した。

彼女の言葉を理解してから否か、魔獣たちは妨害者であるストレンジに牙を剥けるが、巨大な魔獣の上にちょこんと座る小さな少女は、同じように岩の上に座るストレンジに興味を持ったのか、すぐに戦闘を始めることはせず会話を続けた。

 

「ねえ、おじ様。私にはあ、無関係な人間を殺す趣味は無いのお。今、この場からすぐに去ってくれるならその命は助けてあげるわよお。お互い無駄な争いは嫌でしょお?」

 

「既に答えは決まっているが、一応聞こう。断ると言ったらどうする?」

 

「そうねえ。趣味じゃないけどお、おじ様を殺して先に行かせてもらおうかしらあ。どうもおじ様は、私の計画に邪魔になるみたいだしい、邪魔するなら私も容赦はしないわあ」

 

無邪気な笑みを浮かべながら、残虐なことを躊躇なく言える魔獣使いの少女。既に人を殺すことに躊躇がない彼女は、ストレンジを前にしても怖気付く事なく冷静に受け答えする。彼女に慢心して挑めば、それなりのダメージを負う事に気付いているストレンジも遠慮なしに新たな言葉を投げかけた。岩の上に座る彼の目つきが、より厳しくなったのを少女は見逃さない。

 

「後悔するがいい。お前は「最強の魔術師」を相手にすることになるぞ」

 

「あらあらあ、こんなか弱い女の子になんて言い方あ!いたいけな私にその口はないわあ!おじさま、顔は良いのに性格はひん曲がっているのねえ。でも私は好きよお」

 

「ひん曲がっているか。師匠からも言われたことがあるが、確かに私は傲慢だ。だが、お前のクソっぷりよりはマシだと胸を誇って言える。お前は、既に人間として終わっている。まともな人間なら誰しもそう思うはずだ」

 

「酷いわあ。私はあ、ただ仕事を果たしたいだけなのにい、なんて罵詈雑言なのお!罪悪感は抱かないのかしらあ」

 

ストレンジの牽制に大袈裟に身を縮める少女。嘘泣きするだが、すぐに顔を上げれば露わになる少女の素顔。さり気なく魔獣を使ってストレンジを包囲している辺り、油断の隙もない。

無邪気に隠された狂気と、情を捨てたその瞳をした人物をストレンジは、今までの人生で見たことがない。彼の周りには狂気に染まる大人はいても、彼女のような子供はいなかった。しかし、目の前の彼女はストレンジの常識を覆す力を持っている。

子供ながら残忍な考えを持つその頭脳に、ストレンジは警戒レベルを更に引き上げ、同時に子供に対する嫌悪感を高めた。

 

「その仕事というのが、罪ない人を虐殺することか」

 

「虐殺なんてそんな大それた事じゃないわよお。ただ、お仕事で少しの人間の命を奪うだけ。数多にいる人間の数から比べたら、ほんの少しでしょお?別に人を滅ぼそうなんて考えてもいないわあ」

 

「仕事という理由だけで何千人も殺すのか?躊躇いはないのか?」

 

「そんなに殺すつもりはないわあ。ただ、換算して村二つ分の人口と、歯向かってきた人間を狩るのみ。何千人も殺すつもりは()()()無いわあ。それにもう腹は括っているものお。躊躇いなんてものはとうの昔に捨ててきたわあ」

 

「おめでとう。晴れて歴史に殺戮者として名を残せるな」

 

ストレンジの皮肉めいた言葉を目の前の少女はどう受け取ったのか。少なくとも彼女に残るまともな思考が反応したのか、彼女の笑みに変化が生まれる。

 

「おじ様って、性格が悪いのねえ。そんな性格をしていたら、女の子にモテないわよお?でもお、私は嫌いじゃないかもお。おじ様、顔はいいものねえ。

ーーねえ、おじ様。本当に、人間って脆い生き物だと思わない?武器が無ければこの子たちにさえ敵わない。弱肉強食の理からすればこの子たちに喰われるのは仕方のない事だわあ」

 

「人間が儚く弱い生き物であることは否定しない。しかしとある人造人間が言っていたが、人間の持つ儚さこそが美しいのだ。

ーーお前にはそれを教えてくれる人はいなかった。実に残念だよ、少女。そんな人々の生活を破壊し、無辜の人々の命を奪った報いをお前は受けることになる。重い十字架を背負って残りの人生を歩むことになるぞ」

 

「……そんな事私は知らないわあ。だって私も生きるためにやっているんですものお。他の生物を喰らって、生き長らえるためには強い意志が必要じゃない?」

 

少女の言葉が終わると同時に、会話の途中に立ち上がっていたストレンジは両手を重ね閃光を発生させる。続けて両手をクロスさせ手首に紋様を出現させた。

そして右手を引き、左手を前に突き出した形になると同時に拳を握ると、その先に盾状のエルドリッチ・ライトを展開する。

 

「我々の意思は、お前よりも、強いぞ!」

 

ストレンジの言葉のある一節に疑問を思い浮かべる少女。

 

「我々え?」

 

少女が疑問を発した直後、ストレンジは爆発エネルギーを溜めたエルドリッチ・ライトを地面に叩きつける。爆発魔法が込められていたことで、叩きつけられた側である前方は大爆発を起こし、前にいた魔獣諸共少女は遠くに吹き飛ばされた。

爆発の衝撃で空には黒煙が立ち込め、辺りの木々は爆風によって吹き飛ばされている。

 

そしてストレンジの盛大な爆発魔法と共に茂みに隠れていたファリックス以下、囮部隊が姿を現した。

 

「第一撃は楽勝だったな、ファリックス」

 

「ああ。怒らせるところまでは、だが!」

 

 

 

 

同時刻、魔獣たちの後方数百メートルではクルシュ達が前方に立ち込める黒煙を確認していた。

最初に黒煙が立ち込め、遅れて地面を鳴らすような轟音が周囲に響く。巨大な音は周辺の木々を揺らし、身体を休めていた鳥たちを飛び立たせる。

これをストレンジの攻撃と判断したクルシュは剣を抜くと高らかに叫んだ。

 

「総員!突撃せよ!」

 

彼女の言葉を合図にして後方に待機していた奇襲部隊が、一気に動き出し魔獣たちの後方に襲いかかった。

 

「狙いは魔獣軍団の最後尾だ!気を引き締めていくぞ!」

 

クルシュは持っていた剣を大きく振るう。目に見えない刃が横薙ぎに一閃し、後方に待機していた魔獣の胴体を切り裂く。

「百人一太刀」としてルグニカ王国では知らぬ者はいない、クルシュ・カルステンの剣技。彼女の白兎撃退の際にも使われた強力な技が再び、魔獣を切り裂いた。突然の奇襲に魔獣たちは混乱しズルズルと後ろに後退していく。勇敢な数体はクルシュに襲いかかるが、彼女と共に飛び出してきた討伐隊によって斬られていった。

 

 

 

 

 

そしてヴィルヘルムがいる右翼攻撃部隊もほぼ同時に魔獣たちの横腹を突くべく、ヴィルヘルムを先頭に奇襲攻撃を行い始めた。

 

「ーーはぁぁぁぉ!」

 

加護を持っておらずとも、研鑚によって先代「剣聖」より剣を奪った「剣鬼」。

彼の実力は、彼が年を召そうとも衰えることを知らずただある目的のためだけに更なる向上を目指していた。

その鋭い剣技が魔獣の身体を切り裂いてく。

 

「ーーここで落ち、屍をさらせ!魔獣ども!」

 

 

 

 

 

ストレンジとファリックスを中心とした正面に陣取る囮部隊。ストレンジの起こした爆発に巻き込まれた少女は魔獣の身体を盾にして攻撃をやり過ごしており、自身に覆い被さる犬型の魔獣を退けると、服についた土埃を払う。

 

「やってくれたわねえ!おじ様!それにこそこそと、伏兵まで用意してえ!」

 

「魔獣軍団を引き連れているお前も同罪だ。村々を襲うクレイジーな奴を迎え撃つのに派手な歓迎は必要だろう?歓迎の一幕としては、最高だったと思うが?」

 

ここで鎧に身を包むファリックスがストレンジの一歩手前に出る。手に真新しい剣を握った若き軍人はあくまで冷静に話しかける。

 

「お初にお目にかかるな、魔獣使い。私はこの地を治めるフォリア・ファリックスだ。悪いが、私は今非常に不愉快だ。お前が行った領地を荒らすばかりでなく、領民の殺めるという愚挙、決して許すことはできない」

 

剣先を少女に向ける青年の瞳には烈火の如く、激しい怒りが灯っている。彼だけではない、彼の後方に控える、ファリックス領民から結成された志願兵達にも瞳にも家族や恋人、友人を殺された事への怒りがあった。

 

「我々にとって幸運なことはドクター殿がこの場にいること、そして我々の手で貴様を屠ることができることだ。悪の連鎖を断ち切るため、ここで貴様を倒す!」

 

「やれるものならやってみなさあい!ウルガルムちゃんたち、アイツらを噛み殺しちゃって!」

 

爆風を生き延びた魔獣軍団のうち、戦闘に陣取っていた体長1mほどの大型犬らしき魔獣が数十匹ほど唸り声をあげて、ストレンジやファリックスを睨みつけた。そして、少女の手を下ろす合図で一斉に駆け出す。

ストレンジは手元のエルドリッチ・ライトを剣状に変えるとファリックスの隣へ並び、彼を守るようにして立つ。

 

「兵士諸君よ!この戦いに王国の未来が左右されると心に刻み込み、全身全霊をかけて故郷や愛する家族、友人たちを守り抜け!」

 

クルシュやヴィルヘルムが、後方や左右から攻撃をしている間、少しでも相手を引きつけるとともにダメージを増やして相手側の戦力を削ぐ必要があるとストレンジは考えていた。

そのため、クルシュたちの接近を直前まで隠し通し続ける必要もある。

 

ストレンジ、クルシュ、フェリス、ヴィルヘルム、ファリックス。各々が其々の場所にて魔獣を討つ戦いの火蓋は切って落とされたのである。

 

 

 




実はこの場面、ある映画のオマージュだったんですが、気づきましたか笑?

各々が其々、どのような戦いを繰り広げていくのか。是非とも後編をお待ちください!


クルシュ様に希望ある未来がありますように……
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