Re:上から目線の魔術師の異世界生活   作:npd writer

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書き終わりました。

ストレンジ先生、猪突猛進です!


十一話 至高の実力

遂に魔獣軍団対人間による戦いが始まったファリックス領内。

正面から迎え撃つファリックスとストレンジの一団が、剣技と魔術を用いて襲いかかる魔獣たちを討伐していく。

魔獣の牙と剣士が持つ剣が激しくぶつかり合い、火花さえ散らす激しい戦いが繰り広げられる横では、周辺には徐々であるが魔獣、剣士双方の死体が転がり始めていた。魔獣は剣で腹を刺され、剣士の腹の肉は食いちぎられており、その死体も痛々しい。

 

「ファリックス、この犬のような魔獣は何て奴だ?」

 

「ソイツはウルガルムだ!噛まれれば呪いをかけられて、ヤツらに食糧として身体中のマナを吸収される。絶対にヤツらに身体を噛ませてはならない!ドクター殿も注意して!」

 

「それは酷く厄介な犬だな。分かりやすいアドバイスに感謝するぞ」

 

何考えもなしに突っ込んできた一体のウルガルムがストレンジに噛みつこうとした直前、ポータルを開いて胴体が半分ほど入り込んだ瞬間に、素早く閉じることで胴体を切断するストレンジ。一切の苦しみを与えない、ある意味慈悲深い彼の殺し方に他のウルガルムは、迂闊に近づけば同じ運命を辿る事を本能で学び、近づくのを躊躇し始める。同時に、魔獣使いの少女もストレンジの魔術が得体の知れないものである事を察し、ストックに限りのある魔獣の扱い方に神経を尖らせながら戦っていた。彼女が成熟した女性であれば、それも苦ではないが、幼い頭脳ではかなりの負担となる。

 

ファリックスは彼の家計に代々受け継がれてきた家宝である刀剣を自由自在に操りながら魔獣たちの身体を切り刻み、ストレンジはエルドリッチ・ライトを剣状にして魔獣に斬りかかる。

元々、戦略家として戦場の場に赴くことが多かったファリックスは噛みつきにかかる魔獣の身体の下に滑り込み、ガラ空きの腹に剣を突き刺し、四方八方から飛びかかってくる敵に対しては、目にも止まらぬ速さで魔獣の頭を切り裂きながら戦っている。ストレンジの使う異次元から得たエネルギーで作られた剣も、普通の剣と同じように魔獣の身体を最も容易く切り裂いていった。魔術師であるが故、ストレンジは剣の才を持っていないと考えていたファリックスは、マントを翻しながら戦う彼の姿を横目に見て密かに感心もしていた。

 

そして彼らに遅れを取られんと他の討伐隊の面々も弓矢や刀剣で対抗していく。

領主自らの出陣、そしてストレンジの参戦による士気向上の効果もあって、最も魔獣の数が多いであろう正面で彼らは互角の戦いを繰り広げていた。

そして、陽動作戦の裏で魔獣たちを背後から狙うクルシュやヴィルヘルムが率いる別働隊も、戦闘を開始し背後と横からの挟撃を行なっている。普段は長閑で静かな一帯が、剣と牙がぶつかり合う金属音や人や獣の絶叫が響き、地面は血の海に染まっている。

 

しかし魔獣軍団と互角に渡り合う人間側の勝利も、僅かながらに見えてきていた。その自信にはやはりストレンジの存在があった。

 

「まあ!おじ様ったら、魔法だけかと思ったら剣も扱えるなんてえ!武術も心得ているのねえ!私、おじ様の事を見直したかもお!でもお、それだけ邪魔に思えてくるわあ!」

 

魔獣の上に乗る少女は、ストレンジの動きを見て感心したのか手を叩いて、賛美を送っている。かと思えば、脅威な存在になるストレンジを一刻も早く殺そうと、さらに待機させてある魔獣たちを正面に呼び出し彼に向かわせる。

ストレンジは飛びかかって来た一匹のウルガルムを剣で斬ると、剣先を少女に向けて、再度忠告した。

 

「もう一度忠告しようか、魔獣使い。さっさとこの地から荷物を纏めてお引き取り願おう。これ以上の殺戮はお互いに死体を増やすだけになるぞ」

 

「それは無理な話よお。私はお仕事で来ているんですものお。何も出来ませんでしたじゃ、依頼人に顔向けできないしい。何より信用の問題になるわあ。お仕事で信用が何よりも大切なのは、おじ様も分かるでしょお?」

 

ファリックスは魔獣使いの言葉に引っかかりを覚えたのか、一歩引くと少女に問うた。

 

「魔獣使い。依頼人とはどういうことだ?」

 

「どうもこうもお、私は依頼人より今回の依頼を受けているのよお。詳しくは明かせないけどねえ。その依頼人は、ファリックス家の信頼とカルステン家の威信を失墜させることがお望みみたあい。まあ、あの様子じゃそこの若当主様の方にご執着だったようだけどお」

 

「当家の信頼と公爵家であるカルステン家の威信を失墜させるだと……。貴様、他の王戦候補者からの差し金か!?」

 

ファリックスは声を荒げるが、少女は笑みを浮かべたまま何も答えない。ただ、意味ありげの不敵な笑みは、王選の裏でカビのように王国中枢を侵食する王国の闇を表しているといっても過言ではなかった。

 

「兎に角、これ以上お前の暴挙を許すわけにはいかないな。クソ魔獣使い」

 

自身の家を標的にされ動揺するファリックスを横目に、マントの力で浮かび上がったストレンジは両手を空に向かって高く上げる。すると、地面を走っていたウルガルムの足元の地面が割れ地中から、魔獣の胴体を絡め取るように青白い線のようなものが迸った。続けて、浮き上がらった魔獣の身体は地面の裂け目から次々に出てくる白い線のようなものに絡め取られ、生命エネルギーをどんどん吸われていく。

そしてストレンジが腕を振り下ろすとともに一気に地面に叩きつけられたウルガルムは文字通り、もぬけのからとなった。

 

「ッ!?ウルガルムちゃんたちが!?」

 

ストレンジ達を取り囲んでいたウルガルムは、彼の魔術によって一瞬にして命の灯火を消された。それには、さしもの魔獣使い少女も動揺し、それは魔獣全体に広がっていった。

ストレンジの身体よりも2倍以上大きい体格と圧倒的なパワーを誇る大型の魔獣たちもストレンジの魔術を警戒して、無理に突っ込まずジリジリと後退し距離を広げていく。

 

「事前にもらった情報ではファリックスの家系に絶大な力を誇る魔導師は存在していなかった……。雇われている魔導師も確認できず、だから魔法による攻撃はないと思っていたのにい。それにどんなに早くても、十分な武装を整えたカルステン家が救援に来るのは3日よりも後と聞いていた。なのに、なのに今私は押されている?こんなにも戦力を揃えたのに、押されている……。

ーーなるほどねえ、まさかおじ様の方が彼らの伏兵だったことには驚いたわあ。私、身体の芯から震える戦いは経験したことないから感激しちゃったわあ」

 

「だから言ったじゃないか。「「最強の魔術師」を相手にすることになる」とな。その忠告を聞かなかったのはお前の慢心だぞ」

 

「……ええ。確かに油断しちゃってた。どうやら、背後に控えさせていた魔獣ちゃんたちも援軍の奇襲で大変そう。これもおじ様のせいなのねえ。

ーー益々、あなたを殺したくなったわあ!だから、今度は油断しないで全力で行くことにする。岩豚ちゃんたち、それに斑王犬、あの赤いマントの男を殺っちゃってえ!」

 

少女の合図とともに森の中から現れたのは、少女が乗る魔術と姿形が全く同じ、岩豚と呼ばれる魔獣の大群と、分厚い体毛と鋭い爪を備えた四足獣。どこかハイエナに似た姿を連想させた。

 

「キリがないな。アイツらはなんて奴らだ?」

 

「あの岩のように分厚い皮膚を持つ魔獣……岩豚だ。あいつの巨大な口は巨人族ですら飲み込むと言われており、またその獰猛さと凶悪さからも危険度が高い魔獣として知られている。

分厚い体毛と鋭い爪を持つ魔獣は斑王犬。人の2倍ほどの大きさを持つ巨躯だ。どちらも厄介の一言では済まされない魔獣の一種だ。ウルガルム以上にタチが悪い」

 

魔獣たちはストレンジの魔術で最も簡単にウルガルムが倒された光景を見ていたからか、それとも少女の指示か、牙を剥いて威嚇するが、ストレンジの魔術を警戒してかいきなり彼に飛び掛かろうとはせず徐々に距離を縮めていく。

 

「あの魔獣使い、敵だが惜しい力の持ち主だ。その力を良き方向に使えば、人類の役に立てたというのに」

 

「人を救える強大な力も人類に牙を剥いてしまった現在では、滅する他ない。それが例え少女なあろうとも。ドクター殿、行くぞ」

 

ふと呟いたストレンジの言葉に、ファリックスは答えるとすぐに刀剣を携えて魔獣たちに向かう。そのすぐ後ろを走るストレンジは、独白に呟いた。

 

(あの力は……アベンジャーズにいても大差ない力の持ち主だ。生まれる環境さえ違えば、人々を守る力になり得たものを……本当に惜しい)

 

 

 

 

 

「はぁぁぁ!!!」

 

魔獣たちの背後から迫るクルシュ率いる別動隊は後方に待機していたウルガルムや岩豚達との戦闘になっていた。

皮膚が岩のように硬い岩豚には、クルシュの剣技が効いているが、その他の人員の剣技ではウルガルムの身体を斬ることが出来ても、岩豚の皮膚を斬ることが叶わなかった。岩豚がある程度固まりで動いており、有効打が少ない以上、戦線は膠着し中々前方まで進めていない。

 

更に負傷した人員は後方で待機するフェリスの治癒を受けてはいるが重傷者も多く、治癒を終え再び戦場へ戻る割合は半々であることも、不安材料であるがそれでもストレンジの存在がある以上、クルシュは剣を振い続ける。

 

(よもや、ここまで魔獣の数が多いとは……。ドクターの力が無ければ、我々はこの戦いに勝利することはなかったかもしれない。彼には未来を見通す力があるのではないかとさえ、思えてしまう。いや、彼には時を操る力がある。それも可能か。

ーードクター・ストレンジ。卿に、竜との盟約を断ち切る一打を任せることは傲慢だろうか?)

 

剣を振るうクルシュの脳裏に、彼女が慕う亡き殿下の面影が浮かぶ。

彼女とフェリスの原動力であり、彼女が心から慕う今は亡き王族の一人だった青年の姿が。

 

亡き想い人の面影と、この先で戦いを繰り広げる「至高の魔術師」を思い、クルシュは剣を振り続ける。

 

「クルシュ様……」

 

後方で治癒に専念するフェリスにも、木々の隙間から彼女の勇姿が見えていた。自身の加護を用いて敵を斬っていくその様は、フェリスの心身を感激の色に染めていく。

自らが先陣を切って、勇猛果敢に敵に立ち向かうその姿はクルシュと行動を共にしていた兵士たちを鼓舞する。

 

治癒の途中、突如として地のオーラが一点に集められたかと思えば、遥か先で魔獣の集団が空中に浮き上げられ直後に叩きつけられる光景が目に入る。

未知の技に、治癒を受けていた兵士たちは目を丸くするがクルシュやフェリスは誰の技かすぐに分かった。

 

(ドクター、そっちは任せたヨ。クルシュ様が後方を切り開くまで、絶対死なないで。負けたら、承知しないんだから)

 

 

 

 

 

岩豚や斑王犬を相手に奮戦するストレンジとファリックスといえども、硬い皮膚を持つ大量の魔獣には流石に苦戦し、魔獣使いと一進一退の攻防を続けていた。

二種類の魔獣に弓矢は通用せず、辛うじて通じるのはストレンジの魔術やファリックス以下、数名の剣技のみでありこれまで優勢に傾きつつあった戦況は、互角になりつつあった。

 

「よもや、ここまで皮膚が硬いとは……。これ以上の白兵戦は限界か」

 

「こいつらの皮膚の頑丈さは、凡人ならば悩みの種だろうな。ファリックス、現状ではあとどれくらいもつ?」

 

「そう長くは持たない。仮に森林を利用した奇襲を立案したとしても、一度ならいざ知らず二度は通じない相手だ。何れにせよ、時が経てば経つほど此方の情勢は不利になる。現に先程から我々は一進一退の攻防を続けられているが、剣士の数は減っている。このままでは、押し切られる」

 

「ーーそうか、分かった」

 

ストレンジは一言そう告げると、マントの力を利用して飛び上がった。ファリックスは突然浮かび上がった彼を見て何をするつもりかと彼は首を傾げ、魔獣使いはサーカスに来た子供よろしく、戦いの場にそぐわない歓声を上げる。

 

「わあ!おじ様は技が豊富だけどお、飛んじゃう事もできるのねえ。子供が面白がりそうな魔法ばかり!きっと好かれるわあ!私がお墨付きをあげるわよお!」

 

「現実を守るための魔術だ、クソ野郎。道化を演じる道具ではない」

 

浮かび上がったストレンジが両腕を上げると、それに合わせて地面に巨大な魔法陣が展開される。

 

「ファリックス、防御する術を持たないのならば」

 

魔術を発動する直前、ストレンジはファリックスの方を向くと、ポータルを開ける仕草を見せた。

彼が何をするつもりかと口を開こうとした直後、地面に大きな穴が開けられ、ファリックス以下正面で戦っていた兵士全員が吸い込まれていき、戦場から離れた地点へと飛ばされた。

 

「あらあらあ、おじ様は味方さえも邪険に追い払ってしまうのねえ。あれじゃ折角おじ様の味方をしてくれているお兄さん達も報われないわあ。それにしても、今まで一緒に戦ってくれていた仲間を追い払う真似をして何をするつもりかしらあ。まさか、私と二人っきりでお茶でもするつもりい?」

 

その場に残った少女は、荒々しい手段で味方全員を強制的に転移させたストレンジに対して奇怪な目線を向ける。

その発言を聞いていたストレンジは、左右の腕を交わらせ、手先には二つのエルドリッチ・ライトを展開する独特なポーズを取った後、少女に返答した。

 

「私が何の策も考えずに、あいつらを追い払っただけとでも?」

 

「……おじ様に何か考えがあったとしても、それを見破ることなんて私には到底できないものお。一体、何を見せてくれるのかしらあ?」

 

「ではその身をもって体験するといい。目玉が飛び出る程、パワフルな魔術を披露してやろう」

 

浮かび上がるストレンジは左右に交わらせた両手を勢いよく広げた。すると、それまで展開されていた二つのエルドリッチ・ライトは消え、彼の背後に目の紋様が描かれた巨大な魔法円が展開される。それと同時に風と空中のマナが荒々しく吹き荒れ、ストレンジの元へと集まっていた。

 

「これは……なんて大魔法なのお!?」

 

少女が驚愕すると同時にストレンジは両手を上げた。

彼の動きに合わせ、少女の直下と空中に複雑な紋様が刻まれた二つの巨大な魔法円が現れる。

その直後、地面に現れた魔法円から溢れ出す光が驚愕する少女を包み込み、ストレンジに集まっていた風とマナを一気に魔法円に流し込むことで、周囲に大爆発を引き起こした。

 

 

 

 

「くっ……!なんて威力だ!ここにいても空気の振動を感じるとは…….!」

 

なんの説明もなくストレンジに遠くに飛ばされてしまい、何故彼が味方であるはずの自分たちを飛ばしたのか納得いかなかったファリックスも、先から発せさせる膨大な魔力に当てられたことで漸く納得する。

 

「……ドクター殿、一体何をするつもりだ?」

 

彼の方へ進めていた足を止め、ただ茫然と先を見つめるファリックス。本来であるならば、彼の助太刀に行かねばならないのだが、彼の本能が危険を訴え彼の足を進めさせようとしない。

彼同様転移させられた兵士たち同様、安全な地帯からストレンジの放つ魔術を見据えていた。

 

 

 

 

 

「ヴィルヘルム!無事か!」

 

「クルシュ様こそ、ご無事で何よりでございます。この魔獣ども、強さはそれほどでありますが、数が余りにも多すぎます。この老骨が少々手こずるほどに」

 

同時刻、魔獣軍団の後方を奇襲していたクルシュらは、ヴィルヘルム達と合流していた。ヴィルヘルムの執事服は魔獣の血で汚れているとはいえ、言葉とは裏腹に彼自身に特に大きな怪我が無かった。しかし、回復役のフェリスがクルシュの部隊にいたため、他に治癒術師がいないヴィルヘルムの部隊は怪我人が他より多く、どうにか歩けている人も多い。

至急、怪我人の治癒に移ろうとするフェリスだったが、ふと彼はマナが強制的に吸われていく感覚に襲われた。

それはヴィルヘルムの長年の騎士としての勘、そしてクルシュも風見の加護でも認識できていた。

 

「何なの!?マナの流れが突然変わるなんて!」

 

治癒魔法を行使しようとした矢先に突如として襲われる未知の感覚。自然の理を犯す強力な力の発生は部隊に動揺を生んだ。マナの移動先を辿れば、その発生源は丁度、ストレンジがいる位置と一致する。

 

「あの力……かの大魔導士であるロズワール辺境伯も出せますまい。自然の流れを変えるような強力な力はドクター・ストレンジ、彼をおいて他にはいないでしょう」

 

「ああ。彼には常識が通じないと分かってはいたが、まさか自然の理でさえも捻じ曲げる力を持っているとはな。使い方を誤れば味方さえを葬りかねないだろう」

 

ヴィルヘルムとクルシュは森の中心から放たれる橙色の光を見据えた。

「至高の魔術師」が放つ一撃を安全地帯から眺める二人にとって、彼の直下にて起こる事態は予測がつかない。

 

「ヴィルヘルム、この攻撃が終わり次第彼の元へと向かうぞ」

 

「承知しました」

 

 

 

 

 

そして少女とストレンジが向かい合う正面。吹き荒れる嵐を他所に、一定のエネルギーが溜まった事を確認したストレンジが両手を振り下ろすと同時に、地面の魔法円から一本の光柱が出現した。そこに溜められていたマナや風が魔術の爆発と共に逆流し、その威力に耐えきれず周囲の木々は倒壊していく。勢いよく魔法円から飛び出した光柱は、その場にいた少女や魔獣もろとも一気に包み込み、全てを吹き飛ばした。

 

爆風が収まり周囲の土煙が晴れていくまで、ストレンジは手先にエルドリッチ・ライトを展開したまま動かなかった。

周囲の様子が明らかになるにつれ、露わになるのは数多くの魔獣の死体と、薙ぎ倒された木々の数々。

防御手段を持たない生身の人間が居た場合、その人物は間違いなく死亡していたと言っても過言ではない莫大なエネルギーが吹き荒れたその跡地には、ただ静けさのみが残っていた。

 

木々や散らばる魔獣の死体を乗り越えて、ストレンジは少女が乗っていた岩豚へとゆっくりと歩み寄る。

直前まで少女を乗せていた岩豚もストレンジの攻撃を直に受けていたため、その命の灯を消していた。当然、魔獣使いの少女もその下敷きになっているか、もしくは爆発で死亡してしまっているだろう。

魔術によって死体を退けて、その下敷きになっているであろう少女の亡骸を弔おうとしたストレンジ。

 

 

 

 

 

 

しかし、そこに少女の死体は無かった。

 

(何故、彼女の遺体が無い。爆風の威力に身体がもたなかったのか?それとも何処かへ吹き飛ばされたのか?)

 

疑念に駆られるストレンジ。彼は、元医者として殺生に対して悪印象を持っており、それは魔術師として成熟した今でも変わらなかった。だからこそ、自らの手で殺めた人は自らの手で丁寧に弔うと覚悟を決めていたその矢先、その対象が消えていたのである。

 

 

 

 

 

 

死体の消失に頭を悩ませるストレンジを、背後より窺う人影が一人。

その豊満な肉体を覆う紫のマントを羽織った人影の手元には二本のククリ刀が握られており、今か今かと獲物が生む隙を狙っていた。

そして狩人は飛び出した。獲物の首元を狙い、そして狙いの場所に確実に刃を振るうため。

 

 

悩むストレンジよりも先に狩人の存在に気付いたのは、彼のマントだった。

ふと、高速で迫り来る存在を感知したマントは高速で迫る狩人の存在を感じ取ると、未だその存在に気づいていない彼へ、慌てて後方を注意するよう促す。

マントの突然の行動に驚いたストレンジは、即座に後方を振り返った。

彼の眼には二本のククリ刀を持ち、妖艶な笑みを浮かべる女性暗殺者の姿が映る。しかし彼女の目にはあの魔獣使いと同じく、殺戮を楽しむ残忍な感情と殺すことで得られる快楽に酔いしれる感情が少女以上により鮮明に映っている。そのヤバさは間違いなく魔獣使い以上だ。

女性狩人が彼へ刃を向けようとした刹那、マントが彼の身体を強引に後方へと退かせ、同時に両手に展開したエルドリッチ・ライトを盾状にして、狩人の刃を弾くようにして防ぐことで、ストレンジは奇襲をやり過ごした。

 

「ーー存在を気づかせていない時点で、あなたに止めを刺せると思っていたのだけれども。その不思議なマントに愛されているのね。本当に、妬ましい」

 

手元のククリ刀を器用に回しながら微笑んだ妖艶な狩人は、ストレンジにどす黒く憎悪が籠った瞳を向ける。

二人目の殺戮者の存在にストレンジは、少女以上の警戒心を宿さずにはいられなかった。

 

すぐに恍惚とした表情に戻った狩人、いや暗殺者はストレンジへ妖艶な笑みを浮かべ、彼に言った。

 

「あなたのような強い力を持つ魔導士のお腹は、まだ割ったことがないの。どんな色をしているのか、とても楽しみね」

 




さて、まだ終わる気配を見せない魔獣との戦い。

果たしてストレンジはどうなってしまうのか!?



リゼロ49話……もうあかんよあれは。普通に見てて泣いてしまいました。そしてベア子のデレが見られるかと思うと、ニヤニヤが止まりません笑
最終話、どんな結末を迎えるのかとても楽しみです!
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