Re:上から目線の魔術師の異世界生活   作:npd writer

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みなさま、お久しぶりです。

書き終わりましたので投稿しました。
話は変わりますが先日公開された『名探偵コナン 緋色の弾丸』見てきました。
感想としては赤井さんの射撃スキルが最早、人ではない。秀吉の頭脳が最早スパコンレベル。相変わらずの破壊祭り……ですかね笑
世良、あれは間違いなくコナン=工藤新一であることを確信したし、コナンも認めてましたよね、あれ。

個人的には秀吉の頭脳レベルが、ドクターやトニー、右京さんらと同等なのかー!って思いました笑


第三章 再来の王都
十五話 メイザース領へ


クルシュからの要望を快諾したストレンジは、その足で今回の主役であるフェリスの自室を訪れていた。

顎に手を添えて窓から外を眺めるストレンジに、ベッドに腰掛け足をパタパタと揺らしながら愉快そうにフェリスは彼を見つめる。

 

「いよいよ会えるのか、かのメイザース辺境伯に……」

 

「にゃ?ドクターってば、何か随分とワクワクしてにゃい?」

 

クルシュより王選に関する重要事項を伝える特使として任命されたフェリスと、それに同行するストレンジとヴィルヘルム。

フェリスは主の顔に泥を塗りはしないと張り切る一方、ストレンジは未だ見ぬ王国最強の魔術師との対談に心躍らせており、主目的よりも優先させる気でいた。

 

「まあ、ここに来て以来言ってたもんネ〜。「気に留まらない訳がない。同じ魔術師を名乗るロズワール辺境伯には」とか、「彼の性格に対する評価は妙なものばかりだ。頭のイカれたサイコ野郎か、道化を演じているだけなのか」とか」

 

「当然だろう。此処にいるのは近接戦闘のスペシャリストばかりのみ。フェリスは魔法こそ使えるものの、戦闘向きではない。だが、メイザース辺境伯は王国随一の戦闘能力を持ち、その力は軍隊と同等と聞く。そんな人物に興味を持たない方がおかしいはずだが?」

 

「まあ、頻繁に会っているフェリちゃんとは違う価値観をドクターは持っているのかもネ〜。正直、フェリちゃんにはドクターがそこまでロズワール辺境伯に固執する理由が分からにゃいけど」

 

「先程言ったはずだ。強大な力を持つ魔術師。同じ立場の人間として興味を抱かない訳がない」

 

「本当に〜?何か裏がありそうな感じがするけどネ〜?」

 

意外にもフェリスはストレンジの目的がただ会うだけとは考えていなかった。他にも魔術師はいる中で、彼がロズワールにのみ関心を持っていた事をフェリスは見抜いており、摩訶不思議な現象を好む彼にとって何か別の訳があるのではないかと察していたのだった。暫しの沈黙の後、ストレンジは静かに告げる。

 

「ーー嫉妬の魔女と瓜二つの容貌を持つハーフエルフを王選に担ぐという所業。大胆なのか馬鹿なのか分からないが常人では考えられない行動だ。奴がどんな腹積りか、実に興味がある」

 

窓に反射して映るストレンジの顔は厳しい。

先の空間の歪みを気にしていたストレンジは、空間を歪ませるほどの実力者を密かにマークしており、その中にはロズワールの名もあった。万が一、彼がエミリアと呼ばれる候補者の功績作りの為に意図的に起こしているのだとすれば、ストレンジにとって看過できない事案だ。

エミリアという候補者を勝たせるために態と引き起こしている可能性もあり、ストレンジは特に警戒していたのだった。

 

「ドクターの感覚は正しいヨ。この世界ではハーフエルフっていう存在は忌避されている。かつて魔女を喰らい、世界の半分を闇に飲み込んだ恐怖の存在。その容姿と瓜二つの生き物なんて嫌がるっていうのが性ってコト。フェリちゃんはくだらないって割り切ってるけど、世間では魔女の申し子を出馬させる事を嫌がる声ってのは多い。そんな彼女を敢えて公衆の面前に引き摺り出して、更に王選へ担ぎ出すもんだから、ドクターが関心持つのは無理もないヨネ〜」

 

「ーーハーフエルフ……サテラ、か」

 

サテラーー嫉妬の魔女にして銀髪のハーフエルフ。この世界に来てまだ数週間しか経っていないストレンジでも脳裏にしっかりと刻まれたその名前。未だに世界に禍根を残し続けているその存在にも、ストレンジは目を光らせていた。空間の歪みが人為的によるものである場合、ロズワールよりも可能性が高い存在であり、大瀑布近くの祠で封印されているとはいえ、未だ瘴気をばら撒き続けるその怪物を彼が目を付けていない筈もなかった。

もしも空間の歪みが彼女の仕業である場合、その処置すら厄介であり、少なくともストレンジ一人の力では差し違えて漸くという不確定な可能性だった。

嫉妬の魔女であるならば暫しの放置、ロズワールの場合は処置に向けての行動、自然現象の場合は監視の三つの手段を構築するストレンジだった。

 

「ま、とにかく明日の早朝には此処を立つからネ〜。しっかりと準備を忘れないでネ」

 

考え込んでいたストレンジの頭にフェリスの声が鳴り響いたのはそのすぐ後だった。

 

 

 

 

 

翌日の早朝、王都に位置するカルステイン家の屋敷からメイザース領へ出立するフェリス、ストレンジ、そして御者を務めるヴィルヘルムはクルシュの見送りを受けた。

 

「今回はあくまで情報伝達が主題だ。くれぐれも相手方に失礼の何よう心掛けてほしい」

 

「任せてください!クルシュ様のお顔に泥を塗るような真似は、フェリちゃんは絶対しませんから!」

 

「フェリスは大丈夫だろう。こういう場にも慣れているからな。

ーードクター、メイザース辺境伯はファリックスとは違いかなりの奇抜さで有名な人物だ。卿が興味を持っているのは承知だが、あまり用件から逸れすぎないよう留意してほしい」

 

「私の心配か?心配ご無用と言っておこう。これでも私はマナー講座を受けていたんだ。礼節は弁えることができるに決まっているだろう」

 

「それを聞いて安心できた。卿の性格からして、気に入らなければすぐに会談を中断させそうだからな。こうして声がけをさせてもらった」

 

「おいおい、私はそこまで性根が腐っているわけではないぞ」

 

クルシュの言葉に心外と言わんばかりのストレンジ。彼のマナーに対する心配をストレンジは、無用と言わんばかりに払い除けた。自信があるストレンジを見て、クルシュは安心して息を静かに吐く。

 

「今回はスリング・リングを使わないのか?」

 

「あのねドクター。この世界の全ての人が、ドクターの魔法を見て何も思わないはずがにゃいんだよ。ファリックス子爵が例外だっただけで、殆どの人がびっくりしちゃう。それに、ドクターの魔法ってすんごい便利でしょ?あんまり使っちゃうとヴォラキア帝国とか魔女教に目をつけられちゃうかもしれないヨ?」

 

竜車に乗り込む直前、何気なく呟いたストレンジにフェリスは忠告も兼ねて返した。

仮想敵国であるヴォラキア帝国や魔女教に目をつけられるその危険性は周知の事実であり、その力を悪用する連中が出てくることは予想に容易い。その言葉を受けてストレンジはスリング・リングを使わず、偶には竜車からの景色を楽しもうとそのまま乗り込んだ。

 

 

 

 

王国からロズワール領への道中、竜車内に向かい合って座るフェリスとストレンジ。

ストレンジは異空間から取り出した書物を読んでいるため、暇になっているフェリスを時よりストレンジのマントが彼の元へ赴いて暇つぶしの相手になっていた。というのも、読書に熱中するストレンジを邪魔しないようフェリスは静かにしているたのだが、喋ることが大好きな彼にとって大半の時間帯は退屈な雰囲気が続いていたため、それを察知したマントなりの気遣いとしての行動だった。

やがて竜車はリーファウス街道と呼ばれる交易路に到達する。

 

「ねえドクター、あの大きな木は知ってる?」

 

マントと戯れていたフェリスがふと、指差した方向。ストレンジも其方へ目線を移せば雲を突くような巨大な大樹がそびえ立っているのが見える。

 

「大きな木……あれか。これは確かに馬鹿でかい木だな」

 

「でしょ〜。じゃドクターに質問で〜す。この大樹についてのお話について述べヨ!」

 

「確か、フリューゲルと呼ばれる賢者の名前から由来されているとか、賢者自身が植えたとか様々な伝説があったはずだ。その真意は不明だったはずだが」

 

「ふ〜ん、しっかりと勉強してるんだネ。フェリちゃんはちょーっとつまらにゃいかな」

 

そうこうしている間にもどんどん大樹の全貌がはっきりしてくる。地球上にはほぼ存在しないであろう巨大な大樹。

見上げても頂点が見えない程の高い幹に、天に突き立てるように伸びる膨大な枝の数。生い茂る葉もそれに相応しい量を誇り、太く逞しい幹を支えるのはのたくる大蛇のように地を這い、大地に沈む根の数々。

大森林の中にあるわけではなく、平原の中に一本だけ立っているその様は雄々しく、北欧神話と聖書に関する知識を有していたストレンジにとってはユグドラシルとも、セフィロトの木ともとれていた。

 

「確かに近距離で見るとその大きさに圧倒されるな。樹齢数百年でよくここまで成長したものだな」

 

「そうだネ〜。圧倒されちゃう大きさだよネ」

 

「しかし何のために賢者フリューゲルはこのバカでかい木を植えたんだ。何かのメッセージか、単に功績をアピールしたいだけなのか」

 

「うーん、文献も少ないしフェリちゃんも分かんにゃいかな〜。そもそもこの大樹について研究する人も最近はいないし〜。ま、きっとあることに意味があるって事ことだネ。

ーーあ、ここより北東方面に進むとメイザース辺境伯領だヨ。だよね、ヴィル爺?」

 

「ええ。この先を進むとやがて森林が見えてきましょう。そこに入れば、メイザース辺境伯領とは目の鼻の先です。が、対策こそなされていますが、その森林にはウルガルムが多く生息していると聞きます。故にドクター殿、警戒を怠らぬよう願いますぞ」

 

フリューゲルの大樹を通過し、北東へ進むとやがて薄暗い森林が見えてくる。石畳の道路が整備されているとはいえ、左右に広がる無数の森から薄気味悪い気配が漂うことをストレンジは察知していた。

念のためスリング・リングを指に通して警戒を強めるストレンジ。

しかしそんな彼の懸念を良い意味で裏切り、一切の魔獣は襲ってこなかった。

というのもストレンジは知らないが、半月ほど前この場所においてとある使用人とメイドたちが奮戦し、魔獣の脅威から周辺にある村を守った事件があったのだ。

最終的に主によって多くの魔獣が退治されたその事件には、つい最近雇われた黒髪の使用人が大活躍したそうだとかないとか。

 

三人を乗せた竜車は長い森林を通り抜け、広い平野に出る。

そして竜車から一望できる長い長い道のりの先には立派な屋敷が見えて来た。

 




次回はいよいよロズワールとの対談です。
お楽しみに!

因みにストレンジが製作した空間の歪みを生じさせる可能性のある危険者リストの中にはロズワールの他に、サテラ、パック、ボルカニカ、ラインハルト、ペテルギウスらが入っています。

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