Re:上から目線の魔術師の異世界生活   作:npd writer

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皆様、大変長らくお待たせいたしました。
先週はとても忙しく執筆の余裕がありませんでした。ようやくひと段落しましたので、執筆を再開します!

今回は少し短めです。


十八話 懸念は世の常

ロズワール邸にて開かれている王選に関する会談。

出席者であるフェリス、ストレンジ、ロズワール、それにエミリアが揃ったことで遂に開かれる。

 

「そぉーれでは王選について、エミリア様も揃った事でぇーすし、そろそろ始めましょーか?」

 

「そうだネ〜。かなり脱線しちゃってるし、とっとと始めちゃいますか〜」

 

フェリスは一通の紙をテーブルに置いた。先にエミリアが手に取る。

 

「えーと、エミリア様、それにロズワール様。王選に関しまして、賢人会より招集がありました。王選候補者全員を王都に召集し、今後の王選についての議論を行うとの事です。開催日は三日後を予定。近日中の王都参内をお願いします」

 

「三日後……じゃ、早く準備しなきゃね!」

 

早速息巻くエミリアに、ストレンジは軽く諭す。

 

「そう焦らなくても良いんじゃないか?ここから王都まではたったの半日。準備期間に最低でも一日は取れる。まあ、今すぐ王都に行って観光したいならそれもありだろうがな」

 

「まぁ、そこはエミリア様にお任せしますけどネ〜。あ、お知らせは以上にゃ。今回は時間さえ守ってくれたら、特にその他に規則や指定はありません。同伴者についても、同様にゃ」

 

「かーんしゃしますとも。フェリス、ドクター殿。わーたしから特に要望はありませんが……エミリア様」

 

「分かってるわ、ロズワール」

 

すっと立ち上がったエミリア。何か切実な望みを抱えているのか、ロズワールに促されたエミリアは、深々と頭を下げる。

 

「お願いがあるの。フェリス、ドクター。あなたたちの力を借りたいの。スバルを、スバルを助けてください!」

 

突然彼女の口から告げられた謎の名前。フェリスもストレンジも首を傾げざるを得ないが、何やら深刻な事情を持っている事は理解できる。

 

「スバル……?」

 

「あ、あなたたちはスバルの事を知らないのよね。えっと、スバルは私を助けてくれる不思議な男の子。この前のアーラム村の一件で、かなり無理しちゃって。それでゲートが危険な状態で……。私が無力なせいで、スバルに辛い思いをさせちゃったから、私も何かスバルにできることがあるんじゃないかって!」

 

「そこで私やフェリスの力をもって、そのスバルという人物の治療を行って欲しいといことか?」

 

「そう。こんな事頼むのは変だと思うけどお願いなの!私にできることがあればなんでもするわ!」

 

ストレンジは二点気にかけたことがある。

一つは元医者として、そのスバルなる人物の治療を行うとすぐに決めたこと。元医者として救える命を救いたいという思いと、自分の技量が試せる良い機会でもある事から彼の中に拒否する理由は浮かんでこない。

 

もう一つはスバルという名前だ。明らかにそれは日本人の名前であり、これまで出会ってきた人物の名前とは一線を描いた名だ。

もしも仮に自らと同じく異世界にやって来ている人間だとするならば、治療の過程で元の世界に戻れる情報を何か得ることができるかもしれない。

 

全くメリットがなければストレンジであろうとも、フェリスやクルシュの意見を聞いていたであろうが、メリットが複数存在している時点で彼はエミリアの要望を聞き入れるつもりでいた。しかしあえて意地悪く質問する。

 

「ほう。そのスバルという男のためならば自己犠牲をも厭わないのか?」

 

「え、ええ。スバルは私を助けてくれるもの。恩返しに私にできることがあれば何でもするつもりよ!」

 

「ちょ〜っと、ドクター。なーに考えちゃってるのかにゃ〜?もしかして、変なことでも考えていた?」

 

「そう変なことを言うのはやめろ。そのスバルという人物に多少興味を持っただけだ。何か変な妄想をしていたわけではない」

 

「あれ〜?フェリちゃんは何も言ってないのにどうして変な妄想って言えるのかな〜?もしかしてそういうのを期待していたの?」

 

「最低ね、お客様」

 

「最低です、お客様」

 

「最低だーよ、ドクター殿」

 

「お前まで乗るな、クソピエロ野郎」

 

姉妹メイドのみならず、調子づくロズワールを牽制するストレンジ。ストレンジに怒られたにも関わらず、ロズワールは笑みを浮かべ続ける。

含みのある笑みを浮かべることの多いロズワールだが、今回は完全にふざけているためストレンジも呆れたような表情こそするが、大して追及もしない。

 

「良いじゃないか、フェリス。私も元とはいえ医学の道を極めた者だ。治癒を望む者に対しては、敵味方関係なく治癒を行うべきと思うが」

 

「んま、フェリちゃんにとっても其方に貸しを作れるわけで、不利益になることは無いし異論はないかにゃ〜。あ、でもそちらの方から治癒を不要と判断した場合は、その時点で治癒は止めるけどそれでいいかにゃ?」

 

「ええ、構わないわ」

 

エミリアは確固たる意思を決めたように深く頷く。彼女にとって大事な人であるスバルの治療は王選に次に重要な責務と考えていたため、例え敵方であるクルシュ陣営に借りを作ろうと後悔はなかった。

階段も終盤に差し掛かったところで、王選に関することは全ては出尽くした。このタイミングでストレンジは手を挙げる。

 

「なら私からも一ついいか?」

 

「おやぁ〜?ドクター殿からとは珍しいでーすねぇ。なーんでしょうか?」

 

「ここで聞いておきたいことがあってな。ロズワール辺境伯は異次元の脅威については考えた事はあるか?」

 

ストレンジは人差し指を立てて、その指先を天井、否、正確には天井のその先、空に向けていた。

ロズワールはその道化顔を上に向けるが、珍しそうな表情を浮かべ視線をストレンジに戻した。

 

「異次元からの脅威、そーんな事は気にしたこともあーりませんよぉ?」

 

「既に耳に入ってるとは思うが、このルグニカにて多数の空間の歪みが出現している。隣国のヴォラキア帝国や北方のグステコ聖王国でも観測されており、これは世界的な問題だと理解しているとは思う」

 

「それはそーですねぇ。なぁーにせ、ルグニカ王国建国史上初めての、上空に出現した異変ですかーらねぇ。辺境伯として見逃せない一件ではあーりますとも」 

 

「異次元の脅威から現実を守ることは私の責務とだが、もう一つに空の果てから来る敵から、全宇宙を守る事も私の重要な責務だ。私はあの事件の再来を何としても防ぎたい」

 

「あの事件?」

 

ロズワールの問いにストレンジは返答を控える。ストレンジのいう事件というのは、2012年のチタウリ軍によるニューヨーク侵攻だ。地球の人々にとってスーパーヒーローの存在を認知させたと共に、人類が唯一の知的生命体ではないこと、地球でさえも侵略者からの攻撃目標とされていることを、あの事件は地球中に知らしめた。

仮にストレンジが懸念する空間の先が、彼の宇宙(ユニバース)であった場合、ストレンジにとって、彼らのルグニカ王国侵攻は最も防ぎたい事案であった。地球人にでさえ彼らのテクノロジーは脅威になり、あの傲慢な実業家が鉄の鎧を狂ったように作り出した原因にもなった。その力が何世紀も遅れるこの世界に持ち込まれれば被害は想像を絶するだろう。

 

「その事は後に話そう。とにかく、この事態に際して私は万が一の事態に備えてのチームを結成したいと考えているのだ。ついてはロズワール辺境伯に協力を願いたい」

 

「異次元の脅威、空の果てから来ーる敵ですかぁ。わーたしもそれについては確かに認識していなかった脅威でーすねぇ。分かりまーしたとも。それについてはこちらでぇーも、できる限りの協力をいたしましょーう」

 

「感謝するぞ」

 

ストレンジも自身の要望をロズワールに伝えることができ、訪問の目的を達成することができた。

長かったロズワール邸への訪問も全ての日程が終了し、ストレンジとフェリスは別れの挨拶を部屋の面々に行い、屋敷を後にする。

 

「あぁ、ロズワール辺境伯。別れのついでに一言、伝言を頼む」

 

「ふむ、なーんでしょうかぁ?」

 

「『沢山の知識に囲まれて過ごすのもいいが、偶には子供らしく外に出て遊ぶことを勧める。何がお前を縛るのかは知らないが、自ら進まないのは呪縛を望んでいるのと同じだ』と。お前なら分かるだろう」

 

「……わーかりましたとも。伝えましょう」

 

別れ際に放った一言に、その真意を読み取ったのはロズワールただ一人。しかし、そのロズワールも一瞬表情を険しめ、ストレンジを睨んだ。まるで、正体不明の怪物を目の前にしたように。

 

 

レムに伴われ、フェリスとストレンジは玄関から外に出る。

その時、ストレンジの目に映ったのはヴィルヘルムに悪絡みする黒髪の少年。東洋人らしい彼の顔を見た瞬間、彼はその少年こそスバルであることを確信した。




ロズワールの協力を取りつけたストレンジ。
『ニア・アベンジャーズ計画』に向けてもストレンジは大きく関与していくことになります。

因みにストレンジがこの屋敷に引きこもる何者かの存在に気付いたのは彼が、空間を認識する能力に長けていたためです。
自分より遥かに小さな存在が何年も一室に引き篭もる、これには何か理由があると考えたストレンジは敢えて「呪縛」と言いました。

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