Re:上から目線の魔術師の異世界生活 作:npd writer
サブタイトルの名前が思い浮かばない。
そう言えばこれが投稿される日はリゼロスで限定衣装のレムが来るんですよね、当てなければ!
黒い手に巻かれ、サンクタムから強引に引き離されたストレンジが意識を取り戻すのにかかった時間は正確には分からない。それがほんの数秒か、それとも数時間かー。
ストレンジが意識を取り戻し、目を開けるとそこにはサンクタムとはうって変わる、全く別の景色が現れた。
以前、ウォンが管理する書庫で閲覧した書物内に記されていた中世ヨーロッパのような街並みがそっくりそのまま眼前に広がっていたのである。
日光が煌々と街中を照らす中、空想の世界でのみ描かれるような様々な種族が闊歩している。
ストレンジがかつて住居を構え、現在でも拠点としているニューヨークと比べると建物の高さや建築様式、文明レベルは劣ってはいるものの、都市の発展具合からかなりの発展を遂げている事が分かり、この都市はどこかの国の首都なのだろうか、とストレンジは思案する。
スリング・リングやアガモットの目など、魔術師として必要な道具一式を確認したストレンジは一先ず、状況を把握するため周りを見渡す。
ストレンジの背後には大きな噴水広場があり、多くの人や亜人が行き交っている。そして時より地球で言うところの馬車なのだろうか、四足歩行の大きなトカゲらしき生物が引く車が往来している。大通りへと目線を向けると車の数は更に増え、ほぼ途切れる事なく通りを行き来していた。
ふと空を見上げたストレンジは星の位置を確認する魔術を使用し、上空を仰ぐ。この魔術を使うことにより、昼間でも月や他の天体の位置を観測でき占星術やGPS無しでの位置の把握が可能となる。
「地軸や星々の数、方位、位置が地球のどの地点の空とも一致しない。つまり、ここは我々がいたアースとは次元も異なる異世界ということか……」
ストレンジは諸々の条件からここが地球でない事を確信した。恐らくあの黒い手が自身をこちらのユニバースに引き込んだのだろうが、その目的をストレンジは現時点で察する事ができない。
ストレンジはすぐにでも地球へ戻るため、人気のない路地裏まで赴き、そこでスリング・リングを使ってゲートを開こうとする。左手の人差し指と中指にスリング・リングを通し、右手で円を描くように回して、ストレンジが通れるほどのゲートを作るが……
「ある程度想定はしていた。しかし改めてこうしてみると現実を見せつけられたような感覚を覚えるな」
ゲートを作るところまでは上手くいった。しかしその先が問題となる。ゲートの先はサンクタムには繋がらず、黒く塗り固められた漆黒の異空間が姿を示すのみだった。つまり目的地を示さなかったのである。ユニバースが完全に切断されているのか、それともあの黒い「何か」が原因なのか。
彼は幾度かサンクタムを念じてゲートを開こうとするも同じような状況に陥るばかりで一向に進展しない。
カマー・タージや盟友ウォンとも連絡が取れぬまま、ストレンジはたった一人、異世界へと召喚されたのである。
ストレンジは自分の責務であるタイム・ストーンの保護を優先事項として置き続ける一方、地球への帰還方法を探ろうと決意した。最早、一刻の猶予も許されない。
先日には、
「とにかく、まずは地球へと帰還する方法を探すぞ。いつまでも突っ立っているわけにもいかない。申し訳ないが、手伝ってくれ」
ストレンジは相棒のマントに不安を隠してそう囁いた。マントは了承の意を込めて襟で小さく頷く。
ストレンジは路地裏から大通りへと戻り、町並みを改めて見渡した。
全身を毛で覆った猫耳の亜人が人間の女性と話しており、中世の鎧に酷似した甲冑に身を包んだ騎士が道端で欠伸をしている。
人間と亜人の子供が追いかけっこをし、車道にはたくさんの馬車と思わしき乗り物が往来している。
元々知識欲が高い性格であるストレンジは、今まで見たことがなかった物珍しい光景に探究心が高揚するのを覚え、興味深げにあちらこちらを見て回った。幸い、彼の知識欲を咎める者がいないため、ストレンジは自分の思うがままに探究する事ができる。
彼は人通りの多い通りを歩いて行き、出店が立ち並ぶ通りに行き着いた時、ふと視界に入った青果店を訪れた。
「あなたが、この店の店主か?」
「お?お客さんか?うちのリンガはうめぇぞ!味は保証するからうちで買っていきな!」
隆々とした筋肉を持ち、厳しい顔立ちと傷のあるスカーフェイスが特徴な小枝を加えた店主らしき男性はストレンジが話しかけるとリンガを手に持ち、売り込む。
「リンガ……この国ではアップルを日本語のリンゴに近いリンガと呼ぶのか……」
ストレンジは改めて自らが異世界に飛ばされた事を肌で感じる。言葉が通じることが何よりの幸いであったが。
一方、右手のリンガを弄りながら木の枝を加えた青果店の店主は怪訝そうにストレンジを見つめる。
「あんた、この辺じゃ見ねぇ顔に格好してんな。何処の国から来たんだ?」
「私は、アメリカ合衆国の都市であり世界最大の経済都市ニューヨークから来た」
「は、はぁ?アメリカぁ?ニューヨークぅ?そんな国も地名も聞いた事はねぇな。お前、まさか酔ってんのか?」
「酔っていない、私は正気だ。ということはこれも使えないということか」
ストレンジは胴着の中から財布を取り出し、中から1ドル紙幣を抜き店主に見せるがその店主は手を横に振り余所の金の国は使えない、と断った。
「他国の金を差し出す……ん?どこかで同じような光景を…お前、無一文か?」
「この一ドル札が使えないなら、申し訳ないが私は無一文になってしまうな。では、追い払われる前に、リンガではなくこの国について少し聞かせてもらおうか。世間話程度で金を取るような、心が狭い人間ではないと私は思ってるが」
追い払おうとする店主をストレンジは話題を変えて繋ぎ止めた。それと同時に今いる国についての情報を聞き出せるかもしれない、とストレンジは判断したのである。
店主も嫌々ながらも語り始めた。
「なるほど。このルグニカ王国では王を始め、王族全員が謎の流行病により死亡。王権を引き継ぐ権利を持つ王族の死亡により、新たに王権を継承する権利を持つ候補者同士で行われる王戦が始まろうとしている。何とも平日の昼間に放映している三流ドラマのようなベタな展開だが、状況把握には十分すぎるほどの情報だ」
「その「三流どらま」が何なのかは分かんねぇが。あぁ、大体それで合ってんな。その候補者っていうのは何やら資格がないとなれないらしくてな、詳細は分からねぇ。もういいよな?こっちも商売してんだ。無一文なら用無しだ」
これ以上の話を聞く事はできない、と判断したストレンジは店主に礼を言ってその場を去ろうとした。しかし、その直前店主がストレンジを呼び止める。
「待て!今思い出したぞ。そういえば、あんたと同じ黒髪の少年が以前この店を訪れた事があってな、奴もアンタと同じ無一文だった。アイツ、急にボケーっとしだしたんだよなぁ。すぐに直って開き直りながらどっかに行っちまったが」
「黒髪の少年?そう言えば、先ほどこの国では私のような黒髪は珍しいと話していたな」
「この国じゃ、あんたのような漆黒のように黒い髪を持つ人間なんてのはそうそういねぇ。それにかなり独特の服装もしていたっけな。案外、お前と同郷の仲かもしんねぇかもよ」
同郷、つまり同じアースからの転移者という可能性がある。思わぬ形で当たりを引いたと確信したストレンジは店に戻り、その店主からなるべく多くの情報を引き出そうと画策する。
「その少年はどんな風貌をしていた?服装も聞かせてもらおう」
「んー、あんまり覚えちゃいねぇがな。黒髪に黒い目、目つきはかなり鋭かったのは覚えてる。あんたとはまた少し違う顔立ちだったっけな。あ!あと、妙な格好といえばあいつ上下が黒くて黄色とか白の線が入った服を着ていたぞ!あれは、かなり珍しかったからな、嫌でも記憶に残る」
「黒髪、黒い目をした少年で特徴的な格好か……。なるほど、実に大雑把ではあるが分かりやすい情報だ。これは大変な情報かもしれない。有効活用させてもらおう。さて、そろそろ行くとするがその前に、主人の名前を聞かせてもらおう」
「俺か?俺はカドモンっていうのさ。満足かい?無一文」
「その無一文という名前は止めてもらおう。
ーー私はドクター・スティーブン・ストレンジだ。機会があれば次はリンガを買わせてもらおう」
「金さえ持ってくれば大事なお客様だ。今度来るときはしっかりと金を持ってきてくれよな!じゃあな!」
今度こそ店の店主ことカドモンとストレンジは別れを告げ、それぞれ別の道を歩んでいく。果たして彼が見た、その謎の少年は一体何者なのか?その答えはストレンジでも分からない。
カドモンの店から離れたストレンジは、一直線に王城近くまで来ていた。目的は王城近くにある、とある場所に赴くことである。
カドモンから教えられた場所、この国を守る騎士団一行の本丸であるルグニカ王国近衛騎士団詰所は王城のすぐ近くにあり、建前から分かる独特の雰囲気を醸し出していた。
ストレンジはマントの襟を正すと、騎士たちが出入りする出入り口を通り抜け、颯爽と受付に進む。
騎士団詰所をマントを靡かせながら入る人物はそうそう居ないため、ストレンジの行動はすぐに注目を浴びた。
「突然失礼する。旅の者だが、ここが近衛騎士団詰所で間違いないか?」
「はい。そうですが、どうされました?」
「そうか、それは良かった。実は面会を希望したい人物がいる。是非ともその人物から力を借りたいのだ」
ストレンジが態々騎士団詰所を訪れた理由、それは自らの力を正しく理解できる、優秀で強力なパトロンもいないストレンジにとっての助けとなる存在を探していたからである。
「は、はぁ…面会を希望していたいということでしたが、具体的にはどのような方なのでしょうか?近衛騎士団の騎士の誰かでしょうか?」
「いや。この街に滞在していると聞く、人物に合わせてほしい。
ーークルシュ・カルステン。カルステン公爵家現当主であり次期ルグニカ王国最有力候補である女公だ」
カドモンから聞いた情報の中、今王都に滞在している有力者の中で、最も優秀な領主は誰かという問いに対してカドモンはクルシュ・カルステンの名を挙げていた。
カルステン公爵家現当主であり、女性でありながら男性顔負けの勇猛果敢な性格の持ち主で、王戦前から様々な武勲を挙げている実力者。その名声と実力から次期ルグニカ王国の最有力候補として注目されている。
彼女ならば自身の能力を見せることで、双方が納得できる条件で支援の確約を得ることができるのではないか、という判断をストレンジは下した。
その名を口にした瞬間、ストレンジの相手をしていた騎士を始め、周囲にいた騎士一同が一段警戒を強める。この国の公爵家に、それも次期ルグニカ王国国王の最有力候補に突然、旅人が面会を求めてきたのだ。そう反応する方が自然である。
「失礼ですが、どうしてクルシュ様に面会を?失礼を承知で申し上げますと、旅人が我がルグニカ王国の公爵家に面会を求める事は普通はないものでして……」
「私は遠くの地、ネパールはカトマンズに籍を置く魔術師だ。現在、本国からの資金が途絶えてしまい、助けが必要になっている。何とかこの王都までたどり着いたのだが、そこで所持金が底をついてしまい、挙げ句の果てに無一文だ。それ故、私は新たな支援者を求めている。これで把握はできたか?」
魔術師という言葉に騎士は戸惑いを隠せない。
「魔術師だと?」
「かのロズワール・L・メイザース辺境伯と同じ立場の人間ということか?」
「しかしならばなぜ、クルシュ様へ?」
「恐らくロズワール辺境伯は銀髪の半魔を匿ってるだろ?きっとあの人の国でもそれが広まってるんじゃないか?」
否、ストレンジが単にクルシュの下を訪ねることにしたのは彼女の実力や武勲など総合的な面から判断したためであった。
確かにロズワール・L・メイザースという、凄腕の宮廷筆頭魔術師がいることも少しばかりはカドモンから聞いた。しかし、彼は実に奇抜で何をしてるかも分からないミステリアスな人物だとストレンジは脳内評価していた。勿論、これはカドモンから見た辺境伯の姿であり、実際には案外まともな人物なのかもしれない。しかし、それでも奇抜な魔術師よりも勇猛果敢な女公の方がストレンジを正しく扱えるだろうと判断し、ここまで来ていた。
「あなたの名前を伺ってもよろしいですか?」
「私はドクター・スティーブン・ストレンジ。「至高の魔術師」を受け継ぐ魔術師だ」
ストレンジの名前を記しているのだろう。見たことのない文字で紙に記した騎士は怪しみながらも、奥に引っ込んだ。長丁場になると踏んだストレンジは休憩がてらに詰所に置かれていた長椅子に腰掛ける。
「失礼。あなたは魔術師とお伺いしたのだが、具体的にはどの属性の魔法を操るのですか?」
長椅子に腰掛けていたストレンジに突如として話しかけてきたのは長身の青年。
髪は紫色で、鋭い目つきに瞳は黄色く、カドモンとは違う細くも筋肉がしっかりと身についている肉体を覆うは白い騎士服であり、その清廉さが好青年に対するストレンジの好感度を上げる。ストレンジの隣に腰掛けると、休んでいるストレンジを興味深そうに見つめた。
「旅人に話しかけるとは、随分な物好きだな。お前も騎士の一人か?」
「これは失礼。私はルグニカ王国近衛騎士団所属、ユリウス・ユークリウスと申します。どうぞお見知りおきを」
「これは丁寧な自己紹介、感謝する。私はドクター・スティーブン・ストレンジだ」
ストレンジが差し出した手袋に覆われた右手をユリウス・ユークリウスは握り返した。
ここに魔法に精通した「最優の騎士」と「至高の魔術師」の運命が交じり合った。
最後までご覧いただきありがとうございます。
ストレンジ、自身の支援者を求めて町を歩きましたが、如何りか原作キャラがと接触しましたね。
カドモン……ユリウス……これからもっと増えます笑
次回は遂にフェリスが登場か!?