Re:上から目線の魔術師の異世界生活   作:npd writer

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書き終わりましたので投稿します。最近は忙しくなり、中々書ける時間が限られる中で執筆していましたのでかなり遅めの投稿となりました。

申し訳ありません。


二十一話 入城

プリシラと一悶着したストレンジは、その後も王都を散策していたが、夜が更ける前に貴族街のカルステン家別邸に戻った。

プリシラという傲慢な存在に一抹の不安を抱きつつも大方の目的を果たしたストレンジは、夕食をクルシュやフェリスと摂ると翌日の王城訪問に備え早めに就寝し、明日の準備に備える。

 

そして翌日、いよいよクルシュに同行する形でストレンジが王城に参上する日。彼は朝食を摂り終えると、すぐに玄関先に向かった。そこには竜車の整備を行うヴィルヘルムの姿があり、クルシュやフェリスは支度中なのか姿はなかった。

 

「これはドクター殿、今朝は随分とお早いですな」

 

「早めに準備を済ませたからな、何も不都合はないだろう。クルシュやフェリスはまだ準備中か」

 

ストレンジが周りを見渡せば、そこにクルシュやフェリスの姿はなかった。

 

「お二人とも、今日の招集に関してはかなり重要と感じているようですな。時間をかけられても無理はありません」

 

屋敷を見上げるストレンジに、世間話のようにさらっと話すヴィルヘルム。出掛けるまでまだ時間がある事に気づいたストレンジは、異空間から一冊の本を取り出し、その本を魔力で浮かび上がらせると、自らも胡座姿勢で空中に浮かび上がって読み始めた。ページめくりは、マントがやっているため、彼はただ本を読むだけでいい。

 

「ドクター殿、その本も魔術の書ですかな?」

 

「この本は「至高の魔術師」しか読解不可能な蔵書の一つである「ヴィシャンティの書」だ。初代「至高の魔術師(ソーサラー・スプリーム)」であるアガモットが作成したとされる魔術の叡智が詰め込まれた秘伝の書だが、熟練の魔術師であっても読解は不可能なほど、難解な呪文で書かれている。常人が読めば発狂するだろうな。読んでみるか?」

 

「そのような重要な所蔵品、私如きが触れて良いものではございませんな。どうぞお気になさらず」

 

とても危険な事を平然と言うストレンジ。ヴィルヘルムが思わずマジマジと見つめたその先には、複雑な紋様が彫られた特殊なカバーで覆われた分厚い書物があった。

異空間から取り出したあたり、ストレンジが所蔵する膨大な書物の一つであるのだろうか。

 

ヴィルヘルムがそんな事を考えていると、不意にストレンジは地面に着地すると本を異空間に放り込んだ。それと前後する形で屋敷の正面玄関が開かれ、軍服に身を包むクルシュと騎士の制服を着込んだフェリスが姿を現す。

 

「すまない、待たせてしまったようだな」

 

「ごめんネ〜。男のドクターとは違ってフェリちゃんはクルシュ様は、色々と準備が多くて大変だから、許してほしいにゃ」

 

「お前も男だろ。それに男性も色々、身支度には長い時間をかけるものだ。勝手な憶測で物事を語るのは止めた方がいいぞ」

 

「ふーん。よくわかんにゃないけど分かったかも?」

 

騎士服に身を包みつつも、見た目はしっかりと男の娘のフェリス。今日が主人にとっての晴れの舞台からなのか、いつも以上に二人は念入りに化粧を行なっている。恐らく、フェリスが全面監修しているのだろう装いは、いつも以上に煌びやかに見えた。

 

「ドクターは普段通りの装いか。しかしそれでいい。卿の服装は普段の装いと、宴用の正装しか見たことがない。見慣れた格好の方がこちらとしても安心できる。ああ、過去に見たことのない服を着ていたことがあったか」

 

「見せたことのない格好でそこのオカマ野郎にネチネチ言われ続けるよりは、いつも通りの着慣れた格好で赴いたほうが、賢人会の老人どもの腰を抜かすことなく、尚且つクルシュの面子を保つことができる、と考えたまでだ」

 

「ちょっとちょっと!?フェリちゃんには、「おかま野郎」の意味は分からなかったけど、変な意味である事はドクターの話し方から分かった気がするんだけど!何かこう、変な感じの意味で!」

 

「賢人会の老人ども、か。中々、手厳しい評価だな。マイクロトフも不憫ないだろう」

 

「フェリス、お前は察する力は身に付いているようだな。特別に言葉の意味をじっくりと教えるとしよう。フェリスにとっては新鮮且つ刺激的になるだろう。色々な意味でな」

 

「その評価、フェリちゃんは嬉しくない評価かな〜」

 

「さて、準備が済んだということはいよいよ王城に乗り込むということか」

 

思いっきり話を無視されて不満顔になるフェリスを他所に、次に話を進めるストレンジ。

しかしクルシュは即座に反応し、彼のペースに合わせる。

 

「卿の推測の通り、今日は王選候補者を集めての酒宴だ。卓を囲み、杯を傾け合い、腹を割って話すことで自ずとその人柄も知れるという、実に良い機会であろう」

 

荘厳な感じを漂わせているが、何やら頓珍漢なことを話すクルシュに思わず、ストレンジは指摘しようと口を開くがーー

 

「さあ、クルシュ様。時間も限られてますし、さっさと乗って移動しちゃいましょう。ほら、さっさとドクターも乗って乗って!」

 

やや早口のフェリスに捲し立てられるようにして、急ぎに竜車の中にクルシュ共々押し込まれた。

朝からわちゃわちゃとしていた雰囲気をお供にクルシュ一行は、そのまま王城へ向かうことになった。

 

 

 

 

 

「これは、何とも大層な内装だな。大層な金を注ぎ込んで作っているのだろうが、私にとっては、成金趣味の為のエゴの塊としか思えないが」

 

「この城の内装に関して卿が意見を述べるのは自由だが、かつてとはいえこの城に住われてきた歴代のルグニカ王国の方々を侮辱するのはドクターでも許されることではない。気をつけるように」

 

興味深そうにあたりを見回しながら皮肉を言うストレンジに、前を歩くクルシュが静かに忠告した。

しかしストレンジは、全くブレずに再び城の観察を始めた。

 

王城に到着した一行は、竜車の管理を担うヴィルヘルムを残して、残りの3人は王城に入城した。クルシュは王選候補者、フェリスは騎士、そしてドクターはカルステン家直属の魔術師という仮の身分で入っているのだが、本人はその肩書きには少しばかり不満を持っていたのは別の話。

現在、王城の上階、中央塔の通路を歩く一行には無数の好奇の視線が浴びせられている。しかし公爵家を治めるクルシュはそんな視線などものとはせず、堂々として歩いている。

 

通路を挟むように立つ完全武装の衛兵らの通路を通り抜け、通路の終端にそびえ立つ両開きの扉の前に到着した一行。見上げるほどの大きさであり、扉の向こうの荘厳さを容易に想像できる扉の前には、完全武装の巨漢が門番よろしく立ち塞がっている。目は理知的、若干30前後の厳つい顔立ちの男性であり、巌のような彫りの深い顔には険しさと、歴戦の勇者たる者の雰囲気を感じ取ることができた。

 

「お待ちしておりました、クルシュ様」

 

顔に似合う重々しい声で恭しく頭を下げる男。その礼儀を弁えたクルシュが頷くと、後ろにいるストレンジの方を向きーー、

 

「彼はドクター・ストレンジだ。卿も知っていると思うがな」

 

「彼が……あの」

 

騎士は巌の表情をぴくりとも動かさずにクルシュを見やり、

 

「そうだ。ファリックス領にて起こった魔獣騒乱については卿も把握していることだろう。彼こそ、その騒乱で大手柄を立てたドクター・ストレンジその人だ」

 

「なるほど。本来であればマイクロトフ様のご意見を伺ってからでなければお通しすることは出来ませんが……」

 

「マーコス、彼はクルシュ様のお付きとして来ているノ。だから、ここはちょ〜っとばかり、許して欲しかったりするかにゃ?」

 

フェリスの物言いにマーコスと呼ばれた騎士は抗弁しない。

彼は静かな青の瞳でストレンジを値踏み、ーー直後、澄んだ青の瞳を眩く輝かせた。

 

「危険な魔力反応、及び武装は確認できません。ストレンジ殿が持ち込まれるのはその首飾りだけですね?」

 

「ああ。私が持ち込むのは()()()()()()だけだ、騎士団長マーコス。それと、私はドクター・ストレンジだ。次から私のことはドクターストレンジか、ドクターと呼ぶことをセットで注文する」

 

「分かりました、ドクター殿。もしも万が一のことがありましたら、フェリスと共に主であるクルシュ様をお守りください。その他のことは我ら近衛にお任せを」

 

ドクターの要求にも即座に応じたマーコスは、声がけし大扉を開けさせる。

 

「まだどなたもお越しになっておりません。クルシュ様が一番です」

 

「なに、早く来たところで損などないだろう。いち早く、会場の雰囲気に慣れておくことも大切だからな」

 

クルシュ、フェリスと扉の中に足を踏み入れていき、ストレンジも続いて中に入る。

そこは赤い絨毯が敷き詰められた広大な空間だった。

煌びやかな装飾が施された壁に、豪華な照明が真昼間から光を放つ天井。体育館ほどの大きさに反比例して装飾品の数は少ない。

そして一際目を引くのが部屋の中央奥。ささやかな段差と、僅かばかりの高さのある位置には備え付けの椅子がある。背後には竜を模した意匠の施された壁を背負い、椅子に座る者は竜を背負っているようにも守られているようにも見える。

正に王城王座の間。ルグニカ王国の玉座がそこにあった。ストレンジの故郷であるアメリカにはない、王政の文化が色濃く存在するこの世界において、初めてストレンジが目にした王国たる象徴だ。

王座に目を奪われたストレンジは、続いて周辺を見渡す。まだ早い時間なのか、広間には近衛騎士団と文官らしき貴族の姿がチラホラ散見されるだけであり、他の候補者の姿はなかった。

 

「なるほどな〜。アンタが、あのドクター・ストレンジやんね。確かに、クルシュさんが近くに置いておきたいのも分かる気がするわ」

 

ストレンジが広間をじっくりと見ていると、背後から妙におっとりした声色が響く。

ストレンジが後ろを振り返れば、そこにはユリウスを従えた淡いウェーブがかかった背中に流す白いドレス姿の女性がいた。

妙に独特のイントネーションで話しながら、ストレンジに歩み寄った彼女は彼を値踏みするようにじっくりと眺めていたが、やがて「うん」という言葉とともに首を縦に振った。

 

「ウチの商売人としての勘が訴えとるんや、アンタはただの人間やないと。ほんま、おもろい男やね」

 




前回の後書きでプリシラとエスカノールについての疑問を呈したところ、様々なご意見をいただきました。かなり面白かったです笑!

七つの大罪のエスカノールが消滅した今、次代のエスカノールポジションにはプリシラがつくと思ってるので今後の彼女の活躍に期待したいです!

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