Re:上から目線の魔術師の異世界生活   作:npd writer

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皆様、お久しぶりです。またまた諸事情により投稿が遅れてしまいました。お詫び申し上げます。

王選候補者の皆さんの顔合わせ第一弾です。




二十二話 最悪との再会

「ユリウスを従えた、独特の言葉を話す商売人……なるほどお前がアナスタシア・ホーシンだな?」

 

「そう。ウチがホーシン商会を率いてるアナスタシア・ホーシンや。流石「至高の魔術師」は、よお知っとるね」

 

小柄の体に愛らしい顔立ちは何処か小動物を連想させる彼女の出立ち。しかしその愛らしさとは裏腹に、守銭奴体質で打算深く、欲深い性格があり、商売人としての才覚はストレンジが出会った人物の中で一番優れていた。

 

「もう知っているとは思うが、私はドクター・スティーブン・ストレンジだ。ホーシン会長はどうして王選に?」

 

「ちょっとちょっと、そうせかさんでもらえるかな。「至高の魔術師」は随分とせっかちやんね。そげん、情報を早く早くって、せがんでもそう簡単には出せんことをよう理解してもらいたいわ」

 

「商人らしい腹の探り方だな。そう簡単には手の内を明かせないと。実に疑り深い性格だな」

 

「か弱い乙女にもどキツい言い方やね。その傲慢っぷりも強すぎる強さ所以なんかな?」

 

お互いにお互いを興味ありとの視線で見つめる二人。ストレンジは若い頃から商才を発揮し一大商会を築き上げたその手腕に、アナスタシアはカルステン家の懐刀であり「至高の魔術師」でもあるストレンジの力を定めるために。それはユリウスの咳払いがあるまで続いた。

 

「ゴホン……アナスタシア様、どうぞこちらへ」

 

「ありがと、ユリウス。んじゃ、おおきに。「至高の魔術師」改め、ドクター・ストレンジさん」

 

自らの主であるアナスタシアを王座の前へ誘導したユリウス。アナスタシア本人はクルシュの横に立つと、情報戦の一環か、自らのライバルである彼女に積極的に話しかけている。クルシュも特に断ることなく応じている以上、それほど深い意味はないのかもしれないが。

一方、アナスタシアを王座の前に案内し騎士団の集まりへ戻ってきたユリウスはストレンジに一礼すると、彼の前に立つ。

 

「やはり来られましたか、ドクター殿」

 

「あの商売会長にお前がついているとはな。いやはや、驚いた。惚れでもしたか?」

 

「アナスタシア様は素晴らしいお方です。あの方は、努力を惜しまない性格をしています。小さい商会だったホーシン商会をカララギ随一の大商会に発展させたのもアナスタシア様の手腕あってのことです。何より、あの方には他者に負けたくないという向上心が人一倍強い。あの方の望みを叶えることこそ「アナスタシア様一の騎士」の使命であると、私は考えています」

 

「凄まじい入れ込みだな。彼女に惚気でもしたか?」

 

「それはあなたも同じだと思いますよ。ドクター殿も随分とクルシュ様には忠誠を誓っておいでのご様子。傲慢な貴方が忠誠を誓っていることこそ、彼女のお望みを叶えようとしていることに他ならないのでは?」

 

「それは少し違うな、ユリウス。私の目的はーー」

 

そこまで言って口を開きかけたストレンジは、再び入り口の方へ目を向けると喋るのを止めた。突然、話すことをやめた彼を怪訝そうに見るユリウスだったが、彼の視線の方へ顔を向けるとその理由に納得する。

 

「あはあ、これはこーれはドクター殿。再び会えて、私はとーても幸せであることこの上ありませーん」

 

「来たなクソピエロ野郎。王城までそのふざけた化粧で乗り込んでくるとは、随分と肝が据わっているようで。嬉しく思うよ」

 

「んー、ドクター殿らしい手荒い歓迎でーすね。ラムが聞いたら魔法で消しとーばしてきそうですが、私はドクター殿らしい挨拶で好きですよーお」

 

「弄られて喜ぶ男、つまりお前はマゾヒストか?あの桃色のSメイドに罵られて快感を覚える変態野郎だったとはな」

 

「私の中のドクター殿の印象が、がらーりと変わるような発言でーすね。そんな事はあーりませんとも」

 

エミリアと彼女の支援者であり、後見人でもあるロズワールも入室する。初手から変人同士のやり取りが開始される中、エミリアもすとれんじに声をかける。

 

「また会えたわねドクター。あなたはクルシュさんのお付きってところかしら?」

 

「そのような所だ。ああ、その白い衣装、よく似合ってるな。エミリアの純白な雰囲気にぴったりだ」

 

「そう?ドクターに褒められるの、悪い気分じゃないわ。ありがとう」

 

「どういたしてまして、とでも言っておこう。ところで、今日はあの少年は連れていないのだな?」

 

「あの少年?スバルのことなら、彼は今迎賓館でお留守番中。きっと連れて来ると色々、無理しちゃうと思って」

 

エミリアの後ろをまるで犬のようについて回る、ストーカー気質を持った少年。ロズワール邸を訪れた際には、ストレンジと一悶着ありお互いの好感度が最底辺まで落ちた関係なままの二人。

仮に彼がこの場にいようものなら、エミリアと仲睦まじく話す敵陣営の憎き相手として噛みつかれること間違いなしであり、彼がいないだけで平穏が保たれるーー

 

そう思っていた時期が彼にもあった。

 

またまた扉が開かれ、別の王選候補者が姿を表したのだがーー

 

「ーースバル?」

 

入ってきた人物にエミリアが驚き、ストレンジが思わず苦虫を潰したような表情を浮かべた相手。

こと、エミリアに関しては彼の姿があることが信じられないに瞬き、その紫紺の瞳に戸惑いとその他の感情を一緒くたに揺らしている。

 

その先の彼の行動は、

 

頭に手を当てて、片目をつむり、舌を出して。

 

「ゴメン、きちゃった」

 

盛大な無言の合間と、面倒事を抱えたため息が、玉座の間に重々しく横たわることとなった。

 

 

 

 

 

なんともふざけたような挨拶を恥もなく晒したスバル。だが、その異様さに気づいたのか彼は動こうとしない。

それに対してエミリアは言葉を求めるように唇を震わせ、考えをまとめようと瞳を彷徨わせていた。

やがて彼女なりの結論に達したのか、唇を引き結び、紫紺の瞳を真っ直ぐ彼に向けたエミリアは彼は言葉を発そうとする。

 

「妾の小間使いをジロジロと見て、何かあったか、混ざり者」

 

「おうふ」

 

「え?」

 

彼の背後より豊かな胸を押し付け、彼の首と胸板を艶かしい仕草でロックしたのはプリシラだった。彼に隣り合わせるように顎を彼の肩の上に乗せ、エミリアと向かい合っているその様は遠目で見ていたストレンジにも悪戯めいたものを感じさせた。

 

単純明快にも大きな胸を押し付けられ、耳まで真っ赤にしたスバルは、

 

「何が小間使いだ。エミリアたんに誤解され……」

 

「ほう、貴様は妾の小間使いでないと申すか。ならば王城内を堂々と歩き回れる貴様の身分は一体なんであるというんじゃろうな?」

 

「うぐ……ッ」

 

単純な反論は意地の悪い笑みを浮かべた策略家によって遮られる。

彼の目にはこのままプリシラの怒りを買ってその場で首を刎ねられる未来と、取り敢えずは彼女の言うことを聞きつつエミリアに弁明するチャンスを狙う未来の二つが、右往左往している。

 

「エミリアたんの前で、誰かに頭垂れるなんて真似はできない」

 

「……ほう。面白い。ならば、貴様は己を何とする?」

 

プリシラの表情が一変し、冷徹さを感じさせる口調がそのまま彼にのしかかる。

エミリアは驚きと不安な表情を顔に浮かべ、時折隣に立っているストレンジへ助けを求めるように顔を向けている。

ストレンジもこの場で人殺しをさせる訳にはいかないので、いつでも魔術を展開できるように控えた。

やがて意を決したのか、スバルは口を開く。

 

「俺はこの城に……」

 

「これはこーれは、プリシラ様。この度は当家の使用人がとんだご迷惑を。失礼いたしました」

 

意気込み状態であったスバルの右に立ったのはお騒がせ者のロズワール。相も変わらぬへらへらした笑みを浮かべた彼は、上辺だけ恭しさを取り繕ったような道化た態度で彼を示す。

 

「このお礼はいずれ。重ねて当家の人間が失礼いたしました」

 

「ほう、筆頭ペテン師の出しゃばりか。まあ、いいじゃろう。そこの道化と混ざり者のおかげで、それなりに楽しめた。ーー従者の頼みもあったが」

 

「勘弁してくれや、姫さん。寿命の蝋燭が夏場のアイス並みに早く溶けたってもんだぜ……」

 

「貴様の喩えは大概にして伝わらん。なんにせよ、妾の懐の深さに感謝するがよい。敬え敬え」

 

「へいへい、姫さんは凄い凄い」

 

従者と呼ばれた黒の鉄兜で顔を覆い、山賊風の衣装に身を包んだ隻腕の男がプリシラの頭を乱雑に揺らす傍ら、スバルはロズワールの助けに感謝し、ロズワール自身も妙に納得したようにスバルを見下ろした。

そしてスバルは弁明しなくてはならない相手の下へ向かいーー、

 

「どうして……?」

 

「へ?」

 

「どうやって、じゃなく、どうして。どうして、スバルがここにいるの?」

 

「そこを話そうとすると、実は深いようで浅くて重くてふわっふわっな理由があってーー」

 

「そこの少年は色々と問題を起こすのが好きらしいな。お前は彼女の従者だろ?ならば、彼女の意向に従うのが術者としての責務じゃないのか?」

 

スバルの弁明に口を挟んだのは先程からエミリアの近くにいて先の騒動を見ていたストレンジだった。

あまりに勝手な彼の振る舞いに嫌気が差していた彼は、更なる厄介事になること覚悟で口を挟んだのだ。案の定、スバルの表情が険しくなったのは言うまでもない。

 

「おっとっと、これはこれは、よく口が回る天才ドクター様。まさか医者であるあなたがこんな豪勢な場所にいるとはびっくりですとも。あなたこそこのような場所に相応しくないのでは?そもそも、何勝手にエミリアたんに近づいているわけ?まさか口説こうとしてるとか!?」

 

「相変わらずくだらない妄想にだけは頭がよく働くようだ。先程まであの傲慢な姫の胸に興奮していたのに、今となっては主人の近くに男がいるだけで敵意を剥き出しにする、何とも主人思いの従者だ」

 

「あ、あれは状況が状況で……てか、エミリアたんを心配に思うことがそんなに悪いことなのかよ。そういうアンタもどうしてこんな場所にいるんだよ?この前の爺さんと同じく、アンタだって単なる使用人ってだけだろ?」

 

「私はしっかりと許可を経てこの場所にいる。敵陣営に媚び売ってこの場に押し入るような厚顔無恥な誰かさんとは違うものだ。よく考えてから物を言いたまえ、クソ野郎」

 

「ああ?クソ野郎ってどういう喧嘩売ってんのかよ?クソ医者」

 

「あ、あのドクター。ちょっと流石に言い過ぎだと思うの……。スバルもほら、一旦落ち着いて」

 

思わず隣で見ていたエミリアが止めに入るほど、バチバチと火花を散らし合いながら睨み合う二人。

しかしこの言い争いにおいては、スバルの方が分が悪い。スバルはエミリアと宿屋で留守番を言いつけられていたのだが、それを数分で反故にして出てきている。故に、スバルの約束を守る意思の薄さを露呈させていた。

約束を破ったことへの負い目と、エミリアの身を案じて馳せ参じた事実をどうにかしてブレンドし、目の前のクソッタレ魔術師にぶつけられないか、スバルは頭をフル回転させ思考を走らせる。

 

「ーー皆様方、お揃いになられました。これより、賢人会の方々が入場されます」

 

スバルとエミリア、それにストレンジの言い争いを遮るように玉座の間の扉が開かれた。扉の前で警備にあたっていたマーコスを先頭に、数名の老齢の団体が続く。

全員が場と身分に則した装いに身を包んでおり、振る舞いと物腰から高貴な身分の人物であることはストレンジやスバルも想像できる。

特に集団の真ん中を歩く白髪の老人にストレンジは注目していた。背丈はストレンジより一回り小さく、色の抜け落ちた真っ白な白髪が長く伸ばされ、ヒゲも長く丁寧に整えられている。そして「刃」の切れ味を思わせる眼光の持ち主でもあった。

 

「あの方が賢人会代表、王不在のルグニカにて最大の発言力を持った人物。マイクロトフ様ってわーけ」

 

先程までとはとは打って変わって言葉を失うスバルに対して、ロズワールが密やかな声で注釈する。

スバル自身も納得したようで、只者でないという意識を強めていた。

 

「国家元首であり国の最高権力者である王が不在の今、代理として国政を牛耳っている機関、そのお偉い方がこうも勢揃いとは……」

 

「名目上は国王の補佐なんですけーどね。今は国の運営も賢人会頼み……とはいえ、王家が存命の時からあんまり変わってもいーませんが」

 

「国王の権力を傘に力を牛耳る老人たちの集まりか。説得に苦労しそうなことが目に見えている」

 

近くにいたストレンジの呟きにも同じように答えるロズワール。最も彼の最後の発言には、ロズワールも苦笑を禁じ得なかった。

そして賢人会の御一行が着席する前に、ストレンジはユリウスたちのいる騎士団の列に混ざる。

本来であるならば文官たちのいる列に行くべきなのだろうが、クルシュやユリウスたちから許可を得ていたストレンジはスバルが何処に混ざろうかオロオロしているのを横目にささっと移動した。

 

そしてプリシラの従者である鉄兜の男に誘われ、エミリアの正論虚しくロズワールの口添えによってスバルも同様に騎士団の列に加わる。

そして多くの不安要素を抱えたエミリアだったが、賢人会の面々が放つ老獪な威圧感と、王選候補者という「異彩」な面子がいる下へ駆けて行った。

 




さて、またまた喧嘩をおっ始めたストレンジとスバル。王城なんですけどね……そこ。まあ、ちゃんと許可を得ているストレンジ先生にスバルきゅんが勝てる可能性なんて殆どありませんけど。

さて、二人の好感度は更に下がる一方ですが、私自身はもっと下げる物語構成で考えています。
お互いがお互いなので笑

またストレンジは各々の陣営から、今までの功績があることで一定程度は信頼されているため、仮にストレンジがクルシュにスバルを追い出すように進言するとほぼ確実にスバルは追い出されます。

因みに賢人会の面々にもストレンジの活躍は伝わっていたりしています。

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