Re:上から目線の魔術師の異世界生活 作:npd writer
申し訳ない!
というわけで久しぶりの本編です
「つまるところ、あれが王選参加者ーー未来の王様候補ってことか」
スバルがそう結論づける中、周りはぞろぞろと動き出している。
ロズワールや、ストレンジは気づいていないが軍服を着て参上していたフォリア・ファリックスらは、立ち並ぶ騎士たちとは反対方向の文官の陣営に加わり、スバルはアルの背に続き、甲冑騎士たちよりも僅かに玉座に近い位置へ。
「ーーやっぱり君が来たね、スバル」
赤毛のイケメンが片手を上げて、スバルの来訪を笑顔で迎える。
ストレンジは知らないが、スバルが王都に飛ばされて以降、友好関係を保ち続けている数少ない美丈夫――ラインハルト・ヴァン・アストレアその人だ。燃える赤毛を揺らし、騎士の制服姿に身を包んだその姿はとても眩しい。
「エミリア様が出席されるのを聞いて、君が来るんじゃないかと思ったよ」
「久しぶり。それと、お前の俺へのそのむやみやたらな高評価ってなに?お前の中の俺って裏声で助け呼んだり、無様に切腹したりっていうイメージなはずなんだけど」
「エミリア様を凶刃から守ったのはもちろん、それ以外の面でも君は最善を選び続けた。過小評価が過ぎるのも美徳、だとは思うけどね」
ストレンジとは違って、嫌味ゼロの顔つきでそう言われてしまえば、スバルももうぐうの音も出ない。
真のイケメンは、性格もいいパターンが多い、と勝手に結論づけているスバル。
「拝んだらあやかったりできるのかねえ」
「あはは、君がなにをしても効かないよ? 僕は生まれつき、そういう体質なものだからね」
「いや、これは純粋にお祈りの領分だから気にしないで。と、そうだったそうだった。その前に言わにゃならんことがあった」
居住まいを正すスバルの前で、ラインハルトは青い瞳をきょとんとさせる。そして彼に対してスバルはゆっくりと頭を下げると、
「この前はホントに助かった。つか、礼を言う暇もその後の連絡の方法もなかなか選べなくて悪かった。もっと早く話せたら良かったんだけど」
「それについてはスバルの方の事情もわかってる。仕方のないことさ。君は名誉の重傷で、僕もこのところは少し立て込んでいたから」
小さく肩をすくめるラインハルトは、それでもスバルの感謝の言葉を受け取ると嬉しそうに唇をほころばせる。そんなささやかな仕草までもがどこか絵になるのだから、真のイケメンにスバルは嫉妬心すらわく要素がない。
そして旧交を温める二人のやり取りに、
「ラインハルトとスバルきゅんって、知り合いだったんだ。意外だにゃ」
そう言いながら、天然の猫耳の人物が羽のように軽い声音で割り込んできた。
今日は黒を基調としたラインハルトと揃いの制服姿に、以前見たときと同じ白いリボンで亜麻色の髪を飾るのは、数日前のロズワール邸訪問メンバーの一人であったフェリスである。
手刀に見立てた手を額に掲げ、敬礼のような仕草でウィンクすると、
「ほんの二日ぶりだね、元気してた? みんなのフェリちゃんは元気にしてたよ」
「聞いてねぇよっていうか、先日はどうも。またお会いできて光栄だとも」
「にゃはあ、フェリちゃんもスバルきゅんと会えて嬉しいヨ〜。ま、来て早々、手洗い歓迎を受けたみたいだけどネ〜」
気安くスバルの肩に触れて、緊張をほぐすべしと呼びかけてくるフェリス。そんな彼女とスバルのやり取りをラインハルトも少し驚いた顔で見て、
「スバル。フェリスとは顔見知りなのかい?」
「俺が世話になってるロズワールのとこに、今日の出席確認にきたのがこの子と、あのクソ医者。てっきり下っ端の小間使いかと思ってたけど……」
こうしてラインハルトと同じ装いで並んでいる以上、彼女もまた「剣聖」と並ぶにふさわしい立場の持ち主なのだろう。それなりにそれなりを重ねて、けっこうな位の持ち主である予感をひしひし感じる。
「そうか、エミリア様のところにはフェリスとドクター殿が行っていたのか。手が空いていたら、ぜひ僕が行きたかったんだけど」
「剣聖を王都から離すとか、そんなのマーコス団長が許すわけにゃいにゃ。これ以上、団長の気苦労を増やしてあげたら可哀想だヨ。ただでさえ三十前なのにあの老け顔……今後は顔だけじゃなく頭にもいっちゃう恐れが」
冗談めかしたフェリスの言葉に、ラインハルトがわずかに微苦笑。さすがに内容が内容だけにおおっぴらに笑うわけにもいかない。スバルも巌のようなマーコスの顔を思い出し、三十路前なのに貫禄ありすぎだろと内心で突っ込む。
そしてそしてさらに、
「そろそろ、私の方にも彼らを紹介してくれないかい?」
と、その場で騎士たちと異なる雰囲気最後の持ち主が声をかけてきた。
振り返ってみたその人物たちにもスバルは見覚えがある。しかし、本音でいえばいい印象のある相手ではない。
「詰め所でエミリアたんの手にキスしやがった奴と……お前もこっちにいるのかよ、クソ医者野郎」
エミリアの手の甲に接吻を捧げた抜け駆け野郎と、自身を散々にこき下ろした挙句、会うたびに説教じみた指摘を永遠と続ける傲慢クソ医者だと内心で罵倒しながら、スバルは表面上は笑顔を作り、
「こりゃ自己紹介が遅れまして。どうもどうも、ナツキ・スバルってケチな野郎でさぁ。そこにいるクソ医者様はもうご承知かと思いますが、どうぞ、頭の隅っこにでもせせこましく置いといてくだせい、へへっ」
「急にずいぶん卑屈な感じだね、スバル」
ラインハルトがスバルをたしなめ、ユリウスに対して向き直り、
「気を悪くしないでほしい、ユリウス、ドクター殿。スバルは少し、こうして他者に侮られる振舞いをして相手を試す節があるから」
「おいおい、俺にそんな狡猾な設定つけんのやめてくんない? 別にそんな意図ねぇよ、俺なりのエアリーディングしてるとこんな感じになんだよ」
「そうだな。そこの少年にはラインハルトが考えるような秀逸な頭脳なんてものは持ち合わせていないだろう。あるのはその身体に収まりきらないエゴだけだ」
スバルがクソ医者と呼ぶストレンジも騎士たちの輪に加わるが、ラインハルトのようにスバルを評価するわけでもなく、フェリスのように悪戯するわけでもなく、ただ彼らしく傲慢に事実を述べるだけ。もちろん、ストレンジの発言にスバルの機嫌がより一層悪くなったことは言うまでもないが。
「なるほど。ドクター殿の見解として受け取っておきましょう。
ーー近衛騎士団所属ユリウス・ユークリウスだ。お見知りおきを。そちらの騎士殿も」
口の端をゆるめながらキザ男――ユリウスはスバルにそう名乗る。それから彼が水を向けるのはスバルの隣に立つアルだ。
「騎士殿」と敬称で呼ばれた彼はむず痒そうに首を鳴らし、
「あー、そんなたいそれたもんじゃねぇんで、騎士殿なんて呼ぶのはやめてくれ。オレは、あれだよ、一介の素浪人だから。一本筋の通ったアンタらとは違ってさ」
こもった声でテンション低く応答。スバルに対する態度と違い、そこには明確な人を遠ざける意思が込められている。アルに対してだいぶ馴れ馴れしい人物だという印象のあったスバルにとって、彼のその態度は意外の一言だった。それぞれの名前の交換が終わった頃合いと、騎士団長と呼ばれていたマーコスが声を上げるのはほとんど同時だったからだ。
「――賢人会の皆様。候補者の皆様方、揃いましてございます。僭越ながら近衛騎士団長の自分が、議事の進行を務めさせていただきます」
「ふぅむ……よろしくお願いします」
席に着いたまま手を組み、かすかに顎を引いて頷くのは賢人会代表マイクロトフ。彼の返事に合わせて一礼したマーコスは眉を寄せて説明を始める。
この度の招集が次期国王の選出が目的であること。そしてその原因がストレンジがやってくる約半年前に、先王を始め王族全員が謎の病に倒れ回復することなく全員が死亡したということ。そして王不在の事態は王国にとって窮地であるとともに、「盟約」に関わる深刻な事態であること。
「ルグニカ王国にとって盟約の維持は王国の存在に大きく関わりますからな。王の一族が一斉に病魔に侵されたのは痛恨の極み。一刻も早く、ドラゴンと意思を通わせることのできる「巫女」を見出さなくてはならなかった」
「その為に我ら近衛騎士団一同、賢人会の皆様の命を受け、竜殊の輝きに選ばれた巫女を探し出す任に当たってまいりました」
マーコスがそう言って掌に乗せたのは、小さな徽章。王選参加資格を得た者だけだが持つことの許される貴重かつ重要な代物だ。
マーコスが王選候補者に徽章を提示するよう伝えると、候補者たちはそれぞれの徽章を前に掲げる。すると、いずれの徽章も眩い光を放って玉座を照らした。
「こうして、候補者の皆様にはいずれも竜の巫女としての資格がございます。それらを見届けました上で、この竜歴石に従いーー」
「あんな?」
厳かに議事を進行させようとするマーコスに、アナスタシアが待ったをかける。おっとりとした口調で小首を傾げた彼女は、
「団長さんがぴしーっとお話進めたいんはわかるんやけど、ウチも忙しいんよ。カララギでは「時間は金に等しい」って言うてな?」
(「Time is money.」時は、金なりか。地球にも同じ諺があるが、やはりカララギはーー)
ストレンジがアナスタシアの発言に興味を抱き、彼なりに考察していく中、会話は続く。
「分かりきった話を繰り返すくらいやったら、ウチらが集められたお話の核心が聞きたいっちゅうのが、本音や」
関西弁で話す彼女にマーコスは少しばかり面喰らい、スバルはマーコス以上の衝撃を受け、あんぐりと口を開けたまま暫く固まっていた。
「おいおい、関西弁とかマジかよ」
「なんだなんだ、兄弟もビビってんのか。西のカララギっていう国じゃ、アレで通っているらしいぜ。実際、俺もみたことはねぇけどよ」
ぼそりと呟くスバルに、隣のアルが同じく小声で同様の感想を口にする。
一方、スバルとは別の要因で驚きの広がる王座の間。かすかなどよめきが広間に蔓延しかける中、それを押しとどめるのはやはりこの人物しかいないだろう。
「道理だな」
「――クルシュ様」
クルシュは腕を組み、顎を引いてアナスタシアに同意を示した。彼女の反応にマーコスはその名を呼び、わずかに困惑を浮かべて眉を寄せると、
「カルステン家の当主がそのようなことを……」
「格式を重んじる気持ちはわからなくもないが、時間が有限であることも事実だ。我々が集められた理由に早々に触れるべきだろう。もっとも」
クルシュは片目をつむり、マーコスのさらに奥、賢人会の歴々を視界に入れながら、
「おおよその想像はついているがな」
「ほぅ。さすがはカルステン家の当主。すでにこの召集の意味がわかっておいででしたか」
マイクロトフの感心したような言葉に頷き、クルシュは凛々しい面を持ち上げ、玉座の前で開かれるこの集りの真意に触れる。それは、
「ああ。――酒宴だろう? 我々はいずれ競い合う身であるとはいえ、今はまだ互いに知らないことが多すぎる。卓を囲み、杯を傾け合い、腹を割って話せば自ずとその人柄も知れよう」
「いえ、違いますが」
荘厳な感じで飲み会の段取りを決めようとするクルシュに、たまらずマイクロトフは口を挟む。彼女はその態度に驚き顔を作り、それからゆっくりスバルたちの方を見ると、
「フェリス。聞いていたのと話が違うが」
「やーだなー、もう。フェリちゃんはただ、お城にいっぱいお食事とかお酒が運び込まれてるから「酒宴でも開くのかもですネ」って言っただけじゃないですかー」
「そうか、私の早とちりか。場を乱すような真似をしてすまない」
懐の広いような振舞いだが、会話の内容が明らかにおかしい。それにはストレンジも気づいたようで、
「フェリス、お前は主人の天然ぶりを利用して、とんでもないことをしでかしたな。クルシュもあんな嘘を簡単に信じるとは思わなかったが。普段とは違うので、ある意味で驚かされたもんだ」
「そういうところがいいんだってば〜、ドクターは分かってにゃいネ。普段凛としたお姿でいるクルシュ様のあんな側面、滅多に見られにゃいんだから」
一方、こんな重大な場で見事にフェリスにしてやられたクルシュは、今のやり取りを踏まえた上で軽く吐息を漏らすと、
「そんなわけで、私の話は取り消してくれ。恥ずかしいのでな」
「やだ、クルシュ様ってば男らしすぎっ!ドクターもそう思うよネ?ネ!?」
頬に手を当てて身悶えるフェリス。顔を赤くして腰を振るフェリスは、主に誤情報を流した点は気にしていないようだ。隣にいたストレンジは、ため息を吐くと身悶えるフェリスは放置して前方を見つめる。彼がため息を吐いている時点で、ある程度事態の察しはつけられる。
「こらこら。クルシュさんが引いてもウチの意見は変わらんよ。王選の上辺のことなんか話さんでもみんな知っとることや。そやろ?」
アナスタシアの問いに答える他の候補者の反応は様々だ。クルシュは同意を示す頷きを、プリシラは退屈そうな顔つきで小さく鼻を鳴らし、エミリアは緊張に強張る唇を震わせる。
「わ、私はちゃんと聞くべきだと思うの……」
「悪いけど、アンタ様の意見は聞いてないんよ」
ただ一人応じたエミリアに待っていたのは、アナスタシアによるドギツい言葉だった。既に萎縮しかけていた彼女にとって、叩きつけられたような断言は彼女に諦観を浮かばせた。
想い人の俯く顔を見ていたスバルの頭の中で火花が散ったのはいうまでもない。
「てめ、エミリアに向かってその態度……「うははーい!オレ、王選がどうとか知らないから先が聞きたかったりすっかなー!!」
前に踏み出し、怒号を放ちかけたスバルをたくましい腕が遮って止める。そのまま口から飛び出す予定だった罵声も、被さるような声によって広間に上書きされて響いた。
突然のアルの行動に、ラインハルトやユリウスら騎士たちも流石に面喰らったのか亜然としている。
「プリシラ様。彼はあなたの騎士とうかがいましたが……王選の説明は?」
「妾がせずとも長話好きの貴様らが勝手にするじゃろ? 妾は妾の無駄を省いたにすぎん。繰り言など寝言と変わらん。寝言など、寝ててもするな。続けよ、マーコス」
マーコスだけがどうにか冷静に応対する中、尊大な口調でプリシラが煽る。
エミリアの人格者ぶりが際立っていると勝手に自己判断しているスバルをどこか冷めたような目つきで見つめるストレンジ。彼は、アルが発言の途中に割り込んだのを幸に、先程言いかけた発言をスバルが反省していないことを一人静かに危惧していた。特にエミリアが圧倒的不利なこの場は、スバルにとっては理不尽な環境そのものなのだから。
「では少し脱線しましたが、話を戻しましょう。――竜の巫女の資格を持つ皆様がこうして集められたのは、竜歴石に新たに刻まれた預言によるものです。そこには、「新たな国の導き手になり得る五人、その内よりひとりの巫女を選び、竜との盟約に臨むべし」と」
「ふぅむ。石板が示したのはまさに天意そのもの。王国誕生のときより同じだけ歴史を積み重ねてきた竜歴石は、王国の命運を左右する事態に呼応して文字を刻む。その内容が後の歴史を動かしてきたことを思えば、従うのが我らの務めでしょうな」
マイクロトフの述懐に、他の賢人会の老人たちも厳かに頷く。既に賢人会の面々には伝わっているのか、誰一人として困惑する者はいない。
マーコスが朗々と述べた内容、それを読み解いて内容を吟味するストレンジ。一方、スバルは素朴なとある疑問をラインハルトにぶつけていた。
「五人……?」
「そう、五人だ」
スバルの疑問にラインハルトが頷きで応じる。彼は疑惑を顔いっぱいに浮かべるスバルを涼やかに横目にし、
「つまり、四人しか候補者がいなかった現状――王選はまだ、始まってすらいなかったということさ。そこは五人目の候補者を見つけられずにいた、近衛騎士団の不甲斐なさを責めてもらうしかないんだけど」
五千万はいる国民の中からたった5人の巫女を選び抜くのは至難の業だ。しかしラインハルトの態度には時間がかかってしまったことに恥じ入るところは一切ない。
「しかしこうして王選候補者を集めているということは、そういうことだろうな」
「ーーなにせ……今日は王国史に刻まれる一日になりますからな」
ストレンジの発言を繋げるようにして、ふいにマイクロトフの声が低くなる。
それを聞き、それまでどこか最初の緊迫感が失われつつあった広間に、誰もが背筋を伸ばさずにいられないほどの雰囲気が駆け抜けた。マイクロトフの言葉の真意を探り、誰もが最初の一言を発することを恐れる。そんな中、口火を切ったのは物怖じせずに胸を張る少女だ。
「歴史が動く、と言いおったな。つまり、そういうことじゃろ?」
プリシラの静かな問いかけに、マイクロトフは壇上で小さく頷く。それから彼は眉の濃い視線をマーコスに向け、目配せをもって合図した。
それを受けたマーコスは胸に手を当てて一礼し、
「――騎士ラインハルト・ヴァン・アストレア! ここに」
「はっ!」
突然、広間に響き渡るマーコスの声。
思わずびくりと驚くスバルの隣で、呼びかけられるのを待っていたようにラインハルトが返答。それから彼は滑るような身のこなしで中央に進み出ると、候補者の四人に一礼を捧げ、それから騎士団長のマーコスの前へ。
「では、ラインハルト。報告を」
「はっ」
一歩場を譲り、マーコスが壇上前の中央を空ける。そこに進み出たラインハルトは観衆の視線をひとり占めにして、欠片の気負いもない表情で賢人会に向き合い、
「名誉ある賢人会の皆様、近衛騎士であるこのラインハルト・ヴァン・アストレアが、任務完了の報告をさせていただきます」
「ふぅむ、では全員に聞こえるように頼みますよ」
マイクロトフの言葉を受け、ラインハルトは一礼してから振り返り、広間の全員の前で堂々と背を伸ばす。
「竜の巫女、王の候補者――最後の五人目、見つかりましてございます」
どよめきが立ち並ぶ騎士たちの間に広がり、候補者たちの表情がそれぞれの強い感情に呼応して変わる。歓喜・退屈・戸惑いなどの感情に。
そしてスバルもまた、ラインハルトの言葉に「やっぱりか」と口の中だけで言葉を紡ぐ。しかし、疑問になるのはラインハルトの立場である。なぜ彼が報告の場に選ばれたのか。あるいは、とそこまで考えて、スバルはこの場の面子の共通点に気付く。
「全員、王の候補者の関係者……ってことは」
アルがプリシラ。フェリスとストレンジがクルシュ。ユリウスがアナスタシアの関係者であり、スバルもまたエミリアの関係者であると己をその範疇に含むのであれば、この場に加わっていたラインハルトの立ち位置もまた明白だ。
「お連れしてくれ」
小さな声であったが、それは広間のざわめきを飛び越えて大扉まで楽々届く。その声を受けた門前の衛兵が敬礼し、それから扉がゆっくりと開かれる。
そうして開かれた扉の向こうから、侍女らしき格好の女性数名を伴って、ひとりの人物が王座の間の中に招き入れられた。
薄い黄色の生地のドレス。肘まで届く白い手袋とスカートを揺らし、いかにも歩きづらそうな踵の高い靴で絨毯を踏む姿。小柄で華奢な体躯は抱きしめれば折れてしまいそうなほど細く、毛質の細い金色の髪が儚げな印象に良く似合う。しかしセミロングの金色の髪を揺らし、意思の強い赤い双眸の彼女が、悪戯っぽい八重歯の持ち主であり、弱々しい印象は抱かせない。
ストレンジを含めた誰もが新たに広間に入ってきた少女の姿を瞳に焼き付ける中、朗と響き渡る声でラインハルトが告げる。
「自分が王として仰ぐ方――名を、フェルト様と申します」
――全ての王選候補者が集結した今この瞬間、ルグニカ王国の行く末を決める、王選が始まろうとしていた。
今回はドクターの台詞は少なめで全体的にも原作を踏襲したような感じに仕上げました。
だ、大丈夫……、次回はちゃんと絡みを増やすから……(震え)
亀みたいな投稿ペースになっていることをお詫び申し上げます。これからしばらくはこのような投稿頻度に落ち着くと思います。どうか、ご容赦を。