Re:上から目線の魔術師の異世界生活   作:npd writer

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ーー時間、空間、現実

それは一本の直線ではない。

無限の可能性を秘めた、プリズムなのだ。


一つの選択が無数の現実に枝分かれする。

君の知らない別の世界が生まれる。


私はウォッチャー。
果てしなく広がる新しい現実への案内人だ。

ついてくるがいい、そして問いかけろ。





              “もしも”と……


幕間:What if…? もし、ドクター・ストレンジがクリスマス・パーティーを開いたら

 

アメリカ人にとって感謝祭と同様に大事なお祭りは、クリスマスだ。家族や友人、恋人を招いてクリスマスパーティーを開き、どんちゃん騒ぎをして祝うのが毎年の恒例だ。

大きなケーキやチキンを食べ、プレゼントを渡し合い、子供たちは贈り物を届けてくれるサンタに胸をときめかせる。日本人にとってもクリスマスは、恋人や家族と過ごす日であるが、アメリカ人にとっては、日本人のお正月なみに大事な行事なのだ。

 

そしてルグニカのとある場所でも、クリスマスパーティーが開かれようとしている。発起人は勿論ーー、彼だ。

 

 

「クリスマス……だと?」

 

「なになに、ドクター?新しいお祭りか何かかにゃ?」

 

本来であれば、図書館にいて蔵書を読み耽っているストレンジが、執務室にいたクルシュとフェリスに声をかけるのは珍しいことだ。そして彼が言う「クリスマス」という謎の言葉。

その意味を知らない彼らには、疑問しか浮かばない。

 

「そう、クリスマスだ。二人は知らないと思うが、私の国ではこのクリスマスは一大フェスティバルでね。皆でどんちゃん騒ぎをするんだ。昔はとある聖人の降誕日を祝うものだったんだが、誰が書き換えたんだが知らないが、今では別のある意味で万人受けする行事と化している」

 

ストレンジはクリスマスについて詳しく説明する。ストレンジのいた国では、12月25日にとある宗教の聖人であるイエス・キリストが降誕したとされ、それ以降「降誕を記念する祭日」の12月25日は、毎年クリスマスとして祝う風習があるということ。

その歴史は古代共和政ローマ時代まで遡る、非常に長い歴史であること。

ストレンジの母国、アメリカではクリスマスの前からクリスマスリースやクリスマスツリーを飾りつけし、共に過ごせる喜びを分かち合いながら過ごす。

クリスマス・イブには絵はがきやクリスマスカードを交換し、当日にはプレゼントを家族全員で交換し合う習慣があるということなど、だ。

 

「面白そう〜!クルシュ様、是非その「クリスマス」というやつ、うちでもやりましょうヨ〜!」

 

「ふむ、どうして聖人の誕生日を祝う日が、いつの間にか家族で過ごす日に変わってしまったのか、その疑問は残るが考えては不躾なようだ」

 

ストレンジの説明を聞いて、目をキラキラ輝かせたフェリスは早くもノリノリな様子で、クルシュも意外と乗り気だ。

 

お互いに居られる幸せを噛み締め合い過ごすという、フレーズにフェリスは一番反応していた。クルシュを大事に考えるフェリスにとって、家族との絆や愛を深める行事は欠かせないものだ。

 

「その提案、是非ともやろう!」

 

 

 

 

 

その後、ストレンジの魔術によって召喚されたモミの木にクリスマス用の装飾品を飾り付けしたり、クリスマスカードをお互いに作って渡し合ったりしながら迎えたクリスマス当日。

 

「諸君、互いにキリスト氏の降誕を祝おう!メリークリスマス!」

 

「「「メリークリスマス!」」」

 

カクテルグラスを片手に音頭を取るクルシュに、カクテル、ビール、ジュースを手に持ったストレンジ、フェリス、ヴィルヘルムが応じる。

 

「クルシュ、キリストの祝いというのはあくまで建前で、降誕の祝いをはっきり言う必要はないぞ?」

 

「いや、しっかりと背景があるならばそれに従うべきだ。キリスト氏も自分の降誕日なのに、祝られないのは悲しく思うはずだ。しっかりと、述べるべきことは述べなければ」

 

乾杯し、飲み物を口に運んだ一行は、クリスマスにコーディネートされた部屋に入る。

クリスマスまでの準備期間に、クルシュ、フェリス、ストレンジの三人で飾り付けしたクリスマスツリーや、クリスマス用の飾りの数々が彼らを迎え、ケーキやお菓子、肉の照り焼きなど美味しそうな料理が並ぶ。

 

「ふふ〜ん♪クルシュ様、フェリちゃんのサンタ服どうですか〜?」

 

フェリスは、赤地の長袖の裾や首元や袖口に白いフワフワとした装飾の施された上着に、太ももの半ばほどまでの上着と同じく裾にフワフワの白い装飾の施された赤地のミニスカートーー、俗に言う「ミニスカサンタ」の衣装を身に纏っている。

 

「とても似合っているぞ。フェリスの魅力がよく伝わる」

 

「クルシュ様も、フェリちゃんに負けず劣らず綺麗ですヨ〜」

 

クルシュの衣装も、フェリスと同じように長袖の裾や首元にフワフワとした装飾が施された上着を着ているが、ミニスカではなく足まで覆われたロングスカートを履いている。

ストレンジは、いつも通りの魔術師の衣装で、ヴィルヘルムもいつも通りの執事服であるが赤みがかった上着に、赤い蝶ネクタイのクリスマス衣装を着ている。

 

「ドクター、この衣装どうだろうか?」

 

「フェリスのようなミニスカを履いてなくてよかった。落ち着いていてとても良い雰囲気だと思う。フェリスは……まあ、ミニスカがよく似合ってる。男なのに、どうしてそんなに似合うんだ?」

 

「キャー!ドクターがフェリちゃんを変な目で見てる!襲われル〜!」

 

「おいおい」

 

「な〜んて、冗談冗談」

 

「全く、お前にはプレゼントを渡してやらないぞ?」

 

チキンを頬張るフェリスに、ストレンジは椅子の横に置いたプレゼントボックスを持ってくる。

 

「お!フェリちゃんへの贈り物かにゃ?ドクターにしては珍しいネ〜。どういう風の吹き回し?」

 

「いらないのか?」

 

「いるいる、いるヨ〜!」

 

プレゼントが貰えなくなると思ったのか、お得意の涙を浮かべて強請るフェリスの仕草にストレンジは、呆れたように彼を見つめつつ、置いてけぼりの二人にも視線を向ける。

 

「ああ、クルシュやヴィルヘルムにもクリスマスプレゼントを用意してあるぞ」

 

フェリスへのプレゼントを膝下に置き、続けてクルシュ用とヴィルヘルム用のプレゼントを用意した。

フェリスとクルシュのプレゼントボックスは同じ大きさだが、ヴィルヘルムのプレゼントは少し縦に長い。

 

「では、改めて。メリークリスマスだ」

 

ストレンジは魔術で三つのプレゼントを三人の手元に移動させる。

 

「ほお、ドクターからの贈り物にはいつも驚かされるからな。一体、どんなものが入っているのか」

 

「私にも贈り物を用意してくださるとは。ありがとうございます」

 

受け取ったプレゼントを早速開封する三人。一番早くに開けたフェリスは、ストレンジが選んだプレゼントを早速見る。

 

「これは……?」

 

「スノードームいうやつだ。水晶を揺らすと中の物が舞って、雪のようになるという代物だ」

 

プレゼントボックスの中に入っていたのは、彼の掌に乗っかる大きさのスノードーム。比較的大きな水晶の中には、今日着ているサンタコスチュームを着たクルシュ、フェリス、ヴィルヘルムの三人のミニチュアが入っている。

 

「わぁ……綺麗だヨ。クルシュ様がお側にいる……」

 

「どうだ?気に入ったか?」

 

見惚れるフェリスの様子に、得意げに鼻を鳴らすストレンジ。

 

「うん。ドクターには色々言いたいこともあるけど、これに関しては素直にお礼を言うネ!ありがとう!」

 

続けて箱を開けたのはヴィルヘルム。彼のプレゼントは他の二人とは違って縦に長く、細い。

丁寧に開けた彼は、中に入っていたモノを大切に持ち上げる。

 

「これは……何とも精巧な剣ですな」

 

鏡のように周囲の景色を照らす、傷ひとつない刀身。柄の部分は黒をベースとしつつ金色の螺旋が入れられている。

儀礼用ではなく、戦闘用の剣としては美しい剣であり、数度剣を振るったヴィルヘルムは満足に何度も頷く。

 

「どうやら馴染むのも早いらしい。ピッタリ合って良かった。十分使えそうか?」

 

「はい。これほど振いやすい剣は中々ありませんな。重さも十分、長さも中々。非常に私に合った剣です。これほどのものを頂けるとは、ドクター殿に深く感謝を」

 

深々と頭を下げるヴィルヘルムに、満足そうに頷くストレンジ。そして最後、クルシュの開けたプレゼントボックスには、重厚な本が数冊入っていた。

黒く重厚な本のカバーを捲れば、現地語で書かれた内容がびっしりとあり、次第に本を読み進める彼女の手は早くなる。

 

「これは……為政者の歴史か?」

 

「ああ、これから王になるであろう候補者にはピッタリなプレゼントだろう」

 

「すごいな……!これほどまで、多くの為政者の情報補を集め、事細かく記した本とは!フェリス、これはとても貴重な本だぞ!女性の名前まであるぞ……」

 

パーティーそっちのけで真剣に読み進めていくクルシュ。

 

「クルシュ様〜。ドクターのプレゼントを読むのも結構ですけど〜今はパーティーを楽しみましょうヨ〜」

 

「ああすまない、つい読んでしまった。今はパーティーを楽しむ時だな!次は私からもプレゼントを届けよう!」

 

カルステン邸のクリスマスパーティーはその後も続いていく。

クルシュやフェリスが用意したクリスマスプレゼントには、フェリスによく似合う髪飾りやクルシュへの新しい髪留め、ストレンジにはこの世界の治癒魔法について書かれた本や、ミーティアと呼ばれる魔法具がプレゼントされた。

フェリスにとって愛しの人であるクルシュからのプレゼントは、それはどんな宝物よりも高価で大切なもの。受け取った彼は、なお一層クルシュへの愛を深めた。

ストレンジも「ミーティア」と呼ばれる新たな魔法器具に関心があり、ストレンジの魔術と組み合わせられるかなど新たな可能性を見出す。

 

 

 

夜が更けてもパーティーは進んでいった。食事のあとは小さな飲み会を開いて、さらに仲を深めていく。

クリスマス・イブの前夜からクリスマス当日の夜にわたって、カルステン邸から賑やかかな声が止むことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボクも、クリスマスプレゼントを彼に送りたかったかな……。そして、ボクも彼から……」

 

「ふぅ、それは、無理なことさね。ふぅ」

 

「でも、ちょっとぉ、あってみたかったのは事実ですぅ。なにせぇ、彼はオイシソウですしぃ」

 

「ちょっと、彼を食べる気?そんなこと、絶対、許さないんだから!もしかしてあんた、彼を洗脳でもする気?だめよ!ぜーったい、だめ!」

 

「いや、そんな手荒なマネはしない。それに、向こうからやってくると思うよ」

 

「むこうからー?なんだー、まほうでひとっとびでもしてくるのかー?」

 

「フフ、彼なら出来てしまうだろうね。ボクの知識欲をいつでも刺激してくれる彼ならば、きっとーー。ボクにこんな罪な気持ちを抱かせてくれた、彼だから」

 

「そ……そ、それって、も、もしかして、「愛」、って、こ、こと?」

 

「「アイ」?そう、「アイ」だとも!ボクの生きた人生でこれほどまで、心底!そう心底彼を欲したことはない!見たことのない魔法、見たことのない衣装、見たことのない魔法具、聞いたことのない出来事、知らない人物の名……その全てがボクの全てを刺激し、興奮させる……はぁ、なんてキミは「罪」な男なんだ。こんな乙女を放っておくなんて!!」

 

「「強欲」、さね。ふぅ」

 

「さぁ、キミはいつボクのもとに来てその「アイ」をぶつけてくれるのか。ボクは永遠にキミと語っていたい、永遠にキミと愛し合いたい、永遠に一つになりたい。一体、いつになったらボクのモノになってくれるのかな?

楽しみにしているよ、

 

 

 

 

 

 

            ドクター・ストレンジ」




本来であれば24日に投稿したかったのですが、『呪術廻戦』を見たり、クリスマス・パーティーを開いていたりしたので25日の投稿となりました。

皆様、メリークリスマス!

どうか、皆様にとって幸せなクリスマスとなりますよう、心から願っております。



今回は非常に短く、『ホワットイフ』みたいなストーリーに仕上げてみました。
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