Re:上から目線の魔術師の異世界生活 作:npd writer
↑最近ハマっているネタです笑
初めて見た時、それはそれは大爆笑しました笑
マーベル関連の新ニュースといえば、いよいよミズマーベルの予告編が公開されましたね。妄想全開のオタク女子っていう感じですこです。
クルシュ・カルステンを筆頭に、行われる今回の「白鯨討伐」の遠征。
リーダーのクルシュが編成した討伐隊の指揮権は彼女にあり、討伐隊の隊長を務めるのは剣聖の家系――「剣鬼」ヴィルヘルム・ヴァン・アストレア。
ヴィルヘルムに従う討伐隊は十ほどの小隊に分かれ、その小隊長を庭園での演説に参加していた老兵たちがそれぞれ請け負っている。
小隊の構成員はおおよそ十五名前後であり、クルシュの率いる討伐隊の総数は約百五十といったところだ。
一方、総兵力はそれだけにとどまらず、アナスタシアより貸し出されたリカード率いる獣人の傭兵団――通称「鉄の牙」が三十名。こちらは全体をリカードが仕切り、その下に副団長であるミミ・パールバトンとヘータロー・パールバトンの二人を据えている形だ。
そして、戦況をひっくり返す程の強大な力を持つ「至高の魔術師」としてのドクター・ストレンジ。自由に魔術を扱うため、そして展開される魔術に他の討伐隊の面々を巻き込まないため、彼はどの部隊にも所属せず独自行動がクルシュより許されている。彼女の合図と共にストレンジには、敵を倒すか部隊が全滅するかのどちらかに至るまで一切の自由が与えられる予定だ。
「ミミなのだー、よろしくー!」
「ヘータローです、よろしくお願いします」
庭にて魔術書を片手にリンゴを頬張るストレンジに向かってぺこりと小さく頭を下げる二匹――否、二人の猫型の獣人だ。
短い毛並みはオレンジ色をしていて、ストレンジの腰ほどまでしかない背丈はまさに小人型獣人のそれだ。
また、非常に愛らしい顔立ちをしており、頭部以外をすっぽりと覆う純白のローブもお似合いである。
「なるほど。アナスタシアが側に置いて愛でる理由はそれか。確かに、獣人好きにはたまらないだろうな。私には分からないが」
「ミミ、よくそれ言われる。おじちゃんの言うとおり」
「お姉ちゃん、またそんなこと言って……」
ストレンジの感想にミミと名乗った少女の方が頷き、それを微妙に慌てた様子でヘータローと名乗った少年がたしなめる。そっくりな見た目といい双子らしい。
子供が苦手なストレンジは、歳の割には大人しいヘータローにはともかく、無邪気さ全開で大人を振り回すだろうミミには、おじさん呼ばわりされたこともあり難しい顔を見せる。
「副団長という話だが、二人は腕が立つのか?」
「もちろん。二人揃えばサイキョーだよ!サイキョー!」
「え……あ、うん。そうです。お姉ちゃんと二人、頑張ります」
自己主張の強い姉を、消極的で慎重派な弟が手綱を引く、という関係なのだろうか。フォローを任せる姉しかいないのかという疑問もある。
「ダンチョーは長なんだけど、戦が始まると先走って全然周りとか見ないから」
「ボクたちがその団長の代わりに、みんなに指示出したりするんです」
「ほお。見かけによらず、随分と優秀そうな口振りだな。期待している。……後先考えない上司を持つと部下は苦労するものだな」
「あはは、そうなんです」
豪快に笑い、好戦的に戦場の中央へ駆け込んでいく巨躯の姿がストレンジの脳裏に浮かぶ。その想像に二人の意見も一致を見たのか、「そうなんです」とヘータローがその小さな肩をしょんぼりと落とし、
「クルシュ様の指揮に従いますけど、ボクたちはボクたちのやり方を交えて白鯨と戦います。その点で、ストレンジさんにはなるべくボクたちを魔術の巻き添えにしないよう注意してほしいんです」
「勿論だ。君たちが不用意に突っ込まなければ私の魔術の巻き添えになることはまずないだろう。だが、団長のように先走ったりすれば……その時の責任は持てない」
「分かったー!おじちゃんのデッカい魔法に期待してるー!」
「お姉ちゃんはまたすぐに調子に乗っちゃうんだから。……可愛い」
まっとうな理由で顔見せしてくれたらしきヘータローを褒めると、なぜか鼻高々になって胸を張るミミ。そして、そんなミミをたしなめつつ、ぼそりと最後に本音が漏れるヘータロー。彼女の増長は弟にも原因がありそうである。心理学者ではないが、多くのヒーローの相談相手であるストレンジはそう判断した。
「なあ、クルシュはんよ。あんだけ演説で大見え切ったのに、こんなところでのんびりしていてええのか?白鯨出現まであと10時間切っとるんやろ?はよ移動せぇへんとまずいんちゃうん?」
ストレンジとミミ、ヘータローが話し込む中、クルシュの邸宅での前哨演説が終わったのにも関わらず、討伐隊はその後カルステン邸から出ることなくその場に留まり続けていることに剛を煮やしたリカードがクルシュに声をかけた。リーダーであるクルシュや隊長のヴィルヘルムは庭に置かれた机に地図を広げ、作戦の確認を未だに行っており、出陣の気配すらない。既に「鉄の牙」や討伐隊の一部からは出陣しないことへの疑問や、クルシュやヴィルヘルムの演説がまやかしであったかもしれないと不信がる声が出ており、リカードらは説得に回って宥めている真っ最中であった。約半日の道のりを急がずにどうしてゆっくりしていられようか。
既に白鯨が出現する定刻まで、携帯で確認した残り時間は半日といったところだ。すでに出陣式からは五時間ほどが経過しており、白鯨との決戦前に、一息つく余裕にしては取りすぎている。
「ぼちぼち何ぞ行動してくれへんとワイらも結構厳しいねん。せめて見通しだけでも」
「ん?ああ、そのことならドクターに聞くといい。卿は聞いて驚くかもしれないが、彼には目的地まで一瞬で、正確に道をつなげる魔術を扱えるこの世界唯一の魔術師なのだ」
「んな!?んなアホな!そんな魔術、今までどんな魔道士でも使いこなせて来んかった夢の魔術やで!」
「私も最初はそう思った。現にあのロズワール辺境伯でさえ、転移魔法は扱えないと聞く。単に聞けば、御伽噺に聞こえるだろう。ところが、ドクターはそれを可能にし、私やヴィルヘルムもそれを目にした。今に、卿も信じざるを得なくなるだろう」
「マジか……そんな魔術がほんまに扱えるなら、、世界を変える発見や」
クルシュの口から飛び出した信じられないような内容。嘘を見抜くことに関しては、王選候補者の中では唯一無二の存在であるクルシュが言うのだから信じざるを得ない。現に彼女は嘘をつくことが嫌いな性分であり、その彼女がまして戦場が近いこの場で嘘をつくとは到底考えられなかった。
しかし、商人として一人の口から出た話を簡単に信じるほどリカードも抜けていない。
リカードはミミ、ヘータローと話し込むストレンジにガツガツと歩み寄るとストレンジに詰め寄った。
「なあ、ストレンジはん。ぼちぼち決戦の場に行かへんとまずいんとちゃうん?ここからフリューゲルの大樹まで地竜やライガーを飛ばしても5時間はかかる。あんまりのんびりしていると、間に合えへんんちゃうん?」
「随分と厳しい顔をして歩み寄って来たと思えばそんな心配か。それなら必要ない。私の魔術でフリューゲルの大樹まで一瞬で到達できる」
「それはクルシュはんにも言われたさ。せやけど、口だけで信用するほど商人は単純やない。商人は疑り深くないと生きていけない性分でな。ストレンジはん。良ければもの目的地まで一瞬で繋げるっちゅう、魔術を見せてくれないか?」
「ああ、いいだろう」
リカードの提案に二の次に応じたストレンジ。魔術の展開に長い準備を要すると考えていたリカードは、その素早い返答に思わずキョトンとしてしまう。
一方、魔術を見せることでそれまでストレンジの実力を知らない「鉄の牙」の面々にも自身の力を誇示することができると考えたストレンジは左手にスリング・リングを通し、門の方向へ両手を向けた。そして、右手をゆっくり回すと彼の手の動きに合わせて、門の目の前に縁を火花で散らす2階ほどの高さで、横幅も広い巨大なポータルが現れた。
「な!?ホンマだったんか!」
「おおー!おじちゃん、すごいねー!ミミ、関心関心!」
「これは……これは戦いを根本から変える魔術ですよ!ストレンジさん!」
驚愕するリカード、理屈は分からないものの凄いことは分かり興奮するミミ、ストレンジの魔術の有用性に目を光らせるヘータローと、三者三様の反応を見せる。彼らだけではなく、討伐隊の老騎士や「鉄の牙団」の他の面々も目を丸くし、ストレンジの未知な魔術に驚いていた。
「さて、これで納得していただけたかな?」
「あ、ああ。ありがとうな、ストレンジはん」
ご満悦に浸りながら三人の前から立ち去るストレンジは、リカードの肩に手を置きながら去り際に彼に尋ねた。呆然とポータルを見つめる彼は、曖昧に返答するのが限界で、ポータルの方へ釘付けになったままだ。
「派手にやったな」
「頭で理解できない奴には、言葉よりも実物を見せたほうが早いと思ったまでだ」
リカード達から離れたストレンジはそのまま作戦会議に耽っていたクルシュ達のいる場所に向かった。
開口一番、屋敷の門の前に開いた巨大なポータルを見たクルシュは半ば呆れたように、苦笑いを浮かべながらストレンジに問いかけた。
「やはり卿の移動魔術には目を見開くものがあるな。あのように簡単に目的地へと続く道を繋げてしまうとは。しかし、あれでは地竜やライガーを用いて物資の運送を行う者たちは不憫だろう。彼らの存在意義を奪う魔術が卿のそれなのだからな」
「だとしたら彼らは安心だ。あのポータルは私なら最も簡単に開けるが、魔術に適性のない者はそもそも開くことができない。それにあれはスリング・リングを使わなければならず、ここにはそれの代用品はない。彼らがホームレスになるようなことはないだろう。多分」
「卿の魔術はあくまでイレギュラーなものであって、使用できる人間が少ない以上、地竜の存在は保証されるということだな。彼らもその方が安心だろう」
それから暫くしてストレンジがフリューゲルの大樹根元に繋げたポータルを通って次々と討伐隊が戦場となるリーファウス街道に入っていき、それと同時に戦略物資も次々と運ばれていった。トラブルなく人員・物資輸送は予定通りに進められたが、リカードはその光景を複雑な目で見つめていたのを何人かが目撃していたのだとか。
「デカいな……」
人員と物資の輸送が完了するまでポータルを開けておく必要があり、一度開いてしまえば術者が再度閉じるまで永遠に開き続けるのがストレンジのポータルのため、特にやることがないストレンジはその足でフリューゲルの大樹根元までやってきていた。
そのすぐ裏ではスバルとレムが何やら二人っきりで話し込んでおり、その会話に邪魔することが直感で吝かであると感じたストレンジは、彼らの所へは行かず近場から木を見上げる。
その高さに只々感心していると、ふと横を見ればヴィルヘルムがただ一人静かに眼前に広がる黄色の小さな花畑を前に立ち尽くしているのが目に入った。
そこから微動だにせず、ただ立っているその姿だけでも絵になるが、隊長である彼が一人ここに来るのはそれなりの理由がある。その理由を知りたくなったストレンジは、彼へ足を伸ばした。
「ヴィルヘルム。ここで何をしてる?戦いはもうすぐ始まるぞ」
「分かっております。ただ、妻が好きだったこの花を戦いの前に、最後目に入れておこうと思いましてな。お気に障りましたかな?」
「いや。ただ気になっただけだ。気にしないでくれ」
ヴィルヘルムの横に立ったストレンジは、眼前の花畑を彼と同じように見つめる。その花を手に取ってみれば、ストレンジの掌に収まるほどの大きさだが、女性が好みそうな色と形をしている。これは、ヴィルヘルムが最も愛していた妻テレシアが最も好きだった花なのだろうか。
「今日の戦いで妻の仇である白鯨を追い続けたその努力が報われるな」
「ドクター殿にまでその話は及んでいましたか。どうかお忘れください。老僕のつまらぬ妄執と、無意に過ごした時間です」
「そんなことはない。私だって彼女を失えば、その妄執に取り憑かれる。お前の気持ちは否定しない。ーー妻を愛しているんだな」
その言葉にゆっくりとヴィルヘルムは首をストレンジの方へ向けた。そこには「剣鬼」と呼ばれた剣士でも礼儀正しい堅物の執事でもない、ただ一人の女性を愛した普通の男がいた。
「ええ、妻を愛しております。誰よりも、どれほど時間が過ぎようと」
ヴィルヘルムは再び顔を花畑の方へ戻すと、独白する。
「妻は、花を愛でることが好きな女性でした。剣を振ることを好まず、しかし誰よりも剣に愛された。剣に生きることしか許されず、妻もまたその運命を受け入れておりました。私は彼女から剣を奪い、「剣聖」の名を捨てさせ彼女を妻とした。ですが、剣は彼女を許してなどいませんでした」
思わず聞いている方も顔を赤らめてしまうような妻への愛を隠さず、そして堂々と口にするヴィルヘルム。常人であれば思わず顔を赤らめてしまうような話だが、意外にもストレンジはその言葉を普通に受け入れた。彼自身も愛するクリスティーンという存在がおり、ヴィルヘルムの気持ちが理解できたからだ。ストレンジとて、傲慢だけが目立つ男ではなく、一人の女性を愛した良き男性でもあった。
「ストレンジ殿、改めて感謝を。この戦いで私は私の剣に答えを見出せる。妻の墓前にも、やっと足を向けることができましょう。やっと、妻に会いに行くことができる」
「その愛を必ず妻に見せられるよう私も最善を尽くそう。お前を妻の隣の墓前に埋めるにはまだ少し早い。必ず勝利へ、唯一の道へとお前たちを送り届ける」
――定刻が迫り、大樹の根元には戦前の張り詰めた緊迫感が満ち始めていた。
交代で食事と仮眠をとり、場に集った討伐隊のコンディションは万全だ。討伐隊の攻撃手段の一つとして連れて来られている地竜とライガーも十分な休息を得て、今は背に乗せる騎手の指示を今か今かと待ち構えている様子だった。
息を殺し、心を落ち着けて、全員がその時を待っている。
止める必要もないのに呼吸を止め、剣が鞘を走る音すらもなにかに影響を与えてしまうのではとばかりに、誰もが音を殺して時間が過ぎるのを待ち望む。
リーファウス街道の空、風の強い今宵は雲の流れる動きが速い。
月明かりの光源が雲に遮られるたび、まるで巨獣が光を閉ざしたのではと視線を上げるものが後を絶たない。それだけ、警戒心を呼び込んでいるのだ。
「定刻まで、あと数分だな」
静かにそう呟き、クルシュは横に立つフェリスが小さく頷くのをちらと見る。
クルシュの隣に長年侍り、こういった事態に慣れているはずのフェリスですらも、今は常の諧謔を優先するような素振りが一切ない。
彼は自分がこの討伐隊の一種の生命線であることを理解し、その役割に従事しようとしているのだ。
フェリスや同じくクルシュの側に控え、エルドリッチ・ライトを両拳に展開するストレンジの活躍如何で、この戦における最終的な勝者の数は変わるだろう。
クルシュは自分の陣営の勝利を疑ってはいないが、それでも犠牲なしに白鯨を討てると考えるほど自惚れてもいない。しかし、その生まれる必要な犠牲の数を、確実に少なくすることはできると考える程度には自信を持っている。
それが自分の従者であるフェリスと、その力を存分に振るう初めての舞台が用意されたストレンジへの信頼であるのだから、自信と呼ぶべきかどうかはいささか疑問ではあったが。
ヴィルヘルムはすでに腰から二本の剣を抜き、両手に構えていつでも走り出せる準備を終えている。
彼のまとう静かな剣気は研ぎ澄まされた領域にあり、悲願のときを迎えようとしているこの瞬間ですら洗練されたものだ。
その純粋なまでの剣鬼のありように、クルシュは惚れ惚れするような感嘆を覚えることを止められない。
人とはただひたすらに純粋に、ここまで魂を昇華することができるものなのだ。
いつか自分もまた、その領域に至りたいと心から思う。
ヴィルヘルムに並び、各々の表情に緊張を走らせる討伐隊の面々も士気は高い。クルシュの命に従い、先制攻撃を仕掛ける準備も黙々とすでに終えている。彼らとて、今夜の出撃には疑問はあろう。肝心の細かい部分の詰めにおいて、情報の信頼度を確立させるための関係を築くには、彼らとスバルの間には時間がなさすぎた。
それでもなお彼らが異を口にしないのは、それがクルシュの判断を尊重してのことであると、その責任を果たす義務があることをクルシュは自覚している。
じりじりと、心地の良い戦意が自分を焦がしていくのがわかる。
刻限が近づき、死と火と血の香りが間近に迫るにつれて、クルシュは己の生きている感覚を実感し始めていた。
為政者として、尊くあろうと己を戒め、努力をしているつもりだ。
しかし、心の内に根付く、変わりようのない本質を否定することもまたしない。
それは――、
「――――ッ!」
唐突に、それは闇夜に沈むリーファウス街道に響き渡った。
軽やかな音が連鎖し、重なり合うそれは自然と音楽となって鼓膜を震わせる。
音の発生源に目を向ければ、輝く魔法器を手にするスバルの姿が彼女からは見えた。その手元の魔法器から、その音楽が流れ出していることも。
つまり――、
「総員、警戒だ――」
ストレンジの観た未来によれば、魔法器が鳴って一分以内に白鯨が出現するとのこと。
彼の魔術を信じるのであれば、今この瞬間にその巨体が空を泳ぎ始めても不思議ではない。場所も、魔法器が鳴った以上はここで正しいのだろう。
自然、クルシュは神経を研ぎ澄ませ、その存在が現れるのを待ち構える。
しかし、
「――――」
静寂の中に、その強大な魔獣が現れる気配が一切感じられなかった。
拍子抜けした、という表現は正しくないが、一分が経過してもなにも起こらない事実に、クルシュにとっては珍しく動揺の前兆を禁じ得ない。
まさか謀られたか、とは思いたくないが。
リーファウス街道に落ちる静けさは変わらず、周囲の景色にも変化はない。
今もまた、空を泳ぐ雲によって月明かりが遮られ、暗く大きな影が視界を覆い尽くしているが――。
「――――っ」
見上げ、クルシュはその自分の浅はかな考えを即座に呪った。
月明かりが遮られ、影が落ちている。
その光を遮断した雲霞がゆっくりと高度を下げ、目の前に迫る。
それは、あまりにも大きな魚影を空に浮かべる魔獣であった。
クルシュが息を呑んだのと同時、ほとんど全ての討伐隊の面々が同じ事実を察した。そして全員の意思が統一されると、彼らの視線がクルシュへと投げかけられる。
――先制攻撃、その命令を待っているのだ。
機先を制し、白鯨の出現の頭を押さえることには成功した。
あとは手筈通りに奇襲を打ち込み、戦線を支配するだけだ。
「――――」
息を吸い、クルシュは最初の号令を発しようと心を決める。
白鯨はいまだ、矮小なこちらの存在には気付いていない。静かに頭を巡らせて、まるで自分がどこにいるのかを確かめようとしているかのように、その動きは頼りなげで、なにより隙だらけであった。
「――総員」
総攻撃、とそれを口にしようとして、
「――ぶちかませぇッ!!」
「――アルヒューマ!!」
クルシュを乗り越えて号令が発され、同時に魔法の詠唱によりマナが展開。
すさまじい密度で練り上げられた超級の強大さを誇る氷柱が、立て続けに四本一斉に世界に具現化――射出されたそれが白鯨の胴体に撃ち込まれ、一拍遅れて白鯨の絶叫と噴出した血が大地に降り注ぐ。
慌てて見れば、そこには地竜に相乗りするスバルとレムが駆け出している。レムの腰に抱きついているスバルがガッツポーズし、詠唱による先制攻撃を果たしたレムは自らの役割を全うしたとばかりに会心の表情だ。
その二人の先走り――もとい、先陣を切る姿に討伐隊が動揺。
それを見て、クルシュは自分の口が大きく歪むのを堪えられない。
怒り、ではない。笑いによってだ。
「総員――あの馬鹿共に続け!!」
動揺をかき消すようなクルシュの号令がかかり、討伐隊の面々が反射的に応じて攻撃を開始する。
すさまじい土埃が巻き上がり、その向こうで白鯨の絶叫が再度高らかに、リーファウス街道の夜空へ木霊していく。
――白鯨討伐戦が満を持して、火蓋を切った。
いよいよ白鯨戦じゃー!!やっとMCU作品らしい戦いが描けるZOY!
ストレンジらしい魔術大戦みたいな戦いになったりならなかったり?(ストレンジがミラー・ディメンション操り出したら他の面々は上に行ったり、下に行ったり、横に振り回されたり……うーん、振り回されそう)
先日、ロス長官を演じられたウィリアム・ハート氏が亡くなられました。心からご冥福をお祈りします。安らかに、ロス長官。