Re:上から目線の魔術師の異世界生活   作:npd writer

5 / 51
ようやく、新オープニングが公開された『リゼロ』。前半クールが絶望を表現したオープニングならば、後半クールは正に希望を与えてくれるオープニングでした。


五話 大胆な交渉

「それじゃ、お呼びがかかるまでここで待っててネ」

 

ヴィルヘルムとの挨拶の後、フェリスに屋敷内まで連れてこられたストレンジは、その足で控え室に通される。ヴィルヘルムの方はまだ馬車の掃除をしていたがそれが終わり次第、こちらの会合に出席するそうであった。

ヴィルヘルムではない別の執事がお茶の入ったカップを置いていったのを確認したストレンジは、異世界に来て一滴も水分を取っておらず喉が限界まで乾いていた事もあり、一気に半分ほど喉に流し込んだ。喉をある程度潤す事ができた彼は、カップをソーサーに戻し、控え室からカルステン邸の庭園を眺めた。

丁度、夕刻ということもあり室内からはオレンジ色に包まれている空を眺めることができる。ニューヨークとは違い、近隣に工場地帯がある訳でもなく、車など二酸化炭素を排出する乗り物が存在しないこの世界の空気は、非常に澄んでいる。同じ夕焼けでありながらこちらの世界の方は更に輝いているようにストレンジには見えていた。

 

「ーー不安か?こちらも久々に不安を感じている。何でもこの世界における最初の交渉人だからな。恥ずかしい話だが、初めてオペをしたあの時と同じくらい緊張している。え?そうは見えないだと?そう思えている限り、お前の方がメンタルが強い気がするぞ」

 

夕焼けを見ていたストレンジの頬をマントがそっと突いた。どうも、構って欲しいらしいマントにストレンジは、苦笑しながらも付き合った。やがてひらりと揺れていたマントは静かになり、再びストレンジは外を眺める。

 

ーー一体、誰が何のためにストレンジを召喚したのか?どうすれば元の世界に戻れる?そのために何を為すべきかーー

 

ソファに座ったストレンジは一人黙々と考える。未だに彼を召喚した存在が分からない以上、地道に情報を集めていくしかないのだが、ここで上手くクルシュからの協力が得られればそれだけ早く事が進む。

何としても協力を得らなければーー

 

 

 

 

 

「ドクター殿、クルシュ様のご準備が整いました。どうぞこちらへ」

 

黙々と考えていたストレンジは、ヴィルヘルムの呼びかけにより、控え室を退出した。二人は屋敷の長い廊下を歩き、やがて大きな扉の前に到着する。

他の部屋のそれと比べて明らかに質が違うその部屋には、おそらくこの屋敷の主がいるのだろう。ストレンジは半ば無意識に背筋を伸ばす。

ヴィルヘルムによって目の前の扉が開かれ、室内の様子が顕になる。緑色の質の良いソファーが中央にU字型に置かれており応接セットの隣、入り口から見て右手には執務机が置かれている。壁には黄金の獅子の紋章が夕日を反射して神々しくその勇姿を照らしている。

執務机の左右にはヴィルヘルムとフェリスが立ち、中央に座る主を守るように立っている。

そして二人が守護している存在にストレンジは目線を向けた。執務椅子に座っているのは整った顔立ちに、引き締まった肉体を持つ女性。彼女の凛々しいオーラを引き立てる軍服と、全てを見据えていると言わんばかりの鋭い眼光を兼ね備えた彼女は、手を顔の前で組んでストレンジを見つめている。

 

「卿が、フェリスの言っていた魔術師か」

 

やがて女主人は口を開く。フェリスの妙に高い声とは違う、れっきとした本物の女性の声であるが、平均よりも低い声色で話す。しかし、全く違和感ないその様にストレンジは、密かに驚嘆しながらもそれを見せる事なく、自らも名乗った。

 

「その通りだ。お初にお目にかかる。私はドクター・スティーブン・ストレンジ。カマー・タージの主であり、「至高の魔術師(ソーサラー・スプリーム)」を受け継ぐ、地球最強の魔術師だ」

 

 

 

 

クルシュは、改めて目の前に立つ突然の自分を訪ねてきた来客を見つめる。

自らを「至高の魔術師」と名乗った男性魔術師は、高身長で引き締まった体つきをしており、クルシュから見ても相当の鍛錬を励んでいる事が分かる。口元の髭はあるものの、綺麗に整えられており嫌悪感を感じさせるものではない。

そしてこの世界には珍しい白髪が混じった黒髪が特徴的であり、ルグニカには存在しない青い服の上に赤いマントを羽織る奇抜なスタイルも、クルシュに興味を持たせたせるのに十分であった。

 

「さて、「至高」を名乗る卿がどうして当家を訪れたのか。その理由を聞かせてもらおう」

 

ストレンジを応接用のソファーに座らせ、自らも相対する位置に座るとクルシュは早速問うた。

クルシュが真っ直ぐ見つめるその先、彼のアイスグレーの瞳を真っ直ぐ見つめるクルシュは、ストレンジの一挙手一投足を逃すまいと目線を鋭くする。

 

「理由は単純さ。今日、私はルグニカ王国に来たのだが資金が途絶えた。このままでは私は国には帰れない。故に私の能力を対価として援助を行える家を探していている。これで大丈夫か?クルシュ・カルステン公爵閣下」

 

「ようやく見つけた支援者候補というのが、当家だったということか?」

 

「その通りだ」

 

クルシュは目を閉じて自身の加護である『風見の加護』を使う。目の前の魔術師が嘘をつけばその時点で嘘の風が吹き、彼の発言の真偽が分かる。

しかし彼には嘘の風が吹かない。つまりこの話が本当だということが証明される。

 

「しかし先ほど卿は「カマー・タージの主」と発言していた。ならば卿がこのルグニカから手紙を発せば数日の内に卿の同胞が駆けつけるのではないか?」

 

「カマー・タージはここからかなりの距離があり、手紙を出しても届く前に私が餓死する。それにその手紙を書く資金すらも私の手元にはない。手紙が届き、仲間が来る前に私はこの場所で干からびた死体となっているだろうな」

 

「……卿は一体、どんな金使いをしてきたのだ?」

 

「全くですネ、フェリちゃんは今すご〜く呆れてますヨ。クルシュ様」

 

隣に立つフェリスは早くも喧嘩腰にストレンジに言い放つ。ストレンジの事情を分かっていても、どうも気に障るフェリスは内心悪戯な笑みを浮かべて、彼を挑発する。クルシュもある程度想定していたのか、フェリスの発言を注意することなく次の質問に移った。

 

「卿の金使いの話は、後日機会があればの話としよう。ドクター・スティーブン・ストレンジ、当家に保護を求める理由については理解した。だが当家が卿を客人としてもてなす場合、それに伴う対価が必要となる。卿はこの国の人間ではなく、資産も家柄も所持していないと見た。更に身分を証明する物も持ち合わせていない。過去例に見ない悪条件ではあるが、これらを覆すような対価を卿は持ち合わせているのか?」

 

ストレンジも一応、免許証(免停後の更新は停止)、スマホ(圏外、充電場所なし)等、最低限の貴重品を持ってはいるが、どれも身分を証明できる、もしくは交渉の対価としてはあまりにも無価値な代物だった。

 

「対価か。カルステン公爵が守銭奴ならば気を召さないだろうが、私自身をこの取引の対価とする、といったらどうする?」

 

「何だと?卿自身をか?」

 

クルシュはここで初めて目を見開いた。目の前の男の発言は最早、身売りするにも等しい発言だったのだ。ただの客人にしてはあまりにも態度が違うし何より傲慢だった。

 

「私の魔術はこの地で最強だ。私を庇護する対価として、カルステン公爵家が私の能力を有意義に利用するという案を、私から出させてもらおう。私の能力は、大抵の問題が解決できる事は勿論、ボディーガード的役割としても使える。このような好条件の人材を見逃すのは、為政者としての才を持つ公爵殿には痛いミスだと思うが」

 

「ーー不思議だ。そこまでの傲慢な発言は真偽を疑うが、卿は嘘を言っていない。だが今の提案を我々が受け入れた場合、卿の意思は無視されることになるかもしれない。卿はそれを納得できるのか?」

 

「女性でありながら公爵の地位まで上り詰め、領土をまとめ上げたカリスマ性を持ち合わせる王戦筆頭候補者は、私を飼殺しに扱うのか?そのような人物ならとっくに自滅しているか、領民が吊し上げているだろう。カルステン公爵であるならば、有益に私自身の能力を使うのではないか、と期待も込めてそう考えただけだ」

 

「ーー卿の意思について理解した。しかし、いくら卿が嘘をついていないとはいえ、流石に実力不明の魔術師を当家で抱える余裕も資金もない。そこで、卿の魔術師としての能力を把握しておきたい。是非とも卿の魔術を拝見させてもらおう」

 

クルシュは、先程まで見せていた真剣な表情を崩し笑みを浮かべた。彼女の視線にはストレンジがどのような魔術を扱うのか、といった興味が含まれている。

クルシュはここまでストレンジが強気に出れるということは、それだけの実力があるということを察している。しかしその力がクルシュ陣営のプラスとなり得るのかは未だに未知数だった。彼の「至高」の実力次第では、今進めている計画に彼を巻き込まないという手段はない。

それにクルシュ自身の思惑としてその魔術を見てみたいという興味もあった。

 

「ドクター!魔術を使うのはいいけど、クルシュ様を落とすような真似は絶対っ、しにゃいでね!もしやったらフェリちゃんは容赦しないから」

 

「分かっている。公爵家の当主にあのような無礼な真似はしない。そもそもあれは応用は効くが対して脅威にはならない()()()な魔術だ。そんなものでは心に響かないだろう。これから披露するのはもっと複雑な魔術だ」

 

「へー。あれが()()()ネー」

 

初歩的な魔術に、翻弄されたのか。不満そうなフェリスを無視し、椅子に座っていたストレンジは静かにクルシュを見つめた。しかしそのまま彼は動こうとしない。何もしないストレンジにクルシュは怪訝そうな表情を浮かべ、フェリスは困惑した表情を向けるという、全体的に気まずい雰囲気が室内を覆っていった。

だが、すぐクルシュの顔に驚きが広がる。いつの間にか、彼女の右手には真っ赤に熟したリンガが収まっていたからであった。

 

「これは……これが卿の魔術なのか?ドクター・ストレンジ」

 

「フェリちゃんには、一切の気配を感じさせませんでしたけど……」

 

クルシュとフェリスが驚愕の表情を浮かべ、普段は動じることのないヴィルヘルムでさえ、その鋼の筋肉を微動させた。

目を丸くするクルシュを見て、面白く感じたストレンジは試食するように促す。

 

「では、クルシュ・カルステン。そのリンガを一口、召し上がってもらおう。おおっと、変な毒物を入れているなど無粋な真似はしないから、安心して召し上がってほしい。もしも信用できないのなら私が齧るが?」

 

「……嘘は言ってないようだな。では頂こう」

 

クルシュは右手に握られたリンガを一口、齧った。いつも食べている味と同じ、ひょっとすると更に甘く感じるリンガを齧った後、ストレンジに促されリンガを机の上に置く。

 

「卿の魔術にはまだ続きがあるのか。本当に面白いな。目が離せなくなる」

 

「これから披露するのは更に強力な魔術だ。普通の人間が扱えば、存在ごと消えかねない物であり、扱うためには過酷な鍛錬をこなし自らを至高の領域に導かなければならない。ではクルシュ・カルステン公爵。それにお付きの女装騎士と執事よ。心してご覧いただこう」

 

ストレンジは両手を胸に下げられているペンダントの位置へ持っていき、クロスさせた。すると、ペンダントの中心が開かれ淡い緑色の光が発せられると同時に、執務机に置かれていた結晶灯の灯りが激しく点滅し始めた。それだけではなく部屋中の結晶灯が同じように点滅を繰り返している。ストレンジ、正確にはそのペンダントから発せられている緑色の魔法石に大量のマナが吸い寄せられているようだった。

全く意に返すことなく、ストレンジは両手をリンガの方へ向け、左手を引くと同時に右手に緑色の魔法円を展開する。

ストレンジが右手を閉じるように魔法陣を回すと……

 

「こ、これは……!?時間操作の魔法なのか!?」

 

「す、すごい……!こんな事が……!」

 

「……私も長く生きてきましたが、この様な魔術は初めてです」

 

ストレンジの掌に浮かぶ魔法陣が、彼の手を閉じる動作に合わせて回転すると、クルシュの机に置かれていたリンガが一口、また一口と食べられているかのように削られていき、芯だけが残った。逆にストレンジが手を開くように動くと魔法陣も逆回転に回り、芯だけだったリンガが食べられた順番にリンガの果肉が現れ、元の形に戻った。

 

この世界には存在せず、もしも使えば『禁術』とまで呼ばるであろう強力な魔術。間違いなく神からの怒りを買うことにもなりかねない、時を操作するという前代未聞のこの力は、あの王国一の魔導士と言わしめるロズワール・L・メイザースでさえ、扱う事ができないだろう。

ストレンジの切り札とも言えるこの力があれば、世界に蔓延る魔獣を蹴散らす事さえ、容易な事だろう。クルシュは400年続いた厄災の終焉にこの目の前の魔術師の力が必須になると痛感した。

 

手の魔法陣が消え、ペンダントが閉じられると、結晶灯の光も暗くではあるが灯った。

その場に残るのはしてやったり顔のストレンジと驚愕するだけとなったフェリス、心臓の鼓動を昂らせたクルシュ、そして厳かに佇むヴィルヘルム。

 

「ドクター・ストレンジ、卿の力を認めよう。当家は最大限の敬意を持って迎えると共に最大限の支援を確約する」

 

「大変感謝する、クルシュ・カルステン。貴公がまともな思考を持つ人間で心底安心した」

 

ここに両者の思惑が一致したクルシュとストレンジは、固く手を握った。

 

 

 

 

 

クルシュ・カルステンという絶大な後ろ盾を得たストレンジは早速、仮住まいとなったカルステン邸の一室を拠点として占有した。既に室内に置かれていたベッドや机、椅子、数冊の本はストレンジの物となったが、ストレンジはそれらには手を着けず、異空間から自らが所有する本を取り出しそれを読み、時を過ごしていた。

そして夕食をクルシュ、フェリスらと摂った後ストレンジは現在、クルシュ邸のバルコニーにて1人佇んでいる。

夜風の心地よさも地球とは違うものであり、心地よい風に吹かれながら眼下に広がる王都を眺める。

ニューヨークのように摩天楼の灯りや、道路を走る多くの車のライトが合わさる、ダイヤモンドのような夜景ではないものの、古典的で寧ろ普段見慣れない光景はストレンジを飽きさせるものではなかった。

ふと、バルコニーのストレンジは下から上がってくる気配に視線を向けた。

 

 

 

「ドクター・ストレンジ。少し付き合わないか?」

 

黄昏ていたストレンジに先程、先程聞き飽きるほど聞いた、凛々しくも女性らしい澄んだ声が届く。振り返ると、グラスと酒瓶を持つクルシュの姿があった。軍服から就寝用の薄い衣服に着替えている彼女は、昼間の堅苦しい雰囲気を微塵も感じさせない。クルシュ・カルステンは女性らしい美麗な肉体を持っているー

脳裏に浮かんだ疾しい気持ちをストレンジはすぐに振り払った。

 

「酒か?誘ってくれた事には感謝するが、夜は精神を鍛えるのに絶好の時間だ。済まないが、今度にしてもらおう」

 

「そうか。何、卿にとってこの世界について話そうと思ったのだが精神の修行の場であるならば仕方がない。また、別の機会にーー」

 

「待て。知識は力になる、是非とも聞かせてもらおう。この世界について広く、そして深く」

 

否、クルシュ・カルステンを侮ってはならない。王戦筆頭候補である彼女と対等に交渉するには鉄の男(アイアンマン)と相対するような緊張感を持って臨む必要がある、とストレンジは密かに心に決める。

 

 

 

 

同時刻、クルシュのいない執務室で一人黙々と掃除をしていたヴィルヘルムに、フェリスが物珍しそうな表情を浮かべ声をかける。

ストレンジと会って以降、ヴィルヘルムの表情に僅かな変化が生まれていた事にフェリスも気付いていたからであった。

 

「それにしても、ヴィル爺がドクターとすんなりお話ししていたのが意外だったかなぁ。人と話すよりぶった斬っちゃう方が好きなのに」

 

「酷い誤解ですな。あのドクター・ストレンジという男性のことが気になっただけです」

 

ヴィルヘルムの言葉を理解できず疑問を浮かべるフェリス。ヴィルヘルムは掃除する手を止めて、執務室の窓より夜空を見据えた。

 

「あれは何度も。そう、数百、数千と死域に踏み込んだ者の目です。死線を何度も潜り抜けてきた歴代の剣士でさえ、あのような目をする事はできません。彼は私が考える以上に強靭な精神を持っているのではないか、と考えていましてな。それこそ、己を犠牲にしてまでも他者を救うような」

 

王国騎士団に長年在籍し、先代「剣聖」から剣を奪った、「剣鬼」ヴィルヘルムだからこそ分かる気配。幾人もの敵を斬り、地獄のような戦場を駆け巡った経験からこそ分かるそのオーラをストレンジは身に纏っていた。当然、ヴィルヘルムがその事に気付かない訳もなく、夜空を眺めながら重々しく言った。

 

「ふ〜ん。よく分かんにゃい。でも、「剣鬼」ヴィルヘルム・アストレアがそこまで言うんだからきっと平坦な道は歩めないよね、あの人」

 

その言葉にヴィルヘルムは反応することなく、再び掃除を始めた。

 

 

 

 

「卿は、現在我々が王都にて武具や竜車を揃えている理由を知っているか?」

 

「まさか。王都に来て間もない私が、王国の内情について知っているとでも?生憎、政治に関しては、私はあまり関心を持っていない。故に本当に氷山の一角の事しか知らないさ」

 

話は戻り、クルシュ邸のバルコニー。ストレンジとクルシュはバルコニーに置かれた椅子に向かい合うように座り、クルシュがグラスと酒瓶を両者の間にあるテーブルに置くと、彼女は尋ねた。

当然、この世界に来て間もないストレンジが知る由もなく、詳しい説明を促した。

 

「現在、当家では世界を恐怖に陥れている、ある厄災を滅ぼそうとしている。その名を「白鯨」。嫉妬の魔女が400年前に生み出した魔獣であり、その凶暴さ故、王国の兵士や商人たちから恐れられている存在だ。奴が放つ霧を浴びれば、忽ちこの世界から存在を消される。どんな存在でもだ」

 

「フェリスやユリウスが昼間述べていたのはそれか。全く、随分と物騒なモノが存在しているものだな。何故、そんなモノが存在しているのだ?」

 

「卿はユリウスとも会っていたのか、これはまた意外な運命だ。ー失礼、話題が逸れたな。「白鯨」を説明するには別の物語が礎となる。これは先ほどの質問の前に問うべきだった。ドクター・ストレンジ、卿は「魔女教」については知っているか?」

 

「いや、先程の「白鯨」といい、それといい初耳な単語ばかりだ」

 

クルシュは意外な目線を彼に向ける。ストレンジであるならば知っていてもおかしくないと彼女は考えていたのだ。

 

「魔女教というのは「嫉妬の魔女」である「サテラ」を信仰する狂人の集まりだ。その人数、構成についてその一切が分かっていない組織ではあるが、唯一分かっていることは大罪の名を冠した5人の大罪司教が存在するということ」

 

「大罪司教か。先程の「白鯨」といい、「魔女教」といい、この世界には実に危険な存在がその辺の石ころ同様、コロコロ転がっている事については十分過ぎるほど理解できた。それで、彼ら狂信徒が崇拝している「サテラ」とはどんな存在なんだ?」

 

「サテラは他の魔女6人を殺害し、世界の半分を飲み込んだ最凶の存在だ。彼女の息の根を止めるため初代「剣聖」、「大賢者」、「神龍」が打倒を試みるも倒す事叶わず、現在も大瀑布近くの祠にて封印されている。近づこうにも障気が強すぎるため、王国騎士団も手を付けられずにいる。

これがこの世界に伝わる伝説、及び現状の一部だ」

 

クルシュはグラスに注がれたウィスキーらしき飲み物を飲み干すと再び、酒を注ごうとしたが、立場上の礼儀という事もあって代わりにストレンジが注ぐ。

 

「その「嫉妬の魔女」が生み出したと言われる魔獣がこの世界には三体いるが、そのうちの一体が「白鯨」であり奴を我々は追い続けている。それに、白鯨を倒すことはヴィルヘルムの悲願でもあるのだ。彼も「白鯨」により自らの人生を狂わせられた一人でもある。私の周りにも「白鯨」による犠牲者が大勢いるのだ。

ーードクター・ストレンジ、先ほどの卿の魔術を見て感じたことがある。「白鯨」討伐には卿の力が不可欠となるだろう。恐らく討伐戦において卿の力が大きく勝敗に関わってくる。我々の、いや、王国全臣民の為、我々に協力してくれないだろうか?」

 

この世界で得たパトロンを失うことなど、ストレンジにとってはあまりにもダメージが大きすぎる。その「白鯨」は危険な存在ではあるが、あのドルマムゥよりは弱い存在であることは確かだ。それに人を救うという使命は、魔術師として成熟したストレンジの精神を突き動かすには十分であった。

 

「ここに来る前にフェリスに私の覚悟を聞かれて以来、私としては覚悟を決めていた。この場を借りて、改めて言わせてもらおう。クルシュ・カルステン。私の力を以って全力を尽くし、「白鯨」を倒すことを約束しよう」

 

「頼もしい限りだ。卿は大いに力を奮い、我々を支援してくれ。卿の活躍を心から期待している。あと、私のことはクルシュと呼んでもらって構わない。先程から卿は私のことを本名やカルステン公爵と呼んでいた。どうも、長々と話されるのは違和感を覚えるのでな」

 

手袋越しではあるが、クルシュとストレンジは手を握り合う。夕刻の契約の時とは違う、決意を固めた二人による握手は、信頼の糸を自然と二人の間に結びつけた。

その後、この光景を見ていたフェリスが突如として乱入しストレンジと口論になり、それに対してクルシュが制裁に入るという事態が起こったのはまた別の話。




遂に、ストレンジ先生が白鯨と魔女教について知りました。

因みにストレンジ先生はドルマムゥよりは苦戦しないと踏んでいますが、それでも要警戒している事は確かです。
原作でもかなり重要になる白鯨戦ですが、ストレンジ先生の参戦でどうなるのかー



『What if……

ーもし、パンドラとサノス(タイタンver.)が出会っていたら』


パンドラ「あぁ、貴方の力にも確かな信念がある事を感じます。目的の為ならば、無慈悲にその力を振るう。実に素晴らしい事です」

サノス「お前も実に面白い力を持っているようだな」

パワー・ストーンによる攻撃を『現実を書き換える』事で躱すパンドラ。

パンドラ「ですが、最恐の貴方の力でも私には敵いません」

サノス「確かに今までの私ならばお前の力を打ち消す事はできない。

ーだが今は、意のままの現実を操れる」

リアリティ・ストーンによるパンドラの能力の書き換え、スペース・ストーンとの併用による空間の引き寄せにより、一時的な無力状態になったパンドラを強制的に引き寄せる。

サノス「お前は実に芸が豊富だな。だが、一番成すべきことを怠った。私の武器を消すことを」

無慈悲にパンドラの首をへし折る。

結論、サノスの方が強い(?)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。