Re:上から目線の魔術師の異世界生活   作:npd writer

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久しぶりの投稿です。

この数日は珍しく忙しかったので投稿が遅れました。
今は、ついさっき見たリゼロの熱をそのままこれにぶつけています。


六話 長年学び実践を積む

「フェリス、ドクターに文字を教えてもらうことは可能だろうか?」

 

「え?私が、ドクターに文字を教えるんですか?」

 

ストレンジがクルシュ邸に食客として入居した翌日、本を読むことができないストレンジを見たクルシュは、執務室にフェリスを呼び出しストレンジへの文字指導を依頼した。

昨晩のクルシュとの晩酌の後、同邸にある図書室を訪れたストレンジであったが、そこに記されていた文字が全く読めず苦戦していたのである。そして、その光景をクルシュが偶然見たのであった。彼の苦心を取り除がなければならないという責務を感じたクルシュは、こうしてフェリスに文字指導の依頼を行なったのであった。

 

「フェリスには苦労をかけるだろうが、ルグニカで使用されている文字について、彼への教授をお願いしたい」

 

「……ドクターって、もしかしてイ文字も読めにゃいんですか?あれだけ優秀っぽい雰囲気出してて実際は唯のお馬鹿さんだったんですかネ〜?」

 

「フェリス、「お馬鹿さん」という言葉には語弊がある。彼は魔法に関して疎い私から見ても優秀な魔術師だ。恐らく魔法分野ではあのロズワール辺境伯を上回る完全無欠な存在と言っても過言ではないだろう。だが、そんな彼でも文字は読めないらしい。彼も文献を読む上で苦労している事だろう。是非とも彼が不便しないよう、文字を教えてやってほしい」

 

あのストレンジが他人に教えを請うために頭を下げる。医師時代には国一の名医と謳われるも傲慢不遜な態度が傷だったストレンジ。この世界に来ても変わらないそんな性格は、フェリスを苛立たせていた。彼にしてやられっぱなしのフェリスとしては、これはストレンジの弱みを握ることができるかつてないチャンスと捉え、悪戯な笑みが思わず出そうになる。

 

(あのドクターが頭を下げることになる!完全無欠を謳っていたドクターにこんな弱点があったとはネ〜。これは使える!)

 

「任せてください、クルシュ様!私がどんにゃにあの魔術師のことを嫌っていても、クルシュ様の頼みでしたらフェリちゃんは喜んでやらせてもらいますヨ〜!」

 

クルシュの執務室を退出したフェリスは高揚した気分のまま、ストレンジの部屋に突撃する。

昨日は穴に落とされる、「女装」と罵られる等、散々な目に遭っていたフェリス。彼はクルシュが滞在を許可してなお、虎視眈々とストレンジに復讐する機会を狙っていた。それがこんな短期間でチャンスが巡って来たことに、歓喜しない彼ではない。

悪戯心満載でストレンジの部屋に突入するフェリスであったが、室内の異様な光景に思わず首を傾げることとなる。

室内に佇むのは、ストレンジが付けていた赤マントのみで本人の姿はない。フェリスが首を傾げていると、突然マントが振り返り、ゆっくりとフェリスの方を向いた。

 

「にゃ!?にゃにこれ!?マントが、か、勝手に動いているにゃんて!……は!きっとドクターは透明になる魔術を使って私を驚かせようとしているんだネ!」

 

勢いよくマントの方へ手を伸ばすフェリスであったが、右手がマントに触れる直前でひらりと躱したことで勢いよくフェリスは壁にぶつかる。

 

「もー!なんでマントがひらひら動いて躱すのさ!意味わかんにゃい!」

 

マントはフェリスをおちょくるように室内を縦横無尽に動き回り、フェリスを軽くあしらっていく。もう少しで手が届くという惜しいところで身を捻り、躱していくマントにフェリスの苛立ちは溜まる一方であり、一方的に煽るマントに対して怒りを覚えつつあった。

 

「なるほど。此方に、陽気な気分を振り撒きながら接近してくる異常者がいるから誰かと思ったが。お前か、女装野郎」

 

フェリスがマントの追跡劇を開始して数分後。突如として室内に響く声に驚き、マントを追うのを止めて咄嗟に周辺を見渡すフェリス。何者かが出現した気配に勘付き後ろを振り返れば、ベッドの上に胡座をかきながら浮くストレンジの姿があった。彼は何もない空間から突如として現れたのである。

 

「それで?お気持ちハッピーな幸せ者は、なぜ私の部屋に来たんだ?」

 

「……クルシュ様から、ドクターに文字を教えるように仰せつかったの。昨日、ドクターが図書館で本を読めずに四苦八苦している光景をクルシュ様がご覧ににゃって。それで私が文字を教える任務をいただいたの。分かった?」

 

「そうか。それは実にご苦労だことだ。後ほどクルシュにはたっぷりとお礼をするか」

 

ストレンジはあの時の光景を見られたことに気付いていなかった。

確かにストレンジはクルシュ邸の図書室へ赴き、手当たり次第に本を取ったのたが、そこに記されていた文字が全く読めていなかったのである。フェリスが指導役という事に一抹の不安を覚えるストレンジであったが、習わないよりはマシと考える。

 

暫く考えていたストレンジであったが、「ふむ」と頷くと瞬時にフェリスと共に図書室に移動した。

 

「ちょうど良い。それなら基礎の部分のみ教えてもらうとするか」

 

 

 

 

 

 

「で?お前は、どうして陽気な気分で突入した?」

 

「それは男の娘の秘密♪にゃは♪」

 

 

 

 

 

 

それからはフェリスによるワンツーマンの個別指導が図書室にて行われた。フェリスの計画では、最初はアメリカや日本でも読まれそうな、幼児が読む絵本から始めるつもりだった。しかしストレンジはそれらの過程を無視し、それぞれの文字の一覧表を見せるよう要求した。噛み付くフェリスに、ストレンジは個別指導なら生徒の希望に合わせて授業を行うべきと言い返し、初っ端から険悪な空気となった。

しかしここでストレンジの天性が力を振るう。

 

「ほぉ〜。ドクターに教えたのは一回だけなのに、僅かな時間でイ文字とロ文字は完璧に覚えたみたいだネ〜。フェリちゃんはてっきり一日中教える気でいたんだけど、こんなに物覚えが早いなんてびっくりだよ〜。ハ文字に関しても合格点はあげられるぐらいは覚えられているみたいだし」

 

「ああ。言語系であるならば、Google翻訳か、各言語の一覧表があれば、1日足らずで覚えられる」

 

まだ日も西へ傾いていない時間でイ文字とロ文字を完璧に使いこなし、ハ文字も合格点に達していると評価されたストレンジは満足そうに頷いた。

一方、フェリスはストレンジの吸収の素早さに驚くとともに彼の持つ才能に感服する。

 

(ドクターは一通り見ただけでイ文字とロ文字を完璧に覚えて、ハ文字に関しても安心できるレベルまでしっかりと習得している。頭にくるけど、「国一の名医」の名は伊達じゃないってことネ)

 

「ウン。それだけ覚えられれば語学については問題なしかな。あとは、それを忘れないように……といってもそんな「天才医師」であられたドクターなら忘れるなんてこともにゃいと思うけど。んじゃ、今回の授業料としてドクターからのお礼が、フェリちゃんは欲しかったりするかなぁ〜?」

 

「何の礼だ?私の語学学習を余分に見ていたことに対するものへのか?」

 

「……一応、教えていたのは私にゃんだけど〜?」

 

「確かに基礎的な部分についての教授には素直に礼を述べよう。だが、その後の学習では、私はいらないと言ったはずだ。にも関わらず離れなかったのは、お前の方じゃないか?」

 

「あのネ〜、一応フェリちゃんは、ドクターのためって自分の時間を削って教えていたんだよネ〜。だ・か・ら、それ相応の言葉ってものがあるよネ〜」

 

フェリスはほれほれと言わんばかりにこちらへ明確なメッセージを送っていた。それにドクターは多少ゴネながらも、やがてしっかり向き合う。

 

「心から感謝しているぞ、女装騎士のフェリスくん」

 

「その「女装」っていう言葉次使ったらぶっ飛ばすから、ドクター。あ!でもフェリちゃん、ドクターからお礼の言葉を引き出せたから満足〜」

 

 

 

 

 

フェリスに散々弄られ、すっかり気分を害してしまったストレンジは王都に位置する王立中央図書館を訪れていた。

3つの文字をある程度識字できる事を可能にしたストレンジはこの世界の情報収集のため、王国一の蔵書数を誇る王立図書館書庫の文書を閲覧する許可をクルシュに取っていたのである。

イングランド中央銀行に似たドーリア式の佇まいである王立図書館には多くの市民たちが往来しており、その中には亜人達の姿も多く見かける。エントランスから1階受付へ直進したストレンジは早速、閲覧許可証を受付に提示し、直ちに書庫に通される。

流石は公爵家というべきだろうか、カルステン公爵家の関係者ということで、すぐに一般市民が入らないような厳重な書庫に通されたストレンジは次から次へと書物を手に取っては閲覧机に広げ、一冊ずつ読み進めていく。

 

カマー・タージではウォンが書庫を管理していたためか、中々書物を貸してもらえなかった経験があるストレンジとしては、初めて訪れた書庫にて条件付きであるとはいえ、ここまでスムーズに事が進んだ事に違和感を覚えずにはいられない。

 

(ウォンが此処にいればきっと喜んだだろうに……。奴は元気にしているだろうか。私が異世界に消えたことで、カマー・タージには大きなダメージを負わせている事に違いない。本当にカマー・タージ達の同志達には申し訳ない事をしている。

ーーそれに、「奴」が動き出す危険性もある。私が早く元のアースに戻らなければ、この世界にまで「奴」が影響を及ぼす事になりかねない)

 

 

 

ストレンジはウォン以下、カマー・タージやニューヨーク、ロンドン、香港に残した魔術師達の事を思い浮かべ、静かに心を痛める。

一刻も早く本来の世界に戻り、来たるべき戦乱である「永遠なる戦争」(インフィニティ・ウォー)に備えなければならない。

ストレンジは、元の世界に戻る為の鍵となりうる「大瀑布」や「魔女教」に関する書物を中心に読み進めていった。

 

(カララギ都市同盟国、ダイスキヤキ、ワフー建築、カララギ弁……この文化は日本と酷似しているではないか?それにこの「荒地のホーシン」、まるで現代の資本主義的価値観を持っているような商法を扱っている。

ーーどうやら、この世界に転移した存在は私だけではないようだ)

 

偶々手に取っていた国際政治に関する本を手に取ったストレンジはその中に記された記述に驚きつつも、新たに希望を持つこととなる。そして異世界転移した者たちに関する記述が後半に記されている。

 

(「世界の果て、大地が途切れ全てを押し流す水の奔流ー大瀑布の彼方からやってきた者が数年から数十年に一度の頻度で現れる」か。中世の世界地図の馬鹿馬鹿しい話ではあるが、ここは異世界だ。私があり得ないと考えている事が現実となる事もある。

ーー狭い鍵穴から見る世界が全てではない、その通りです。師よ)

 

その後も図書館内の蔵書を隈なく周り、片っ端から本を読み進めたストレンジは閉館時間ギリギリまで調査を行い、館員に半ば強制的に出される形で図書館を後にした。

 

その足で、少しばかり昨日お世話になったカドモンの青果店に赴き、リンガを5個ほど買ったストレンジは、買ったばかりの新鮮な果実を齧りながら今日の成果を振り返った。

 

(この世界の国々の動きや、建国の成り立ちについて詳しく知ることができた。それに、この世界へ転移した存在についての情報が得られたことが何よりも大きい。彼らの発言の中にある、大瀑布。世界の果てに存在する其処に行けば、元のアースへ帰還するためのヒントを得ることができるかもしれない。

ー流石に、インフニティ・ストーンに関しての情報は無かった。

この世界はまだ「奴」の脅威には晒されていない。だが、万が一に備えて準備は必要だな)

 

「『カララギ都市国家新書』、『ルグニカ王国歴史書』、『魔法属性教書 応用版』……これ、全部読む気?」

 

「あぁ。それも3冊を一週間でな」

 

クルシュ邸に帰宅したストレンジのテーブルに置かれているのは、厚さが30センチ程ある本3つ。ストレンジが図書館の蔵書を閲覧した際、興味を惹かれた分野を中心に書物を何冊か借りてきていたのだが、それらの本は図書館内に数ある蔵書の中でも読破に時間がかかり、アカデミーに籍を置く研究員が卒業論文作成に読み込むような本だった。

その本の内容と厚さにクルシュとフェリスは思わず、目を見張る。

 

「私が言うのも何だが……これを一週間で読むのは至難の技だ。それこそ睡眠、食事、排泄等の時間を削り、一日の全てをこの本を読むことに費やさなければ一週間で読破など不可能だぞ?」

 

クルシュの不安は最もであった。卒業論文のような価値ある論文を作成するために、半年以上かけて読む重要な資料を僅か一週間で読み終わるなど冗談でなければ狂気の沙汰と言っても過言ではない。

 

「心配はいらないとも。とっておきの方法があるのでね、アストラル体を使えば例え睡眠時であったとしても読み続ける事ができる。よく言われる、睡眠学習ってやつだ。効率が良いと言われる」

 

「アストラル、体?」

 

ストレンジの言葉に早速、首を傾げるフェリス。フェリスから自分の常識外の出来事を、常識に最も拘るであろうストレンジがスラスラ述べている事に驚愕していた。

 

「アストラル体は、肉体から放たれた精神体だ。君たちにも分かりやすく説明するとするならば、魂だな。ちなみに英語名はソウルともいう」

 

「まさか……魂を自らの肉体から弾き出して、魂のみの存在になっても、消えないどころか本を読む事ができるってわけ?そんにゃの、あり得ない!だって肉体から離れた魂は、行き場を失い消滅するはず!」

 

「おおっと。普段のおちゃらけたアイデンティティが消えているぞ、フェリス。常識というのは常に壊れる儚いものだ」

 

常識外れと切り捨てようとするフェリスをストレンジは軽く遇らう。

 

「お前は医者として鍵穴から世界を覗き、かつての私のように鍵穴を広げようともがいて来た筈だ。「もっと見たい。知りたい」と。そして今がその鍵穴を広げられるチャンスだというのに、理解を超えているからと受け入れを拒否している」

 

ストレンジの言葉は、フェリスの胸奥深くに突き刺さる。一方のストレンジは飄々とした面持ちを絶えさないでいた。彼はあくまでも、師匠の言葉を引用して圧を掛けていただけであり、フェリスが新たな領域に足を踏み入れるか見たかった意図もあった。しかし、動揺するフェリスには早すぎると考え、手元に置かれた本へと視線を移し作業を始める。

 

「ま、常識を疑い非常識を受け入れる準備ができたらいつでも声をかけてくれ。かつて私が受けた手荒い洗礼を、君にも味わせてやる」

 

どこか不敵に笑うストレンジに思わず、フェリスは背筋に鳥肌を立たせ震え上がった。

 




ロズワールの狂人っぷりが半端ない、何だありゃ!人間じゃねぇ!

そして最初のロズワールとエキドナのキスの色っぽさ///堪らんですなぁ〜

ドクターのタイム・ストーンってリゼロの『ゼロカラカサネルイセカイセイカツ』の様な幾千幾万の未来をいつでも見られるからドナドナ、ドクターにマジで身体を好きにして使っていいとか言いそう(変わりにストーンを好きに使わせてほしいとかの条件付きで。ロズワールの事なんかすっかり忘れてるかも)。
マジでインフィニティ・ウォーの1400万605通りの未来をエキドナが見たら、あまりの興奮に彼女、失禁しそう
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