あれから晩飯を作り、課題をやって寝た。次の日の日曜日も部屋でゴロゴロしながらアニメをみたり漫画を読んだりしていた。そして夕方サザエさんを見ながら明日は月曜で学校だ、という事実を噛み締めながら両親が帰ってきていたので母親が作った晩飯晩飯を食べた。やはり味付けは母親のほうがうまい。あの深い味がうまく再現できない。経験の差だろうか。そんなことを考えながら命の洗濯と言われる風呂に入ってスマホを小一時間いじってから布団にダイブし、そこで意識は途絶えた。
夜が明けて、まだ半分寝ぼけつつも朝飯をすまし支度を整え学校に向かう。やはり休みあけは辛い。まだ寝ていたいという気持ちがありなかなか布団から出ることができない。が、なんとかペダルを漕いで学校に向かう。朝学校までの通学中に一緒にしゃべるやつはいない。けっして友達がいないわけではない。ちゃんといる。が、みんな家が学校の反対側だったりと自宅から距離があるので一緒になれないだけだ。ホントだぞ?
教室に入り自分の席でカバンから教科書を出したりしていると前の席のやつが話かけてきた。
「おはよぅ長門君」
「おう、おはよ彼方」
こいつは彼方。俺とは席が前後でよくこうやっておしゃべりしたり昼に弁当を一緒に食ったりしているし、休日にはスマホのソシャゲでオンラインで対戦したりする仲だ。悪いやつではない。が、こいつは女に目がない。この前もかわいらしい先輩を見つけたかと思いきや速攻でアタックをかけ、後日告白したが見事玉砕したらしい。
「なぁなぁ長門、聞いてよ。今日さぁ、なんとこのクラスに転入生が来るらしいよ!」
「お~、まじ?」
「まじまじ。しかも噂によれば女の子らしいんですよこれが」
「また凸する気か?やめとけやめとけ。この前もあっさり敗北したばかりだろ」
「ふんっ!あれは向こうに人を見る目がなかったんだよ。僕の魅力に気づけなかったんだ。だか次こそは成功させてやる!」
と鼻息を荒くする彼方。大丈夫かこいつ。そんな会話をしていると教室に担任が入ってきた。うちの担任は特筆すべき特徴がないごく普通の先生だ。ロリだったり魔法を使えたりするのは漫画やラノベの世界だけだ。なんてつまらないんだよこの世界。
「それじゃぁ全員席に着け~。これから朝のホームルームを始めるが、その前に皆に転入生を紹介する。入ってきていいよ」
すると教室の前の扉がガラガラっと音をたてて開き、そこから転入生が入ってきた。彼方の言っていたとうり女の子だ。きれいな黒髪を左後ろで束ねスタスタと教卓前に立った彼女の顔を見た俺は小さく
「あ」
と呟いた。前の席の彼方から「どうした?」と声をかけられたが俺には聞こえていない。なぜなら、教卓の前に立っていたのが、
「本山 榛名です。父親の仕事の都合でこっちに引っ越してきました。みなさんと早く仲良くなれたらなと思います!よろしくお願いします!」ペコリ
榛名だったからだ。
「うぉーー!めちゃかわいい!」
「きゃー!見てみて髪超キレイじゃん!」
盛り上がるクラスメイトと一人困惑する俺。
「なぁ長門!あの子顔めっちゃかわいいしスタイル超いいじゃん!?後で話かけにいこうぜ?」
「お、おう」
「はい皆静かに。ホームルーム始めるぞぉ。本山さんの席はあそこの日国の横な。困ったことがあれば彼に聞くといい」
どうやら席は俺の横らしい。おれの隣の人以降後ろがみんな一人づつ後ろに下がっていたのはこれだったからか。すると榛名と目が合った。
「あぁ、長門だー!隣の席なんだね。今日からよろしくね!」
「お、おう…」
可愛くウインクしながら話かけてきた榛名にはこれしか返事ができなかった。なぜなら彼方を筆頭にクラス中の男子から今にも殺されそうな殺意の目を向けられたからだ。
「おい長門」
「お、おちつけ?彼方。これは…」
「どういう事だぁこれはぁ?なんでお前こんなかわいい子と知り合いなんだよ」
「そーだそーだ!」
「なぜ長門なんかが、、、」
「タヒねタヒねタヒねタヒねタヒねブツブツ」
もはや針のむしろ状態。あと誰だお経みたいなの唱えてるの怖ぇよ。
「おい、落ちつけってお前ら。これには訳が、、」
「「「問答無用!」」」
「ギャー!!」
一方…
「ねぇねぇ、本山さんはなんでうちの学校に転校してきたの?」
「好きな男子のタイプは?」
「前の学校で彼氏いた?」
と女子から聖徳太子もビックリな質問責めに合っている榛名。
この騒ぎは先生が注意しても収まらず、1限の授業が始まる頃にようやく終わった。俺に対する視線を除く。
「なぁ彼方よ、いいかげん機嫌を直してくれないか?」
「…」
現在は昼休み。みんな家で作った弁当やコンビニで買ったパンなどを囲んでいる。普段なら俺も彼方と弁当を食いながらスマホでゲームしたりしているが、今朝のことがあってから一言も口を聞いてくれない。
「ほんとに榛名とはなんにもないんだ。知り合ってから日も浅いし。まぁ友達、かな?」
「えっ!ひどい!私のことはお遊びだったのね!」
と、声をかけてきたのは榛名だ。手には二段重ね弁当を抱えている。
「おい榛名。この状況でその発言は火に油だぞ、まじ訂正しろ?いやホントお願いします、訂正してください」
「うふふ、ごめんなさい。彼方、君だっけ。ホントに私達には何もないから」
「ほんとか?」
「あぁ。ほんとだ。俺達の間には何もない。ただ知り合うのが少しはやかっただけだ」
「まぁ、それなら許そう。俺より先に長門に彼女ができるとかショックすぎだからなw」
「私も一緒に弁当食べていい?」
「それならそこの机も合体しようぜ。3人じゃちと狭い」
「なぁなぁ本山さんの弁当って自分で作ったの?」
「違うよ。お母さんがつくってくれたの」
そんな会話をしている俺たちの近くで一人、胸を撫で下ろす者がいた。
(あの子長門の彼女じゃないんだ、良かった、、、)