アンケートの回答、ありがとうございます。
私が寝る前は回答数が少ないながらいいえが多かったのですが、やっぱり圧倒的にはいが多かったですね。
でも未プレイの方も結構いました。他作品はプレイ済みの方も含めて、お勧めします。
喫茶ステラはいいぞ。
それと、既プレイの方は皆大好き、あの子の登場です。
「今思ったんだけどさ、お前週に何回シフト入ってんの?」
今日の分の講義が終わり、資料を片付けて席を立とうとしたときだった。俺の前の席に座っていた友人が振り返ってそう聞いてきたのは。
「六」
「六!?」
答えてやると、聞いてきた友人だけでなく、隣にいる昭久や他の友人達もまた、驚き目を見開いた。
「え…。じゃあ四季さんは?」
「六」
「超絶ブラック職場じゃねぇか!」
もう一つの問い掛けにも答えてやると、思い切り突っ込まれた。いやまあ、週六勤務なんて普通やらんわな。しかも大学生がそれをこなすとか、俺がそんな奴がいるって知ったらバカにしてるわ。
「でも、俺が望んでやってる事だし」
「M!」
「ノーマルのつもりなんだが」
マゾじゃない。断じてマゾじゃない。
「道理で最近ノリが悪いと思った。いや、前からノリ良くはなかったけど」
「あぁ。でも土日なんかは誘ったら基本OKだったもんな。今じゃ土日すら断られるし」
「…そこはスマンと思ってる」
突然どうしたと思ったら、最近彼らからの遊びや飲み会の誘いを断り続けていた事を心配されていたらしい。先週なんかはバイトではなくまた別の理由だったが、そこはこいつらに話せる内容ではないため置いといて、ステラでバイトを始めてからこいつらと遊びに出たりとかしていなかった。
店が定休日で休みでも、帰って惰眠を貪る生活をしてたし。そこを考えると、少し申し訳なさを覚える。
「本当に大丈夫か?何なら、俺達が店の責任者に文句言ってやろうか?」
「お前らの思い遣りに涙ちょちょ切れそうだけど、やめとけ。さっきも言ったけど、俺が望んでやってる事だから」
「…弱みでも握られてんの?」
「握られてない」
多分、店の責任者が四季さんだって知ったらこいつら掌返すんだろうな。是非こいつを扱き使ってやってくださいとか言って。それに、何度も言うが今の生活は俺が望んでしている事で、心配される謂れはない。勿論、友人の心配が嬉しくない訳ではないが、無用だ。
「ふーん…。まあ、柳がそれで良いなら別に良いけどよ」
「気持ちだけ有り難く受け取っとく」
鞄を持ち上げ、席を立つ。挨拶を交わしてから教室を出て廊下へ、階段を降りて建物から外へと出る。
「あ」
「あ?」
建物を出ると、声が掛かる。いや、正確には俺に声が掛かったかはこの時、判断つかなかったのだが。視界の端で立っていた女の子がこちらを見て声をあげたから、思わず振り返る。
「…四季さん?」
そこにいたのは四季さんだった。建物の入り口横で、誰かを待っていたかのように立っていた。
いや、事実待っていたのかもしれない。確か今日は四季さんの講義もこの時間帯で終わりの筈だ。これから店へ向かうという事を考えれば、もしかしたら。
「待ってたのか?」
「え?あ、えっと…」
単刀直入に聞いてみると、四季さんはあちこちと視線を彷徨わせてから、小さく頷いた。
「先に行ってて良かったのに」
「…柳君一人置いてくのもどうかと思ったのよ」
「学部別なんだし、気にしないぞ」
「私が気になっちゃったの」
何か似たような会話を最近した気がする。正確には朝にした気がする。ちょっとしたデジャブ。
四季さんが俺の隣まで来て、その流れで二人で歩き出す。
何か、あれだな。また噂が加速する気がする。朝、四季さんと一緒に大学に来た男が四季さんと並んで帰っていたとかいうおまけ付きで。
また盗撮されるんだろうか。というか、四季さんの方は大丈夫だっただろうか。
「あのさ。…聞かれた?」
「え?…あぁ」
唐突な俺の問いに一瞬呆けた顔をした四季さんだったが、すぐに合点がいったらしい。小さく苦笑いを浮かべてから口を開く。
「もしかして、柳君も?」
「尋問された」
「何があったの…?」
「いやまあ、こっちは事情を説明したらすぐに納得してくれたんだけどさ。四季さんの方はどうだったんだ」
「私の方は…。ちょっとうざい陽キャ共がね…」
そう言う四季さんの顔は苦笑いのまま、されどその表情から僅かな怒りが感じ取れた。
多分、悪口とかは言われなかったんだろうが、しつこく付き纏われたりしたのかもしれない。
「ただの友達だって言ってるのに…。友達なら俺とも一緒に大学行こうよとか…。アンタは友達でもなんでもないっつーの…」
「四季さん、堕ちてる。暗黒面に堕ちてる」
こんな風に怒りを露にする四季さんを初めて見た。表情に陰を落としながら愚痴る四季さんを軽く宥めてやる。
相当なストレスを感じているようだ。俺の方は知り合いも少ないし、四季さんが言うような陽キャが話しかけてくるタイプでもないため、四季さんよりだいぶマシだったらしい。
「あんな冴えない奴とか、微妙な男とか、柳君の事まで好き放題言ってくるし」
「おーっと?俺の陰口まで聞かされてんの?」
「あんな奴より俺と一緒にいた方が~とか、天地が引っくり返ってもアンタと付き合うなんてあり得ない」
「俺と四季さんは別に付き合ってないけどな」
何だろう、四季さん自身に言われた言葉よりも四季さんを通して俺に向けられた悪口を語る時の方が声に籠った怒りが強い気がする。
「…あのさ。朝から今までで俺と四季さんについての噂ってかなり広まってそうだよな」
「そうね」
「でさ、帰りもこうして一緒にいる訳だし、多分明日はもっと広まってると思うんだよ」
「…そうかもね」
四季さんの顔がうんざりだと、声に出さずとも語っていた。
「だからさ、今はもう仕方ないとしても、少し距離置かね?」
「え?」
俺がそう言うと、四季さんは驚いたように目を丸くして俺を見上げた。
「だってさ。多分明日、また四季さん絡まれるぞ?何度も何度も同じ質問受けて、聞きたくもない話聞かされて、相当ストレス溜まるぞ?」
「…」
「ほとぼり冷めるまで、人前で話したりとかしない方が良いんじゃね?」
俺の方は良い。四季さんに絡んでくる陽キャは俺じゃなく昭久の方に話を聞こうとするだろうし、俺と親交がある友人には今日の話で納得してくれた。明日も、今の件については職場まで一緒に行っただけだろうと言わずとも思い至ってくれる筈だ。
だが、四季さんの方はどうだろうか。物分かりが良い人達ばかりならば良いのだが、そうじゃない人だって当然いる。四季さんに絡んだ人達の中に、そういう、所謂阿呆はいないのだろうか。
もしいたら、きっと明日も四季さんにしつこく絡む。そういった事を防ぐために、俺はこの提案をしてみた。
「…」
四季さんは黙り込む。何かを考える素振りを見せて数秒、再びこちらを見上げて口を開いた。
「柳君はどうなの?私と一緒にいる事で、今日は質問責めになったんでしょう?これから変わらない距離感で付き合ったとして、もしかしたら柳君も絡まれるかもしれない。それは、嫌?」
質問を質問で返された。ただ、この質問に対する返答が、四季さんが答えを出す後押しになるのなら、それも構わない。
「俺は別にどうでもいい。それに、俺に話を聞きに来る奴は四季さんより少ないだろうし」
「…どうでもいい?」
「どうでもいい」
「そう」
俺の答えは四季さんにどう響いたのだろう。分からないが、四季さんはどこか吹っ切れたように見えた。
「私も同じよ」
四季さんは俺の方を見上げ、微笑みながらそう言い切った。
「どうでもいいもの。周りが何を言おうが。周りを気にして、友達との時間が減る方がもっと嫌」
俺の前に出て、足を振り上げて大袈裟に歩きながら四季さんが続ける。
そして、四季さんは俺の前で立ち止まり、振り返ってから微笑んだまま言う。
「だから、柳君とは距離置かない。今のまま、付き合って貰うから」
「…四季さんが良いんなら」
四季さんの笑顔はどこか幼く見えて、つい俺までつられて笑みが溢れてしまう。
四季さんが嫌がると思って提案したのだが、そんな風に言われたら何も言えなくなる。
「─────?」
しかし、何故だろう。普通に嬉しい筈なのに、感情の中で、何かが引っ掛かっている。正体は分からない。ただ、こう、喉に小骨が引っ掛かったような。
「ほら、どうしたの?早く行かないと」
「ん、あぁ」
四季さんに促されて再び歩き出す。店の近くまで来ていたから、ここから数分と経たずに店まで着いた。
表の入り口には行列が、という訳ではないが、丁度俺達が来た時、同年代と思われる女性グループが店の中へと入っていった。
平日ながら、それなりにお客さんは入ってきてると思われる。
「ねぇ、柳君。あの子…」
「ん?」
四季さんに肩を叩かれ振り向くと、四季さんは表の入り口ではなくそこから少しずれた所、店の窓から店内を覗き込む女の子を見ていた。四、五歳程だろうか?かなり幼く見えるが、周りに親と思わしき大人の姿は見えない。
親が店で買い物をしているのを外で待っているのか、それとも一人で来ているのか。どちらにしても、放っておきづらい場面に出会した。
「…ねぇ」
「っ」
俺が話しかけたら事案になったりしないか、通報されたりしないだろうか、と悩んでいる間に、四季さんが女の子に歩み寄って、女の子の隣で中腰になると、声をかけた。
店内を見る事に集中していた女の子は四季さんの接近に気付いていなかったのか、声を掛けられると体をびくりと震わせて、驚いた様子を見せた。
「あぅ…」
「あぁ、ごめんね?ビックリさせちゃって。でも、お店の中をじっと見て、どうしたのかなって思って」
四季さんは女の子に驚かせてしまった事を謝罪してから、何をしているのかを問い掛ける。
女の子は四季さんの姿を、そして後ろに立っている俺を不安げに見上げ、何も言えないでいる。
さて、俺はここで待つべきだろうか。それとも女の子に歩み寄るか、はたまた二人を置いて店の中に入るか。
女の子に歩み寄るのは論外。もっと不安にさせるだろう。ここで待っているのも果たしてどうか。女の子は俺を警戒している様だし、それなら先に店の中に入るべきか。
後で四季さんに文句を言われそうだが、女の子のためだ。甘んじて受け入れよう。
という事で、俺は裏口の方へと足を向けて─────
「柳君?何してるの、こっちに来て」
「…」
四季さんに呼ばれてしまった。裏口の方に向けた足を四季さん達の方へと戻し、何も言わずに二人に歩み寄る。
俺が近付く程に、女の子が縮こまっていくのは気のせいだろうか。
俺は子供に怖がられた事にちょっとした寂しさを覚えながら、女の子の前でしゃがみこんで声を掛ける。
「こんにちは」
「…こんにちは」
「ワイチュウ、食べる?」
「ママが知らない人にモノをもらっちゃだめっていってた」
「おーう、しっかりしてんなこいつ」
鞄のポケットからおやつを取り出し、女の子に見せると、思いも寄らない返され方をした。
この子もこの子の親もしっかりしてるな。お兄ちゃん、普通に安心したぞ。断られた身だけど。
「え…。それ、持ち歩いてるの?幼女に出会った時のために?…おまわりさーん」
「事案にすんな。今日たまたま持ってただけだ」
「おにいさん、誘拐犯?」
「違う」
キョトンとした顔で聞いてくる女の子に即座に否定する。
「それで、どうしたんだい?一人みたいだけど、お母さんは?」
「ユイナはね、ひとりで来たの」
「一人で?」
一人で来たと言った女の子に四季さんが聞き返した。
それと、女の子の名前はユイナというらしい。字は分からないが。
「ユイナちゃんは、どうしてここに来たのかな?」
「あのね?ユイナはね?…おねえちゃん、どうしてユイナのお名前しってるの?」
「え?」
「おねえちゃんも誘拐犯なの?」
「ちょっ、ちがっ…!」
「いち、いち、ぜろっと…」
「柳君!スマホを出さないで!」
ありがとう、ユイナちゃん。君のお陰で四季さんに仕返しが出来たよ。その報奨として、君のお願い事を一つ叶えてやろう。
そんなちょっとした神様の気分で俺はユイナちゃんに声を掛ける。
「それで、どうしてここに一人で来たのかな?」
「そうだった!あのね?ユイナはね、パパのすきなケーキをさがしてるの」
「ケーキ?」
まあ、この店に来る目的としては妥当な所だが。色々疑問はある。どうしてそのケーキをこの子一人で探しているのか。そして何より、探しているケーキとは何なのか。
「ユイナちゃん。そのケーキって、どんなのかな?」
「…ユイナのお名前」
「えっと、それはユイナちゃんが自分で言ったからなんだけど…」
「…?」
四季さんが再び口を開く。ユイナちゃんが警戒心を露に、こちらの方に、四季さんから逃げるように寄ってくる。
まあ、四季さんが言ったように、名前を知っているのはユイナちゃんの一人称が自分の名前だからなのだが。
しかしそれを指摘されても、ユイナちゃんの歳では理解しきれなかったようで、首を傾げている。
「ユイナちゃん。俺とこの人はこのお店で働いてるんだ」
「!ほんとう!?」
「あぁ。だから、ユイナちゃんが欲しいケーキを探すのに協力できる。だから、そのケーキについて教えてくれないかな?」
「うん!」
「…私と柳君と、対応がまるで違う」
この子、歳の割にしっかりしてるからな。四季さんは初動を間違えてしまった。いじけている所悪いけど、放っておかせてもらう。
「じゃあ、一回お店に入ろうか。ほら、四季さんも」
「ぐむむむむむ…!」
話をするにしても、外では立ち話になるだろうし、一回店に入ってこの子を座らせる事にする。
ユイナちゃんと悔しがる四季さんと一緒に、裏口からではなく表の入り口から店に入るのだった。
ナツメさん、幼女に嫌われるの巻