原作以上に四季さんがポンコツになるお話。
というかポンコツ過ぎる気がする。もしかしたら消して書き直すかもしれない。
~Another View~
「…はぁ~」
「四季さん、どうかした?今日は元気ないみたいだけど…」
「もしかして、体調悪い?」
大学の食堂で昼食をとっている最中、私はとある人物の背中を見ながら溜め息を吐いてしまう。
その様子を見た、席を一緒にする友人が心配げに声を掛けてくれる。
「うぅん、大丈夫。そういうのじゃないから、安心して」
心配してくれる彼女達に、努めて笑顔を浮かべながら返事をする。
上手く笑顔を浮かべられているかは分からないけど…。
心の隅でそんな事を思いながら、さっきまで見ていた人の背中を、ここでご飯を食べている途中で見つけた人の背中をもう一度見る。
その人は前に顔を合わせたその人の友人…草野君、だった筈。彼と二人でご飯を食べている。何やら話している様子だけど、一体何の話をしているんだろう。
ここからではその人の顔は見えないけど、正面に座っている草野君の表情は真剣で、その人の話に耳を傾けているように思える。
「でも四季さん。さっきも言ったけど、朝から元気ないよ?」
「もしかして、何か悩んでる?」
「─────」
私がその人の後ろ姿を見つめていると、そう声を掛けられる。
そんなにも今の私は分かりやすいだろうか。…うぅん、分かりやすいんだろうな。自分でもそう思えてしまうほど、私が抱えている悩みは私にとって大きいものらしい。
「悩み…。もしかして、恋の悩みとか?」
「っ─────」
「いやぁ、それは流石に…え?」
「え…、マジ?」
突拍子もなく図星を突かれて思わず息を飲んでしまう。そして、そんな私の仕草を見て固まる友人達。
「い、いや、ちがっ…」
どうしてここでどもってしまうのか。普通に違うと言い切れていたら、まだ誤魔化しようがあったのに。
これが止めとなり、確信を得たのか二人の顔が一気に朗らかになる。
「うそっ、四季さん、好きな人いるの!?」
「誰?どんな人?どこで会ったの!?」
「ち、ちょっと、声が大きい…!」
私の声は届き、二人はハッと我に返って落ち着きを取り戻す。しかし一度上がったテンションを鎮めるまでには至らず、私の方に寄せられた二人の顔は笑ったままだった。
「で?で?どうなの?」
「…い、いる」
「「きゃあああああああああああ」」
もうこれは逃げられない。観念して、短くそう答えると、二人の歓声があがる。
「だから、声が大きいっ」
「ごめんごめん。それで?どんな人なの?どこでその人と会ったの?」
「…その人は、私が働いてるお店でバイトしてて、会ったのはそこ。それで…どんな人と聞かれても…。少しぶっきらぼうで、不器用で…、でも、私達の事をよく見てて、困ってたらすぐ手を差し伸べてくれて…」
「「おぉ~…」」
私はどうしてこんな辱しめを受けているんだろう。どうしてこんな事になってしまったんだろう。
顔が熱い。というより全身が火照ってる。耳まで真っ赤になっているのが見えなくとも分かる。
「ベタ惚れじゃん」
「もしかして、これが初恋?」
「…」
「「おぉ~…」」
初恋かという質問に何も言わず、ただ頷いて肯定すると再び小さな歓声があがる。
あぁもうやめて…。帰りたい…誰か助けて…!
「…ねぇ、四季さんの好きな人ってもしかして、前から噂になってる」
「っ…」
「あっ、私、前にその人と四季さんが二人で歩いてる所見たよ。距離感近くて、付き合ってるって噂も信じちゃいそうだったけど…。四季さん?」
「…」
更に何もヒントも与えていないのに相手まで当てられてしまう。あぁ、どうしてここで誤魔化せないんだろう。本当、最近の私は柳君の事になるとすぐに平静でいられなくなってしまう。
二人は私の様子を見て察したのだろう。二人の目が見開いていく。
「え、え!?本当に!?」
「でも、噂は違うって言ってたよね?…もしかして、今は本当になってるとか?」
「今も付き合ってない…。それに、噂が流れた時点だと好きにもなってなかった。…と思う」
正直自信はない。だって、私は自覚がないまま柳君の事を好きになっていたのだから。もしかしたら、噂が流れ始めたその時点から、私は柳君の事を好きになっていたのかもしれない。
今その事について考えても、どうしようもない事だけど。
「…ねぇ、なんか」
「うん。四季さん、可愛い」
「…?」
二人が顔を寄せて小声で何かを話している。食堂内の大勢の話し声に紛れて私には聞こえてこない。でも、私を見ながら話している所を見ると、話題は多分私について。
それに、ここまでの話の流れから察するに、その話に関する事。
「…なに?」
「いや、別に」
「何でもないよー」
「…」
にっこり笑いながら言う二人にスッキリしない私だけど、ここで深く掘り下げてもきっと、ダメージを受けるのは私だ。
それならこのスッキリしない気持ちを抱き続ける事になろうとも、ここはスルーするべきかもしれない。
「それより、四季さんはこれからどうするの?告白はいつの予定?」
「こっ…!?」
いきなりのどストレートな質問に言葉を失う。
告白って…、告白ってっ。
そんな事、出来る訳ない。大体、顔を合わせる事すら難しい現状で告白なんて…、やっぱり無理っ。
「で、できない」
「え、なんで?」
「だって…。顔を合わせるだけでも恥ずかしくて逃げちゃうのに…。告白なんて…っ」
「…四季さんって、意外と初心なんだね」
「うぅ…」
私も最近の自分を見ていて驚いている。今まで、今の私と似たような事になっている人は見た事がある。それを見て、恋をするとこういう風になる人もいるんだなと思いつつ、私がこうなるとは微塵も考えなかった。
まさか、私のキャラからは考えられないこんな事になるなんて…、全部柳君のせいだ…!
「っ!」
「ん?どうした?」
「いや…、何でもない。…?」
~Another View~
「でも、そっかぁ…。もしかし…なくても、最近恋心を自覚した感じだよね。じゃあ、まだ告白は難しいか」
「いやでも、もうすぐクリスマスだよ?これってチャンスじゃない?」
「確かに…。四季さんに誘われて断る男なんていないだろうし…。クリスマスにデートに誘って、そこで一気に押してけば」
「完璧」
「完璧じゃないっ」
その作戦のどこが完璧なのか。まず私に誘われて断る男なんていない、の所がおかしい。そしてクリスマスにデートに誘う、この時点で私には難しい。大体、クリスマスはお店が忙しくなるだろうし、勝手な都合で抜けられない。
最後に、一気に押してくって何。押すって、誰を。そんな積極的にいけるなら、私もこんなに悩んでない。
「まあ告白するかしないかは置いといて…、四季さんも、今のままで良いとは思ってないんでしょ?」
「…」
その問い掛けに頷いて答える。
今、柳君とほとんど喋れていない現状と、今の関係よりも一歩進んだ関係になりたいという二重の意味で、私はその問い掛けを肯定した。
何も言わず頷いただけだから、そこまで相手に伝わったかは分からない。けれど、私の返答を受け取った二人は一度目を見合わせてから、私を見る。
「ならまずは、逃げない事から始めないとね。といっても、初恋だからな~…。気持ちは分からないでもない」
「でも、多分四季さんの好きな男の人も戸惑ってると思うから、恥ずかしくても我慢しないと」
その言葉は尤もだ。柳君からすれば、突然、何の切っ掛けもなく私に逃げられているのだから、戸惑わない筈がない。
「その人からは話しかけてこないの?」
「…来る。でも…」
「あー…。四季さん、それはちょっと急がないとダメかも」
「え?」
「四季さんに嫌われてる、って思われるかもしれない」
そう言われた瞬間ドキリとする。しかし考えてみれば当然だ。今まで普通に友人として付き合ってきた相手に突然避けられる。話し掛けようとしても逃げられる。
私だって、誰かにそんな事をされたら、嫌われてるのだろうかと疑いを持つに決まってる。
「ちょっと時間を掛けて、と思ってたけどダメだね。勇気を出して、今日話しかけないと」
「話しかけるって言われても…、どうすれば…」
「今まで通りで良いんだよ。嫌われてる訳じゃないって分かって貰うだけでいいんだから」
今まで通り。今まで、私は柳君とどういう風に話していたんだろう。仕事が終わって一緒に帰っている時、私は何を話していたっけ?お店から一緒に大学に行く途中、私は何を話していたっけ?
…あれ、本当にどんな話をしていたんだろう。というより、今まで通りって何だっけ。…あれ?
「…四季さん、大丈夫?」
「…大丈夫じゃないかも」
かも、じゃない。本当に大丈夫じゃない。どうすればいいのか全く分からない。私は今までどうやって柳君と話していたんだろう。
出来る事なら、過去の私に教えてほしいくらいだ。
「でも、勇気を持つしかないよ」
「…勇気」
「恋をしてきた女の子達皆が通る道だよ!」
勇気を持つしかない、か。実際その通りで、現状を変えるには、今の関係から一歩進むには私から行動を起こすしかない。
なら彼女の言う通り、勇気を持つしかないのだ。
「…っ」
決意を固める。そう、勇気を持つのだ。話し掛けるくらいで怖じ気づいてどうする。
今もなお後ろを向こうとする心を叱咤して、私はその背中に目を向ける。
直後、キョロキョロと周囲を見回す彼、柳君は食事を終えるその時まで私の存在に気付かなかった。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛…、づがれだぁ…」
オッサン臭い声を出しながら涼音さんが大きく全身を伸ばし、体をほぐす。今日の涼音さんはクリスマス限定でメニューとして出すブッシュ・ド・ノエルの練習をしながらも通常の勤務を熟すというハードスケジュールを強いられた。というのも、今日から墨染さんと火打谷さんが中間試験までバイトを休む事となった。
一応店には来ているのだが、フロアには出ず、休憩室で四季さんに勉強を見て貰っていた。
四季さんもずっと二人の勉強を見ていた訳ではないのだが、それでも一度にほぼ三人がフロアから抜けるとなるとかなりきついものがある。だから、高嶺には臨時でフロアに出て貰って、キッチン作業は俺と涼音さんの二人で熟す事となった。
だが涼音さんにはクリスマスに向けての準備がある。かといって、そこに集中されると俺の手が回らなくなる。その結果、先程言ったハードスケジュールとなったのだ。
「オッサン臭いですよ涼音さん」
「うっさい、黙れ」
涼音さんにオッサン臭いと言ったのは俺ではない。掃除の時間はキッチンにいた高嶺が涼音さんにデリカシー皆無の台詞を吐いた。
涼音さんが力なく高嶺を睨む。流石に疲れきっている様だ。これから一週間、特に混雑する土日は大丈夫なんだろうか。…何か対策しなきゃいけないかもしれない。
「あー…、今日はビール二杯飲も…」
涼音さんが小さく呟く。掃除は終わり、後は着替えて帰るだけだ。
だけ、なのだが。
「…なぁ、柳。あれ、隠れてるつもりなのかな?」
「知らん」
キッチンの入り口の影に隠れている…つもりらしい。時折顔を覗かせ、すぐに隠れる。しかし、微妙に隠しきれていない、黒く長い髪の先が覗く。
「ナツメさん?何してるの?」
「っ!?」
どうするのが正解か悩んでいた俺と高嶺とは違い、たった今その人の存在に気付いた涼音さんが即座に声をかけた。
奥からガタン、と物音が聞こえてくる。まさか、コケた?いや流石にそれはないか。
ない、よな?
「…」
物音がしてから少し経った後、モジモジしながら四季さんが姿を現す。
厨房にいる誰を見てる訳でもなく、四季さんは視線を彷徨わせてから、やがて俺の方を見た。
「─────」
久しぶりに四季さんから視線を向けてきた気がする。四季さんが避けるようになってからも、何度か顔を合わせ、目を合わせてきた。だがそれは全部俺からで、しかもすぐに四季さんから目を逸らされてきた。
だから、こうして四季さんから俺の方を見たのは久しく感じる。
「…柳君は今日、用事とかある?」
「用事?…帰りにスーパー寄ろうと思ってる」
四季さんが目を丸くする。え、俺が買い物するのって意外なの?それとも俺がスーパー行くのが意外なのか?何故に?
~Another View~
─────え、どうしよう。用事ないって答えた柳君に一緒に帰ろうって誘いを掛ける予定だったのに…。まさかの最初で躓くって。え、本当にどうしよう…!?…うぅん、待って。これはもしかしたらチャンスかもしれない。まずは、柳君に何の買い物をするか聞いて…。
何だろう、四季さんが固まってしまった。本当にどうしたんだ。俺に何か言いたそうな感じだったけど…、え、これもしかして、俺間違えた?用事ないって答えるべきだったのか?いやでも、割と本気で買い物行かなきゃいけないし。買い物行くの忘れてて、今冷蔵庫の中空だし。
一応カップ麺があるから買い物行かなくても今日の夜は何とかなる。でも明日の朝がどうにもならない。
…仕事に行く途中でコンビニ寄って、サンドイッチでも買うか?
「スーパーで買うのって、夕飯の材料とか?」
「ん?まあ、それもある」
考えていると、四季さんがそんな事を聞いてきた。四季さんの言った事は一部その通りだったから、頷いて肯定する。
夕飯の材料なのはそうだが、それは今日ではなく明日だ。今から買い物に行って、それで夕飯を作る元気はない。今日の夕飯はカップ麺で決まりだ。
俺が下らない事を考えている最中、四季さんは考え込む所作を見せる。…本当、さっきからどうしたのだろうか。
今度はすぐに顔を上げる四季さん。そして、四季さんは俺を真っ直ぐに見て、口を開いた。
「それなら、一緒にご飯食べない?」
「一緒に?…いいけど、どこに食べに行く?」
「んー…。私の部屋か、柳君の部屋か…。そうだ、柳君って何か食べたいものとかある?」
「…は?」
「え?」
今まで生きてきた中で一番間抜けな声が漏れたと思う。途徹もなく話が食い違ってる気がする。
四季さんの部屋か俺の部屋かって、何の話だ。俺は今、どこにご飯を食べに行くか聞いたよな?なのに何でその答えが四季さんの部屋か俺の部屋かになるんだ?
…分からない。全く分からないが、それでも一つだけハッキリしている事がある。
それは先程漏れた声と同様、俺の顔もかなり間抜けな顔になっている、という事だ。
~Another View~
「…は?」
「え?」
柳君の目が丸くなる。いつもは引き締まっている唇があんぐりと丸く開く。
どうして柳君がこんな顔になるのか分からなくて、私も柳君と同じ様に声を漏らした。だけど、すぐに暴走気味だった思考が冷静になり、我に返る。同時に、私は自分がとんでもない言葉を口にしたのを自覚する。
柳君がスーパーに買い物に行くならそれはチャンスだと私は思った。私や柳君の部屋なら二人になれるし、ゆっくり話が出来る。そうすれば、もしかしたら距離を縮める事が出来るかもしれないし、何より最低でも私が柳君を嫌っている訳ではない証明にはなる。
嫌いな人の部屋に行ったり、嫌いな人を部屋に招く筈がないと、柳君なら考えが至ると、そう思った。
でも、冷静になった今の私なら、先程の発言のとんでもなさを理解できてしまう。そんな話の流れじゃないにも関わらず、突然異性が自分の家に来てご飯を作っていく。普通に考えてあり得ない。私が柳君の立場なら正直引く。たとえ、それがそれなりに仲の良い友人相手だったとしても。
「あっ、その…!今のはちがっ…」
「はいはーい、お邪魔虫は退散しまーす」
「まーす」
「す、涼音さんっ、高嶺君っ!」
私の発言を聞いて、柳君と一緒に驚き固まっていた涼音さんと高嶺君が先に復活し、我先にと厨房を出ていってしまう。
よって、この場に残されたのは私と柳君の二人だけになってしまった。まだフロアに明月さんと閣下がいるけど、さっき涼音さんと高嶺君は休憩室ではなくフロアの方に行っていた。多分今頃、厨房の方には行かないよう二人に忠告している。
つまり、助けは期待できない。私の力だけでこの状況を何とかするしかないのだ。
「えっと、そのっ…、き、急に変な事言ってごめんなさいっ。忘れていいからっ」
とにかくまずは謝る。そして忘れて貰う。さっきの台詞をなかった事にして貰う。出来るのはこれだけだった。
だって、あまりにもおかしすぎる。柳君も、あんな事を口走った私を変に思っているに決まっている。
そう、思っていたのに。
「え、やだ」
「へ?」
またも間抜けな声が私の口から漏れる。無意識に俯いていた顔が上がり、柳君の顔が見えるようになる。
柳君はじっと私の顔を見ていて、そしてゆっくりと口を開いた。
「普通に四季さんの手料理食べてみたいんだけど。今日はカップ麺で飯済ませる予定だったから、作ってくれるんなら有難い」
柳君のその言葉は、私が全く想定していなかったものだった。
四季さんの手料理の話が…書きたかったんや…。
でも、流石にキャラ崩壊しすぎ、や、流れが強引すぎるという指摘がたくさん来たら話を書き直します。
なので、感想待ってます。出来るだけ優しい言い方でご指摘お願いします…m(_ _)m