喫茶ステラと死神の蝶と見える人   作:もう何も辛くない

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第七十八話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という事でミカド。どうしたらいいと思う」

 

「いきなり他力本願とは良い度胸だな貴様は」

 

 ステラのバックルームにて俺、ナツメ、ミカド、高嶺、明月さんが集まってテーブルを囲む。

 俺達が囲んだテーブルの上にちょこんと猫の姿で立つミカドに単刀直入に問い掛けると、じとめで睨まれながらきつい返答を受ける事になった。

 

「いや、マジでどうすりゃいいか分からないし。ここは他の人の意見を聞きながら考えようと」

 

「期間は三日だぞ。そんな暇はない。…といっても、だから何をしようという考えは我輩にも浮かばんのだが」

 

 結論として、ミカドもどうするべきか分かりかねている様子。

 

 昨日、俺達は赤い蝶、()()さんから生前の話を聞き、彼女とあの男神、そして朔夜さんの因縁を知った。

 

『私は朔夜様に殺され、絶望してしまったあの方は朔夜様に牙を剥きました』

 

 はつさんが命を散らした後、男神は朔夜さんに襲いかかったという。しかし結果は返り討ちに遭い、酷い傷を負って逃走するしかなかった。

 逃げた男神を朔夜さんは追わず、以降も特に干渉はしなかったという。その間に欠け替えのない存在を失くした男神は絶望と怒りを強くし、やがて邪に墜ちていった。

 

『私は…。朔夜様の言う通り、あの方と再び会いたい。朔夜様への仇を討ちたい。…ですがそれ以上に、娘の名を思い出したいのです』

 

 一通り神と人間、三つの存在の因縁を語り終えたはつさんは自身の願いを語った。

 娘の名前を思い出したい。

 

 彼女が過去を語る中で、確かに娘の名前を口にする事はなかった。

 

『蝶として現世にすがり付いた当初は朔夜様が憎かった。あの方とお会いしたくて仕方なかった。…今もそれは変わりませんがそれ以上に、三百年の間に憎しみと渇望に飲まれて失ってしまったあの子の名前を取り戻したい。それが、今の私の一番の願いです』

 

 そう言い残して、はつさんは姿を消した。

 娘の名前を思い出す。そんな願いを俺達に託して。

 

 そして託された願いを叶えるべく行動を開始、といきたい所なのだが、何をするべきか分からずこの場にて話し合いと相成った。

 本来営業日であるお店を臨時休業して、今回の件の解決を図っていた。

 しかし話し合いにすらならない。何しろ全員、どうすればはつさんの願いを叶えられるのか分からないのだから。

 

「…時間があれば神社で調べてみよう、って話になるんですけどね」

 

 はつさんがあの場所から動かないのはその場所に縁があるから。つまり、今神社がある周辺ではつさんは生きており、そして亡くなった。

 可能性は低いが、神同士による事件なのだから文献が残っているかもしれない。神社で手掛かりを探してみるのも一つの手だ。

 

 三日というタイムリミットがなければの話だが─────

 

「でも、こうしてただ話し合うだけって訳にもいかないし…。行ってみない?」

 

 ナツメが言う。

 

 確かに、時間が残されていない中で何も行動を起こさず、話し合うだけのこの時間が勿体ないというのは一理ある。

 それならば─────可能性は低くとも行動を起こすべきなのかもしれない。

 

「そうだな…。行ってみるか」

 

 まずは何かしら行動を起こす。以上で意見が合致して、この場での話し合いは終了する。

 俺、ナツメ、高嶺、明月さんの四人で店を出て墨染神社へと向かう。

 

 昨日、朔夜さんを先頭に歩いた道と同じ道。道中、時折ナツメ達が空を見上げる事があった。

 俺も眼鏡を外して晴れ渡った青空を見上げる。昨日の夜と違って、見上げた先に蝶の群れが見える事はなかった。

 

 違うのはそれだけではない。これは昨日と比べてではなく普段、いつもと比べてなのだが人通りが少ない。

 墨染神社は街の中心部に近い場所に位置しているため、道中はそれなりに多くの人が行き交っているのだが今日は違う。

 原因は一つ、容易に考えられる。男神によって引き起こされている行方不明事件だ。被害者が多くなり、住民の危機感が募っているのだろう。

 

 お店の臨時休業に踏み切れたのもその点が関わっている。恐らくお客さんの数は少なくなるだろうし、第一神に狙われているという人間が何人も集まる店なんて危険以外の何物でもない。

 

「あれ、昂晴君?」

 

 境内周辺、鳥居も見えて来た所。鳥居の前で巫女服を着た女性が掃き掃除をしていた。

 その人は歩く俺達を見て目を見開き驚きながら口を開いた。

 

「栞那さんにナツメさん、千尋さんも。どうしたんですか?こんな所で」

 

 高嶺と一緒にいる俺達にも気付き、更に驚いている様子の巫女服姿の女性。

 

「自分家で管理してる神社をこんな所とか言ってやるなよ、希…」

 

「あははー」

 

 巫女服姿の女性、墨染さんは高嶺のツッコミを笑いながら聞き流す。

 

「それで?さっきも聞いたけど、どうしたの?家に用事?」

 

「あ、あぁ…。ちょっと調べものをしたくて」

 

「調べもの?」

 

「希。ここの神社の過去というか…、神社が建てられる前とかそういう歴史の資料って置いてあったりするか?」

 

 首を傾げる墨染さんに高嶺が問い掛ける。

 墨染さんは目を丸くして、戸惑いが更に強くなった様だが小さく考える仕草を見せながら口を開く。

 

「倉庫にそういうのあるかな…。あったとしても、お父さんに入っていいか聞いてみないと」

 

「そうか。おじさんは今どこにいる?」

 

 当然といえば当然だが、たとえ神社の娘とはいえ無断で他人を内部に案内は出来ない。

 幸い、昔の文献等の資料があるかもしれないという場所に心当たりはある様で、そこに俺達を入れて良いのかを墨染さんのお父さんに確認をとりに行く。

 

「いいけど…。どうしたんだい?うちの歴史について調べたいだなんて」

 

 墨染さんは境内周辺の掃除をしていたが、墨染さんのお父さんは境内の掃除をしていた。

 掃除を続ける父に墨染さんが話しかけ、俺達を神社の内部に入れていいか確認をとる。

 

 結果、あっさりと許可を貰えたは良いが墨染さんのお父さんが理由を聞いてきた。

 そして、墨染さんもまたお父さんと一緒にこちらを向く。こちらを見る視線には俺達を窺う色が浮かんでいた。

 

 墨染さんがお父さんとの橋渡しをしてくれたが、彼女にもまだ俺達は事情を説明していない。

 しかし、正直に事情を説明する訳にもいかない。たとえ説明したとしても信じてくれる筈もない。

 そうなれば誤魔化すしかないのだが、その材料を俺は持ち合わせていない。高嶺と明月さんも同じらしく、二人は顔を見合わせて困った顔を浮かべていた。

 

「…いや、詮索はよそう。別に悪い事を企んでる訳ではないんだろう?」

 

「それは、はい。勿論です」

 

「ならいいさ。希、案内してあげなさい」

 

 墨染さんのお父さんは深く追求はしてこなかった。

 違和感はあっただろうに。疑念を抱いただろうに。それでも高嶺と俺達を信じてくれた。

 

「ありがとうございますっ」

 

 高嶺がお礼を言ってから頭を下げ、続いて俺達も同じ様に頭を下げる。

 墨染さんのお父さんは微笑みながら気にしなくていい、と手を振り、そのまま掃除の続きをしに行ってしまった。

 

 俺達も墨染さんの案内で過去の文献や資料が保管されているという倉庫に向かう。

 

「私ここに入るのは初めてなんだよね…。うぅ、埃っぽい…」

 

 案内されたのは本殿から少し離れた大きめの木造の納屋。南京錠を外して扉を開け、墨染さんを先頭に中へと入る。

 墨染さんの言う通り、中はかなり埃っぽかった。内心マスクが欲しいと思う程には。

 

「倉庫…という割には物が少ないですね」

 

「前まではここに置いていた道具があったんですけど、今は見ての通りです」

 

 墨染さんとそのお父さんはここを倉庫と呼んでいたが、明月さんの言う通り中には物は殆ど保管されていなかった。

 入口付近に三本の、もう長年使われていない様に見える竹箒が立て掛けられているだけ。後は中に入った俺達を囲む様に置かれた棚の中にある、大量の本や紙。

 

「随分たくさんあるわね…。これは一日で調べ切れないかも…」

 

「あぁ、別にこれ全部が資料って訳じゃなくて…確かここら辺が…」

 

 棚にびっしりと保管されている大量の本と紙。これら全てを調べるのは骨が折れそうだと思いきやそういう訳ではないらしく、墨染さんは右側の棚に手を伸ばし、一冊の本をとるとパラパラと頁を捲る。

 

「うん、これこれ。ここの棚にあるのが、皆さんのお目当ての過去の文献と資料です」

 

 手に取った本が自身の目的の物だと確認した墨染さんが振り返り、先程本を抜いた棚を手で示しながらそこに俺達の目当ての物があると説明してくれる。

 

 墨染さんは棚から抜いた本を高嶺に手渡して、それから口を開く。

 

「それじゃあ私は掃除に戻りますね。掃除が終わったらお手伝いしに来ますから」

 

「え、いや。別にいいよ」

 

「いーじゃん、手伝わせてよ。それとも私を仲間外れにする気?」

 

「そ、そうじゃないけど…」

 

 じと目で墨染さんに迫られる高嶺が困惑した顔で俺達の方を見る。

 ここで墨染さんを手伝わせれば俺達の事情に巻き込む事になる、と高嶺は考えているのだろう。

 事実その通りではあるのだが、手伝いくらいは別に良さそうなものだが。

 

「む…、決めた。速攻で掃除終わらせて手伝いに来るから」

 

「え。ちょっ、希。何でそんなムキになって─────」

 

「昂晴君、首を洗って待ってろよ」

 

 ハッキリしない高嶺の態度に痺れを切らした墨染さんは物騒な言葉を残して早足で倉庫を去っていく。

 その墨染さんの後ろ姿を呆然と眺める高嶺、と俺達。

 

「関わらせたくないのは分かるけど、もう少し断り方はあったんじゃねぇの」

 

「…反省してます」

 

 二人の気の置けない間柄と墨染さんの性格を考えればあんな風に頭ごなしに断ればムキになりそうだと予想できる。

 高嶺が墨染さんを心配する気持ちは分かるが、もう少し断り方を考えるべきだったのではないだろうか。

 

「でもまあ、別にこの手伝いくらいならいいんじゃねぇの」

 

「…そう思うか?」

 

「大体もう墨染さんは─────というよりこの神社は巻き込まれてる様なもんだろ」

 

 赤い蝶、はつさんが境内に居座り、朔夜さんははつさんと男神を再会させぬべく周囲に結界を張って、そんな状況にある以上墨染家はとっくに巻き込まれているに等しい。

 俺達が考えてる以上にずっと昔から、この神社はあの三人の因縁の中心になっているのだ。

 

「とにかく今は調査だ。少しでも目ぼしいものがあったらお互い報告し合おう」

 

 俺がナツメ達に目を配らせながらそう言うと、三人は俺を見ながら頷く。

 

 それから調査は始まった。それぞれ墨染さんが示した本棚から資料を取り、目を通していく。表紙に書かれた題目と中の内容をなるべく早く、且つ丁寧に目を通していく。

 

 倉庫内では誰も喋らず、紙を捲る音だけが不規則に響き渡る。

 目ぼしいものがあれば報告し合うと言ったはいいが調べ初めてから一時間くらい経っただろうか。もしかしたらもっと経っているかもしれないが、目ぼしいものは全く見つからない。

 

 神社が建てられる前の事が書かれた文献とまでは期待していなかったが、神社なのだからここに祀られている神様の事なんかが書かれた資料等ある筈だ。

 が、見つからない。

 

 詳しくは知らないが、少なくともこの神社は百年以上或いは二百年以上もの歴史がある。

 日本全国にある神社の歴史に比べれば浅いのだろうが、それでも人の記憶の風化が起こるには充分な時間だ。

 そうした時間の中で、元々はあった資料や文献を紛失するのは考えられる。

 

 まだ棚の半分も調べ終わっていないが、一時間も全く進展がないとこう思わされる。

 ()()()()()()、と。

 

「─────」

 

 そんな諦念が過った時だった。

 先程まで読んでいた資料を他の本と重ねて、次のに移ろうと棚に手を伸ばし、新しい本を取って目の前に持ってくる。

 

 やけに古く、汚れが目立つ本だった。その本を目にした途端、何故か胸が高鳴った。

 何の根拠もない。なのに、俺の中の何かがこれだと叫んだ気がした。

 

 頁を捲っていく。俺の勘は正しかった様で、俺が手に取った本に書かれていたのは神社が建てられる前のこの地域一帯の様子。

 ここらには住民数数十人程度の集落があったらしい。この文献によれば神社が建てられたのはその集落にてとある事件があり、その事件にて一人の人間が亡くなった。その人間を哀れに思ったある神がここに神社を建ててその人間の魂を神として祀り、奉れと命じた事がこの神社が建てられた切っ掛けだという。

 

 ─────これは…。

 

 一通り文献を読み通して、どう判断すれば良いのか分からなかった。

 まず、神社が建てられる前に起きた事件。その事件というのは、はつさんが朔夜さんに殺された件と見て間違いなさそうだ。

 しかしその後、殺された人間─────つまりはつさんを哀れに思った神がここに神社を建てろと言った。ここに出てきた神というのは一体誰の事なのか。

 

 自然に考えればあの男神だ。はつさんに並々ならぬ想いを抱いていたあの神が、死んだはつさんを想ってこの神社を建てさせた。何の違和感もない、自然な流れの話になる。

 

 だが、はつさんの話によるとあの男神は朔夜さんにやられて逃げてしまったという。その後にまたここに戻ってきたのか?

 はつさんの口振りから朔夜さんにやられた傷は相当深く、癒えるまでかなりの時間を要した様に思える。そんな中で再びこの場所に戻り、神社を建てさせた?

 それが正しいと聞けばそうなのだろうと思えるが、やや腑に落ちない。

 

 ならば─────誰が?

 朔夜さんか?はつさんを殺した本人がここに神社を建てろと命じたというのか?

 それとも、二人の神とは全く別の神が神社を建てさせたのか。

 

 …分からない。分からないが、とにかくヒントになりそうな文献を見つけたのは確かだ。

 

「なぁ、この資料なんだけど─────」

 

 俺は三人の方へと振り返ってこの資料の事を報せる。

 すぐにナツメに資料を手渡して、手渡された資料にナツメ達が目を通す。

 

 そんな三人を眺めながら、俺はふと先程とは別の事を考える。

 

 ─────そういえば、何ではつさんはこの神社に居座ってるんだ?

 

 ふと浮かんだ何気ない疑問。考えられる答えは一つ、はつさんがこの場所で殺されたから。

 だが本当にそれだけか?まず第一、本当に神社が建っているこの場所で殺されたのかも俺には分からない。

 

 それに引っ掛かる事はまだある。

 

『っ…。やはり、あの方が私に会いに来ないのは貴女が…』

 

 朔夜さんがはつさんを男神と会わせない様に細工をしたと言った、その返しにはつさんが口にした台詞である。

 一見、何もおかしくない、ただ朔夜さんに恨みをぶつけただけの様に思えるこの台詞。

 

 だがよくよく考えれば、この台詞には違和感がある。

 

 ─────何故、会いに行けないではなく会いに来ない、なのか。

 

 はつさんは強くあの男神との再会を願っていた。ならば、神社の境内で待つのではなく会いに行けば良いじゃないか。

 勿論、朔夜さんがそれすら出来ない様に細工を仕掛けている可能性だってある。ただあのはつさんの台詞は、まるで男神に()()()()()()()()()()()()()様に思えた。

 

 ならもし、俺のこの仮定が正しかったとしてその理由は何だ。会いたくて仕方のない()()()との再会ではなく、他に優先している事があるというのか。

 

 ─────いや、待て。

 

 そこまで考えて、俺は今ここに俺がいる理由を思い出す。

 俺が、俺達がここにいる理由。それははつさんの願いを叶えるため。

 ではその願いとは何なのか。はつさんの願いは、娘の名前を思い出す事だった。

 

 ─────まさか、()()なのか?

 

 はつさんは言った。あの方と再び会いたいし、朔夜さんは憎い。だがそれ以上に自分は娘の名前を思い出したいのだ、と。

 

 ─────()()()()()なのか?

 

 全てが繋がった様な気がした。

 堪らず立ち上がり、倉庫を出ようと踵を返す。

 

「千尋?」

 

 突然立ち上がった俺に驚いたのだろう。ナツメが俺を見上げながら呼び掛ける。

 ナツメだけでなく、勢いよく立ち上がった俺を驚いた様子で高嶺と明月さんもまた見上げている。

 

 しかし、ナツメ達の疑問に答えてあげられる余裕は今の俺にはなかった。

 今すぐに確かめなければ。俺の仮説が正しいのかどうか。もし正しいのであれば─────朔夜さんが提示した三日というタイムリミットをクリアできる可能性が一気に高くなる。

 

 俺は倉庫を出ようと足を踏み出した─────

 

「あっ、まだ居た」

 

 所で動きを止められる。

 俺の目の前には倉庫の中を覗き込む、巫女服から私服に着替えた墨染さんの姿があった。

 

「希。掃除は終わったのか?」

 

「うん。そっちはどう?何か見つかった?」

 

「まあ…、柳がぽいのを見つけた」

 

「─────」

 

 俺の横に立ってナツメ達が見ていた、先程俺が渡した文献を覗き込む墨染さん。

 

 そんな彼女を俺は()()()()()()見つめていた。

 彼女の身体ではない。彼女の中を、彼女の持つ魂を俺の瞳で見つめていた。

 

「柳さん?どうかしましたか?」

 

 呆然とする俺に最初に気付いた明月さんが声を掛けてくる。

 その呼び掛けに答える余裕も、今の俺にはなかった。

 

「…何で気が付かなかったんだ」

 

「え?」

 

「最初から居たんじゃないか。すぐそこに、すぐ前に、すぐ傍に。はは…、何で気付かなかったんだよ」

 

 我ながら間抜けだ。今までずっとすぐ傍に居たというのに。眼鏡を外して見る機会がなかったのだから仕方ないといえばそうなのだが、こんなにも近くに居たというのに全く気が付かなかった自分が間抜けに思えてしょうがない。

 

「千尋…?」

 

「…すまん。今から説明するよ」

 

 いきなり様子が変わった俺に戸惑いを隠せないナツメ達に─────特に墨染さんには悪い事をした。

 掃除が終わって手伝いに来てみたら、いきなり俺に見つめられてしかも訳の分からない事を口走られて。

 

 その理由を今からナツメ達に説明する。

 俺が至った結論と、その結論に至るまでの経緯。

 全ての答えは、俺達のすぐ傍に()()()()()()という事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~Another View~

 

「くそが、くそが、くそが、くそが、くそが、くそが、くそが、くそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそが」

 

 何度も何度も何度も何度も何度も、包丁の切っ先を叩き付ける。

 一心不乱に、目を血走らせ、呪詛の言葉を吐きながら、その男はテーブルの上に置かれた一枚の写真を包丁で刺し続ける。

 

「俺が、俺が、俺が、先に、先に、先に、」

 

 写真を押さえる手に何度か刃がかすり、血が飛ぶ。それに構わず、というより気付いてすらいないのか。男はひたすらに包丁を振り下ろす。

 

「先に…愛していたのに…っ!」

 

 無機質に繰り返されていた声が荒げ、それに呼応するように振り下ろされる包丁の勢いが増す。

 

 ガツン、と包丁がテーブルに刺さる音が部屋に鳴り響く。ひたすらに包丁を振り下ろし続けた男はそこで動きを止め、乱れた呼吸を整える。

 

「はぁ、はぁ、はぁ…。なんで…なんでだ…」

 

 虚ろな瞳に映る、写真に写された二人の男女。幸せそうに微笑み合う二人の姿を見て、頬に皺を寄せて形相を乱した男は写真を掴んだ手を力一杯引く。

 

「何でなんだよォッッッッッッッッッ!」

 

 破れた写真には目もくれず、男はまるで操り手を失ったマリオネットの如くふらりと床に倒れる。

 再び瞳は虚ろに戻り、虚ろな瞳は暗闇で浮かぶ天井を見上げる。

 

「おれが…さきだったのに…」

 

 荒れた唇から溢れる虚ろな声。

 

 こんな男の姿を、闇の中から覗く者が居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─────良イ憎シミダ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




誰か分かるかな?覚えてる人は居るかな?(wktk)
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