そういう訳で工廠科の地下実験室に来た俺──
「……いや〜、助かりましたぞ、ありがとうですな陸。……お約束とはいえ、まさかああも見事に暴走するとは」
「音声がアレだったのが問題だったんじゃない? ……まあとにかく『イグナイトモジュール』はもう少し調整が必要だね」
暴走から元に戻った茂は疲れたのか椅子に座りながらミネラルウォーターを飲んでおり、ウェル博士の方はその暴走の原因となった『イグナイトモジュール』とやらを片付けていた。
……ブレイブを掛けた感触だと、茂の体内にはかなりの量の負のマギの残滓が溜まってたからな。あのイグナイトモジュールとやらの実用化は遠そうだな。
「それで今日俺がやる試験の内容とは一体なんですか?」
【予定では『新型マギバッテリーを使って出力強化が可能な新型CHARMの運用、及びにマギリンクドライバーとの連動運用試験』となっています】
そんな俺の疑問に答えてくれたのは、さっきウェル博士から貰ったスマホから聞こえてきた電子音──俺のドライバーに入っている最新型AIの『リズ』だった。
……しかし、新型CHARMとはね。最近ようやく『グングニル』の扱いに慣れて来た俺なんだが大丈夫だろうか。多分リズのマスターである俺にしか出来ない感じなんだろうが……。
「その通りだよリズ君。……それで、今回は僕以外にも『マギバッテリー』の開発者である……ああ、どうやら来たみたいだ」
そう言ってウェル博士は何やら荷物を乗せた台車を押しながらこっちに来ていた一人の工廠科生徒を手招きした……見た目は身長170ちょっとで黒髪黒目のごく普通の男子生徒みたいなんだが、何と無くなんだがその“目”に宿る意思みたいなのが他の生徒とは違う気がする……?
……そうだ、多分
「すみませんウェル博士、お待たせしました。機材の用意に少し手間取りまして」
「こっちも今来たばかりだから大丈夫さ。……おっと、陸君なにやら困惑してるみたいだね」
「え……ああいや……」
そんな自分でもよく分からない考え事をしていたらウェル博士に声を掛けられたので、俺は慌てて意識を現実に戻した……それを見た男子生徒は苦笑しつつも話し始めた。
「まあ、初めてこの地下室に来たのなら困惑するのも無理はない。何せここのメンバーは皆優秀なんだがクセが強いからね。……おっと、自己紹介が遅れたな。俺は葛葉高校二年工廠科の『葛葉ゲイリン』だ。今日はよろしく頼むよ」
「あ、はい。一年LGヤマトタケル所属の一柳陸です。……“葛葉”?」
そうしてゲイリン先輩と自己紹介を済ませた俺だったが、その苗字が学校のものと同じだったので思わず聞き返してしまった。
「ん? ……ああ、苗字に関しては俺の“実家”がこの葛葉学園の設立に関わっていてね。その時に土地とか施設とかを提供したからウチの家名が学校の名前になったんだよ」
「“葛葉一族”は日本で最高峰の退魔組織
「今は『欧州の錬金術師』達を始めとする世界中の魔法系組織と同じで殆ど没落してるけどね。魔化革命やヒュージの影響で。ウチの“四天王”も今じゃ俺だけだ」
ゲイリン先輩曰く、何でも『葛葉一族』とは日本の魔法使いの家系で、遥か昔からこの国で起きた魔法的な事件から国道や民を守って来た超国家機関の一つなのだそうだ……凄く胡散臭く感じるけど、ウェル博士が言うにはそう言った『魔法の世界』とも言うべき裏世界は昔から存在しており、そこでは様々な古い魔法を使う組織が各々の目的で活動していたらしい。
……だが、突如としてヒュージと言う化け物が現れて各国の魔法組織もその多くが壊滅状態になり、更にそこから齎された
「クズノハを始めとすると各国政府直轄の魔法組織もヒュージが現れてからは護国の為に戦ったんだが、マギによって変質した連中は総じて『マギを用いる旧来の魔法技術』に対して高い抵抗力を持っていたからな。正直鉛玉の方がまだ効くだろうってぐらい」
「魔化革命が起きたのも旧来の魔法が効かないヒュージに対して『こりゃヤバイ』と思ったクズノハを始めとするいくつかの魔法組織が、これまでの独自性・秘密主義を捨てて積極的に対抗兵器の開発に協力したのが大きいんだよ。……その結果作られたのが降神術の理論を応用した、使用者のマギを糧に高次元から
はえー、CHARMの開発やこの学園の創設ににそんな裏事情があったのか、すごいなー←いきなり専門用語ばかりの複雑な説明を受けてちょっと困惑気味な田舎者感。
「まあ、この辺りの話は今回の試験には直接の関係はないから話半分くらいに聞いておけばいいよ。……それで今回試験して貰うのはこの『新型マギバッテリー』を使って威力を増強させる新型CHARMの運用試験だね」
……そんな俺の様子に苦笑しながらも、ゲイリン先輩は運んで来た資材の中から“銃のカートリッジの様な物”を取り出した……疑問符を浮かべる俺に対してゲイリン先輩はそれについて詳しく解説してくれた。
「これは『マギバッテリー』と言って文字通り内部にマギクリスタルフォースを込めて、それを任意で引き出して使う事が出来る装置なんだ。……元はウチの家に伝わっていた『封魔管』と呼ばれる魔道具をベースに作り上げたものだったりする」
「マギの蓄積と保存ぐらいなら昔から出来てはいたんだが、CHARMから引き出したマギクリスタルフォースを長期的に保存する技術は中々出来なかったからね。その上で機械を介することで誰でも使える様にしたり、大幅な小柄化を成し遂げたこのマギバッテリーは割と革新的な技術だったりするんだよ」
「現在、このマギバッテリーを使った新型のアンチヒュージウェポンが当校のマディック科や防衛軍葛葉基地で試験運用されている程ですしな。威力自体は殆ど据え置きですがこれまでの一発限りしか撃てない従来型と違って、バッテリー内のマギがある限りマギ弾を連射が可能なのでかなりの高評価を頂いておりますぞ」
確かアンチヒュージウェポンは通常兵器をマギ戦仕様に改造した特殊な銃器で、スキラー数値が25あればCHARMのトリガーを引くこと(1発だけ撃つこと)ができる事を応用して作られていて、基本的に一発しか撃てない上に威力はCHARM以下でありミドル級にダメージを与えるのがやっとだと授業で習ったな。
……そんな武器でヒュージと戦わざるを得なかったマディックや防衛軍の人達にとっては、“普通に銃として使えてヒュージにダメージを与えられる武器”と言うだけで十分革新的なんだそうだ。
「それで今回の新型CHARMはこのマギバッテリーを使って瞬間的に威力を増大させる機構を組み込んだ物なんだ」
「……アレ? それってリズがマギリンクドライバーで以前やった様な……後、確か茂が主に使ってる『B兵装』とかも有りましたよね。授業では『リングカートリッジシステム』と習った覚えがありますけど」
「ふむ、中々良いところを突くね。……じゃあ、ちょっとその辺りのシステムと今回の新機構との違いを解説して行こうか」
ゲイリン先輩の話を聞いてふと思った俺の疑問に対して、彼はマギリンクドライバーと茂のCHARMである『ヴァジュラ』を目の前に出して今回の新機構について説明をし始めた。
「まず、リングカートリッジシステムとは
「某もリングカートリッジシステム専用に調整されたヴァジュラと負担が掛かっても即座に直せるレアスキル『Z』、そして仲間のフォローが無ければ使えぬ機構ですな」
「マギリンクドライバーの出力上昇機構もこれの応用で、ドライバー内部に蓄積されたマギをクリスタルコアに注ぎ込んで一時的に出力を上げる仕組みだ。出力はリングカートリッジより低くて持続時間も短いが、オートガードシステムは維持したまま行えるしCHARMへの負担も少なくなっているよ」
……とまあ、そんな感じでゲイリン先輩、茂、ウェル博士が手元のドライバーとヴァジュラを見せながら分かりやすく解説してくれた。
「これらの機能はいずれも『蓄積してあった“通常のマギ”をコアに流し込んで出力を一時的に上昇させる』ものだ。……だが、このマギバッテリーにはさっきも言ったがコアによって
「上手くいけばコアをオーバーヒートさせずとも出力を上昇させる事が出来るので、CHARMへの負担を大幅に抑える事が出来る算段になっておりますぞ。加えて、マギクリスタルフォースを直接運用するが故にリングカートリッジよりも高出力を実現可能だと考えられておりまする」
「へー、成る程。……でも『人間が保有するマギ』と『CHARMから出力されるマギクリスタルフォース』ってどっちも普段は“マギ”って言うからよく分からなくなるんだよね」
「まあ、基本的にその二つはイコールで結ばれるからねぇ。純度や密度や強度やらが大きく違うだけで同じ“モノ”ではあるし」
ちなみにこのマギバッテリーの正式名称は『マギクリスタルフォース蓄積用封魔管式バッテリー』と言うのだが、一々そんな名前を言うのは面倒なので略していたとの事……ただ、俺が疑問に思った事からちょっと分かりにくいと先輩も思ったらしく、正式に量産される際には『マギクリスタルバッテリー』とかのもう少し分かり易い名前にするかもしれないそうだ。
「それで、そんな凄い新型CHARMを新人に毛が生えたレベルの俺に試験させるって事は、レアスキルのブレイブか新型AIであるリズの能力が必要って事ですか?」
「なかなか鋭い、ちなみに正解は後者だ。……マギと比べてマギクリスタルフォースは機械的制御が難しくてな。新型アンチヒュージウェポンの様に取り出したマギを弾丸にして撃つだけなら問題ないんだが、既に励起しているCHARMに追加でマギを上乗せするのはかなり難しくて中々上手く行かなかったんだ。そこでウェル博士が開発した新型AIのユーザーのマギ制御を補助する機能を使って実験とデータ取りを行おうって話になったんだよ」
そう言いながらゲイリン先輩は荷台の上に置いてあったCHARMケースを取り出した……その中にはおそらくシューティングモードっぽい新型のCHARMが入っていた。
「そんでこれが今回テストして貰うマギバッテリーによる出力強化機構を追加した、君も使っている『グングニル』の改造機……『ガングニール』だ!」
「……ガングニール……だと……」
余りにも俺が使ってるグングニルとは形状が違うからちょっと驚いてしまったぜ……よく見ると銃身の上に展開型のブレードが付いている所とかに面影があるような気がするな。
……そのガングニールは見た感じ全体的にグングニルより一回り大きく、銃口はレーザーと実弾があったオリジナルと違って一つだけ、更に上部のブレードも大型化・鋭角化、後部ストックやグリップの形状も違うので一見別物に見えるレベルだった。
「……改造機っていうか殆ど別物な気がするんですが……」
【グングニルとの各パーツ一致率約30%以下】
「まあ、新機構を組み込むに当たって『マギフォースフィールドシステム』や第四世代相当の思考操作システムなどを組み込んだからな。ぶっちゃけ基本フレーム以外はほぼ別物だ」
「途中で興が乗って色々魔改造しちゃったしねぇ。複数の射撃モードを切り替えられる最新型のエネルギーライフルユニットとか、ブレード部の限定集束機構とか」
「とはいえ、実戦で使うならともかく試験で使うぐらいなら問題は無いでしょう。……とりあえずドライバーとスペックを付けた上で使ってみましょうですぞ」
そんな訳で茂に言われた通り、俺は手渡されたガングニールと契約して試験場所まで向かい、まずはマギバッテリーを使わずにガングニールの機能を一通り使ってみる事となった。比較してデータを取る為だそうだ。
【マスター陸、ガングニールとのデータリンクを確立しました。現在シューティングモードは連射モードになっています】
「オッケーリズ。じゃあ撃ってみるか」
そうして俺はガングニールの引き金を引いて設置されたカカシ型の的にエネルギーマシンガンを浴びせかけていく……うん、フレームが同じだからかグングニルのレーザーマシンガンと同じ感じで使えるな。
……それから俺は続けて威力が高く貫通性が高いビームを放つ単射モード、集束性に特化した長射程の狙撃モード、広範囲にエネルギー弾をばら撒く散弾モードを使って的を撃ち抜いていった。
「……基本的にグングニルで使ったマギ弾と同じ特性の射撃が出来る感じですかね」
「実戦に於ける実績がある弾丸をモデルにモードを組んだからね。……他にもプログラム通りの軌道を描いて飛ぶ誘導弾モードとか、ロックしたターゲットに向けて飛ぶ追尾弾モードとかも構想にはあったけど、扱いが難しいって事で採用はされなかったな」
「マギの弾丸を曲げる技術はロビン先輩の様な極一部の者しか使えぬ超高度技巧ですからな。機械的な再現はまだ完全ではありませんし」
「それじゃあ、次はマギバッテリーを使った射撃試験に移ろうか。銃身下部にバッテリーを装填する箇所があるから」
そうウェル博士に言われたので俺はドライバーに下げたマギバッテリーを取り出した……えーっと、バッテリーを付ける場所は……。
【ガングニールへのマギバッテリーの装填工程を3Dモデルで表示可能ですが、表示しますか?】
「おお、気が効くな。じゃあ頼むよリズ」
俺が少し手間取っているとリズがそんな提案をして来たので、お言葉に甘えて装填工程を見せて貰う事に……ふむふむ、銃口の下に着いた銃床部分の基部にバッテリーを装填すれば良いんだな。
【Magi cartridge connected】
「その状態だと自動的に高出力モードになるから注意してね。……的は向こう大規模実験用のゾーンにあるミドル級ヒュージ型の的を狙ってくれ」
「周囲に被害が出ない様に結界が貼ってありますからな」
「了解」
俺は言われた通りにミドル級ヒュージ型の的にガングニールを向けた……その途中リズから【推定される威力から発射時に反動が起きる可能性大】と言われたので、ガングニールを両手持ちにして脇で後部ストックをしっかりと保持しつつ両足で地面を踏みしめながら射撃体勢に入った。
「準備出来ました」
「よし、それじゃあ発射してくれ」
【マギバッテリーによる高出力砲モードプログラムを実行します】
そして俺がガングニールの引き金を引くと、リズのアナウンスと共にマギバッテリーから供給されたマギクリスタルフォースが銃口に集まって光の球体を形成、その次の瞬間には球体のエネルギーが解放された極太のビームとなって発射された。
……放たれたビームはミドル級ヒュージ型の的を粉々に粉砕して、そのまま後ろの壁に展開されていた結界ぶち当たって轟音を上げながら四方に霧散していった。
「……おおう、凄い威力だな」
「ふむふむ、結界からのデータでは高出力砲の威力は規定値を上回っているね」
「陸君のドライバーからのデータでは彼のマギ防御壁や身体強化に悪影響が出る事もないみたいだね。マギの消費量も自前のマギだけで高出力砲を使ったとは思えないぐらいに少ないな」
「CHARMへの負担もB型兵装と比べれば圧倒的に低いですな。少なくともこの数値であれば実戦で複数回使っても、その後の整備だけでも問題無い様に思われますぞ」
俺が高出力砲の思った以上の威力に驚いている間、他の三人は砲撃から得られたデータを見て色々と話し合っていた……その際には俺やリズも色々とガングニールを使った感じとかを聞かれたりする。
「陸、何か違和感はないでござるか?」
「うーん、マギの消耗以外には特に違和感は無いかな」
【マスター陸の肉体、並びに内包マギには異常は見られません】
「成る程……それでウェル博士、肝心の新型AIによるマギクリスタルフォースの制御プログラムに関しては……」
「そっちもぱっと見だと問題なく制御出来ているみたいだね。……AIによるマギ制御の補助はマギ運用に慣れた人間だと違和感を感じてしまう報告もあるがその辺りまだプレーンな陸君だから上手くいってるのか、或いは彼とAI……リズ君の相性が良いのか……」
……とまあ、こんな風に彼等三人が俺とリズとガングニールのデータと睨めっこしながら話し合い、時折俺たちに質問してまた話し合うと言った感じで試験は続けられて行くのだった。
あとがき・各種設定解説
葛葉ゲイリン:出典『デビルサマナーシリーズ』
・この世界は基本『アサルトリリィ』がベースなので“メガテン的悪魔”とかはおらず、葛葉一族も怪異が起こりやすい日本という国でそれらの怪異を鎮める事を生業とする一族といった感じ。
・封魔管とかも有していたが独自開発した式神的なヤツを入れる用で、四天王を筆頭に強力な術者を多く要する世界でもトップクラスの魔法組織だったがヒュージとの戦いで戦力の大部分を失って没落した。
・当代ゲイリンである彼は『技術的な功績を多く残して葛葉一族の価値を引き上げたから残っていた四天王の座に付けた』と言っている……が、当然ながら本人の実力も非常に高い。
・具体的は葛葉高校の
葛葉高校:実はメガテン要素も入ってた
・この土地はかつて葛葉一族が守護していた『レイラインの関係上怪異が起きやすい場所』であり、現在ではケイブの発生率が非常に高くなっている事も学園が作られた理由の一つ。
・実はこの学園とウェルキンゲトリクス・インダストリーには『風鳴機関』『葛葉一族』『パヴァリア光明結社』の穏健派と、『ウェル博士などのゲヘナ離反組』が関わっている。
・ちなみにこの世界は原作アサルトリリィと違って『シンフォギア』『メガテン』要素が入っている所為で、『基本的に女性優位だが、ごく少数の男性は高い魔法資質を持っていたり
読了ありがとうございました。
アーセナルジェラシー……成る程、アサリ世界の技術レベルだとあのぐらいはやっても良いのか(笑) 後、追加タグは『デビルサマナーシリーズ』『女神転生シリーズ』とかで良いのかな。