こういったサイトがあることをつい最近知りまして、自分が以前書きためていた小説に推敲をしまして、ちびりちびり、出していこうと思います。
駄文ですが、お読みくださると幸いです。
序章
茹だるような暑い夏の日だった。
ボクは燦々と照り付ける太陽の下で、縁側に寝そべって寝息をたてていた。
海へ行こう。
そう彼女は言った。
とびっきりの笑顔で。
ボクは嫌がりつつも、その笑顔には逆らえなくて。
リュックを背負って、彼女の後ろをとことこ付いていったんだ。
ボクは、電車に乗るのは初めてだった。
生まれて8年間、この町を出たことがなかったんだ。
だから、初めて乗る電車は、とても楽しみにしていた。
でも初めて乗った電車は、話に聞いていたよりも混んでいなくて。
むしろ、自分たち以外居なかったんだ。
人がいっぱい乗るって聞いていたから、少し拍子抜けかな。
でも初めての電車はワクワクした。
色んな人の色んな匂いがする。
見たこともないけれど、人達がごった返してぎゅうぎゅう詰めになりながら
見たこともない町へ乗って行くのが思い浮かんで来る。
そうやってキョロキョロしていると、電車のドアが閉まる。
大きな音を立てて電車が動き出した。
電車の車輪の音が大きくなるにつれ、ボクの期待感も膨らんでいく。
窓から掠めていく風景は、見慣れた町から、見知らぬ町へと少しずつ姿を変えていく。
窓から吹き抜けていく風も心なしか都会のモノへ変わっていっているような気もする。
野原だった地面が、一帯アスファルトに変わり。
大樹があった所には、ビルが立ち並ぶ。
自分の町との違いに、ボクは窓から目を離すことが出来なかった。
ここで降りてちょっと見て行かない?
そう言おうと思い彼女の方を横目で見ると、彼女は寝息を立てていた。
「流石に起こすのはまずいかなぁ・・・」
一人ごちてまたドアが閉まるのを待つ。
すると、少しずつ人が入って来た。
すぐ終わるかと思ったけど、人の波は収まらなくて。
彼女が大人二人に挟まれて身動きが取れなくなる前に、隣に行かなければ。
ボクは幼心に彼女の隣へと座り直したんだ。
彼女は本当に綺麗に寝ていた。
眉1つ動かさず。
肩を少し上下させるだけ。
ボクと2つしか違わないのに、凛とした顔。
でも可愛さも残っている。
腰まで伸びる黒髪。
決してボサボサにならず、しなやかに伸びている。
気がつけばボクは、彼女の顔を覗き込んでいた。
何分たっただろう。
ボクの目線に気付いたんだろうか。
彼女が目を覚ました。
「・・・?おはよう・・。」
彼女と目があった。
ずっと覗き込んでいた負い目があってか、目を合わせられないボク。
そっけなく
「おはよ・・・。」
と返すのが精一杯だった。
その時のボクは、顔が真っ赤になっていたに違いない。
「もうちょっとで着くね・・・。海。」
まだ眠たげな目をこすりながら、彼女はボクに話を振る。
「そ・・・そうだね・・・。」
恥ずかしさからか、ぎこちなくしか返事が出来ないボク。
「海についたら、何がしたい?」
彼女は何も気にした様子もなく、ボクに話しかけてくれる。
彼女は、とびっきりの笑顔でボクの目を見てくれている。
なのに、ボクは目も合わせられない・・・。
どうしてしまったんだろうな・・・、ボク・・・。
「海って見たこと無いんだ。だから、何が出来るかもわからないんだ・・・。」
それでも精一杯彼女の方を見ながら返事を返す。
すると、彼女は笑顔を少し伏せ、悲しそうな顔になった。
「ごめんね・・・。」
そして、少し逡巡した後。
「だったら、一緒に海で泳ごうよ!」
電車中に響き渡るような大声で立ち上がりながら彼女はそう言った。
ぎゅうぎゅうにつめていた大人たちはみんなこちらを何事かと見ている。
「あ・・・すいません・・・。」
視線に気付いたのか彼女は顔を赤らめて席に座り直す。
「ごめんね!えっと、海についたら一緒に泳ごうよ!」
少し照れた様子で、声のトーンを落としてボクに言い直す彼女。
「泳ぐ?海って、川みたいなモノなの?」
「え・・・?何も知らないの・・・?」
彼女が驚いたように聞き返す。
本当にボクは海の事を何も知らなかった。
そして、ボクは信じられないような話をたくさん彼女に教えてもらったんだ。
海は全部塩水で、その水は世界の半分以上を占めているっていうこととか。
そこには、川なんかじゃ見られない大きな魚とか、もっと色んな生物がいるってこととか。
話を聞きながらざっと電車内を見渡すと、さっきまでいっぱい居た人たちが、少しずつ、また少しずついなくなっていく。
周りを急にキョロキョロ見渡しだしたボクを見て、彼女が声をかけてくれる。
「もうそろそろだね!楽しみ?」
彼女はまっすぐな目でボクを見てくる。
「う・・・、うん。楽しみだよ。」
「ほんとにぃー?あんまり楽しみそうじゃないよー?」
彼女が訝しげに思って聞き返してくる。
「ほ、ほんとに楽しみなんだってば!ただ、ちょっとまだ整理がつかなくてっ!」
慌ててそう言い返すのが精一杯だったんだ。
「そっか、初めてだもんね・・・。でも、気負わなくていいんだよ!一緒に楽しもうよ!」
「ありがとう。一緒に来れたのが※※で良かったよ!」
「・・・!あと少しだよ!降りる準備して!?」
少し顔を赤らめたように見えたけれど、それも大きな声に掻き消されてしまった。
電車が大きな音をたてて止まる。
そして乗ってきた時と同じ音で、ボク達を見送ってくれる。
改札を出て、まず目に飛び込んできたのは、一面の青だった。
青。蒼。碧。
色々な言い方はあるけれど、どれも総じて素晴しい色に違いはない。
「すっげぇ・・・」
つい声が出てしまう。
「すごいでしょ?これが海って言うのよー?」
「すごいよ・・・、ほんとに綺麗だ・・・!」
「良かった!気に入ってくれて!じゃあ、海まで追いかけっこしよ!近いんだしさ!」
そう言って彼女はこちらを振り向くと、海の方に走りだした。