――――。
そこでまたいつものように夢は途切れる。
ボクはこんな子と会ったことはない。
ボクはこんな風景見たこと無いんだ。
なのになんでこんな夢を見る?
どうしてこんなに胸が痛い?
わからない。
もう17にもなって、毎回同じ夢を見る。
他の夢を見ることすら許されないように。
だけど、いつも見る夢は、とても※※に満ちていて、素晴らしいモノだった。
リアルで、それでいて現実から最も離れた、ボクが知るはずもないモノ。
『外の世界』
これは、栄喜町に住む人が絶対に見ることが出来ないモノなんだ。
というのもボク達の住む町、「栄喜町(さかきちょう)」には、不思議なしきたりがあったから。
これは絶対破ってはいけない、と子供の頃から教わってきたしきたりだ。
たった1つ、だけどそれでボク達の運命が決まってしまうようなしきたり。
それは、『決してこの町から出てはいけない』
おかしい話だけれど、破ると神罰が下るという。
だけどボクの友達は、冗談半分で何人かで他の町へ行ってみようと町を抜けだそうとしてしまった。
結果は最悪だった。
みんな生きて帰ってきただけ喜ばしいことなんだろう。
だけど、それ以来あいつらは口を開かなくなってしまった。
虚ろな目で、ただ空を眺め続けるようになってしまった。
いくら話しかけても返事がない。
前みたいにあいつらは喋らなくなってしまった。
笑ってくれなくなってしまった。
一体何があったと言うのか。
疑念は積もりに積もる。
そして数日後、その疑念を明らかにするような出来事が起きる。
ある日、町に一人の訪問客が来たのだ。
僕たちの町は、人を出さないから、この町の存在を知っている人はほとんど居ないはずなのに。
訪問客は、自らを配達人だと言ったらしい。
僕たちの町へ食べ物を届けるための。
しかし、それにしては不思議な格好をしていると言う。
真夏なのにフードをかぶり、コートで体を全て覆い、更に手袋を着け、ブーツまで履いていると。
この真夏にそんな格好で歩きまわるなんて不思議だ、と皆は口を揃えて言っていた。
その訪問客の噂を聞いて、僕は大いに喜んだ。
――この世界の歯車は、軋みつつも回り出す。
早速その訪問客に会いに行こう。
広い町ではあったけれど、ここでしか暮らせないんだ、全ての地形は覚えてしまった。
町の人たちに訪問客はどこに行ったのか聞き、探し、また聞き。
そうしてたどり着いたのが、この町の端にある小さな丘。
草っぱらの中にひときわ目立つ大きな杉の木が立っているだけの、つまらない丘。
いや、丘とは名ばかりの開けた草原。
「やっと・・・はぁ・・・追いついた・・・!」
息を切らしながら訪問客に話しかける。
「何か御用ですか?」
配達人と言うから男だとばかり思っていたけれど、そこから発せられた声は、凛々しい女性の声だった。
「ちょっと、外の世界について聞きたいことがあって・・・!」
「外の世界?ああ、この町の外の事ね。」
「何か知ってるの!?」
つい大声で聞いてしまう。
「もちろん、知ってるよ。だけど、キミ達は知らない方がいい。
知ったらきっと後悔する。町に帰ってきた君の友達が良い例だ。」
「この町はおかしいよ!なんで外に出ちゃいけないの!?なんで誰も入ってこないの!?」
関係ないと分かっていても、吐き出す人が彼女以外に見当たらなかった。
「私は知らない。知っていても教えはしないよ。君の為に。」
彼女は悲しそうな目で僕を一瞥すると、再びフードを被り、丘を超えて鬱蒼と茂る森へ入っていった。
(追いかけるべきか・・・追いかけないべきか・・・。)
彼は少し考えた結果、出来うる限り最善の選択をした。
彼女の背中を見送り、迷いを断ち切ろうと自分の頬を軽くはたく。
しかし、帰る足取りは重い。
家に帰るまで、迷いは消えなかった。
悶々として寝付けず、夜も更けた。
「最後のあの目、なんだったんだろう。」
一人ごちても、どこからも返事はない。
そして、夜風を浴びながら、満点の星空を仰ぎ見る。
娯楽なんて無いに等しいこの町に、唯一とも言える娯楽。
そして、その星光に照らされながら縁側で眠るのがとても心地いい。
しかし、今日の睡眠は、とても心地いいとは言えないみたいだ。