(また・・・。この風景だ・・・。)
「海へ行こうよ!きょーすけ君!」
「ええ・・・何しに行くのさ・・・というか僕たち町から出ちゃいけないんだよ?」
「大丈夫だよきょーすけ君!ばれないように私がなんとかするから!」
そういってニッと笑った彼女を見て、ボクはなんとも言われぬ感情を抱いた。
そう。確かに、見覚えが、ある。
以前とは違う所から見ているからだろうか。
以前の男の子の目線とは違う。
俯瞰の風景。
いや、俯瞰とも違う。
二人の間に漂うような感覚。
「わかったよ・・・でも※※ちゃん、本当に平気なの?外は怖くないの?」
掠れて聞き取れない。
恐らく名前か何かを言ったんだろう。
「だいじょーぶだいじょーぶ。私にまっかせなさい!」
以前とは違う。
以前よりも鮮明に。
以前よりも二人の気持ちが伝わってくる。
「わかったよぉ・・・、じゃあ、見つからない内にいこう!」
リュックを背負う少年は覚悟を決めたように。
「れっつごーだよ!」
それを先導する彼女は嬉しそうに。
この街を出た。
ふと疑問が浮かんでは心にのしかかる。
ボクにはこんな思い出ないのに。
なぜボクと同じ名前なんだ?
なぜボクと同じ顔をしてるんだ?
ボクの記憶にはないのに。
なぜボクと同じ「高部鏡佑(たかべきょうすけ)」なんだ?
おかしい。
こんな夢はおかしい。
ボクはあの女の子を知らない。
電車なんて乗り物も知らない。
海も見たことがないんだ。
なんでボクは知っているんだ――?
「海に着いたら何がしたい?」
女の子は満面の笑みで問いかける。
「そうだなぁ、大っきな魚、見てみたいなぁ。」
男の子は答えた。
「そっかぁ、見れるといいね!魚!」
「そうだね!早く観てみたいなぁ・・・!」
男の子と女の子は和気あいあいと話をしている。
(おかしい・・・。何かが違う・・・。)
あの男の子は、なんで海を知っているんだ?
あの男の子は、なんで大きな魚がいることを知っているんだ?
まるで、ボクが聞いたことをそのまま知っているような。
(もしかして、これはボクなのか?それも、今のボク・・・?)
破綻した理論だけれど、それ以外に思いつかない。
年齢は違う。だけど知っている事は同じ。
名前も同じ。顔も同じ。
それ以外に、思いつかない。
じゃあ、この夢は何なんだ?
「着いたね、海!!」
電車を降り、一面に広がる碧を見渡して、二人は立ち尽くした。
「綺麗だぁ・・・・」
ぽろっと口から漏れた言葉。
物凄く大きく、雄大で、綺麗な大海原。
女の子はそこで前と同じ提案をする。
「海はもうすぐだし、どっちが早いかかけっこで決めようよ!!」
「負けないよー!」
ボクもそれに乗って。
そして、海へと走りだしたんだ。
ドクン。
ドクン。
何か音が聞こえた気がした。
ボクの叫び声のようにも聞こえる。
かけっこにでも負けちゃったのだろうか。
碧、蒼、青、朱、蒼。
綺麗な海の風景は、混じり物があっても尚、綺麗に満ち干きしていた。