ウツシカガミ   作:えんど

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第4話

ーーー。

 

 

目が醒めた。

 

とても頭が痛い。

それと、とても嫌な感じがする。

 

耳鳴りと言うのか、何というのか。

 

さっきの声が、耳の奥底に張り付いて離れない。

 

手の感覚が遠のいている事に気付き、一握り、二握りしてみる。

じんわりと汗ばんだ手のひらに、違和感があった。

 

左の手のひらに、見たこともない鈴が握られている。

矛盾するけれど、どこか懐かしさを感じる。

 

自分の手の熱とは違う温かみを感じる。

 

全く出会ったことのないような、けれど懐かしいような温かさ。

 

 

普通手にいきなり鈴があれば気味悪がって捨てるんだろうけど、

それはどうしても出来なかった。

 

 

不思議な温かみのあるこの鈴を腕に巻き、涼やかな鈴の音を聞きながら、また瞼を閉じた。

 

 

 

昨日とは打って変わって爽やかな朝。

 

リン――。

立ち上がると鳴る涼しげな音。

 

昨日の事が嘘ではない、と私に語りかけてくるようで。

 

朝ごはんを食べ、日課のランニングを終える。

そして家に帰り、学校の支度をする。

 

この町には少中高一貫の学校が1つだけある。

大学は、ない。

 

というよりも、行く必要がないのだ。

外にはどうせ、出れないのだから。

 

どうしてこの町の住民はそれをおかしく思わないのだろう。

 

ボクはずっと考えてる。

 

でも、親に話しても取り合ってももらえない。

 

「この町から出る?そんな必要はないし、なによりそんなことをして得でもあるのかい?」

親父が問う。

「だって・・・この町に居ても腐っていくだけじゃないか!なんでボクらは外に出ちゃいけないのさ!」

 

「それはね、《掟》だからよ。私達はそういう風に教えられてきたし、教えてきたつもりよ。

それを破った友達を御覧なさい。良い事なんて何もないでしょう?」

母が続く。

 

それに対し、ボクは二の句が継げなかった。

 

 

《掟》、《掟》、《掟》

 

なんなんだ、一体。

 

おかしい。おかしい。

 

考え、考え、考えた。

 

 

夢の世界の僕は、幸せだったんだろうか、と。

閉ざされた世界の僕より、幸せに過ごせているのだろうか、と。

 

 

その時、一陣の風が吹く。夏の昼にはふさわしくないような、とても冷たい風。

これはひとつの予感だったのだろう。

 

これから自分が辿る運命。

 

だが、気付かない。気付けない。

 

やかましいけれど、楽しい友人達がいなくなってしまった静かな学校へ行く。

それがあまりにも胸を締め付け、痛みを走らせるから。

 

 

 

「おはようございます。先生。」

 

「おはよう、高部君。教室、静かになっちゃったね。」

「今日の授業を、始めようか。」

 

先生は優しい。友人が居なくなり、意気消沈していた僕を、ずっと励ましてくれた。

この先生になら、打ち明けられるかもしれない。

 

一筋の光明が見えた。

 

先生の授業がほとんど耳に入らない。

 

――この切っ掛けを逃しちゃいけない。

 

わかってる。先生に、聞いてみなくちゃいけないんだ。

 

僕達を縛る、《掟》を。

 

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