ーーー。
目が醒めた。
とても頭が痛い。
それと、とても嫌な感じがする。
耳鳴りと言うのか、何というのか。
さっきの声が、耳の奥底に張り付いて離れない。
手の感覚が遠のいている事に気付き、一握り、二握りしてみる。
じんわりと汗ばんだ手のひらに、違和感があった。
左の手のひらに、見たこともない鈴が握られている。
矛盾するけれど、どこか懐かしさを感じる。
自分の手の熱とは違う温かみを感じる。
全く出会ったことのないような、けれど懐かしいような温かさ。
普通手にいきなり鈴があれば気味悪がって捨てるんだろうけど、
それはどうしても出来なかった。
不思議な温かみのあるこの鈴を腕に巻き、涼やかな鈴の音を聞きながら、また瞼を閉じた。
昨日とは打って変わって爽やかな朝。
リン――。
立ち上がると鳴る涼しげな音。
昨日の事が嘘ではない、と私に語りかけてくるようで。
朝ごはんを食べ、日課のランニングを終える。
そして家に帰り、学校の支度をする。
この町には少中高一貫の学校が1つだけある。
大学は、ない。
というよりも、行く必要がないのだ。
外にはどうせ、出れないのだから。
どうしてこの町の住民はそれをおかしく思わないのだろう。
ボクはずっと考えてる。
でも、親に話しても取り合ってももらえない。
「この町から出る?そんな必要はないし、なによりそんなことをして得でもあるのかい?」
親父が問う。
「だって・・・この町に居ても腐っていくだけじゃないか!なんでボクらは外に出ちゃいけないのさ!」
「それはね、《掟》だからよ。私達はそういう風に教えられてきたし、教えてきたつもりよ。
それを破った友達を御覧なさい。良い事なんて何もないでしょう?」
母が続く。
それに対し、ボクは二の句が継げなかった。
《掟》、《掟》、《掟》
なんなんだ、一体。
おかしい。おかしい。
考え、考え、考えた。
夢の世界の僕は、幸せだったんだろうか、と。
閉ざされた世界の僕より、幸せに過ごせているのだろうか、と。
その時、一陣の風が吹く。夏の昼にはふさわしくないような、とても冷たい風。
これはひとつの予感だったのだろう。
これから自分が辿る運命。
だが、気付かない。気付けない。
やかましいけれど、楽しい友人達がいなくなってしまった静かな学校へ行く。
それがあまりにも胸を締め付け、痛みを走らせるから。
「おはようございます。先生。」
「おはよう、高部君。教室、静かになっちゃったね。」
「今日の授業を、始めようか。」
先生は優しい。友人が居なくなり、意気消沈していた僕を、ずっと励ましてくれた。
この先生になら、打ち明けられるかもしれない。
一筋の光明が見えた。
先生の授業がほとんど耳に入らない。
――この切っ掛けを逃しちゃいけない。
わかってる。先生に、聞いてみなくちゃいけないんだ。
僕達を縛る、《掟》を。