周りからはむっつりスケベだと言われているが、本人に自覚はないらしい。
お久しぶりです。毎日毎日暇ですけど、何も思いつかなかったのでまた一二ヶ月空いちゃいました...
久川姉妹は天使だとか言っておいて全然まともに話書いてないよねってことで書きました。
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やあやあ、私だよ。
今何をしているのかというと、うちのなーちゃんが新曲「14平米にスーベニア」をリリースしたらしいので、それを即買いしてマイホームで聴いているよ。ちなみに気がついたらなーちゃんも部屋にいたよ。え、なんでだよ。
「...あの、優君。私の歌を聞いてくれているというのは、ええ、もちろんアイドルとして嬉しいことなのですが、けれど私の前で堂々と流すのは遠慮してもらえませんか?恥ずかしいので。羞恥プレイははーちゃん相手にやってどうぞ」
ちなみになーちゃんは私の部屋に、はーちゃんと一緒によく来る。ベッドの下にエロ本がないかゴソゴソ漁っているのはいつものことである。今の時代は電子書籍なんだよなぁ...いい加減敗北を知りたい。
そして何やらなーちゃんが言っているようだけれど、私は今君の曲の鑑賞に夢中なのだ。もう何度リピート再生していると思っているのだ。暇ならしばし、天井のシミの数でも数えておいてくれ。私は今、作曲者と3日3晩久川凪について語り合いたい欲に駆られているのだ。なあ、兄弟。俺たちマブダチだよな...?
「ふふ、無視ですか?いい度胸ですね、優君。泣く子も黙って3回回ってお手をするこの久川凪を前にそんな無防備でいるとは....よし、ズボン脱がすか」
久川凪、14歳。6月16日生まれ。身長150cm、体重40kg。スリーサイズは上からーーーごほん。
ユニークというか、個性的というか、ぶっ飛んでいるというか、とにかく「変わり者」である彼女は346のアイドルであり、現在双子の妹の久川颯とともに新人アイドルとして奮闘している。妹のはーちゃんはしっかりもので、なおさらなーちゃんとの対比が面白い。人呼んで徳島の産んだヤベー女とはこの久川凪お嬢様のことだ。いや、嘘だけど。
「い、いいんですか?本当に脱がしますよ?第一回優君のおパンツお披露目大会開催しちゃいますよ?そのまま恒例行事にしちゃいますよ??」
いやはやしかし、繰り返し強調するが、いい曲だ....出だしから既に、なーちゃんのつかみどころのないキャラクター性を表現出来ている。さすがは天下の346プロ、いい仕事をするじゃないか...愉快さと珍妙さと可愛さが絶妙に共存し絡み合っている。なーちゃんの魅力が全てとは言わずともエッセンスが詰まっているというか、これが久川凪だと言わんばかりの彼女の個性と魅力を全面にアピールしている曲と言ってもいいだろう。いや彼女の曲はこれだけではないのだ。他に代表的なものをあげるとするならばはーちゃんとのユニット曲である「O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!」だろうこれもまた筆舌に尽くし難い良曲なのだはーちゃんの天真爛漫で女の子らしいチャーミングな部分となーちゃんのエキセントリックでシュールな部分が両立していて彼女らのアイドルとしてのデビューを飾るにふさわしいこれ以上ないと言っていいほどの曲なのだところでここで是非とも物申さねばなるまいことが私にはあるのだがそれは正直彼女は可愛いから何をしてもアリなんていう単純で頭の悪い結論に素人は至りそうなものだがしかしそれはグッと堪えて私の話を聞いてほしい彼女はただただ変人なのではないし久川凪検定1級持ち(自称)の私から言わせてもらえるとするならば彼女のそれは狙って作られた紛い物などではないのだ彼女が魅力的なのは彼女の等身大の姿がアイドルとしての久川凪とイコールでありそこらのやっすいキャラ作りの偽物三流アイドルとは違うのであってーーーー(オタク特有の早口)
「お邪魔しまーす!いやー、ごめんね、遅れちゃ....って何してるのなー!!!優くんのぱ、ぱんつが、、ぱんつが、、」
「いいところに来ましたね、はーちゃん。今この不届きものを成敗しているところです。さあ、せっかく来たのです、一緒に脱がせましょう。このおパンツさえ脱がせば優君の優君が!優君の優君が見れますよ、はーちゃん!我々はたった今、歴史的瞬間に直面しているのですよ!」
「そ、そそそそそそんなことするわけないでしょ!早く直してよ、なー!ていうか優君もなんで何も言わずに黙ってるのさ!!??」
「そこの阿呆は私の曲に夢中になっているので、今は何をしても許されるボーナスタイムなのですよ。だから今のうちに私たちで文香さん御用達の薄い本よろしく好き放題しちゃおうというわけです。やれやれ、自分のことながら恐ろしいものですね。歌一つで人をダメにしてしまうとは...凪ハザードですよ、これは」
「もーーー!!わけわかんないよーーーーー!!!文香さんの趣味は私たちにはまだ早いからダメだって何度も何度も言ってるでしょー!!ほら!いい加減目を覚ましてよ優君!!」
...ハッッ!!!私は一体何を...いやなるほど、なーちゃんのことを考えていたらオタク特有のペチャクチャニチャアをしてしまっていたのか...
というか、いつの間にはーちゃんがいるし、それより私はなんで私はズボンを脱いでいるんだ...???
...とりあえずなーちゃんはあとでしばくか。なんとなく。
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ハイ、唐突ですが私は今どこにいるでしょーか。
「いやー、ららぽついに来たねー優君!いっぱい見てまわろうね!!」
ハイ、ららぽでした(適当)。
あの後ーーなーちゃんにお仕置きをした後、はーちゃんが私と共にどこかお出かけしたいということなので、ららぽにやってきたのだ。ふえぇぇ...人がたくさんいるよぉ...
なーちゃんはといえば、彼女も一応ついてくるはずなのだったが、姉妹で何やらごにょごにょ話し合った結果今日は不参加とのことだった。その時のなーちゃんは「今回は特別ですよ、はーちゃん。ちなみに私はあと三回変身を残していますので、どうかお忘れなきように」などと言っていた。宇宙の帝王様かな?
「ほらほら優君!ぼーっとしてないで行こ行こ!!せっかくのオフの日なんだから、目一杯楽しまなくっちゃ!」
お、おう。しかし待ってくれはーちゃん。私は人混みが大の苦手なのだ。もう既に人酔いしそうなのだが...それに加えて私も一応男ということもあり、珍しいものとして周りから二度見三度見されていて非常に落ち着かない。なるほど、動物園の檻の中の動物達はきっとこんな気分なのだろうな。私だったらストレスで全身の毛がものすごい速度で禿げていきそうだ。
というか、どうでもいいけれどこういうクソでかアウトレットモールって結局アパレル系の店ばっかだよな。私みたいな日陰者はららぽに来ても本屋でラノベ買ってすぐ帰るだけなんだが....
というのは私の本音ではあるのだが、しかし今私の横で楽しそうな顔をしているはーちゃんに馬鹿正直にこんなことを言って悲しませようものなら、今度は私がなーちゃんからお仕置きを受けてしまうだろう。よし、そうと決まればここは全力ではーちゃんの休暇を盛り上げようではないか。いつもお世話になってるもんな、うん。
というか、はーちゃんは駆け出しとはいえアイドルであるのに、男と二人で出かけるのはいいのだろうか?
「あー、スキャンダルとか?でもでもそんなこと気にする人いないよー?まあ男の子と二人でいる私が周りから妬まれちゃうことはあるかもしれないけどねー...」
お、おう。とことん女性に厳しくて男性に甘い世界なのだな。いまだにこのギャップには慣れないな。というかそれだと、はーちゃんは大丈夫なのか...?
「優君と出かけられるのなら、これくらいへっちゃら!!だから優君は私と一緒にいてくれたらそれでいいんだよ?」
ーーーーー天使かな?天使じゃないよ?天使だよ
渋谷優、心の一句。
いやもうほんと、俺はこの子に出会うために前世でゴミムシのような扱いを受けてきたんじゃないか...?うん、そうに違いないな。彼女の尊さと私の前世での不幸度の絶対値取れば一緒くらいだろう。いや、はーちゃんの尊さが5000倍は勝ってるわ。尊みが深すぎて尊み秀吉になってる。彼女の笑顔を見てると、前世での私の傷がどんどん癒されていくかのような...この笑顔はがん患者にも効きますよ、きっと(適当)。はーちゃんの魅力はなんと言っても彼女のこの愛くるしく無邪気で快活な笑顔なのだ。年相応の少女然とした可愛らしい女の子なのだが、一方でまるで万物の母ような、計り知れない包容力を持ち合わせているのだいや人によっては何を矛盾したことを言ってるのだ間抜けと言いたくなるかもしれないがしかし私の方こそそんな戯言を申している無知な輩は義務教育を少なくとも後10回は受け直す必要があると言ってやりたい彼女はもはや私たちのような俗人の理解の及ばない領域にあらせられるお方なのであって我々人類の叡智の及ぶような存在ではないのだ私たちのできることといえば彼女の尊さにただただバブみを感じて崇拝していればいいのだ理解しようなど愚の骨頂思い上がりも甚だしい私が権力者なら処刑不可避の重罪であるからしていや待てそんな世界の母こと至高のお方にあらせられる久川颯様といくらこちらが誘われた側だとしても二人きりで出かけるなど厚顔無恥にもほどがあるのではないかいやしかしここにきて彼女のお誘いを断るなんて逆に失礼でーーーー(オタク特有の早口)
「もう!優君一人でまた変なこと考えてるよ!!せっかく私と遊びに来たのに!!!ぷんすか!!」
....ッハ!また私はやってしまったのか...いやはや、申し訳ない。流石に自重しないと...
「優君がそんなだから、今日はもう変なこと考えちゃう暇なんてないようにお店全部回っちゃうから!覚悟しててね!!」
いい、笑顔です...
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「やははー...ごめんね?流石に振り回しすぎちゃった!てへ☆」
数時間後、私はいわゆるフードコートでくたばり果てていた。
宣言通り、ショッピングモール内ではーちゃんの気になる店全てに連行された結果、情けなくもグロッキー状態である。燃え尽きたぜ、派手にな...でもまあ可愛いから許すよ、うん。
「はいこれ、はーのだけどジュース飲んでいいよ!」
お、おお...ありがてえ...今の俺のジュースにありつく様は、某地下帝国で借金返済のための強制労働の中ビール飲んで涙流してた例のあの人みたいになってると思う。こ、このジュース!キンキンに冷えてやがるッ・・・!!あ・ありがてぇっ・・・!
と、喉をゴキュゴキュ言わせながら飲んでいるとふと気付く。これ、はーちゃんの飲みかけでは...?ぞ、俗にいう間接キッスとやらをしてしまったのでは...?
慌ててはーちゃんの方を見ると、なんだか頬を赤く染めてモジモジしていた...いや、照れ方一つとっても可愛いなこの子。もしや可愛い行動しか取れないのでは?
というどうでもいい思考は私の必死の現実逃避で、実際にははーちゃんのような可愛い子と間接キスしてしまったことでものすごくテンパっていた。いやお前、間接キス程度で何焦ってんだよ童貞か?と思うかもしれない。いや実際童貞なんだけど。でも分かってくれよ。経験値が浅すぎるからこんなことは愚か、多分手をつなぐだけでもかなり心臓バクバクなのだ。実際にこの目で女の子の裸なんて見た日には、多分どこぞのゾンビアイドルの男の娘みたいに心臓飛び抜けると思う。
「じゃ、じゃあ優君。最後にプリ撮ろ!プリ!」
気まずい雰囲気漂う中、それを払拭するように提案してきた。数百円払ってよくわからない加工写真を撮ってくれるプリをご所望のようだが。
プリ、プリかぁ...何度かなーちゃん含め三人でとったことはあるのだが、未だに慣れないんだよな...当然前世ではプリクラなんて撮ったことないから、彼女達に半ば無理やり連れられ生まれて初めて撮ったプリの写真は、かなり変な顔をしていた。割と私の中では黒歴史みたいなとこがある。ちなみにまた取り直すから捨ててくれと頼んでも拒否られた。これも大事な思い出と言われたら如何ともし難いところではあったが、なーちゃんがかなりツボってたのは気に入らなかった。
と、いうわけでやかましいゲーセンのプリ筐体が置いてあるコーナーに到着である。ちなみに私には操作とかよく分からないので全てはーちゃんに任せつつぼーっとする。いや、この狭い中に二人で入るということだけでも緊張するんだよな。
「よ、よーし!始まるよ優君!」
お、もう始まるのか。
私はいっつもどんな表情をしていいのかわからないので、半笑いといえばいいのかわからないがとにかく微妙な表情をしてしまうのだが、しかしあることに気付いて思い切り変な顔をしてしまった。
あの、はーちゃんさん?これカップルコースってやつでは?なんか変な要求されるやつなのでは?
ーーーーお互い抱き合って撮ってみましょう!
なにィッ!?!いきなりなんてこと言い出すんだこの無機物野郎がッ!うっかりジョジョキャラみたいなリアクションとポーズ取っちまったじゃあねぇか!
「は、はわわ...」
いや、選択したの君だよね?何予想外みたいな反応してるのかな?かな?
と、どうすればいいかわからず二人してわちゃわちゃしていたのだが、撮影のカウントダウンが始まってしまった。
ま、まあ無理することないよね。普通に取ればいいのだよ、普通に。普通が一番なんだよ。多分誰か偉い人もこんな感じの名言残してるでしょ、多分。
そう思っていたのだが、横のはーちゃんは何やらムンと気合を入れている様子だった。
「い、いくよ優君!!」
まさか、と思っていたところに彼女の掛け声と同時に、はーちゃんが私の腕に抱きついてきた。瞬間シャッターは切られ、ぱしゃりと音がする。多分ものすごく間抜けな顔をしているんじゃないだろうか。私は今、腕に伝わってくる彼女の柔らかい感触に全ての思考を奪われていた。
お、おうふ...なんとなく知ってはいたけど、この子!なーちゃんにはない巨大なアレをもっているぞッ!!うおおおおおおおおッ!!!!あとすごくいい匂いがします。
これだけでもかなり刺激的で一杯一杯ではあったのだが、そんな私にさらに追い討ちをかけてきた。
ーーーー次は、ほっぺにチューをしてみましょう!!
「〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」
おー、さっきよりも顔赤くしてて可愛いなぁ...ほんと天使みたいな子だよなぁ...
なんてお得意の現実逃避をしていてもどうしようもならないのだが...はーちゃんさん、これ大丈夫?というか君なんだか茹で蛸みたいになってはいないかい?
再び無慈悲にもカウントダウンが始まる。
ならばこその「無」!!祈りを込めた無の心!!呼吸 楽しい...
どこぞの御令嬢の真似をしていたのだが、突然頬に伝わる感触と再び響くシャッター音により現実に引き戻された。あ、あれ...何を...?
と、横を見るとこれ以上ないってくらいに顔を真っ赤にしてプルプル震えているはーちゃんがいた。いや、ほんと...ウブだなぁ...人のことは言えないけど...
とまあ、波乱のプリクラ撮影会は他にもいくつかポーズを取らせた後に幕を閉じたのであった。
ちなみにはーちゃんはこの後すぐに恥ずかしくなったのか、「お手洗いいってくりゅうううううううう!!!!」とダッシュしていってしまった。お、おい。これらくがきとかするんじゃないのか?俺センスないよ?いいの??
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心の底から楽しいと思える、そんな1日だった。
私ーー久川颯は今日、大事なお友達である優君と二人で遊びに来ていた。男女二人で出かけてるし、デ、デートなのかな...?なんて一人舞い上がってもいた。もっとも優君はいつも通りでなんら変わりなかったが。
色々振り回しちゃったのは少し申し訳なかったけど...でもまあ、ぼーっとしてる優君が悪いのだ!うん!
なんて、私はいつも優しい彼に甘えてしまうのだ。今日だって彼は文句ひとつ言わずに私についてきてくれたのだ。彼に体力がないことは知ってるけど、私のために頑張ってくれたのかな?もしそうならとても嬉しいものだ。
それにしても...と、さっきのプリクラでの出来事を思い出す。抱きつくだけじゃなく、ちゅ、ちゅーまでしちゃったんだよね...なーに怒られるかな?
勢いでカップルコースを選んだはいいものの、やはり男性に不慣れな自分はもう半ばヤケクソになっていたのだろう。とても恥ずかしかったけれど...でもそれ以上に、全身が心地よい感覚に満ちていたと思う。もっと彼と触れ合いたいとさえ思えるのだ。
私はもう、彼に対する想いなどとっくに自覚していた。思えば不思議だ。女性を基本的に毛嫌いするはずの男性である彼は、しかし私たち姉妹を最初から暖かく迎え入れてくれた。少し優しくされて好きになるほどチョロい女などでは断じてない、ないと思っていたのだが...気付けば私は彼に恋情を抱いていた。
彼と話せば気持ちが舞い上がるし、アイドル活動に励み会えない日が増えると切なくなる。良くも悪くも、私の日常は確実に前のそれとは異なったものとなった。
今日なーに頼んで二人きりで出かけたのは、単純に彼と一緒にいたいというものあるが、それ以上に少しでも自分という異性を意識してくれればいいな、なんて打算もあった。だから、抱き付いた時に照れていた彼をみて少し嬉しくなったものだ。
この想いをどうするのか、それについてはまだあまり考えてはいない。いつかは伝える予定ではあるけれど、なーがどう思っているのかも考えなきゃいけないもんね。
とりあえず、彼を待たせているから早く行こう。あのプリを撮った後、恥ずかしくなってお手洗いに駆け込んでしまった。自分で提案したのに何してるんだろう...
鏡で身だしなみをチェックしてから急いで彼の元に向かった、が...
「ねえいいじゃーん。私らと遊びに行こうよ、ね?」
「ビクビクしててウケるんだけど!ねえ、彼女とかいるわけー?」
「..あ、あの、トイレ行ってるだけで..」
ナンパされている、その光景に浮かれた気持ちがどこか霧散していく。気分が高揚していたせいか考えが及ばなかった。男の人を一人で放置すればどうなるかなんて分かりきっていたことのはずなのに。
急いで駆け寄り、声を掛ける。
「ご、ごめんねー優君。じゃあ行こっか!」
「へー、優君って言うんだ。いい名前じゃん」
「なになに、彼女さん? (笑)」
「い、いえ、ただの友達ですけど...」
「なーんだ、ならよかった」
「つーか男放置してどっかいくとかありえないっしょ」
「だよねー。つーわけであたしらが面倒見るから、もうアンタ帰っていいよ (笑)」
...否定できなかった。そして否定できない自分が情けなかった。自分の都合で彼を連れ回しているのだから、彼の身を守るのは義務でもあった。それなのに私は一人浮かれて、一体全体何をしていたのだろうか。
さっきまであった暖かい気持ちは一瞬でどこかへ消え、かわりに暗く冷たい感情が私を襲った。
「君もこんな子供なんかよりさー、アタシらといいことしようよー」
「そうそう、アタシらならその子よりもっといろんなことしてあげられるよー?」
...彼はどう思っているのだろう。こんな私よりも彼女達と遊ぶ方が楽しいのだろうか。彼は優しい人だ。ここで私を置いていくなんて薄情なことはしないとは思うけれど、思考はネガティブなことばかりだった。どうしてもそんなことばかり考えてしまって、そしてもし本当に彼がそう考えていたらと思うと、怖くて彼の方を見ることすらできなかった。
ーーー故に久川颯は、この時渋谷優がこれまでにないほど雄々しい表情をしていたのにも気付かなかった。
「...の..は」
「んー?なんて?」
「...この人は、僕の大事な人です。」
「....」
「だから、誰であろうと悪く言うのは許しません」
「え、えーっと」
「...失礼します」
そう言って優君は、私の手を取り彼女達から走るようにして逃げて行った。そう言えば手を繋いだことなど初めてだなぁとぼんやり考えていたが、そんなことは些細なことだった。
ーーーああ、今、私はどんな顔をしているのだろう。きっと、さっきと比にならないくらい顔を真っ赤にして、そしてどうしようもないくらい女の顔をしているはずだ。
彼に手を取られつつ、私たちはアテもなく走っていた。不思議とこのままどこへでもいけそうな気持ちにさえなっていた。さっきまでの暗い気持ちはまた一転し、心地よい幸福感に満ち溢れていた。
やっぱり私は、本当にこの人のことがーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
しばらく彼と一緒に走った後、屋外の広場に出た。すっかり日も暮れかかっていて、夕日が眩しかった。
ナンパをしてきた女性はついてきておらず、そのことを確認した優君は足を止めた。ぜーはーこひゅーと息を荒げて必死に酸素を取り込もうとしている姿は、さっきまでのなんでもできそうなくらい頼もしい様子とは180度違っていて笑ってしまった。
さっきの彼の言葉を反芻する。その作業で今の自分はいっぱいいっぱいだった。想い人に大事な人だと言われただけで、こうも自分は幸福になるのかと、自身の単純さに驚いた。これじゃあ、なーにいつも初心だなんだと言われているのも否定できないなぁと少し自分に呆れる。
「...あの、はーちゃん」
「...ん、なーに?」
「ええっと..さっきあの人達に少し言われてたけど..」
「...うん」
「僕は今日はーちゃんと遊べてとても楽しかったから...はーちゃんと一緒だったから楽しかったから...」
「...うん、うん..!」
そう言うや否や、恥ずかしくなったのか優君は後ろを向いてしまった。らしいなあと思いつつ、私は自身のとある感情が溢れ出てくるのを止める事ができそうにもないことに気付いた。我慢などもうすでに、できるはずもなかった。
彼の背中に、勢いよく抱きつく。変な声を出して固まっている彼とは正反対に、今の私には以前までの羞恥心など一切なかった。当然だ。私は今、覚悟を決めたのだから。
ーー本当なら、
そうして意を決して、口を開いた。
「...ねえ、優君」
「...うん」
「...あのね、私ね?」
「.....うん」
「私ね?優君のことがね?」
「.....」
「優君のことがーーーー」
「「うわあああああ!!!!」」
急に現れた人と声におどろいて、彼と一緒になって叫ぶ。
「ねえ、今何してたの?あんなに近くに寄り添って...まるで恋人みたいに...!」
「こ、恋人なんてそんな...!」
「お姉、いたんだ...お、驚かさないでよ」
「私もいるよー。久しぶり〜弟くん。あとついでに奈緒もいるよ」
「人をついで扱いするなよ、全く...ひ、ひさしぶりだな、優」
「あ、どうも...北条さん、神谷さん」
「もう、加蓮でいいよって何回も言ってるでしょー?」
「えっと、は、恥ずかしくて....」
「あはは、ほんと弟くんはかわいいな〜うりうり〜」
「ちょっと加蓮、優に色目使うのやめてよ。○すよ?」
「お、おい凛。落ち着けって、な?あんま言ってると颯ちゃんも引くからな?」
「なに??奈緒も優に唾つけようってわけ?!?」
「だから落ち着けよォォ!!!」
さっきとは打って変わった雰囲気に、思わず笑ってしまった。さっきまでの
「それより、ねえアンタ、聞いてるの?何してたの?場合によっては後輩だろうと...」
「あは、あはは。なんでもないですよ、先輩!いえ、
「何一人で笑ってるの?あと私はアンタのお義姉さんじゃない!!!」
けれど、今はまだ、この関係を楽しむのも悪くはないはずだ。告白だって、これからいくらでも機会はあるだろう。今はまだ、このままでも充分だ。
「...ねえ、優君!」
「な、なにかな?」
「これからもよろしくね!!」
「...うん。こちらこそ、よろしくね」
だって、私の毎日は、優君やなー達と共にある私の毎日は、もう既に幸せに満ち溢れているのだから-----
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「信じて送り出したはーちゃんがやらかしていた件について」
「.....」
「...このキスプリはなんですか?何もしないって言ってましたよね?何か言い分はありますか、久川颯被告人」
「......」
「...覚悟はいいか?ワタシはできてる」
「ごべんなざああああああああああああああああああああああああああああいいいいいいいいい〜〜〜〜〜〜〜〜」
はい、というわけではーちゃん好きのキモい妄想詰め込んだ作品でした。オチ担当の渋谷さんグレートですよ、こいつはァ..
はーちゃんメインでしたが、ちなみに僕はなーちゃんの方がすこです。いややっぱりどっちもすこです。
好評、酷評、いずれもお待ちしております。ではまた数ヶ月後に書いていれば...