星空へ架かる橋2   作:真田信之

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第7話・動物は恩を忘れない前編

雷牙達が、朝ご飯を食べようとしている頃、よろづよの旧館の屋根が、さわがしかった。

 

それもそのはず、たくさんのカラスの群れが止まっていたのだから。

 

それに気づいた、女将・千歌とアルバイトで仲居見習いのつむぎ、そして、従業員の人も見ていた。

 

千歌「なんで、あんなにたくさんのカラスが!?」

 

つむぎ「あ、女将!?」

 

千歌「…ん、どうしたの、つむぎ?」

 

つむぎ「あれ!?」

 

つむぎが、旧館の屋根を指した、指した場所にいたのは。

 

つむぎ「走さん!?」

 

千歌「走くん!?」

 

走がいた。走はカラス達と何やら、楽しそうにおしゃべりしていた。

 

千歌「なんで、あそこにいて、カラスと!?」

 

とそこへ

 

楓「走様~」

 

千歌「……?」

 

つむぎ「楓ちゃん?」

 

楓が現れた。

 

楓「走様~」

 

走「…ん?」

 

楓「朝食の準備ができましたので、降りて来てくださ~い」

 

言われたとおり、走は、旧館の屋根から、大きくジャンプ、からの前宙でかっこよく着地した。

 

それを見た、将・千歌とアルバイトで仲居見習いのつむぎ、そして、従業員の人は呆然としていた。

 

楓「さあ、行きましょう、走様」

 

走「……(ペコリ)」

 

2人は、その場を去った。

 

朝食を食べ終わり、よろづよの新館の玄関では、雷牙達とつむぎが、靴を履いて準備していた走と楓を待っていた。

 

雷牙「それでは、千歌殿」

 

日向「学校に、行ってまいります」

 

海野兄弟「……(ペコリ)」

 

つむぎ「行ってまいります、女将」

 

楓「行ってきます、千歌様」

 

走「……(ペコリ)」

 

千歌「はい、車に気を付けて、行ってらっしゃい」

 

雷牙「あ、そう言えば、楓」

 

楓「はい」

 

楓は千歌のいる方に、向きなおした。

 

千歌「何かしら、楓ちゃん?」

 

楓「はい、今日の午後、走様のご家族が来ます、ですので」

 

雷牙「ここ、よろづよにまねいてよろしいでしょうか?」

 

走「……(ペコリ)」

 

千歌「え、今日? ええ、いいわよ」

 

雷牙「あ」

 

楓「ありがとうございます」

 

走「……(ペコリ)」

 

3人は、深々と頭を下げるのだった。

 

我夢「すみませーん」

 

3人「……?」

 

我夢「雷牙様、楓、走、早く行かねば、遅れてしまいますぞ」

 

すでに、外に出ていた我夢に呼ばれた3人。

 

雷牙「あ!」

 

楓「はい、すぐ参ります」

 

走「……(ペコリ)」

 

楓「では、お願いいたします」

 

千歌「分かったわ」

 

バイクモードで佐助が、出てきた。

 

佐助「気を付けてな」

 

雷牙の部屋で、白炎と子虎達が、呑気にあくびをしていた。

 

白炎「がはぁー」

 

子虎達「きゃはぁー」

 

雷牙達はよろづよを後にし、初、伊吹とぱったり合って、共に登校の途中、走は、木から降りられなくなった猫を見つけた。走は木に登り、その手に猫を抱き、木から大きくジャンプして、今朝と同じように前宙してかっこよく着地した。

 

さっき同様、今度も初たちは呆然としていた。

 

走「ほら…」

 

猫を放した走は、立ち去る猫に手を振った

 

猫「ニャー」

 

伊吹「それにしても、走、あんたって」

 

走「……?」

 

伊吹「なでしこと似た動きをするわね」

 

大吾「そりゃそうだぜ、日向、忍び、忍者だぜ、彼女も」

 

伊吹「あ!」

 

初「そうだったね!」

 

つむぎ「昨日の事なのに、もう」

 

大吾「忘れちゃったのかよ」

 

再び歩き始めた、雷牙達。

 

走は、近くに寄って来た2匹の猫とじゃれ合いながら歩いていた。

 

走「よし…よし…」

 

猫D「ニャー❤」

 

猫K「ミャー❤」

 

走「いい子…いい子…」

 

伊吹「走って」

 

走「……?」

 

伊吹「動物好きなの?」

 

走「……!」

 

伊吹「図星みたいね」

 

大吾「図星だな」

 

走「否…!」

 

雷牙「いや、違うぞ」

 

楓「はい、雷牙様の言うとおり、違います、皆さま」

 

みんな「……?」

 

楓「走様は、動物が好きなのではなく、動物が」

 

雷牙「大好きなのですよ、好きではなく、大好き、動物を心から愛しているんです、走は」

 

楓「もちろん、私への思いとは、また別ですが❤」

 

それを聞いた、走は。

 

走「い…否…!」

 

頬を赤くして、木を木の間と渡りながら、行ってしまった。

 

初「あ」

 

大吾「照れて、行っちゃったな」

 

伊吹「あの方向は」

 

つむぎ「高等部がある方向ね」

 

初「あ、中等部の橋が見えて来たよ」

 

なでしこ「それでは、雷牙様」

 

雷牙「ああ」

 

なでしこ「楓ちゃん」

 

楓「はい」

 

そう言って、なでしこ、楓の2人は中等部につながる橋を渡って行った。

 

雷牙「……」

 

日向「雷牙」

 

我夢「我々も」

 

七海「……」

 

雷牙「はい」

 

雷牙達も歩き始めた

 

中等部の道を歩いていた楓は、なぜか引き返していた。走って。

 

高等部では、先についていた走が、なぜか注目されていた。

 

走「……?」

 

首をかしげる中、走は、雷牙がいる2年の教室に入って、なお、注目されていた。

 

走「雷牙…様…?」

 

雷牙「走!」

 

大吾「おっほん、猿飛くん」

 

走「……?」

 

大吾「君、今」

 

東海林「すごい」

 

西「有名人だよ」

 

走「……?」

 

雷牙「走、これ」

 

走に見せたのは、この前、雷牙が少年を助けた後におぼれ、我夢に人工呼吸された時に、かさねが勝手に撮った写真が載っていた、かさねタイムズの号外だった。

 

今度は、山から出てきて興奮した熊が、猟師に打たれそうになるのを、走が止め、その熊を助け山へ返したと言う記事と、婚約者の楓は美人で、海野兄弟の従妹である事、そして、走が16歳にして、獣医の免許を持っている事であった。

 

学園中、その話題でもちきりだった。

 

西「ねぇ、猿飛くん」

 

走「……?」

 

西「16歳にして、獣医の免許を持っているって話は、本当かい?」

 

走「……(ペコリ)」

 

走はスマホを取出し、免許の画像を2年生に見せた。

 

西「おおー!」

 

東海林「マジかよ」

 

七海「ええ」

 

我夢「マジです」

 

楓「走様」

 

みんな「……!?」

 

2年の教室にいた全員が、教室の出入り口に、視線を向けると、入って来たのは。

 

楓「は、は、は、はー」

 

走「楓…!?」

 

海野兄弟「楓…!?」

 

雷牙「楓…!?」

 

大吾「楓ちゃん…!?」

 

みんな「楓?」

 

入って来たのは、汗だくで、息を切らして来た、楓だった。

 

女子M「ねぇ、初、日向、楓って?」

 

女子C「かさねタイムズに、載っていた?」

 

初「うんそうだよ、走くんの婚約者で」

 

伊吹「我夢と七海の従妹の月村 楓ちゃんよ」

 

楓「あ、は、は、は、はー、はい、月村 楓です、みなさん」

 

汗だくで、息を荒げつつ、楓はここでも軽くお辞儀した、と同時に、楓の豊かな胸が、ポヨン、と揺れ、それを見た、雷牙、海野兄弟、走、初、伊吹以外は驚いた表情を見せ、それぞれ心の中で思っていた。

 

東海林(うわぁー、大吾の言ってたとおりだ!)

 

西(藤堂先輩、酒井先輩、神本に負けず劣らず、楓ちゃんの胸って!)

 

男子達(豊かでいい胸だな~)

 

女子L(うわぁー、何をたくさん食べたら!?)

 

女子M(あんなに大きな胸になるのよ!?)

 

女子K(あの胸きっと)

 

女子達(Fね!)

 

女子達が心で思う中、大吾、西、東海林が、楓によってたかってきた。

 

西「ねぇ、ねぇ、楓ちゃん、今度、一緒にバク・パイプで、お茶しない?」

 

東海林「あ、ずるいぞ、西」

 

大吾「そうだ、そうだ」

 

西「早いもん勝ちだよ、ねぇ、楓ちゃん❤」

 

美人すぎる楓を、他の男子達もちやほやする、そんな中。

 

楓「ふん」

 

機嫌悪そうな表情見せ、そっぽを向いてしまった。

 

それでもなお、男子達は、よってたかって、見た目だけをちやほやした。それを見た、雷牙は。

 

雷牙「やめぬかー」

 

大きい声を上げ、男子達を止めた。

 

雷牙「大吾殿、西殿、東海林殿、それに他の、男性の者たちも、楓が美人すぎて、お茶に誘ったり、デートに誘いたい、というお気持ちは分かります。が、かさねタイムズにも載っていましたが、楓は走の婚約者です」

 

男子達「あ」

 

雷牙「その辺をお忘れなきよう」

 

我夢「それと、もう一つ、お願いしたい義がございます」

 

七海「特に、男性の皆様に」

 

我夢「見てわかるように楓は美人です、我が」

 

七海「海野一族の自慢の娘ですが、美人すぎて」

 

我夢「見た目だけをちやほやする、ろくでもないあなた達のような」

 

七海「男ばかりが」

 

男子達(ろくでもない)

 

我夢「よってたかって告白してくる。なので」

 

七海「すっかり男嫌いになって」

 

海野兄弟「しまったのです」

 

みんな「息合っている、この兄弟!」

 

雷牙「まあ」

 

みんな「ん?」

 

雷牙「それは、走に出会う前の話で、今は、そんなに男嫌いはひどくはありません、ですからみなさん」

 

みんな「……?」

 

雷牙「特に、男子のみなさん」

 

男子達「……?」

 

雷牙「せっかく、男嫌いが治りかけている、楓を」

 

我夢「よってたかって、ちやほやするのを」

 

七海「やめていただきませんか、女子の皆様も」

 

女子達「……?」

 

3人「お願いします」

 

走「……(ペコリ)」

 

4人は軽くお疑似をした。

 

伊吹「ほら」

 

4人「……!?」

 

伊吹「ここまで言っているんだから、男子達も女子達も」

 

東海林「へぇーい」

 

女子G「はぁーい」

 

モチベーションが下がったような顔をした。

 

雷牙「話を戻すが」

 

走「楓…なぜ…来た…?」

 

楓「はい、これを、走様に届けるために」

 

楓が出したのは、雷牙と同じ段数の重箱を、走に渡した。それを見た、2年生は驚いた表情を見せていた。

 

伊吹「改めて!?」

 

初「見て見ると!?」

 

大吾「兄弟と同じ重箱で、すごい量だな」

 

楓「はい、これ全部、走様のお弁当です。雷牙様とおんなじ量です」

 

みんな(マジか!?)

 

我夢「おい、楓」

 

楓「はい」

 

我夢「早く戻れ、もうすぐ授業が始まる時間だぞ、中等部の」

 

楓「あ、はい」

 

七海「……」

 

雷牙「よし、走」

 

走「は」

 

雷牙「楓を、送っていけ、中等部へ」

 

走「御意…楓…」

 

走は楓をお姫様抱っこした。

 

みんな「おおー」

 

大吾「まさか、ここで!」

 

初「お姫様抱っこするなんて!?」

 

伊吹「どうゆうつもり?」

 

それぞれが、走につぶやく中、走は。

 

走「楓…よく…捕まって…」

 

楓「はい」

 

そう言って、走は、2年の教室の窓から飛び出した、それを見た、雷牙、日向、海野兄弟以外の全クラスメイト達は驚いた表情を見せていた。

 

そして、走は楓を抱いたまま、すごいスピードで、中等部へと向かって行った。

 

それから、あっと言う間に学校が終わり、下校していた、雷牙、日向、海野兄弟、初、伊吹、大吾、つむぎ、そして、走の9人は、下校の途中、なでしこ、かさね、楓とばったり会い合流し、よろづよへと向かい、たどり着くと、一台の大きいトラックがよろづよの新館の玄関で止まっていた。

 

つむぎ「何のトラックかしら?」

 

かさね「むぎ姉、知らないの?」

 

つむぎ「ええ、女将からは何も聞いてないわよ?」

 

そんな中、走はそのトラックに向かって走って行った。

 

そこには、すでに千歌がいて

 

千歌「ギャー」

 

雷牙「今の叫び声は!?」

 

つむぎ「女将!?」

 

全員、叫び声が聞こえた、新館の玄関へと直行した。

 

つむぎ「女将、いったい何が、あ、キャー!」

 

伊吹「どう、しまし、たか!」

 

女将の千歌は、すでに白目をむいて倒れていて、先についていた、つむぎも倒れていた。その理由は。

 

みんな「熊!」

 

雷牙、日向、海野兄弟、なでしこ、走、そして、楓以外の全員、腰を抜かし、尻餅をついていた。それもそのはず、玄関の出入り口に熊が立っていたのだから。

 

大吾「な、なんで、熊がこんなところに!?」

 

走「お…お前…昨日…の…」

 

走は、熊に近づいた。

 

楓「あれ、この熊、何かいっぱい持っていますよ、皆さま!?」

 

みんな「え?」

 

その熊は何やら沢山、前足に持っていた、それは。

 

かさね「これって?」

 

初「山菜がいっぱいだー」

 

熊はたくさんの山菜を持っていた。

 

走「これ…くれる…のか…?」

 

熊は頷いた。その後、熊は山菜をおいて、四足歩行でよろづよをさって行った。

 

みんな「ありがとー」

 

つむぎ「それにしても、何で熊が山菜を?」

 

走「昨日…の…お…礼…って…言っていた」

 

みんな「お礼?」

 

初「ああ、昨日、撃たれそうになって、助けた時の」

 

走「……(ペコリ)」

 

かさね「動物は、恩を忘れないとはよく言いますね」

 

雷牙「ああ」

 

千歌「は!」

 

大慌てで、千歌が目を覚ました。

 

千歌「熊は、熊はどこへ!?」

 

日向「熊なら、もう」

 

七海「去りましたよ、たくさんの山采菜を残して」

 

千歌「山菜?」

 

みんな「ばいばいぁー」

 

手を振って、熊を見送るのだった。

 

その頃、トラックの荷台の中では、何やら黒い大小の影が、ごそごそと動いていた

 

           つづく

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