雷牙達が、朝ご飯を食べようとしている頃、よろづよの旧館の屋根が、さわがしかった。
それもそのはず、たくさんのカラスの群れが止まっていたのだから。
それに気づいた、女将・千歌とアルバイトで仲居見習いのつむぎ、そして、従業員の人も見ていた。
千歌「なんで、あんなにたくさんのカラスが!?」
つむぎ「あ、女将!?」
千歌「…ん、どうしたの、つむぎ?」
つむぎ「あれ!?」
つむぎが、旧館の屋根を指した、指した場所にいたのは。
つむぎ「走さん!?」
千歌「走くん!?」
走がいた。走はカラス達と何やら、楽しそうにおしゃべりしていた。
千歌「なんで、あそこにいて、カラスと!?」
とそこへ
楓「走様~」
千歌「……?」
つむぎ「楓ちゃん?」
楓が現れた。
楓「走様~」
走「…ん?」
楓「朝食の準備ができましたので、降りて来てくださ~い」
言われたとおり、走は、旧館の屋根から、大きくジャンプ、からの前宙でかっこよく着地した。
それを見た、将・千歌とアルバイトで仲居見習いのつむぎ、そして、従業員の人は呆然としていた。
楓「さあ、行きましょう、走様」
走「……(ペコリ)」
2人は、その場を去った。
朝食を食べ終わり、よろづよの新館の玄関では、雷牙達とつむぎが、靴を履いて準備していた走と楓を待っていた。
雷牙「それでは、千歌殿」
日向「学校に、行ってまいります」
海野兄弟「……(ペコリ)」
つむぎ「行ってまいります、女将」
楓「行ってきます、千歌様」
走「……(ペコリ)」
千歌「はい、車に気を付けて、行ってらっしゃい」
雷牙「あ、そう言えば、楓」
楓「はい」
楓は千歌のいる方に、向きなおした。
千歌「何かしら、楓ちゃん?」
楓「はい、今日の午後、走様のご家族が来ます、ですので」
雷牙「ここ、よろづよにまねいてよろしいでしょうか?」
走「……(ペコリ)」
千歌「え、今日? ええ、いいわよ」
雷牙「あ」
楓「ありがとうございます」
走「……(ペコリ)」
3人は、深々と頭を下げるのだった。
我夢「すみませーん」
3人「……?」
我夢「雷牙様、楓、走、早く行かねば、遅れてしまいますぞ」
すでに、外に出ていた我夢に呼ばれた3人。
雷牙「あ!」
楓「はい、すぐ参ります」
走「……(ペコリ)」
楓「では、お願いいたします」
千歌「分かったわ」
バイクモードで佐助が、出てきた。
佐助「気を付けてな」
雷牙の部屋で、白炎と子虎達が、呑気にあくびをしていた。
白炎「がはぁー」
子虎達「きゃはぁー」
雷牙達はよろづよを後にし、初、伊吹とぱったり合って、共に登校の途中、走は、木から降りられなくなった猫を見つけた。走は木に登り、その手に猫を抱き、木から大きくジャンプして、今朝と同じように前宙してかっこよく着地した。
さっき同様、今度も初たちは呆然としていた。
走「ほら…」
猫を放した走は、立ち去る猫に手を振った
猫「ニャー」
伊吹「それにしても、走、あんたって」
走「……?」
伊吹「なでしこと似た動きをするわね」
大吾「そりゃそうだぜ、日向、忍び、忍者だぜ、彼女も」
伊吹「あ!」
初「そうだったね!」
つむぎ「昨日の事なのに、もう」
大吾「忘れちゃったのかよ」
再び歩き始めた、雷牙達。
走は、近くに寄って来た2匹の猫とじゃれ合いながら歩いていた。
走「よし…よし…」
猫D「ニャー❤」
猫K「ミャー❤」
走「いい子…いい子…」
伊吹「走って」
走「……?」
伊吹「動物好きなの?」
走「……!」
伊吹「図星みたいね」
大吾「図星だな」
走「否…!」
雷牙「いや、違うぞ」
楓「はい、雷牙様の言うとおり、違います、皆さま」
みんな「……?」
楓「走様は、動物が好きなのではなく、動物が」
雷牙「大好きなのですよ、好きではなく、大好き、動物を心から愛しているんです、走は」
楓「もちろん、私への思いとは、また別ですが❤」
それを聞いた、走は。
走「い…否…!」
頬を赤くして、木を木の間と渡りながら、行ってしまった。
初「あ」
大吾「照れて、行っちゃったな」
伊吹「あの方向は」
つむぎ「高等部がある方向ね」
初「あ、中等部の橋が見えて来たよ」
なでしこ「それでは、雷牙様」
雷牙「ああ」
なでしこ「楓ちゃん」
楓「はい」
そう言って、なでしこ、楓の2人は中等部につながる橋を渡って行った。
雷牙「……」
日向「雷牙」
我夢「我々も」
七海「……」
雷牙「はい」
雷牙達も歩き始めた
中等部の道を歩いていた楓は、なぜか引き返していた。走って。
高等部では、先についていた走が、なぜか注目されていた。
走「……?」
首をかしげる中、走は、雷牙がいる2年の教室に入って、なお、注目されていた。
走「雷牙…様…?」
雷牙「走!」
大吾「おっほん、猿飛くん」
走「……?」
大吾「君、今」
東海林「すごい」
西「有名人だよ」
走「……?」
雷牙「走、これ」
走に見せたのは、この前、雷牙が少年を助けた後におぼれ、我夢に人工呼吸された時に、かさねが勝手に撮った写真が載っていた、かさねタイムズの号外だった。
今度は、山から出てきて興奮した熊が、猟師に打たれそうになるのを、走が止め、その熊を助け山へ返したと言う記事と、婚約者の楓は美人で、海野兄弟の従妹である事、そして、走が16歳にして、獣医の免許を持っている事であった。
学園中、その話題でもちきりだった。
西「ねぇ、猿飛くん」
走「……?」
西「16歳にして、獣医の免許を持っているって話は、本当かい?」
走「……(ペコリ)」
走はスマホを取出し、免許の画像を2年生に見せた。
西「おおー!」
東海林「マジかよ」
七海「ええ」
我夢「マジです」
楓「走様」
みんな「……!?」
2年の教室にいた全員が、教室の出入り口に、視線を向けると、入って来たのは。
楓「は、は、は、はー」
走「楓…!?」
海野兄弟「楓…!?」
雷牙「楓…!?」
大吾「楓ちゃん…!?」
みんな「楓?」
入って来たのは、汗だくで、息を切らして来た、楓だった。
女子M「ねぇ、初、日向、楓って?」
女子C「かさねタイムズに、載っていた?」
初「うんそうだよ、走くんの婚約者で」
伊吹「我夢と七海の従妹の月村 楓ちゃんよ」
楓「あ、は、は、は、はー、はい、月村 楓です、みなさん」
汗だくで、息を荒げつつ、楓はここでも軽くお辞儀した、と同時に、楓の豊かな胸が、ポヨン、と揺れ、それを見た、雷牙、海野兄弟、走、初、伊吹以外は驚いた表情を見せ、それぞれ心の中で思っていた。
東海林(うわぁー、大吾の言ってたとおりだ!)
西(藤堂先輩、酒井先輩、神本に負けず劣らず、楓ちゃんの胸って!)
男子達(豊かでいい胸だな~)
女子L(うわぁー、何をたくさん食べたら!?)
女子M(あんなに大きな胸になるのよ!?)
女子K(あの胸きっと)
女子達(Fね!)
女子達が心で思う中、大吾、西、東海林が、楓によってたかってきた。
西「ねぇ、ねぇ、楓ちゃん、今度、一緒にバク・パイプで、お茶しない?」
東海林「あ、ずるいぞ、西」
大吾「そうだ、そうだ」
西「早いもん勝ちだよ、ねぇ、楓ちゃん❤」
美人すぎる楓を、他の男子達もちやほやする、そんな中。
楓「ふん」
機嫌悪そうな表情見せ、そっぽを向いてしまった。
それでもなお、男子達は、よってたかって、見た目だけをちやほやした。それを見た、雷牙は。
雷牙「やめぬかー」
大きい声を上げ、男子達を止めた。
雷牙「大吾殿、西殿、東海林殿、それに他の、男性の者たちも、楓が美人すぎて、お茶に誘ったり、デートに誘いたい、というお気持ちは分かります。が、かさねタイムズにも載っていましたが、楓は走の婚約者です」
男子達「あ」
雷牙「その辺をお忘れなきよう」
我夢「それと、もう一つ、お願いしたい義がございます」
七海「特に、男性の皆様に」
我夢「見てわかるように楓は美人です、我が」
七海「海野一族の自慢の娘ですが、美人すぎて」
我夢「見た目だけをちやほやする、ろくでもないあなた達のような」
七海「男ばかりが」
男子達(ろくでもない)
我夢「よってたかって告白してくる。なので」
七海「すっかり男嫌いになって」
海野兄弟「しまったのです」
みんな「息合っている、この兄弟!」
雷牙「まあ」
みんな「ん?」
雷牙「それは、走に出会う前の話で、今は、そんなに男嫌いはひどくはありません、ですからみなさん」
みんな「……?」
雷牙「特に、男子のみなさん」
男子達「……?」
雷牙「せっかく、男嫌いが治りかけている、楓を」
我夢「よってたかって、ちやほやするのを」
七海「やめていただきませんか、女子の皆様も」
女子達「……?」
3人「お願いします」
走「……(ペコリ)」
4人は軽くお疑似をした。
伊吹「ほら」
4人「……!?」
伊吹「ここまで言っているんだから、男子達も女子達も」
東海林「へぇーい」
女子G「はぁーい」
モチベーションが下がったような顔をした。
雷牙「話を戻すが」
走「楓…なぜ…来た…?」
楓「はい、これを、走様に届けるために」
楓が出したのは、雷牙と同じ段数の重箱を、走に渡した。それを見た、2年生は驚いた表情を見せていた。
伊吹「改めて!?」
初「見て見ると!?」
大吾「兄弟と同じ重箱で、すごい量だな」
楓「はい、これ全部、走様のお弁当です。雷牙様とおんなじ量です」
みんな(マジか!?)
我夢「おい、楓」
楓「はい」
我夢「早く戻れ、もうすぐ授業が始まる時間だぞ、中等部の」
楓「あ、はい」
七海「……」
雷牙「よし、走」
走「は」
雷牙「楓を、送っていけ、中等部へ」
走「御意…楓…」
走は楓をお姫様抱っこした。
みんな「おおー」
大吾「まさか、ここで!」
初「お姫様抱っこするなんて!?」
伊吹「どうゆうつもり?」
それぞれが、走につぶやく中、走は。
走「楓…よく…捕まって…」
楓「はい」
そう言って、走は、2年の教室の窓から飛び出した、それを見た、雷牙、日向、海野兄弟以外の全クラスメイト達は驚いた表情を見せていた。
そして、走は楓を抱いたまま、すごいスピードで、中等部へと向かって行った。
それから、あっと言う間に学校が終わり、下校していた、雷牙、日向、海野兄弟、初、伊吹、大吾、つむぎ、そして、走の9人は、下校の途中、なでしこ、かさね、楓とばったり会い合流し、よろづよへと向かい、たどり着くと、一台の大きいトラックがよろづよの新館の玄関で止まっていた。
つむぎ「何のトラックかしら?」
かさね「むぎ姉、知らないの?」
つむぎ「ええ、女将からは何も聞いてないわよ?」
そんな中、走はそのトラックに向かって走って行った。
そこには、すでに千歌がいて
千歌「ギャー」
雷牙「今の叫び声は!?」
つむぎ「女将!?」
全員、叫び声が聞こえた、新館の玄関へと直行した。
つむぎ「女将、いったい何が、あ、キャー!」
伊吹「どう、しまし、たか!」
女将の千歌は、すでに白目をむいて倒れていて、先についていた、つむぎも倒れていた。その理由は。
みんな「熊!」
雷牙、日向、海野兄弟、なでしこ、走、そして、楓以外の全員、腰を抜かし、尻餅をついていた。それもそのはず、玄関の出入り口に熊が立っていたのだから。
大吾「な、なんで、熊がこんなところに!?」
走「お…お前…昨日…の…」
走は、熊に近づいた。
楓「あれ、この熊、何かいっぱい持っていますよ、皆さま!?」
みんな「え?」
その熊は何やら沢山、前足に持っていた、それは。
かさね「これって?」
初「山菜がいっぱいだー」
熊はたくさんの山菜を持っていた。
走「これ…くれる…のか…?」
熊は頷いた。その後、熊は山菜をおいて、四足歩行でよろづよをさって行った。
みんな「ありがとー」
つむぎ「それにしても、何で熊が山菜を?」
走「昨日…の…お…礼…って…言っていた」
みんな「お礼?」
初「ああ、昨日、撃たれそうになって、助けた時の」
走「……(ペコリ)」
かさね「動物は、恩を忘れないとはよく言いますね」
雷牙「ああ」
千歌「は!」
大慌てで、千歌が目を覚ました。
千歌「熊は、熊はどこへ!?」
日向「熊なら、もう」
七海「去りましたよ、たくさんの山采菜を残して」
千歌「山菜?」
みんな「ばいばいぁー」
手を振って、熊を見送るのだった。
その頃、トラックの荷台の中では、何やら黒い大小の影が、ごそごそと動いていた
つづく