憧れの仮想世界で   作:オリver

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読みづらいところがあったら指摘してくれるとうれしいです。


第二話 邂逅

 俺、来野春人(くのはると)は重度のゲーマーだ。

 一日に大体十時間くらいは何かしらのゲームをやってる。

 

 

 学校?あの超お馬鹿高校にまじめに通う奴がいたら逆に見てみたいわ。

 先生も適当で、朝の集会にさえ出ればもう完璧出席扱いだしな。

 だから俺は朝だけ行ってすぐ帰るか、またはそのまま学校で携帯型のゲームしてるかのどっちかだ。

 

 

 学校のゲーム仲間と通信したり、情報交換もする。

 でも俺の知らない情報持ってる奴なんてほとんどいないけどな。

 え、勉強?なにそれ食えんの?

 

 

 まあとにかくそんな学校だから就職するときの内心なんて中卒よりも悪いらしい。

 どんだけだよそれ。

 俺は就職するつもりはないからいいけどさ。

 

 

 …いや別にニートになる訳じゃない。

 バイトをちょいちょいやって生活費とゲーム買うお金だけ稼ぐつもりだ。

 もう親から離れて(追い出されて?)一人暮らししてるんだし、最低限自分の生活だけ守れれば問題ない。

 

 

 ちなみに俺はまだ学生だから親から仕送りが来る。

 だから今まではそのバイトすらもやったことがなかった。

 働きたくないでござる、だ。

 ゲーム代で生活費が毎月ギリギリだけど、それでも何とかなっていたし。

 

 

 

 さて、突然ですがここでみんなに問題です。

 ソードアートオンライン(ナーブギアとセット)はいくらでしょう?

 

 

 

 

 

 

 …12万8千円。

 俺の貯金?5円。

 ひのきのぼうでラスボス挑むくらい無理ゲーだった。

 ちくせう。

 ナイフでゾンビ無双くらいだったらいけたのに。

 って関係ないか。

 

 

 …いや、それでも正式サービス開始までまだけっこう時間があったし、他のゲーム買うのを我慢すればなんとか工面できるはずだったんだ。

 

 

 そしたらダメ元で出したβテスト参加権がまさかの当選。

 お金払うのが何ヶ月も早くなってまじオワタ。

 倍率百倍以上当たるってどういうことだよ。

 いや、うれしいんだけどさ、もちろん。

 しかし完全手放しでは喜べなかった。

 

 

 というわけでβテスト版SAO購入引き替えまでの一ヶ間毎日死ぬ気でバイトした。

 昼間だと学校サボってることがばれていまうので夕方から夜中にかけてだ。

 

 

 ちなみに家からほとんど外に出ない俺は当然体力が無い。

 夜中の工事のバイトなんて初めて行った日にぶっ倒れた。

 力仕事じゃないバイトだとしても、立ちっぱなしになることが多かったのでそれで十分死ねた。

 足が生まれたての子鹿ちゃん状態。

 死にたいとか、赤ちゃんの頃に戻りたいとか、異世界に転生してチートでハーレムしたいとか現実逃避することもあったけど、なんとか買えるだけのお金を作り出すことができた。

 

 

 ただ、生活費がかなり圧迫されているからしばらくは食事は一日に食パン一枚。

 けど、仮想世界で食事できるらしいからそれに関してはそこまで心配はしていない。

 最近ちょっとお腹の肉が気になってたし、むしろいいダイエットになりそうだ。

 体には悪そうだけど。

 

 

 

 

 まあそんな話は置いといて。

 俺は今、その苦労して手に入れた『ソードアートオンライン』のスタート地点である『始まりの町』の大通りを歩いている。

 

 

 石造りでできた町並みはいかにもファンタジーらしい雰囲気で、並ぶ店々から呼び込みをしているNPCや、買い物やパーティ勧誘をしている多くのプレイヤーたちで活気に溢れていた。

 剣や装飾品、ポーションなんかが店頭に置いてあって、それを見ると改めてここが現実の世界ではないんだと実感できる。

 

 

 それらの店には入らず、とりあえず俺にとって今一番大切な飲食店を探していた。

 さっきは感動で忘れていたけど、ここ二日くらいはほとんど何も食べていないので今めっちゃ腹減ってる。

 空腹誤魔化すために塩かじるとか、いつの時代だよ…

 

 

「うお…っとと」

 

 

 なんて最近の食生活に対して思いを馳せていたせいか、俺は向かい側から歩いてきた人に気づかずにぶつかってしまった。

 

「悪い。ちょっとぼーっとしてたわ」

 

 

 即座に謝る俺マジ日本人。

 いやぶつかったの普通に俺が悪いんだけどね。

 敬語使おうか迷ったけど、オンラインとかだと初対面でもフランクに話す人が多い。

 なら素のしゃべり方でも大丈夫だろう。

 

「い、いやこっちこそ悪かった。あんまり町並みがすごくて…ちゃんと前を見てなかったんだ」

 

 よかった。

 こういうときのお約束でチンピラ風の人に絡まれるのかなとか思ってたけど違うらしい。

 黒髪イケメンの勇者顔。

 返事の内容をみても普通にいい人そうだった。

 若干どもってるのが気になったけど。

 

 

「まあ、確かにすごいよな、この町並み。グラフィックやばいし、まるで異世界に来たみたいだ」

「ああ、ゲームの中とは思えないよな…このゲーム買えるなんて、お互い本当運がいいよな」

「全くだ」

 

 しばらく俺たちはそんな他愛の無い話を続けた。

 このイケメン――――キリトは、現実の世界じゃ中学生らしい。

 年下か。

 どこか大人びた雰囲気があったから同い年くらいだと思ってたわ。

 

 

 『キリト』ってネームは本名からもじっているらしい。

 俺のプレイヤーネームである『ラインハルト』もそんな感じだ。

 来野(くの)をらいの、と読んで春人(はると)はそのままはると。

 ライノハルトからラインハルトに、って感じだ。

 

 あと、俺が高校生で、アパートで一人暮らしをしていることを教えるとキラキラした目でこっちを見てきた。

 キリト曰く、「自立できていてかっこいい!」らしい。

 そうか。

 中学生からはそう見えるのか。

 

 なら、親にゲーム捨てられたことがきっかけで実家飛び出したことは黙ってておこう。

 そしてそのまま体よく追い払われたことも。

 …ほら、夢を壊しちゃ悪いしね!

 

 それとキリトも俺と同じくゲームが大好きみたいで、話しててとても楽しい。

 いやー話が弾む。

 そして俺のコアな話について来れてるのだからこいつ間違いなく廃人レベルだ。

 もうちょい外出てみんなと遊べ。

 俺みたいになるぞ。

 

 

 さすがに心配になったのでその旨を伝えたところ、

 

 

「…いや、ラインハルト。俺あんまり友達いないし…」

 

 

 てへっ☆地雷踏み抜いたった。

 いや笑い事じゃ無い。

 

 この空気どうすんだよ、おい。

 …そうだ!ここは小粋なジョークで場を和ませるんだ!

 

 

「奇遇だな、俺もそんなに友達いないんだ…でも俺には彼女がいるから平気さ!」

「その子画面から出てきてくれないんだろ?」

「お、お前勝手に二次元だって決めつけてるんじゃねぇよ!?失礼だろ!」

 

 

 オチを先に言われてしまった。

 なんで分かったんだよ。

 びっくりしすぎて噛んじまったじゃねぇか。

 

 

 

 あと周りのプレイヤーが大声上げた俺の方を何事かと見ていた。

 「え、なにあの人…」「やだーきもっ」と言わんばかりの視線が痛い…

 やばいめっちゃ恥ずかしい。

 

 

 

「よっと」

 

 

 

 とりあえずむかついたからキリトの肩に腕乗っけて友達アピール。

 お前も注目されろや。

 そしたら腕をどけて逃げようとしたのでヘッドロックで固定。

 俺の方が背の高いアバターだったから比較的技をかけやすかった。

 

 

「うわぁ!?は、離せ、俺は関係ない!」

「うるせぇ!元々お前が俺ボッチです発言しなけりゃこんなことになってねーよ!同罪だ!」

「そこまで言ってないから!それにさっきのは冗談で…」

 

 

 冗談!?

 その冗談言っていいのはもっとリア充っぽい奴だけだよ!

 あんな雰囲気で言われたら勘違いするわ!

 

「え、じゃあお前友達いんの?」

「…えっと、まず友達の定義ってどこからどこまで?」

「気づいてないかもしれないけどそれ友達いない奴の発言だからな」

 

 「こんなこと習って将来何の役に立つの?」って言ってる奴らが成績悪いのと同じくらい分かりやすい。

 そいつら、いいからとにかく勉強しろ。

 俺みたいになるぞ(2回目)

 

 

 

 しかし。

 友達の定義、か。

 

「一緒にいて楽しけりゃ、友達なんじゃね?」

「一人でいる方が楽だけどな」

「お前ほんとに可愛げ無いな!」

 

 

 こいつパーティとか組めんの?

 おじさん心配だわー。

 まあ俺も協調性無いから無理そうだけどね。

 

 

 

 ふと周りを見ると人だかりがさらに人を呼び、数が尋常じゃなくなってきたのでとりあえずキリトを引きずって路地裏に避難。

 後ろを振り返ると野次馬達も興味を失ったのか、次々に解散していく。

 

 

 ほっとして視線を前に戻すと、ナイフとフォークが交差した看板の店が建っていた。

 念願の料理屋である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で、なんで俺も一緒にご飯食べてるんだよ」

「…家以外で一人でご飯食べるといやなこと思い出すんだよ」

「便所飯?」

「お前エスパーかよ!」

 

 

 中学時代の俺の黒歴史をなぜ知ってる!

 あとそんなにドン引かないで。

 マジ傷つくから。

 い、今は友達いるんだからね!

 

「それにしても…まずいな、ここの飯」

「そんな目で見るなって…悪かったよ」

 

 

 

 キリトがジト目で俺に文句を言ってくる。

 

 

 

 確かにまずい。

 食材もそうだけど、なんと言っても味付けが悪い。

 ひと味もふた味も足りなくて、現実から醤油を持ってきたくなる。

 食えない程じゃ無いけど、一日2食は仮想世界で済まそうと思っていただけにこれは痛い誤算だ。

 他の店もこんな感じなら少し考えなくてはならない。

 

 

「料理スキルってのがあるらしいし、自分で作ってみたらどうだ?」

「そうだなー…死活問題だし、そうすっか。今度うまくできたら食わせてやるよ」

「ははっ期待しないで待ってるよ」

「ばかにしたな!めっちゃうまいもん作ってきて目に物見せてやる!」

 

 

 生意気な奴だ。

 俺の方が年上なのに、毎回からかわれている気がする。

 いや俺が空回りしているだけか?

 

 

 

 でも、不思議とこいつとのやり取りは嫌いじゃ無い。

 会ってからまだそんなに時間がたってない奴を飯に誘うなんて、普段の俺じゃ考えられないしな。

 

 

 

 ふとキリトの方を見ると、魚だか肉だか野菜だか訳が分からない食材に悪戦苦闘していた。

 そんな姿が無性におかしくて笑ってしまう。

 

 

「…笑うなよラインハルト。そもそもお前が…」

「ああ、悪い悪い。…ところでお前これからどうすんの?」

 

 

 

 飯に付き合わせちゃったけど、キリトには元々予定があったはずだ。

 

 

「とりあえず武器屋行って剣買ったらフィールドに出るつもりだ。ラインハルトは?」

「俺は町探索かなー。クエストとか探してから外出る方が効率いいだろ?」

「意外と考えてるんだな…もしいいクエがあったら教えてくれ」

「キリトが戦闘指南してくれたらな。先にフィールド出るんだからコツとかをさ」

「了解。交渉成立だな」

 

 

 

 そう言ってニヒルに笑い手を差し出すキリト。

 俺もにやっと笑って握り返す。

 

 

 

 それからちょっとだべって、キリトの武器買うのに付き合った後、俺たちはフレンド交換をして解散した。

 俺は始まりの町の奥の方へ。

 キリトはフィールドの方へと走って行った。

 

 

 

 

 

 

 これが、これから長い付き合いになるキリト――――『黒の剣士』と俺の最初の出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




キリト登場!
でも展開が遅い…
がんばります。
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