それから何時間経ったか、あの覆われた天井だからよくわからないが外が薄暗くなっている、夜くらいだとは思う。
「おー、暗い暗い、何時間寝ていたんだ俺」
「うーん、5時間だね」
「ん?」
俺は声がしたほうに向く、ベッドから起き上がってすぐに、この部屋の隅の壁に持たれている俺とおなじくらいの少年がそこにはいた。
見覚えがある、あの時俺では倒せないとかなんとか言っていた、確か狼少年と呼ばれていたやつだ。
「数時間ぶりだな、彦星だったか、自己紹介しよう、僕は狼少年と呼ばれている、ケンっていうちゃんとした名前があるんだけどね、ちなみに女だ」
「マジか!」
「う・そ♡」
「し・ね」
ノータイムは俺は野郎に殴りにかかる、何のためらいなく、全力で、その拳は確実に野郎の顔をへこませた。
はずだったんだがな、今のタイミングは、いつの間にかやつはいなくなっており壁にはぎりぎり届いていないが若干壁が剥げてる、気配も消えていて、いやなんだこれは。
「幻?、いや違うな、どういう理屈だ」
「そうだ幻だよ」
振り返ると、いつの間にか野郎はベッドに腰かけていた。
「嘘だろどうせ、異様に速くて、気配も消せるって感じか」
「そうだね、ま、雑談はこのくらいにしようか」
「……そうだな、でだ、質問させてもらうぞ、まずなんで俺にだけあんな台詞を吐いた、嘘言ったらまた殴る」
「理由は簡単だよ、男の異人が強いのは
「普通ではない?、俺もお前も強いのにか?」
「まぁね、本来男の異人というのは非力ながら、その血液で過剰なストレスを女の異人から取り除く。
それだけの存在さ、稀に僕達のようなやつが生まれるが、そいつがどうなったと思う?……血液を使わされ、戦闘もこなされる、結果、貧血から異獣に、あるいは過労で死んだのさ」
うへぇ、思ったよりヤバイところだな、それにその言い分だと一人二人ではないな。
「だから実力は隠せってか?」
「生き残りたければね、ま、今話せるのはこのくらいかな、それじゃあ、一週間後にでも、あぁそれと」
ケンは懐から一冊の日記を取り出し、俺に渡した。
「なんだ?」
「試しにこれからつけてみると良い、どうせ暇だろ?」
「ふむ、まぁ考えておく」
それを渡すと、ケンはベランダから飛び降り、壁に掴まりながら、下に降りていった。
「……ふむ」
○
今日から日記というものをつけてみるとする、言われたからではない、まぁ趣味かな、なんでも良い、とりあえず一日目。
○月✕日 一日目、朝、部屋の鍵が外され、四人の兵士達に連れられ、ある場所に行かされた。
そこはどうやら穴だ、どうやら何かを掘りだす、というよりは
○月✕日 二日目、今日は掃除だ、この神護区一帯のトイレ掃除だ、それだけで1日が終わるほどやらされた。
○月✕日 三日目、今日は2日ぶりに織姫に会えた、疲れが見え、ところどころ傷が見える、織姫は大丈夫だとは言ってるが、心配だ。
○月✕日 四日目、異獣が大量に現れた、その対処にたくさんの女の異人が対応におわれた、俺達は腕輪から抽出された血液を発射する銃を使い、精神がまいって帰ってきた異人にかけて回った。
織姫の姿は見なかったが……大丈夫なんだろうか、心配だ、少し独房で話し合った程度なんだけどな。
○月✕日 5日目、(字が揺れまくり、動揺が伺える)
織姫が、織姫が重傷で帰ってきた、他の怪我して動けない異人を守るために、戦い、暴走状態になりながら守りきったらしい。
幸い命に別状は無いが、血で汚れ、髪が白くなった織姫を見たとき、包み隠せない感情、怒りが哀しみが、湧き上がった。
許せない、何故、俺達だけがこんなことを、遠くから見えていたが、兵士達は弱い奴らだけと戦い、遠くから見ていただけだ。
俺達は奴隷か?、使い捨てか?、何が神護区だ、俺は、こんなモノを見るためにじいちゃんを村に置いて、実力を隠して織姫にばかり戦わせるためにこんなところにいるわけではない!。
○
「……」
朝だ、俺はベッドから起き上がり、洗面台で顔を洗う。
鏡で顔を見た、眉間にシワがより、青筋がたっている、怒ってる感じだ神護区にも、今の自分にも。
「さて、ここ鍵かかっていて出られないんだよな、ケンみたいな指の力が凄いわけでもなし、ここそれなりに高いから飛び降りたら足がやられてすぐ捕まる、うーむ」
脱出方法を考えて、ドアに近づいていると、ドアに何かが挟まっているのが見え、それを引き抜く。
「これは、手紙?」
開くとそこには、すぐに燃やすか破けというだけの文面の下に、ここから矢印で何処かまでを描かれた地図、ここに向かえばいいらしいが、時間とかも書かれているな。
今から30分後なら、ベランダから飛び降りろって感じの道順だ……ま、他に思いつかないし従うか、罠だろうとなんだろうと。
30分後、道順に従い、飛び降りると、入口に立っているはずの兵士がいなかった、俺はそのまま覚えた地図に従い、そこに向かう。
神護区でも端の方にある路地裏、そのマンホールの中に飛び込み、下水道を通っていく、しばらくすると、一つのドアが見えてくる、俺はそのドアをノックする。
「合言葉は」
合言葉?、そんなもの地図には……えー、あー、いや、合言葉としてどうなんだ?。
「
「……くく、はは!、嘘嘘、入っていいぞ」
声音が聞き覚えのある声になり、ドアが開かれると、そこにはケンが立っていた。
「やはりお前か」
「あぁ、僕だ、さぁ、仲間を紹介しよう」
中に入ると、そこには知らないやつが二人いた、帽子ほどの大きさの鉢を被った少女に、楽器を持った男とも女ともとれるやつだ、そして、いろいろなところに包帯を巻いた、
「織姫!」
俺は織姫に抱きついた。
「ちょ!、彦星、いたいいたい!」
「あ、あぁすまない」
「熱いねー、わたちしっとしちゃーう」
「〜♪」
鉢被ったやつは煽ってきて、楽器持ったやつは楽器吹いている、なんだこいつは、とりあえず鉢娘はなんかイラッとしたから小突きたい。
「ま、感動の再会はこの辺で、二人共、自己紹介」
「はーい、わたちははちかづき姫、5さい、で、こっちの笛吹はハーメルン、りょうせいぐゆうっていうやつだよ」
「♪〜……ふぅ、ケン、だいたいの
ハーメルンと呼ばれたやつは、そのまま置いてある椅子に座り、机に突っ伏した。
「お疲れ様」
「なぁ、ハーメルンは何をやっていたんだ」
「異獣の操作さ、ハーメルンは笛で異獣を支配できるんだ、今やっていたのはお前らの身代りの命令伝達だよ」
「ほーん、便利なもんだ」
「そなことないぞー、われ、細かい命令に関しては早朝からやらないといけないから寝不足でかなわん、だからおやー」
それだけ言ってハーメルンは寝息をたてはじめた。
「じゃ、詳しい話を始めるか、まず、僕達は異人脱獄戦線、ま、積極的にやろうと思えるほど精神が摩耗してないのはこの4人だけって感じだがね」
4人って織姫、ケン、あとハーメルンと鉢かづきか、それ以外は今のままでいいとか考えてる根っから囚人か。
「目的はわかりやすく神護区から、というよりはこの地下世界から脱出を目指している」
「ほう、大きく出てるけどどう考えても無理な気がするが」
「だよねー、わたちもむりむりだとおもってるんだけど」
「鉢かづき、ステイ」
「だれが犬よだれが」
「で、手段はよ」
「あぁ、脱出方法としては2つ、一つは神護区が進めている洞窟堀、正直どんだけかかるかわからないから保留、2つ目は……あの神護区塔を伸ばす」
「塔を?」
あの塔、伸びるのか、生物っぽいとは思っていたけどさ。
「そ、方法としては間引き、各地にある栄養を送る植物?の通称コアを破壊すれば良いらしい」
「らしいとは」
「まだ確定した情報ではないからな、で、これだけ聞いたわけだが、どうする?僕は止めないし、何なら神護区に告げ口でもするか?」
「入るに決まってるだろ」
「即答かよ」
ケンのやつちょっと驚いたな、いつもすました顔してるからちょっとスッキリ。
「彦星、もしかしてわたしのためだったりする?」
「そうだが?」
「ふぇ!?」
織姫は顔を赤くする、うん、自分でもちょっと恥ずい、だが、ケンみたいに嘘を付くのもなんだなって思ったからな、正直な理由だ。
「そっか、それは良かった、あはは!、もし断っていたらハーメルンの音色で洗脳してでも仲間にするところだったよ」
「あはは!、得意の嘘か?」
「ほ・ん・と・う♡」
「やだ怖い」
まぁこうして、異人脱獄戦線の仲間になった、いろいろと怖いやつばかりだが、脱獄するならなんだっていいな。