「ほっ!」
襲ってくる最後の異獣を倒し、一息つく。
ケンが言うには疑われずに動けるのは一週間のうちの月曜のみ、1日でどれだけ進められるかがかかっているかんじだ。
「へー、彦星ってこんなに強かったのね」
「織姫もじゅうぶん強く見えるがな、その糸の扱い何処で習ったんだ?」
「知らないわね、あたしが生まれたときからこういう戦闘ができるって思っていたから、名前と一緒にね」
「ふむ、謎なことは今は謎のままにしておくか、研究者じゃないしな、じゃ、先に進むか」
俺達二人は更に洞窟の奥へと歩を進める。
先に進むにつれ、腐敗臭が鼻につく、辺りには人間だったであろう肉がこびりついた骨が散乱している。
「うー、くっさいな、異獣って別に必要ないはずだろ、食事というか栄養は球根みたいなやつが賄っているんだろ」
「まぁ、確かにそうだけど異獣も元は生物、食欲が無くなったわけではないわけ、一部の生物の捕食の本能的なモノが人や、もしかしたら他の異獣も」
「ギギィィィ!」
奥から異獣よ声が聴こえてきた、別に今目指している方向とは逆だが。
「いきますよ!、この音、人を襲ってる!」
織姫は耳がいいな、俺には聴こえない戦闘音を聴き当てたのか。
寄り道になってしまうが、俺も織姫についていった、まぁいいか、こんな地下世界の辺境と言っていい場所にいるんだ、何か知っててもおかしくない。
走ってすぐに、たくさんの異獣が誰かに攻撃をしている様子が見えた。
「離れなさい!」
織姫は糸を伸ばし、一気に異獣をその糸でやすやすと切り裂いた。
「だいじょう……ぶ?」
異獣に囲まれていた者に近づいた織姫は、何か疑問そうな声を出す。
「どうした?」
俺もそいつの顔を見た、そこに座り込んでいたのは、人、ではない、顔の右半分が完全な黒、ピンク色の点のような瞳、そして右手があるはずのところは触手になっている。
「う、うぁ」
明らかに異獣だ、人間の姿をした化け物……だから何だというんだ。
「酷い怪我だな、アリものでなんとか治療するぞ」
「えぇ、とりあえず移動しましょ」
織姫も同じ考えのようだ、俺達は比較的安全な場所まで俺がそいつを背負って運んだ。
「――う、うぅ、ここ、は」
「お、起きたか」
「んなっ!?」
そいつは目が覚めるとすぐに飛び退き、俺達から離れる。
「おまえら、なに、もの」
そいつは身体を触る、包帯で巻かれていること、傷が傷まないことに気づき、俺達が治療したのだと理解した様子で頭を下げる。
「あ、ありが、とう」
「おう、どういたしましてだ、で、お前は何なんだ、既に再生が始まっていたみたいだったが、そのままにしておけなかったから運んだわけなんだが」
「わ、ワタシにはなまえ、ない、ただ、ただ、ここのエイヨウはこぶやつのおんけい、うけてるだけの、ざこ」
「栄養の恩恵、あぁ、あなた不死性異獣ね」
「また新しい言葉が出てきたな、話してくれるよな」
「当然、わかりやすく言うなら異獣の親玉、文字通りに殺せない、そして強大すぎてまともにやり合うことは異人でもしないってところかしら、ケンが言うには」
「ふむ、不死で強い、どっちも当てはまらんな、目の前にいるこいつには」
「だよね、それが不思議なのよね、えっと、うーん名前無いのはふべんね……そうだ!、ミルキーとか」
「却下で」
「そんなぁ、じゃあ代案言ってよね」
「ふーむ、そうだなぁ」
改めてそいつを見る、異形の見た目だが、ちゃんと人間らしくころころと表情が変わり、あわあわとしている。
よし、決めた。
「なな、お前の名前は
「なん、で?」
「そうだな、ラッキーセブンとか、じいちゃんが言ってたのと、一番はなんとなくってやつ」
「そう、なな、なな、うん、いいね」
ななは嬉しそうに笑みを浮かべ、近づいてくる。
「じゃあ、よろしくね、
は?、え?、ん?。
「ぱ、パパ!?、俺はそんな」
「なまえつけたひと、おやだってきおくしてる、だから、パパ」
「あはは!、パパだってねぇ彦星」
「ママもママだよ?」
「――あー!、いいね!」
織姫はななを抱きしめる。
「わたしが母だよー!なな!」
「ちょ、ちょっとくるしいよ、ママ」
「もう一回!」
あれ?、織姫こんなやつだったかな、微笑ましいけどさ。
さて、ななという名前つけて、パパママ認定されたはいい。
「なぁ、これからどうするんだ?」
「え?、あぁそうね、ななちゃん、球根みたいなっていうか、あなた達に栄養与えているモノは何処にあるのかな」
織姫はしゃがんで同じ目線で質問する、完全に子供に対しての対応に変わったなおい、まぁななは小さいから合ってるっちゃ会ってる。
「こわしちゃうの?」
「うーん、まぁそうなっちゃうのかな」
「うーん、いいよ、わたしにはいらないと思うから、こっち」
俺達はななに先導され、複雑な道を進み、異獣を倒しながら、球根らしきモノを見つけると、破壊した。
「ギァァァァァァ!!」
耳を塞ぎたくなる奇声が響く、うるっさ、1分くらい聞こえたぞ。あー、終わったは終わったでくらくらする、ななはぴんぴんしてるが、織姫は目を回してるから俺だけではないのは確かだな。
「はー、こんなのあるのか、さてこれだけ大きな音がしたなら、来るのは」
「ギギィィィ!!」
大量の異獣がここに押し寄せる足音が聴こえる、だよな、そらくるよな。
「織姫、俺がなな背負っていくから、しんがりってやつ、任せた」
「わかった、道はわたしが開くわ、ななに傷一つつけさせんわ」
織姫は向かってくる異獣達の血液を浴びながら、笑い声をあげながらその糸で切り刻んでいく。
「しねしねしねしねぇぇ!、きゃぁはははは!」
やだ怖い、下手に近づこんとこ。
数十分後、血で真っピンクになった道を終えて、その洞窟を出ることができた。
「おー、出てきたな二人共、ん?、誰だそやつってか異人?、異獣?」
洞窟の外にはハーメルンが待っていた、ハーメルンは俺が背負っているななに近づきじっと見つめて始めた。
「んーー?」
「な、なに」
ななは怯えたように俺の背に顔を隠す、さてどうしよう、異獣を連れてるとかかなりヤバいよな、敵なんだから。
「そなた……カワイイな!」
ハーメルンはそう言って懐から飴を取り出す。
「ね、仲良くしよう?」
「なにこれ」
「あぁわからないか、これは美味しいものだぞ、ほら、その人から降りて受け取ってくれないかな?、どうせなら触らせ」
ハーメルンが手を伸ばした瞬間、ななとハーメルンの間に糸が張られた。
「なにしてんのわたしの娘に」
「娘ってそなた、なら我は気のいいお姉兄さんだな!」
「何言ってるんだ殺すわよ」
あぁ、そういえばハーメルンって異獣を操れるとか聞いたな、道具としてだけではない感じだったのか。
ちょっと安心、これが神護区のやつらならこうはいかん。
「で、ななはお前らのところに匿いたいんだが」
「了承だよ、できればななちゃんに触れて」
「駄 目 だ」
「くっ、親バカが」
とりあえずななは保護できるってことでいいのかな、はぁ、パパ ね、なることはないと思っていたが、仮とはいえちょっといい気分だ。