超サイヤ人   作:桂ヒナギク

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1.出発

 二十年前。

 彼女の名は、キャルロット。何を隠そう、カカロット、もとい(そん) 悟空(ごくう)の双子の妹なのだが、そのことを知る人物は誰一人として存在しなかった。そう、両親を除いては……。

 フリーザの手に寄って惑星ベジータが崩壊し、サイヤ人の赤ん坊である悟空を乗せたポッドの他に、もう一台のポッドが地球とは別の惑星へと向かって飛び出していく。

 向かった先は、水棲生物が暮らすアクア星。

 ポッドの落下地点に、クレーターが出来上がった。

 アクア星の天体観測員が、ポッドの確認に来る。

「見てくれ。赤ん坊だ」

「うん? 尻尾が生えてるぞ」

 天体観測院はポッドから赤ん坊を抱き上げる。

 赤ん坊は元気に鳴き声を上げていた。

 

 

 現在。

 天から降ってきた少女、キャルロットは、端正な顔立ちをした女性に成長していた。

 長閑なアクア星では、地球のように宇宙人に狙われることもなく、彼女は平和な時を過ごしていた。

 だが、それでもサイヤ人としての血が騒ぐのか、強さを求めて日々鍛錬(たんれん)に励んでいた。

「ウォタラやい。修行もそれぐらいにして、食事にでもしないかね?」

 ウォタラ、というのは、アクア星でのキャルロットの名前である。

「じいや」

 キャルロットは老人の方を振り返る。

 老人の名はスイミ。アクア星の長老である。

 刹那、二つの隕石かなにかが上空を通過する。

「あれは……」

 スイミが昔のことを思い出す。

「じいや?」

「あれはお前が乗ってきた宇宙船じゃないのか?」

 二つのポッドは平野に大きな音を立てて落下する。

 クレーターが出来上がった。

 ポッドから、尻尾を生やした男が二人現れた。

 キャルロットは現場へ向かった。

「お前がキャルロットだな?」

「キャルロット?」

「お前は俺たちと同じサイヤ人。共に来い」

「サイヤ人?」

「そうだ。お前は戦闘民族サイヤ人だ」

「俺たちはこれから地球という星を目指す。そこで、カカロットを倒す」

「カカロット?」

 キャルロットの脳裏に、声が()ぎる。

 大きくなったら、カカロットの助けになってやってくれ。

 そこへスイミがやってくる。

「お客人かね?」

「なんだ貴様は?」

「わしはこの星の長老じゃ」

「ほおう?」

「この女は俺たちと同じサイヤ人だ。連れて行きたい」

「よかったじゃないか、ウォタラよ」

「え?」

「この方たちはお前さんのお仲間。一緒に行ってあげなされ」

「でもじいやは育ての親。寂しいんじゃ?」

「いいんじゃよ。わしゃお前さんを仲間の元へ返したかったんじゃ」

「じいや……」

 キャルロットはスイミが保管していたポッドの元へやってくる。

「それじゃ、行ってくるね」

 キャルロットのポッドが飛び立った。

 今、三人を乗せたポッドが、地球を目指す。

 


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