転生メデューサの日常   作:ぺかちゅう

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第1話 転生したからには

 私はメデューサ。

 漫画【邪神ちゃんドロップキック】の登場人物(登場悪魔)です。

 

 

 私には秘密があります。実は私……かつて人間だった転生者なんです!どやっ!

 ……すいません!何言ってんだコイツって目で見つめるのやめてください!やめて!ちゃんと説明しますから!

 

 

 まあ説明と言っても劇的なエピソードなんてありません。物心ついたときにはここ……魔界に生まれる前の自分が、かつては別の存在だったことを知っていたというだけです。

 神様に会って転生させてもらったとか、前世の記憶を活かして世界を変える使命を与えられたとか……そんな胸躍るような展開はありませんでした。

 なんたって人間だったときの自分の名前すら覚えてないんですよ。この漫画についても、大好きだったことを除けばキャラクターのおおまかな立ち位置や大雑把なあらすじくらいしか覚えてませんでした。でも前世で得た多少の知識は覚えてましたよ!ご都合主義バンザイ!

 

 

 悪魔として生活していく内に、私はここが前世でお気に入りだった漫画【邪神ちゃんドロップキック】の世界だって気づきました。

 これぞ転生者特有の察しの良さ!……ではないと思います。

 仲のいい幼馴染が半人半蛇……所謂ラミアのような、邪神ちゃんって呼ばれる女の子であれば気づくというものです。

 

 

 さて、この世界のことを察した私がやったことは……特にありません!

 転生したからにはなにかやるべき事があるに違いない……なんて思ったりもしましたけど、特に思いつくはずもなし。

 そもそもこの漫画って世界の命運を賭けた壮大なストーリーを描く漫画じゃないです。邪神ちゃんと彼女を取り巻く魅力的なキャラクターたちの日常を描くコメディ漫画です。

 やるべきことって言っても普通に生活していくくらいしか思いつかないです。

 

 

 とはいえ初めのうちはいろいろ調べたりもしました。漫画と違うところがあったりするのかな?なんて思いましたからね。

 邪神ちゃんがクズじゃないかもとか、実はシリアスな世界だったりするのかもとか。

 結論としては、多分あんまり変わらないだろうということでした!

 幼馴染の邪神ちゃんやミノスと一緒に学校に通って、この世界で生きているうちに気にしなくなったんです。

 私がメデューサである時点で漫画と違うわけだし、難しいことばっかり考えてもしょうがないよねって。

 難しことを考えるのをやめたあとは、転生者特有(?)の一歩引いた視点に映る世界と自分の目に映る世界の両方を遠慮なく楽しむようになりました。

 ……あ、邪神ちゃんはクズでした。根はいい子だけどクズでした。クズなところも含めてとってもとっても可愛いです。大好き!

 

 

 邪神ちゃんは大好きだけど、原作のメデューサちゃんほどに邪神ちゃんを甘やかせている自信はありません。別人ですからね。

 やっぱり知識というのは行動に影響するもので、ふとした時にちょっと引いた視点になっちゃったりするんです。

 その影響がちょっと怖かったりもするけど、この世界でのメデューサちゃんは私なんだ!って開き直ることにしました。こればかりはどうしようもないですからね。

 でも割と甘やかしてはいます、自覚ありです。大好きですからね、自由に楽しくお付き合いしますとも!

 

 

 そんなこんなで邪神ちゃんやミノスたちと楽しく暮らしていたのですが。

 ある日、邪神ちゃんが人間界に喚び出されたと聞きました。

 ……そうです!遂に【邪神ちゃんドロップキック】が始まったのです!

 細かい展開を覚えているわけではないのですが、多分そのうち邪神ちゃんに人間界に呼ばれると思います。

 人間界……楽しみです。かつて生きていた世界ではありますが、やっぱり現世で行ったことのない世界を想像するとワクワクします!

 人間界旅行用のガイドブックで予習もバッチリです。ちょっと情報は古かったけど……。そういえば原作のミノスも既に存在しない建物に興味を持ってましたね。

 人間界もですけど、一番楽しみなのはいろんなキャラクター……こんな言い方は失礼ですね。今を生きている方たちに対して。

 改めまして、なにより楽しみなのはいろんな方たちと触れ合っていくことです!いろんな方といっしょに楽しく生きていくことです!

 

 

 

 ……スマホに電話がかかってきました。……邪神ちゃんからだ!

 

「はーい。邪神ちゃん?」

 

『あ、メデューサ~?』

 

 邪神ちゃんの声!数ヶ月ぶりの邪神ちゃんの声!

 

「邪神ちゃん!久しぶりだね!全然会えなくて心配してたよ!人間界にいるんでしょ?ご飯食べてる?暖かくして寝てる?それからそれから……」

 

『お、落ち着け!確かに久しぶりだけど落ち着きますの!』

 

「突然いなくなっちゃったんだもん、心配するよ~!ところで、なにか用事?」

 

 思わずおかしなテンションになっちゃいました。話を進めないと。

 

『お、おぉ……この突然本題に入る感じよ……。そうでしたの、本題ですの』

 

「お金?」

 

『違いますの!いや違わねーけど!……私を呼び出しやがった人間についてですの』

 

「人間?」

 

 多分ゆりねさんだよね。

 

『ですの。そいつを殺す手伝いをしてほしいんですの』

 

「殺すって……普通に帰してもらえば良いんじゃないの?」

 

 確か帰還の呪文を唱えてもらうか、呼び出した人が死んじゃうと帰れるんだけど……。

 

『そうなんだけどゆりねのやつ!……あ、ゆりねっていうのは私を呼び出したやつのことですの。そいつ召喚の呪文だけ知ってて帰還の呪文を知らねーんですの!』

 

「そ、そうなんだ……」

 

 割とかわいそうな境遇だよね、邪神ちゃん……。

 

「帰還の呪文を調べてもらったら?」

 

『そんなの待ってられねーですの!それで、手っ取り早くゆりねを殺そうとしたんですの。でもうまくいかないんですの……』

 

「うまくいかない?」

 

『ゆりねのやつ妙につえーんですの……。だからお前の能力が必要なんですの』

 

「わ、私のことが必要……!」

 

『……いや、お前の能力……』

 

 前世や原作がどうこう以前に、私は人間を傷つけたいとは思えないけど……。

 邪神ちゃんに必要とされるのはとっても嬉しい!嬉しいです!

 

「とにかく、そっちに行けばいいの?」

 

『おう、神保町で待ってますの。えっと、明日にでも……』

 

「すぐ行くね、待ってて邪神ちゃん!」

 

『へ?いやそんな焦らなくても……』

 

「重要なことだからね、早く会って話そうよ!」

 

 早く会いたいだけだけど!

 

『ちょっと落ちつ……』

 

「夕方には着くよ!じゃあね邪神ちゃん!」

 

『いや、待っ……』

 

 待っててね、邪神ちゃん!

 

 

 

 久しぶりにメデューサと話したけど、相変わらず妙に押しが強いですの……。

 なにはともあれ、対人間特化の石化能力……アレさえあればゆりねもイチコロですの!

 

「ゆりね~。さっき言ってた友達なんだけど、夕方くらいに来るそうですの」

 

「今日の?さっきは明日って言ってなかった?」

 

「うん、明日呼ぼうと思ったけどすぐ来てくれるって……。ゆりねにも紹介しますの」

 

「ふーん……。今日はアキバに行くけどすぐ帰ってこられるし……わかったわ」

 

 くくく……アキバでのお買い物がお前の人生最期の思い出になりますの!

 

「ところでその子の名前、なんていうの?」

 

「メデューサですの!」

 




読んでいただき、ありがとうございました。
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