こんにちは、メデューサです。
この前のガラス代は、結局我慢できなくてゆりねさんにお願いして半分だけ出させてもらいました。
あの後邪神ちゃんに魔界カワイイ子選手権での優勝でレベルが上がったって教えたら、すごくびっくりしてました。戦ったわけじゃないのに経験値がたくさんもらえるんだもん、驚くのも当然ですよね。
もっと頑張ってレベルを上げて、邪神ちゃんの足を引っ張ることがないようにしないと!
さて、今日は古本屋さんにお買い物にきました。
例の魔導書の下巻が置いてないかって時々探しに来るんだけど……。ありませんね、やっぱり。
でも神保町にはたくさん古本屋さんがあるし、探し続けていればいつか見つかるかも知れません。
時間はたっぷりあるんだから、地道に探し続けようっと。
古本屋さん巡りも一段落。そろそろスーパーに寄って帰ろうかな。
ん?あそこにいるのは邪神ちゃん?
……なんで道路に寝転んでるんでしょうか?
道路になにかを広げてますね。あれは……フィギュアかな?
「邪神ちゃん、なにしてるの?」
「ん?あ、メデューサ。そこのガチャガチャを回してたんだけど、レアのツチノコが出ねーんですの」
「ガチャガチャ?」
あ、これですね。なになに……?UMAフィギュア、か。
そういえば邪神ちゃん、こういうのを集めるのが好きなんですよね。
「あーあ、あとツチノコだけ引ければコンプなんだけどなー。あと一回引いたら出そうなんだけどなー、もうお小遣いがないんだよなー」
邪神ちゃんが、こっちをチラチラ見ながらそう言ってきます。
「はいはい。じゃあ一回だけだよ、邪神ちゃん」
「ありがとーですの、メデューサ!」
満面の笑顔でお金を受け取る邪神ちゃん。可愛い!
……これだからついつい甘やかしちゃうんですよね。
「……これが出たら死ぬ!」
でました、邪神ちゃんの謎ルール。
独自ルールで緊張感を増すことで、よりガチャガチャを楽しめるんだそうです。
まあ実際は死なないけど。
「どう、邪神ちゃん?ツチノコ当たった?」
「……違うやつでしたの。死なずには済んだけど」
あらら、残念。
まあ、そう都合良くはいきませんよね。
「……メデューサ~。次やれば多分出ると思うんだけど……」
「だぁめ。一回だけって言ったからね」
くっふぅ~!なんて厳しい幼馴染ですの……。
ん?私の次に回した少年が当てたフィギュア、あれは……ツチノコ!?
わ、私があと一回だけ回せていれば……。いや、順序があの少年と逆であったならば……。
メデューサがあと一回分お金をくれるか、もう少し遅れて声をかけてくれればあのツチノコは私のものだったのに……!
……いや、落ち着きますの。私は上級悪魔の邪神ちゃん。ここは広い心でメデューサを許してやりますの。
「それより邪神ちゃん、危ないから道路で寝転んじゃダメだよ?」
「はいはい、分かりましたの。……メデューサ、その手提げ袋……買い物中だったんですの?」
「うん、本屋さんに行ってたの」
本屋か。そういや私も夕飯の食材を買いに来たんでしたの。
ん、そうか!そのお金がありましたの!それを使えばまだガチャガチャを回せる!
……いやいやいや、ダメですの。ぜってーゆりねにお仕置きされますの……。
「ガチャガチャかぁ……。可愛いキーホルダーとかあるかな?」
「メデューサ、私も買い物があるから先に行きますの。お前もあんまり遅くならないようにするんだぞ」
「うん、分かった。またね、邪神ちゃん」
ガチャガチャコーナーを眺めるメデューサに声をかけつつ、真面目に買い物に向かう私……。ああ、なんて立派なんですの……。
うーん……特にめぼしいのもなかったし、そろそろ私もスーパーに行こうかな。
そうだ、さっき邪神ちゃんが回してたのを私もやってみよう。
「何が出るかな……それっ!」
……あっ、ツチノコ!
うーん、でも集めてるわけじゃないし……あとで邪神ちゃんにあげようっと。
それじゃ、スーパーに向かいましょう。
さて、スーパーに着いたのですが……。
婦警の人がこっちに走ってきました。
なにかあったのかな?
「そこの紙袋ちゃん!」
えっ、私?
「はい、なんです……きゃあっ!?」
い、いきなり肩を掴まれた!?
なに!?なんなの!?
「あぁ、可憐な体と紙袋のギャップ……。たまらないわ!」
「ちょ、ちょっと……。なにするん、ですかぁ!」
ガックンガックン揺すらないでぇ!
「こうまでして隠さなければいけないなんて!一体どんな中身なのかしら!?」
か、紙袋を取ったら目が!?
「や、やめてください!私の目は!」
「大丈夫よ、好みの顔だったら大事にしてあげるから!」
とにかく目を閉じておかないと!
「それっ!……なーんだ、普通ね……」
「えっ、なんのこと……ですか?」
「はい、戻したわ。じゃあね~」
そう言うと、婦警さんはそのまま歩いて行ってしまいました。
こ、怖かったぁ……。一体なんだったんでしょうか……。
うーん……ま、まぁいいや。とりあえず買い物です。
中に入りながらさっきの婦警さんの方を見ると、別の出口から出てくる邪神ちゃんが視界に入りました。同じスーパーに向かってたんですね。
フィギュアは……後で渡せばいいかな。わざわざあっちまで行って呼び止めることもないよね。
お買い物の帰りにゆりねさんの部屋に寄ることにしましょう。
邪神ちゃん、喜んでくれるといいなあ。
買い物に行った邪神ちゃんを部屋で待っていると、私のスマホに電話がかかってきた。
なんでも、邪神ちゃんが警察に捕まっちゃったらしい。
……ついに罪を犯しちゃったのね、邪神ちゃん。
同居人の私が身元引受人として迎えに行かないといけないみたいなので、戸締まりをして出かけようと思っていたのだけど……。
……チャイム?
「はーい」
「あ、ゆりねさん。メデューサです」
「いらっしゃい。邪神ちゃんに用事?」
「はい、渡したいものがあって。……大したものじゃないんですけど」
「わざわざ悪いわね。でもね、邪神ちゃんは警察に捕まっちゃったの」
「……はい?」
何を言ってるのかわからないって顔のメデューサ。無理もないわね、私もよく分かってないし。
「さっき電話がきたのよ。一緒に住んでる人じゃないと身元を引き受けられないらしいから、これから警察に行ってくるところなの」
「そ、そうなんですか……。あ、じゃあ私が留守番してましょうか?戸締まりするの面倒でしょうし」
「そう?じゃあ……悪いけどお願いするわ、テレビ見たりしてていいから。行ってくるわね」
「はい、行ってらっしゃい」
……それにしても邪神ちゃん、いつかやらかすとは思っていたけど……。
帰ったらお仕置きね。
ゆりねさんが出かけてしばらく経ちました。
……結構暇ですね、テレビもそんなに面白いのはやってないし。
それにしても、邪神ちゃんが犯罪者になっちゃうなんて……。
でも、邪神ちゃんが罪を犯して警察に捕まっちゃうお話なんて原作には無かったような。
……ん?捕まっちゃう話?
「……あ」
そういえばありました、邪神ちゃんが捕まっちゃうお話!
原作屈指の頭のおかし……もとい、不思議な人!橘芽依さんの登場エピソードだ!
ひょっとして、私に掴みかかってきた人が……?
……毎回あの勢いで迫られたらそりゃ怖いですよね、あの人に好かれちゃった邪神ちゃんの気持ちが分かった気がします……。
あ、足音。二人が帰ってきたみたいですね。
「ただいま」
「ただいまですの……」
「おかえりなさい」
ゆりねさんは普段どおりだけど、邪神ちゃんは声が沈んでます。
そりゃ怖かったよね……。私の想像が当たっていればの話ですが。
「あの、邪神ちゃんが捕まっちゃったのって……」
「婦警さんの心を盗んじゃったんですって、邪神ちゃ……大蛇丸は」
「心?……大蛇丸?」
大蛇丸に心を奪われた婦警さん……。ってことは、やっぱり……。
「その呼び方をするんじゃねーですの!」
「ご、ごめん」
「悪かったわね、大蛇丸」
「だからー!……実は、橘芽依ってやつが無実の私を捕まえやがったんですの。フォルムが気に入ったとかなんとか言って……」
「自己紹介する時にベガ立ちしてたわ」
「は、はぁ……」
ベガ立ちは重要な情報なのかな……。
「それで、私に邪神ちゃんを譲ってくれってお願いしてきたの」
「そうなんですの!その時ゆりねのやつ、一度私を見捨てようとしたんですの!」
「別にいいじゃない、こうして連れて帰ってきてあげたんだから」
「そういう問題じゃねーですの!……しかもゆりねがやっぱり連れて帰るって言ったときに、手に入らないなら殺すって言って撃ってきたんですの……」
「う、撃ってきた?」
原作と同じで凄まじい人みたいです。
あの時、あの人に気に入られてたら私も捕まっちゃってたんでしょうか……。
「と、とにかく解放してもらえてよかったね」
「ほんとですの……」
「芽依さん、定時になったからって言って邪神ちゃんを放置して先に帰っちゃったのよ」
やっぱり、諦めて解放してもらったわけでは無いみたいですね……。
まったく、今日は散々な一日でしたの……。
ツチノコは手に入らないわ、変な人間に捕まるわ……。
「あ、そうだ邪神ちゃん」
「なんですの、メデューサ?」
「これ。邪神ちゃんが買い物に行ったあとにガチャガチャを回したら当たったんだ」
ん?あ、これ……ツチノコフィギュア!
「くれるんですの?」
「うん、私は集めてないから」
「サンキューですの、メデューサ!」
「うん!それと……えいっ!」
「な、なんですの!?」
メデューサのやつ、いきなり抱きついてきましたの!
「邪神ちゃん、捕まったり撃たれたりして怖かっただろうなって思って」
「いや、別に抱きしめて慰める程のことじゃねーだろ……」
……まあ、芽依がすげー怖かったのはそのとおりだけど。
「邪神ちゃん、慰めてもらえてずいぶん嬉しそうじゃない」
ゆりねはそのにやにや笑いをやめろ!
「メデューサ、いつまでもこうしてなくていいから!離しますの!」
「あ、うん」
ったく。ほんとに抱きつくのが好きなやつですの……。
「で、でも感謝はしてやりますの……」
「あんた、お礼くらい素直に言ったら?」
「うるせーぞゆりね!ま、まぁ……その……」
「なぁに?」
……やっぱり無理ですの!
メデューサのおかげで安心できただなんて、恥ずかしくて言えるか!
「な、なんでもねーですの!」
読んでいただき、ありがとうございました。