こんにちは、メデューサです。
頭をぶつけてしまった後、ぺこらちゃんとぽぽろんちゃんに謝りに行ったのですが……。
二人とも許してはくれました。でも、ぽぽろんちゃんの目をそらしながらの対応はなんというか……やってしまった感が凄かったです……。
どうして私、頭をぶつけると時々ああなっちゃうんだろう……!でも、みんなに抱きつくのは幸せだった……いえ、なんでもないです!
さ、さて!今は久々の古本屋さん巡りを終えて帰っている途中なのですが!
正面から邪神ちゃんが歩いてきました。なんだかシリアスな表情……。
「邪神ちゃん!」
「……ん?メデューサか、散歩中ですの?」
「うん、古本屋さんに行ってきたの。邪神ちゃんは?」
「これからパチンコですの。小遣いの残りが少ないから、どの台で勝負をかけるか考えてたんですの」
「そ、そうなんだ……」
……邪神ちゃんにとってはシリアスな悩みなんでしょう、多分。
「っと、そろそろ戦場へ赴かないといけませんの。じゃあなメデューサ、頭上に気をつけて帰れよー」
「うん、またね邪神ちゃん」
邪神ちゃんは大勝負に向けて表情を引き締め、パチンコに向かいました。
頭上注意……。何度もみんなに迷惑を掛ける訳にはいきませんからね、邪神ちゃんの言うとおりです。
邪神ちゃんと別れてしばらく歩いていると、スマホに電話がかかってきました。
ミノスからですね、珍しい。
「はーい。ミノス?」
『メデューサ、今電話大丈夫か?』
「うん、大丈夫。今は外だけど、もう家に帰るだけだから」
なんの用事でしょうか?
ミノスの声色からして、こっちもシリアスな展開ではなさそうだけど。
『そっか、じゃあちょうどいいや。今ゆりねちゃんの部屋にいるんだけどさ、こっちに寄ってほしいんだ』
「わかった、ゆりねさんの部屋に行けばいいんだね?」
『おう、待ってるからなー』
「よっし、メデューサなら多分覚えてると思うぜ」
メデューサとの通話を終えたミノスがそう告げる。
「悪いわねミノス、部屋に来て貰った上にメデューサまで呼んでもらっちゃって」
「気にしなくていいよ、大したことじゃないしな。でも邪神ちゃんの本名か、あたしも教えてもらった記憶はあるんだけどなー」
「私が邪神ちゃんに直接聞いた時には俯いちゃったの。あんまり教えたくないのかしら?」
「いや、そんなことは無いと思うぜ」
じゃあ人間の私にだけは知られたくないとか?
邪神ちゃんにもそういう繊細なところが……あるわけないか。
……チャイムの音。到着したみたいね。
「こんにちはー」
「お、きたきた!」
「いらっしゃいメデューサ。上がってちょうだい」
「はい、お邪魔しますね」
あたしは覚えてないけど、まあメデューサなら覚えてるだろ。
なんたって邪神ちゃんのことだからな。
「それで、どうしたのミノス?」
「あぁ、邪神ちゃんの名前がさ……」
「邪神ちゃんの名前?」
「ええ。私が邪神ちゃんにフルネームを教えてって言ったんだけど、俯いて答えてくれなかったのよ」
「そうなんですか。さっき邪神ちゃんと会いましたけど、多分……名前のことと俯いてたことは関係ないんじゃないかなぁ」
「そうなの?」
「はい。邪神ちゃん、どの台で勝負するかで悩んでただけみたいですから」
パチンコのことで悩んでただけってことか……。
すげー呆れてるな、ゆりねちゃん。
ま、それも邪神ちゃんらしいよな。
「あれ、でもミノスに教えてもらえばよかったんじゃ?」
「それがさぁ、あたしも忘れちゃって。教えてもらったのは覚えてるんだけど」
「メデューサなら絶対忘れてないって、ミノスのお墨付きをもらったのよ」
「邪神ちゃんのことならメデューサに聞くのが一番だからな!」
「はぁ、なるほど……?分かったような分からないような……。邪神ちゃんのフルネームはですね、邪神……」
くっふぅ~!完敗……いや、惜敗ですの!
どうして別の台で勝負をかけなかったんだ私は!
ん、あれは……?
「あ、肉じゃがだ」
「ぽぽろんちゃんじゃん、オッスメッス!出前ですの?」
「だから、今はのえる……まぁいいや。そうよ、今は届け終わった帰り」
「真面目にやってんだなー、褒めて遣わしますの」
「悪魔に褒められてもなぁ……」
「この私が褒めてやってるんだから、ありがたく頂戴しとけば良いんですの」
仮に私に褒められたのがメデューサなら、それこそ涙を流さんばかりに……さすがにそれほどではないか。
「それにしても、この前は助かりましたの」
「この前って……あぁ、あの悪魔がおかしくなったときの?」
「そうそう、包丁使うのが怖いくらいだったんですの」
周りを気にせずはしゃぎ回られるとさすがになぁ……。
ま、ああいう無邪気なメデューサも嫌いじゃないけどな。
……いや、無邪気なのはいつものことか?
「ふーん、そんなんだったんだ。でも、あんたは随分冷静だったように見えたけど」
「メデューサがあんな感じになるのは初めてじゃなかったんですの。魔界学校の時に一度な~」
「へえ、その時もあんな感じだったの?」
「うん。他の奴らが話してるところにまで突っ込んでいったりして、超大変だったんですの」
「なんていうか、容易に想像できるわ。人懐っこそうな雰囲気がすごかったもん」
「人懐っこいのは普段からだけどな、スキンシップが多いのもいつものことだし」
「ぽぽろんちゃんが初めて会ったときには、すごい剣幕で怒られたけどね」
「それは、初対面でメデューサの数少ない地雷を踏み抜いたお前が凄いんだと思いますの。誇っていいぞ!」
「全然嬉しくない……」
「あ、そういや私もお前に初対面で地雷踏み抜かれてましたの。ぽぽろんちゃんは地雷処理の達人だな!」
「これっぽっちも嬉しくない……」
「……っていう名前なんですよ!」
「そ、そうなのね……」
「そうだった、名前が長すぎて覚えられなかったんだ……」
やっと終わった……。
まさか名前を聞くだけで一時間もかかるとは思わなかったわ。
だけどそれを淀みなく、しかもそらで言えるメデューサも凄いわね……。
「でもあたしの言うとおりだったろ?メデューサなら絶対覚えてるって」
「そうね。それに全部言い切るのも凄いわ、私だったら絶対途中で面倒になって教えるのをやめてたと思う」
「えぇ?そんなに凄いことなんでしょうか……?」
この反応……。この前、私たちが抱きつかれるところを見ていた邪神ちゃんと似てるわね。
「なんだかんだ言って、メデューサと邪神ちゃんは似てるのかもね」
「えっ、そうですか?えへへ、なんだか照れちゃいます」
……邪神ちゃんと似ているって言われて照れちゃうのも中々よね。
「ただいまですのー」
邪神ちゃんが帰ってきた。
名前も聞き終わったしちょうどいいタイミングだわ。
「おかえりなさい、邪神ちゃん!」
「おかえりー」
「あれ、メデューサとミノス。どうしたんですの?」
「私が呼んだのよ」
「邪神ちゃんのフルネームを知りたかったんだって」
「ふーん。で、教えてもらえたんですの?」
「えぇ。メデューサからちゃんと聞いたわ」
曖昧にしか覚えてないけど。
多分、フルネームで呼ぶことは一生ないでしょうね。
「それにしてもメデューサはすげーな、あの長い名前をスラスラ言えちゃうんだもん」
「え、そう?」
メデューサのやつキョトンとしてますの。
「あたしは覚えられなかったからなー」
「あれだけ長い名前だし、覚えきれなくてもしょうがないわね」
「私の名前ってそんなに覚えづらいんですの……?」
「私は覚えづらいなんて思わないけど……」
「そうだよなメデューサ!?」
覚えづらい名前なんかじゃないよな!?
「まあ、メデューサが覚えててくれたんだからいいんじゃない?」
「そうそう、覚えてくれる相手がいるってのが大事なんだぜ?」
それはそうかもしれないけど……。
「なんか、ごまかされてる感がすごいですのー!」
読んでいただき、ありがとうございました。