転生メデューサの日常   作:ぺかちゅう

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第24話

 こんにちは、メデューサです。

 

 

 砂浜です!海です!海水浴です!

 潮風が気持ちいい!天気もよくて最高です!

 

「ゆりねちゃん、運いいよな~」

 

「うん!商店街の福引で一日プライベートビーチ券を当てるなんて!」

 

 ここにきた理由はミノスとペルちゃんが話している通り。

 

「ゆりねさん、私たちまで誘ってくれてありがとうございます!」

 

「いいのよ、こういうのは大人数のほうが楽しいもの」

 

 ゆりねさんのご厚意で、私たち悪魔も海に来られたというわけです。

 

「私にも感謝しろよメデューサ~。なんたって、私が呼びつけなければお前は人間界に来れてなかったんですの!」

 

「う、うん!ありがとう、邪神ちゃん!」

 

「なに言ってんのよ、それを言い出したら全部私があんたを召喚したおかげになっちゃうじゃないの」

 

「あはは……」

 

 あ、それからもう一人。

 

「そういえば、今日は紙袋を被っていないのですね」

 

 ぺこらちゃんも一緒です!

 誘っておいてくれたゆりねさんによると、最初は渋っていたらしいです。

 でも、バーベキューをすると教えたら悩みつつも一緒に来ると言ってくれたそうで。

 

「うん。ここなら人間がゆりねさんだけだからね」

 

 ほんと、顔を出して外を歩けるなんて嬉しいな。

 石化対策をしてくれているゆりねさんには、頭が上がりませんね!

 

 

 

「それにしても、邪神ちゃんの水着かわいいなぁ」

 

「かわいいのではない、強いのだ!」

 

 邪神ちゃん、また訳の分からない価値観を発揮してる。

 でも、たしかにビジュアルだけはいいわよね、邪神ちゃん。

 メデューサはそれ以外も含めてかわいいと思ってるんでしょうけど。

 というか……。

 

「普段裸なのに水着着る必要あるの?」

 

「そりゃあ、海に来たんだから着るに決まってんだろフツー」

 

「……あんたの普通の基準がわからないのよ」

 

 

 

「あれ、天使さん。その水着……」

 

 ぺこらに話しかけてきたのは……初めて見る悪魔ですね。

 そういえば、新しく人間界に引っ越してきた悪魔がいるとぽぽろんが言っていました。

 たしか冥界のペルセポネとハーデスの娘、ペルセポネ二世でしたか。ビッグネームですね。

 

「……水着がなにか?」

 

 ぺこらの着ているスクール水着が気になっている様子です。

 

「田尻……田尻ちゃん?」

 

 あぁ、この名札の話ですか。

 

「いや、この水着はバイト先の人が昔着ていたのを譲ってもらっただけで……」

 

「へ~、田尻ぺこらちゃんっていうのか。あたし知らなかったよ」

 

「私も知りませんでしたの。お前田尻って名字だったんだなー」

 

「だから田尻ではないって……」

 

「よろしくね、田尻ぺこらちゃん!」

 

 聞いてくださいよ!

 

「三人とも、そのくらいにしておきなよ~」

 

 案の定、庇ってくれるのは悪魔のうち一人だけ……。

 花園ゆりねは加わるでも止めるでもない。

 まぁわざと間違えてるのも一人だけのようですが。

 ……考えてみれば、石化能力なんて危険極まりない能力を持っている悪魔が一番気遣いに長けているというのもなんだか不思議な感じですね。

 

 

「さーて……いつまでも砂浜にいてもしょうがないし、泳ぎに行きますの!」

 

「邪神ちゃん、準備運動は!?」

 

「いりませんのー!」

 

 あんなことを言ってますが本当に大丈夫なのでしょうか?

 足が攣ったりとか。

 ……いや、尻尾か。……尻尾って攣るんですかね……?

 

 

 

「邪神ちゃんは行っちゃったけど、あたしたちはちゃんと準備運動しないとな!」

 

「はーい!」

 

「は、はい」

 

「うん!」

 

 うんうん、良い返事だな。

 ……あれ?

 

「メデューサも海に入るのか?でもたしか……」

 

「うん、泳げないよ。でも今日は……じゃーん!秘密兵器!」

 

「浮き輪だ!」

 

「なるほどな~。あたしはてっきり砂浜で遊ぶつもりなのかと思ってたぜ」

 

「そうしようかと思ったんだけど、せっかくのプライベートビーチだしね」

 

「泳げなかったのですね」

 

「そうなの。人間を浮かない石にしちゃう能力があるのに、こっちが浮かばないなんて変な感じだよね」

 

「そうなの……でしょうか?うぅん……?」

 

 ぺこらちゃん、どう答えたらいいか考え込んでるな……。

 結構深刻な悩みに聞こえなくもないよな、たしかに。

 あたしなんかは付き合いが長いから、ジョークだって分かるけど。

 

「あ、あの……そんな真面目に考えなくても大丈夫だよ……」

 

 案の定、メデューサの方が戸惑っちゃってるよ。

 たまーに自虐なのか何なのかよくわからない冗談を言うんだよなぁ、メデューサ。

 ノータイムでツッコめるやつはもう海に行っちゃってるし。

 ま、いいや。別に深刻な話題でもないしな。

 

「あたしたちも泳ごうぜ、ペルちゃん」

 

「うん!」

 

 

 

「気持ちいいねー、ぺこらちゃん」

 

「はい。この暑さだと、海はまさに天国ですね……」

 

 浮き輪は偉大ですね、私でも海に浮かべます。

 実は、お料理のときみたいに原作と違って泳げたりするかと思ったのですが……ダメでした。もう覚えてすらいませんが、前世でも泳げなかったりしたのかもしれないですね。

 そういえば……。

 

「ゆりねさんは泳がないんですか?」

 

「私はいいわ、日焼けしたくないし。気にしないで泳いでていいわよ」

 

「そうですか、じゃあ遠慮なくー」

 

 と、いってもあんまり激しく泳いだりとかはできません。浮き輪を使ってますからね。

 邪神ちゃんたちが泳いだりしてるのを、ぷかぷか浮かんで見てるだけ。

 でも広い海で波に身を任せているだけでも、開放感があって気持ちいいです。

 

 

 ……ほんとに気持ちいいなぁ。

 波に揺られて、足になにかが触ってきて。

 ……ん?

 

「……はぇ?」

 

 なにかが私の足に?

 え?え?巻き付いて?

 

 

 

 ミノスのやつ体力ありすぎだろ!全然追いつけねーですの!

 もう疲れちゃったしメデューサと合流してゆっくり遊ぶべきか……?

 

「きゃああああ!?」

 

「どーしたメデューサ?浮き輪でも外れ……って、なんですのあれ!?」

 

 イカ!?……じゃねー、クラーケンですの!

 

「た、助けてえぇ!」

 

「振りほどけないんですのー!?」

 

「え、えぇ~い!……む、無理だよー!」

 

 だろうな……。私より腕力ないからな、あいつ……。

 

「……以前も言った気がするけど、こういうのって邪神ちゃんの役回りじゃないのかしら?」

 

 いや、役回りの分担とかねーから!

 

「そ、そうだ石化!石化できないんですの!?」

 

「人間以外には効かないよぉ!」

 

 ……そうだった。

 ほんと、戦うのに向いてねーなメデューサ……。

 

 

 

「ミノス、ゆりね!二人の力で何とかしてくれ~!」

 

 まず人を頼るのは邪神ちゃんらしいわね……。

 

「しょうがないか。行きましょ、ミノス」

 

「おう!」

 

「頑張ってふたりともー!戦う気のない邪神ちゃんに代わってやっつけちゃえー!」

 

「地味に腹の立つ応援のしかたをやめますの!」

 

「い、いつの間にそんな武器を?花園ゆりね……」

 

 武器くらい携帯しておくものよ。

 いつお仕置きをすることになるかわからないんだから。

 

 

 

 このクラーケン、想像以上に強くないわね。

 だけどメデューサを振り回してるせいで微妙に攻撃しづらい……。

 

「捕まってるのが邪神ちゃんだったら……」

 

「遠慮せずに攻撃できるのにな……!」

 

「……お前らひどくねーか?」

 

 事実を言ってるだけよ。

 

「ふ、ふえぇん!助けてぇ……!」

 

 メデューサも泣き出しちゃってるし……。

 

「あちゃー、泣いちゃったかメデューサ……。でもまぁ、これで解決かな?」

 

「どういうこと?」

 

「ん?あぁ、それは……」

 

「ロイヤルコペンハーゲン!」

 

 ……邪神ちゃんが自ら戦いに行った!?

 

「邪神ちゃんの地雷ってやつだよ」

 

「くらえー!必殺ドロップキーック!」

 

 ロイヤルコペンハーゲンでよろけたところに、ドロップキックの一撃を……。

 

「自分以外がメデューサを泣かせるとああなっちゃうんだよなぁ、邪神ちゃん」

 

 なるほど。

 ……というかちゃんと戦えるのね、邪神ちゃんって。

 

 

 

「ぐすっ……。ありがとう、邪神ちゃん」

 

「……クラーケンが調子に乗ってるのがムカついただけですの」

 

「うぅ、巻き付かれるなら邪神ちゃんの方がいいよぅ……」

 

「なに言ってんですの……」

 

 ほれほれ、頭なでてやるから落ち着きますの~。

 

「大丈夫、メデューサ?」

 

「怪我してないか?」

 

「うん、二人も戦ってくれてありがとうございます」

 

「でも無事みたいで良かった!」

 

「そうですね」

 

「心配かけちゃってごめんね」

 

 それにしても、当たり前のようにクラーケンがいるとは……。

 このビーチはどうなってるんですの……?

 

「邪神ちゃん」

 

「なんですの、ゆりね?」

 

「気にしたら負けよ」

 

「お、おぉ……。分かりましたの……」

 

 ……なんで私が考えてることが分かったんだ?

 ま、まぁいいか。こえ〜から考えないほうがよさそうですの。

 それはさておき!

 

「こいつは昼飯の足しにしますの!」

 

「焼きクラーケンか、邪神ちゃんの調理なら絶対美味いだろうなー!」

 

「……食べるのですか、これを?」

 

 

「さーて、脅威も過ぎ去ったしもう一回遊びますのー!」

 

「私も行く!」

 

 へ?メデューサも来るんですの?

 

「襲われといて、すぐまた遊びに行けるってのもすげーよなぁ」

 

「だって邪神ちゃんが助けてくれるもん!」

 

「相変わらずね、メデューサは」

 

 まぁいいや、泳ぎますの!

 ……ん?

 

「……ぐあぁ!尻尾が攣りましたのー!」

 

「邪神ちゃん、大丈夫!?」

 

「あーあ、締まらねーなぁ」

 

「準備運動しないからですよ……」

 

「平常運転ってやつね」

 

「あはは、邪神ちゃんかっこわるーい!」

 

 お前ら、他人事みたいに見てるんじゃねーですの!

 この状況でできることと言ったらただ一つ……!

 

「た、助けてくれメデューサー!」

 




読んでいただき、ありがとうございました。

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