こんにちは、メデューサです。
人間界にやってきてから数ヶ月……。今日は私にとって記念すべき日です!
なぜならば……。
「メデューサ様、この度はレベルアップおめでとうございます」
そう、私の前で伝言用の下級悪魔である単眼ちゃんが言ってくれている通り……。
「ありがとうございます!」
私、ついにレベル50になったんです!やったー!
「各種特典に加え、新たな衣装も解禁されました。どうぞお召し替えくださいませ」
「はい!」
特典というのは電車の無料チケットにスーパーの割引券などなど……。
たしか、原作ではゆりねさんが株主優待券みたいだって言ってたような。言い得て妙です。
それらの特典も嬉しいけど、一番嬉しいのは新しい衣装!
原作でおなじみ、古代エジプトの女王様みたいな服です!カッコイイ!
「それではこれで」
そう言い残すと単眼ちゃんは爆発してしまいました。
伝言を終えた単眼ちゃんは自爆して死んでしまい、魔界で再生してワンランク上の悪魔として生まれ変わるのです。ありがとう、単眼ちゃん。
さて、早速新しい衣装にお着替えです。
……服を着て……腕の飾りと……この日のためにと渡されてた家宝の冠もつけて……でーきた!
鏡の前でクルリ。前の服も嫌いじゃないけど、やっぱりこっちの服装のほうがしっくりきますね。
邪神ちゃんたちにも見せてあげようっと!
「こんにちはー!邪神ちゃーん、いますかー?」
メデューサか。随分弾んだ声ですの。
「鍵開いてるから入っていいぞー」
「お邪魔しまーす!」
「なんか用ですの?」
……って!
「邪神ちゃん、見て見て!」
「なんですの、その格好!?」
メデューサのやつ、ぜんぜん違う服になってやがる!
金の装飾とかもついてゴ~ジャスな感じになってますの!
「レベルが上がって衣装が変わったの!カッコイイでしょ!」
……クソカッコイイ……。
「メデューサ、いらっしゃい」
「ゆりねさん!お邪魔してます!」
そんなに長い付き合いでもないけど、こんなにテンションが高いメデューサって珍しい気がするわね。
……あら?
「服装変えたの?」
「はい!レベルが上がって変わったんです!」
ハイテンションの理由はそれか。
「そういう変化もあるのね。邪神ちゃんは割引特典とかのことしか言わなかったけど」
「邪神ちゃんは元から服を着ていませんからね」
そっか、冷静に考えると邪神ちゃんって常に全裸なのよね。
私は人間だから悪魔ってそういうものだと思ってたけど、メデューサみたいな他の悪魔はどう思ってるのかしら。
「ねえ、メデューサから見て邪神ちゃんの格好ってどうなの?」
「え?そうですね……。とっても可愛いと思いますよ!」
「……そう」
そういうことが聞きたかったんじゃないんだけど……。まあメデューサらしい回答……なのかしらね。
突然どうしたんだろう、ゆりねさん。私が邪神ちゃん大好きだってことは知ってると思うけど……。
……あ、格好って服装のお話だったのかな?それならこの質問も納得です。邪神ちゃんは服を着てないし、人間としては違和感があるんでしょうね。
ただ、私としては邪神ちゃんといえば服を着ていないというのが普通だから特にどうとも思わないんですよね。それに、前世でどう思っていたのかまでは覚えてないし。
ところで、さっきから邪神ちゃんが私を見つめてきてます……。
「どうしたの、邪神ちゃん?この格好、変かな……」
「……ですの」
「え?」
「悔しい!羨ましい!妬ましい!ですの!」
「じゃ、邪神ちゃん?」
「私もそういうカッコイイ衣装が欲しいですの!」
……あー。これはアレですね、普段気にしていないことでも知り合いがやってると羨ましくなるやつです。
すごくよく分かるよ、邪神ちゃん。
「よくよく考えてみたらレベルアップしても姿に変化がないとかつまんねーですの!」
「あんたそういうの気にしてたのね。服装には一切興味がないのかと思ってたわ」
私もゆりねさんと同じように思ってました。話題に出したことすら全然ないし。
「メデューサみたいにレベルに応じた服があるわけでもないんだから、好きに着ればいいじゃない」
「服なんて着たこと無いから持ってねーよ!」
「じゃあ買ってくれば。直接お金を渡すんじゃなければ、月に一回だけの借金とは別にメデューサが買ってくれるんでしょ」
邪神ちゃんとお買い物!
「うん、服なら買ってあげるよ。一緒に買いに行く?」
「それはめんどくせーですの」
……だよね!知ってた!
「じゃ、じゃあ私の服を着てみる?」
「この前までお前が着てたやつ?なんか似合わなさそうだから嫌ですの……」
「うーん、じゃあ……」
駄々をこねる邪神ちゃんとそれをなだめようとするメデューサ。もはや定番のやり取りね。
「めんどくさいわね……。じゃあ、私の服着てみる?」
「ゆりねの?」
「ゆりねさんのですか?」
口調は違えど同じように聞き返してくる二人がちょっと面白い。
「ええ。買っちゃったけど色が合わないでしまいこんじゃったのがこの辺に……あった」
「おー、いつもゆりねが着てる服に似てますの!」
「ほんとだ!邪神ちゃん、着てみたら?」
「おう!それでは早速……あれ……」
その気になっていた邪神ちゃんが動きを止めた。まだなにか気に入らないのかしら。
「どうしたの?」
「……服着たことがないから着方がわかりませんの。あー、その……メデューサ……」
「いいよ、着せてあげる!」
……この二人、互いに親友って言ってるしそれは正しいんでしょうけど……。
なんか保護者と子供みたいなやり取りも結構してるわよね……。
……できたっ!
「これでいいよ、邪神ちゃん!」
さすが邪神ちゃん、ゴスロリ服を着た姿もすっごく可愛いです!
「あ、ゆりねさん。鏡ってどこかに……」
「ここにあるわよ」
「ありがとうございます!」
準備しておいてくれたみたい、さすがゆりねさんです。
「さてさて、どんな感じですの?……こ、これは……!」
「……邪神ちゃん?」
「超かっけぇ……!」
鏡を見て沈黙しちゃったから気に入らなかったのかと思ったけど、感激してたみたい。
なんにせよ邪神ちゃんが喜んでくれてよかった!
あ、そうだ。
「ゆりねさん」
「なに?」
「お洋服を貸していただいてありがとうございます。邪神ちゃんもとっても嬉しそうです!」
「気にしないでいいわ、あの服も活用できたし」
優しいなあ、ゆりねさん。
「これホントにかっこいいですの!ありがとうですの、ゆりね!」
「……あんたにお礼を言われるとは思わなかったわ」
「よかったね、邪神ちゃん!」
「うん!メデューサも、着せてくれてありがとうですの!」
……!私までお礼を言われちゃいました!
私のほうが嬉しくなっちゃいます!
「邪神ちゃーん!」
「うぉあ!またこれか!お、落ち着けー!」
「メデューサの抱きつき癖は相変わらずね」
あの後、我に返って私を開放したメデューサも一緒に三人でお茶をしましたの。
フレッシュムーン美味かったー。
「じゃあまたね、邪神ちゃん。ゆりねさん、お邪魔しました」
「またなー、メデューサ」
「ええ、またねメデューサ」
それにしても今日は騒がしい日でしたの。
「メデューサ、今日は随分嬉しそうだったわね」
「ずっと前にちょっと服の細部が変わったことはあったけど、今日みたいにぜんぜん違う服になったのは初めてなんですの」
それで喜んでたんだろうな、分かりやすいやつですの。
「あいつが自分のことであんなに喜ぶのは久しぶりに見ましたの、よっぽど嬉しかったんだろうな……」
「そうなんだ。それにしても真っ先にあんたに見せに来たみたいね、ほんと好かれてるわね邪神ちゃん」
「ま、まぁ当然ですの。なんたって親友ですの!」
「ふふっ」
……別に照れてるわけじゃねーのに、ゆりねのやつ見透かしたように笑ってきますの!
「……でも多分、ゆりねにも見せたかったんだと思いますの」
「私に?」
「うん」
だって……。
「メデューサのやつ、いつも人間と仲良くしたいって言ってましたの。顔を合わせてお話したいって」
「そっか、石化能力があるものね」
「ですの」
だから、そこに関してはゆりねに感謝してやらんこともない……ですの。
「……ふふ」
「な、なんですの?」
今度はなんだよ!
「メデューサのことよく分かってるなって思って」
「だ、だから当たり前ですの!親友だぞ!」
「そうよね、大事な親友だものね」
そーだよ!大事な親友だよ!
だから!
「顔いっぱいに邪神ちゃんは照れ屋さんだなあ的な微笑みを浮かべるのをやめますのー!」
読んでいただき、ありがとうございました。