こんにちは、メデューサです。
今日は邪神ちゃんに呼ばれてゆりねさんの部屋に来ています。
突然どうしたのかと思ったのですが……。
「私のレベル?」
「そう。いくつですの?」
邪神ちゃんは私のレベルが気になっていたみたい。
でもどうして気になるんだろう?
「いきなりどうしたの?邪神ちゃん……」
「いいから!たとえ親友でも、力関係はしっかりしないといけないからな……」
「邪神ちゃん、メデューサとのレベル差が縮まっていずれ追い抜かれるんじゃないかって不安がってるのよ」
「は、はぁ……」
一緒に座って話を聞いていたゆりねさんが、クスクス笑いながら説明してくれました。
「昨日なんてメデューサに愛想尽かされたらどうしようって言いながらお腹抑えてたのよ。神経性胃炎ですって」
「な、なるほど……」
私はレベルで邪神ちゃんを見捨てたりなんてする気はありません!でも邪神ちゃんにとってはレベルも重要な要素なんでしょうね、多分。
「メデューサ!レベル上がって喜ぶのはいいけどオメーは私より格下だ!それをゆめゆめ忘れるな!」
「でも私、邪神ちゃんとの格の差とか気にしたこともないんだけど……」
「あんた、この前メデューサがレベルアップしたって教えに来た後には珍しくしんみりムードを出してたくせに……」
にやにや笑いながらツッコミを入れるゆりねさん。
それよりも……。
「しんみりムード?」
「う、うるせーですの!」
私が帰った後になにかあったのかな?ちょっと気になります。
あんないい話風のやりとりをメデューサに教えられるか!
こちとら悪魔だぞ!悪い魔物と書いて悪魔だぞ!
「で、結局レベルはいくつなんですの?」
「50だけど……」
「ごじゅ……え?」
私はレベル48……。
ぬ……抜かれてるじゃん……。
「うぷっ……」
い、胃酸が……。
まずいですの、この事実を気取られるわけには……。
「そ、そうかそうか!そのまま精進しろよメデューサ!」
「うん!」
よぉーしよしよし、このまま勢いで流しますの!
「それで邪神ちゃん、あんたはレベルいくつなの?」
……ゆりねー!お前、今一番私に聞いてはいけないことをー!
かくなる上は……。
「……うっ!きゅ、急に具合が悪くなりましたのー」
「ねえ、あんたのレベル……」
「あー、これは寝ないと治らないなー。お先に寝ますのー」
ゆりねがすげー冷めた目でこっちをみてきてるけど、とりあえず寝てごまかしますの……。
押入れの中に布団を敷きっぱなしにしといてよかったー。
さっさと布団に……。
……?
…………!?
「邪神ちゃん?」
邪神ちゃんが固まったかと思ったら、開けていた押入れを勢いよく閉めちゃいました。
「……メデューサ……」
「なぁに?」
「押入れの中に、お前に見せたいものをしまっておいたのを思い出しましたの……。開けて見ていいぞ……」
「う、うん……」
突然どうしたんだろう、邪神ちゃん。仮病を使い出したかと思ったら押入れを開けさせようとして……。
疑問に思いながらも押入れを開けると、中にいた女の子と目が合いました。
……え?
「こ、こんにちは?」
「……」
思わず挨拶をした私を、女の子は冷たい……というか敵を見る目で見つめています……。
ん?……目?
……って!
「じゃ、邪神ちゃん!なんてことさせるの!?」
私と目が合った人間は石化しちゃうのに!
いまさら目をつぶったけどこれ絶対間に合ってないです!
ど、どうしよう……。
「うるせー!人の押入れの中にいるとか絶対泥棒ですの!そうじゃなくても住居侵入罪だろ!3年以下の懲役または10万円以下の罰金だぞ!」
「そうかもしれないけど!いくらなんでもいきなり石化させるなんて!」
「犯罪者なんて石化して追い出しちまうのが最善だろ!大事なのは私の身の安全ですの!」
「二人とも」
言い合う私と邪神ちゃんに、ゆりねさんが声をかけてきました。
「なんですのゆりね!?今分からず屋のメデューサに説教を……」
「ゆ、ゆりねさんどうしよう!私、私人間を!」
「石化してないわよ」
えっ?
「ほ、本当ですか?」
「ええ。能力が効いてないみたいね」
目を開くと、たしかに女の子は石化していませんでした。
「良かったぁ……」
「よかねーだろ!泥棒だぞ!」
あれ?でもどうして石化しないんだろう?
……そういえばこんな展開原作であったような……。あ、ひょっとしてこの子が……!
「魔女が一人に……悪魔が二匹……。数百年ぶりですよ、一気に三体を駆除するのは」
押入れから出てきた女の子が、言い合う二人と私の前で立ち上がった。
「花園ゆりね。悪魔と結託し、人類に害をなそうとする魔女であるお前を見逃すわけにはいきません……!」
悪魔と結託?人類に害を?
「よって、主の御使いであるこのぺこらが悪魔共々この場で駆除します」
ぺこらっていう名前なのね。
とりあえず、ぺこらが私達を敵視しているのは分かったけど……。
「……こいつ、頭がいかれちゃってますの。かわいそうに……」
「とりあえず警察に保護してもらいましょうか。……メデューサ?」
「待ってください」
私をかばうような位置に移動したメデューサが話しだした。
「私と目が合っても石化しないってことは……。多分この子は……」
「多少は賢い悪魔もいるようですね……。そう、ぺこらは天使!悪魔から人類を守る正義の天使なのです!」
へぇ……この子天使なのね、随分と可愛らしい……。中学生くらいかしら。
「人類を守るって……。たしかに私は悪魔だけど、人間を嫌ってなんていないのに……」
たしかにメデューサは人間が大好きよね。
「私は人間を嫌ってるけどな!」
「少し黙ってなさいよ邪神ちゃん、そこはかとなくシリアスな雰囲気なんだから……」
誇らしげに主張してないで、ちょっとは空気を読みなさい。
「ではその能力はなんですか、目を合わせるだけで人間を石化させるなど……。それが人間を傷つけるための力でなければ何なのですか」
「そ、それは……。でも私だって、望んでこの能力を得たわけじゃ……」
「望んでいようがいまいが関係ありません。その力が人類にとって害なのであれば駆除するまでです」
平行線ね、これじゃいつまでも話が進まないわ。
というか……。
「ねえ、私魔女じゃないわよ」
「な……嘘おっしゃい!このぺこらを騙せるとでも!?」
騙すもなにも、本当に魔女じゃないんだけど……。
「悪魔とつるんでいるのが何よりの証拠です!地上を汚す害虫どもめ、即刻駆除して……」
「ドロップキーック!」
邪神ちゃんの不意打ちドロップキックがぺこらに直撃。
うん、この卑怯さは紛うことなき悪魔ね。悪さをする魔物と書いて悪魔ね。
シリアスっぽい雰囲気も一瞬で霧散しちゃったわ。
邪神ちゃんのドロップキックを横腹に受けて、ぺこらちゃんが床に倒れ込みました。
「ぺこらちゃん、大丈夫!?」
「は、はい……大丈夫です。……って!悪魔のくせに馴れ馴れしいですよ!」
「え?あ、ごめんなさい……」
「メデューサ!オメーどっちの味方なんですの!」
「う、うん。ごめんね邪神ちゃん……」
しょうがないけど踏んだり蹴ったりです……。
だってぺこらちゃん、すごく痛そうだったんだもん……。
……というか、ぺこらちゃんって最初はこんなにも悪魔を敵視していたんですね。完全に忘れてました。
「喋っている途中に攻撃するとは、なんて卑怯な……!」
「卑怯~?褒め言葉ですの~」
悪魔としては褒め言葉……なのかな……?どうなんだろう……。
「駆除とかオメー馬鹿なんですの?こっちは悪魔が二体だぞ、天使一匹で敵うと思ってんのか?」
え、私も勘定に入ってるの!?
「やめて!邪神ちゃん、私争いたくないよ!」
「アホか!やらなきゃやられるんだぞ!」
「で、でも!」
でも傷つけ合うのはいや!
相手が天使だろうと関係ないです、私は戦いたくなんて無いんです!
「仲間割れしている場合ですか!」
そう言いながらぺこらちゃんが、言い合いをしていた私と邪神ちゃんに手を向けました。
「喰らえっ!」
「邪神ちゃん!」
ぺこらちゃんが声を上げると同時に、私は邪神ちゃんを抱きしめて庇い……。
その直後にダメージが……!ダメージが……。
……あれっ。
ダメージがこない……?
「……あれ?」
ぺこらちゃんも驚いている様子です。
……どうしたんだろう?
「はぁっ!……あれれ?」
「……どうしたの?ぺこらちゃん……」
「いや、こうすると手から聖なる力がほとばしってお前らに大ダメージを与えるはずなのですが……」
調子が悪いのかな?
「気合いの入れ方がおかしいとか?もう一回やってみたら?」
「そうですね……。はあぁっ!……ダメだ、一体どうしたのでしょう……」
「うーん、何がいけないのかな……」
「……メデューサ!オメーはなんで敵の心配をしてるんですの!」
え?……あ、そっか。
「ご、ごめんね邪神ちゃん……」
「……はっ!ぺ、ぺこらとしたことが悪魔に心配されるなど……」
メデューサのやつ、お人好しにもほどがありますの!
というか……。
「おい、いつまでも庇わないで大丈夫ですの……」
「え?あっ、ごめん」
やっと離してくれましたの……。
「メデューサはある意味平常運転ね」
それな!付き合いが始まってそんなに長くないゆりねも、メデューサの抱きつき癖をいつものことだって認識してますの。
「しかしどうして……。天使の輪に力が溜まっていないのでしょうか……」
ぺこらとかいう天使の方は悠長に悩んでるし……。
しかし天使の輪?
「ぺこらちゃん、輪っかなんてついてないみたいだけど……」
「メデューサの言うとおりですの。なんもついてねーぞ」
「へ?……!ない!ない!天使の輪がない!」
自分の頭に天使の輪がないことに気づいて今更焦りだしましたの……。
つーかなくせるものなのか、天使の輪……。
「あれがないと力が出ないどころか、天界に帰ることもできません!」
そんな重要なもんなくすなよ……。
「輪のないぺこらはか弱い人間も同然……。お前たちを駆除する予定が台無しです……」
「だ、大丈夫?ぺこらちゃん、一緒に探そうか?」
なんか天使のくせに悪魔に同情されてますの……。いや、メデューサがこうなのはいつものことか。
「いえ、そこまでしてもらうわけには……はっ!だ、だまりなさい!悪魔に憐れんでもらおうなどとは思いません!」
「あっ、えっと……。ごめんなさい……?」
「ぐっ……お、お前と話してると調子が狂います!」
あー、ちょっと分かりますの。時々こっちのテンポを崩されるんだよなー。
「邪神ちゃん、今ぺこらって子に同意してたでしょ」
「え……」
ゆ、ゆりね!?なんで分かったんですの!?
「と、とにかく!今日のところは見逃してあげます!覚えてなさい!」
普通に帰った……。帰る時はドアから帰るのか……。
「帰っちゃったね、ぺこらちゃん」
「あの子、いつから押入れにいたのかしらね」
ゆりね、そういうことを考えだすと怖いからやめてほしいですの……。
「でも良かった、ぺこらちゃんが邪神ちゃんに殺されなくて」
「逆だろメデューサ!私が!天使に!殺されなくて良かったんですの!」
「でも、ぺこらちゃんは天使の輪がないと弱くなっちゃうって言ってたし……」
まあ、たしかにあの状態の天使相手だったら負ける気はしませんでしたの。
……ん、まてよ?これって楽に天使を倒す絶好の機会だったんじゃ?
と、いうことは……!
「レベルアップのチャンスを逃しちまいましたの!力の使えない天使なら簡単にぶっ殺せたのにー!」
読んでいただき、ありがとうございました。