転生メデューサの日常   作:ぺかちゅう

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第9話 じゃがいも付きのカレーライス

 こんにちは、メデューサです。

 

 

 今日のお夕飯はカレーです!神保町のカレー屋さんでは何故かじゃがいもが一緒に出てくるので、それを真似してみようっと。

 カレーは作り置きしてあるから、たまたま切らしてたじゃがいもを買って茹でればいいので楽ちんです!

 

 

 

 そんな事を考えながらの買い物を済ませ、今はアパートに向かっている途中なのですが……。

 

「……ぺこらちゃん?」

 

 前の方からぺこらちゃんが歩いてきました。フラつきながら、木の棒を杖代わりにして。

 ぺこらちゃんがああなることは原作知識で知っていても、この前会った時との変わりぶりに思考が一瞬止まってしまいます。

 ……って、呆然としてる場合じゃなかった!明らかにまずい状態です!

 

 

 

 うぅ、お腹が……お腹が空きました……。

 なぜ誰も助けてくれないのでしょう?今のぺこらはあからさまにやばいのに……。人間とはこんなにも無慈悲だったのか……。

 あ……空腹で……空腹で意識が……。

 

「ぺこらちゃん、大丈夫!?」

 

 杖を取り落し、倒れそうになるぺこらを誰かが支えてくれました。

 あぁ、救いはあったのですね……。

 

「うぅ……ぺこらは、ぺこらは今非常にやばいのです……」

 

 そう呟きながら支えてくれた方を見上げると……。

 ……紙袋?顔に?なんで?

 それに何故ぺこらの名前を知って……?

 ダメだ、考えようにも空腹で頭が回りません……。

 

「お腹空いてるんだよね?うちに運んじゃうね、もうちょっとの辛抱だから!」

 

 その方はぺこらをおんぶしてくれました。自分の家に連れて行ってくれるようです。

 こんな状態とはいえ、天使としてせめてお礼だけでも……。

 

「あ、ありがとうございます……。紙袋さん……」

 

 

 

 急いで部屋まで帰ってきた私たち。

 背負っていたぺこらちゃんは信じられないくらい軽かったです。何日食事を抜けばこうなるんだろう?

 

「座っててね、すぐに準備できるから」

 

「ありがとうございます。あの、顔の紙袋は一体……」

 

「え?あっごめん、忘れてた」

 

 人間対策の紙袋をかぶりっぱなしでした。

 焦ってると取るのを忘れちゃうんですよね。

 

「お前はあの時の悪魔……。なぜ天使のぺこらを……」

 

 素顔を晒すと、ぺこらちゃんは驚いた表情になりました。

 

「そういうのはあと!カレー温めたりするからちょっと待ってて!」

 

 

 

 なにはともあれ、食事を準備して食べ始めたのですが……。

 ぺこらちゃん、すごい勢いで食べてます。一心不乱とはこのことですね。

 一緒に食べ始めた私がお皿半分くらい食べたところで二度目の……。

 

「すみません、おかわりをいただいても……?」

 

「うん、ちょっと待ってね。……はい、どうぞ」

 

 これで三杯目です。よっぽどお腹空いてたんだろうな。

 

「あの、このじゃがいもはどう食べれば……」

 

「うーん……わかんないや。じゃがいもだけバターで食べてもいいし、カレーと一緒に食べるのも美味しいよ」

 

 お店で聞いたこともありますが、特に決まった食べ方はないらしいです。

 私はカレーと一緒に食べるのが好きかな。

 

 

 

「ご、ごちそうさまでした……」

 

「はい、お粗末さまでした」

 

 食事が終わると目の前の悪魔……たしかメデューサと呼ばれていましたか……彼女は洗い物をしにキッチンに向かいました。

 うう、主よ……悪魔の施しを受けてしまったぺこらをお許しください……。

 しかし、なぜ悪魔がぺこらを……。

 

「……これでよし。ぺこらちゃんがいるのにごめんね、カレーのお皿はすぐ洗わないとだから……」

 

「あ、お気になさらず。……あの、どうして天使のぺこらを救ったのですか?」

 

「んー?すごく辛そうだったから。……ひょっとして、迷惑だったかな?」

 

「いえ、辛かったのはその通りなので。しかし悪魔なのに天使を救うなんて、抵抗感というか……嫌ではなかったのですか?」

 

「そういうのは考えなかったな……。ぺこらちゃんは気にするタイプなの?」

 

 気にする、気にしないと言うよりも……。

 

「悪魔を滅するべきというのはぺこらたちにとっては常識のようなものなのです」

 

「そっか……。私はぺこらちゃんと仲良くしたいんだけどなぁ……」

 

 ……天使であるぺこらと?悪魔が?

 

 

 

 ぺこらちゃん、なんというか……びっくりするくらい真面目な考え方です。もっとゆるく考えてもいいんじゃないかな。

 でもこれは私がどうこう言うことじゃないですね。ぺこらちゃんはぺこらちゃんなんですから。

 

「ぺこらは天使で、お前は悪魔なのですよ?」

 

「それはそうなんだけど……。悪魔だって良い子はいっぱいいるよ?」

 

 そう、例えば……。

 

「ミノタウルス族のミノスもそうだし、この前一緒にいた邪神ちゃんだって……邪神ちゃんだって……」

 

 邪神ちゃんだって良い……良い……?

 

「……?あの、どうかしましたか?」

 

「じゃ、邪神ちゃんも根はすっごく優しい子なんだよ!」

 

「は、はぁ……。しかしお前らが悪魔であることには変わりないでしょう」

 

「うん、私は悪魔でぺこらちゃんは天使。でも私は……やっぱり仲良くしたいかな……」

 

 

 

 要は出自に関係なく仲良くしたい、ということですか。

 悪魔とはこういう考え方をするものなのでしょうか、それとも目の前のこいつだけが……?

 

「まあいいや、この話はおしまいにしよ?」

 

「かるっ!?い、いいんですかそれで……?」

 

「あはは……考え方の問題は難しいしね。とりあえず先送りにしちゃうに限るかな、って……」

 

 真面目に答えを出そうとしていたぺこらは一体……。

 

「この前も言いましたが、お前と話していると調子が狂います……」

 

「そうかな?私は普通にしてるだけなんだけど……」

 

「その普通でこちらの調子が狂うのですよ、まったく。……まあこの話を続けても平行線なのは間違いないですし……そうですね、終わりにしましょう」

 

 

 

 よかった、険悪ムードにはならないで済みました。

 

「……ところで、天使の輪っかはまだ見つからないの?」

 

「はい、どこかに落としたと思って探したのですが……」

 

 天使の輪っかなんてどうやって落っことすのでしょうか?

 

「そっか……。私も見つけたら拾っておくから、あんまり気を落とさないでね?」

 

「ありがとうございます。って、悪魔にお礼を述べてしまうとは……ぺこらは何という罪を……!」

 

「つ、罪って……。天界って厳しい社会なんだね……」

 

 

 あれ、電話。……邪神ちゃんだ。

 

「ちょっとごめん、電話に出るね」

 

「あ、どうぞお構いなく」

 

「ありがと。はーい……どうしたの邪神ちゃん?」

 

『あ、メデューサー?ちょっと夕飯の回鍋肉を作りすぎちゃったんですの。食うかー?』

 

「わぁ、嬉しい!うん、今から貰いに行くね!」

 

 邪神ちゃんの回鍋肉は絶品です!ぺこらちゃんにも食べてもらおうっと!

 

「今ぺこらちゃんが来ててね……あれ?」

 

 切れちゃった……。

 

 

 突然どうしたんだろう、邪神ちゃん。とりあえず行ってみれば分かるかな?

 

「ぺこらちゃん、ちょっと隣の部屋に行ってくるから待ってて……きゃあっ!?」

 

「な、なにごとですか!?って、お前は!」

 

 勢いよく開かれたドアから息を切らして入ってきたのは……。

 

「じゃ、邪神ちゃん!?どうしたの!?……わぷっ!」

 

 あわわ、邪神ちゃんが私を抱きしめて……!

 

「テメーこの天使ヤロー!私に敵わないからってメデューサを標的にしやがったなー!コイツへの手出しはこの私が許さねーぞ!」

 

 ……え?

 な、なんか勘違いしてるみたい……。

 

「ご、誤解です!その悪魔は倒れそうになっていたぺこらを救ってくれて……」

 

「ロイヤルコペンハーゲンを喰らえ……へ?そーなんですの?」

 

「う、うん。戦ったりしてたわけじゃないから……私は大丈夫だよ」

 

「そ、そーか……。ったく、心配させるんじゃねーですの……」

 

「えへへ……ありがと、邪神ちゃん」

 

 

 

 突然の乱入者は、ぺこらに不意打ちをしてきたり卑怯を褒め言葉と言ったりしていた方の悪魔でした。……邪神と呼ばれていましたね、たしか。

 会話から察するに、今電話をしていたのもこの悪魔なのでしょう。

 

「ね?ぺこらちゃん」

 

「はい?」

 

「とっても優しいでしょ?」

 

 メデューサという方の悪魔が、抱きしめられながらそう言ってきました。

 

「そう、ですね……」

 

 まあ……仲間と認めれば優しいやつではあるみたいですね。

 

「何の話ですの?」

 

「邪神ちゃんはとっても優しい子だよ、って話!」

 

「は、はぁ!?優しいとか悪魔への褒め言葉じゃねーですの!」

 

 こいつらと親しくないぺこらにも分かるくらい照れてます……。あ、抱きしめるのをやめましたね。

 

「それに今私がお前を助けようとしたのは、子分のお前がいなくなるのが私にとって不利益だからですの!勘違いするんじゃねーぞ!」

 

「はいはい、分かってるよ邪神ちゃん!」

 

 

「ずいぶん騒がしいわね」

 

「あ、ゆりねさん。どうぞ、上がってください」

 

「お邪魔するわ」

 

 今度は悪魔と結託する魔女まで!?お、穏やかな食後の空間が一瞬で恐ろしい状況に……。

 ……ん?いやいやいや!悪魔との空間を穏やかなどと、天使にあるまじき考えです!

 

「これ、回鍋肉。邪神ちゃんが忘れていったから」

 

「わざわざありがとうございます!邪神ちゃんも、ありがとう!」

 

「おう、感謝しろよ~」

 

「ぺこらちゃん、ちょっと待っててね。今これを分けるから」

 

「は、はい……」

 

「あら、ぺこらも来てたのね」

 

「メデューサが拾ってきたそうですの」

 

 拾ってきたって……。

 

「あの、捨て犬のように言わないでほしいのですが……」

 

 なんなんでしょう、このゆるい空気は。

 力を失っているとはいえ、ぺこらはこいつらの天敵のはずなのに……。

 

 

「おまたせー。はい、どうぞ」

 

「あ、はい。……それでは、ぺこらはこれで……」

 

「うん。またね、ぺこらちゃん」

 

「あ、あの……」

 

「なぁに?」

 

 悪魔相手でも、たくさんの恩を受けたのですから……。

 仲間に好かれるような悪魔だと分かったのですから……。

 

「今日は、ありがとうございました……」

 

「……うん!」

 

 お礼を言うくらいは許されますよね、きっと。

 

「もう来るんじゃねーぞ~」

 

「邪神ちゃん、あんた空気読みなさいよ……」

 

 

 

 やっと帰りやがりましたの、天使の奴め。

 こんなに焦ることになるとは……。メデューサのせいですの、まったく……。

 

「メデューサとぺこら、ね。……はは~ん」

 

「な、なんですの、ゆりね?」

 

 いきなりにやにや笑いだして……。

 

「電話の最中にいきなり焦りだしたと思ったら……そういうことかぁ~」

 

「な、なんだよ!子分を守るのは当然のことですの!」

 

「邪神ちゃん、そんなに焦ってくれたんだ……」

 

 メデューサ!その嬉しそうな顔をやめろ!

 

「普段は悪魔悪魔って言ってるのに、あんたそういう一面もあるのね」

 

 ゆりねも!その笑い方をやめますの!

 こ、こんな恥をかくことになるなんて……。

 

「みんなぺこらのせいですの~!」

 




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