「なんだこのアプリ……?」
とある男子高校生が寝起きでスマホを弄っていると、そこに見覚えのないアプリがインストールされていることに気が付いた。アプリ名は『性活支援』とだけ書かれており、明らかに胡散臭い。寝起きで頭が回っていないが、流石に自分がインストールしたアプリくらいは覚えている。恐らく昨晩R-18系のサイトを回ってネタを探していた時に、変なところをタップして勝手にインストールされてしまったのだろう。いつの間にか寝落ちしていたので指が偶然画面に当たったとか、そんな感じだと考えられる。
「何かのウイルスだったら危ないし、早く消そう……」
もしエロサイト経由でインストールされたのであれば早々に消してしまいたい。指でアプリを長押しし、現れたポップアップから『アプリの削除』をタップして削除し――――ようとしたが何故か躊躇ってしまった。何故かは分からない。だがこのアプリは消してはいけないような気がしてならなかった。気が付けばいつの間にかポップアップを閉じ、削除しようとする気すら失せていた。
彼は自分でもどうしてそんな行動を取ったのか分からない。考えられるとすれば、何か刺激を欲していることだ。彼は特段学校でイジメられたりぼっちでいたりするわけでもなく、しっかりと友達もいるしそれ相応の趣味(オタク系趣味だが)もある。割と充実してはいるのだが、彼は自分の人生を物足りなく感じていた。このまま普通に勉強して普通の大学に入り、普通に就職をする。そんな平凡な人生でいいのかと。彼女を作ることができれば人生に彩も生まれるのだろうが、生憎だが友達は全員男。彼の人生はモノクロである。
そんな時に遭遇したのがこのアプリ。見た目は怪しいのだが、名前的に最近流行りのマッチング系かもしれない。そういったものに手を出すのは邪道だと思っていたが、どうせ自分から動かない限り彼女なんてできやしない。だったらこういったアプリに頼るのもいいだろう。どうせこんなものを利用して出会った関係なんて希薄であり、気が合わなかったらすぐに縁を切ればいい。それで実生活になんら影響はないはずだ。
そう自分に言い聞かせた彼は、そのアプリをタップして開いた。
するとソシャゲ風の画面が表示された。右上にはラブカスターと呼ばれるものが1,500個あり、画面の中央部にいくつかのボタンがある。その中にはガチャのボタンもあった。
予想していたマッチングアプリではなかったのは残念だが、アプリで己の人生を決めようとしていた自分が馬鹿だったとすぐに悟る。寝起きで物事を正常に考えられなかったせいだと思いつつ、だったらこのアプリは消してしまおうと考えた。でもせっかく開いてしまったんだし、無料でガチャができるなら暇潰しに適当に引いてみようと思い画面の『ガチャ』ボタンをタップする。
どうやらレアリティはSSR、SR、R、Nの4種類あるようで、もちろん前者ほどレアリティが高い。ガチャ1連でラブカスター1,500個なので所持数ピッタリだ。キャラのガチャなのか武器のガチャなのか具体的に書いてすらいないが、どうせすぐ消すアプリなので何も考えずガチャを引くボタンをタップした。
その瞬間、自分の部屋の真ん中に光と共に女の子が現れた。画面には『R』という文字が出ているが、そんなことを気にしている場合ではない。
それに彼は、この子を見たことがある。
「あ、歩夢……ちゃん?」
現れたのは間違いない、上原歩夢というキャラだ。先日『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』のアニメが放映されたばかりで、アニオタの彼はもちろんそのアニメを視聴していた。だからこそ目の前にいる子がその上原歩夢だと断言できる。
一体何が何だか分からず唖然とする中、歩夢は彼に気付くとにっこりと笑顔を向けた。
「おはようっ! もうまたこんな時間まで寝てたの? 休みだからって遅くまで寝てたらダメだよ?」
「えっ、え……!?」
「ほら起きて! 私が朝ごはん作ってあげるから♪」
歩夢は彼の布団を引っぺがすと、綺麗に畳んでベッドの端に置いた。そしてクローゼットからシャツとズボンを取り未だ寝間着の彼に渡す。それだけではく、カーテンを開けて部屋に日の光を入れたかと思えば、彼が先日食べかけの飲みかけで残していたお菓子の袋やジュースのペットボトルを自発的に片付け始めた。
まるで通い妻かのような淀みのないムーヴに彼は戸惑いながらも一瞬で心を掴まれてしまう。一体何が起こっているのか、さっきガチャをした瞬間からこうなったのは間違いない。スマホの画面を見てみると、所持キャラリストに『上原歩夢 R』と表示されいた。夢かと思ったけど夢ではない。自分の目の前にあの上原歩夢が現れ、しかも甲斐甲斐しくお世話をしてくれているのだ。
この時、彼は感じた。もしかして、自分の人生に彩ができたのではないかと。
歩夢が朝食を作りに行っている間、アプリ内の説明書きを呼んで色々分かった。
どうやらガチャで手に入れたキャラを現実に登場させることができるらしい。そしてレアリティによって自分との関係性が変わり、以下のようになっている。
・N:友達
・R:友達以上、恋人未満
・SR:恋人
・SSR:???
さっき引いた歩夢のレアリティは『R』だったので、自分との関係性は『友達以上、恋人未満』だそうだ。確かに友達にしてはかなり献身的だったので、このレアリティの効果は信用してもいいだろう。
それよりも気になるのは『SSR』の関係性だ。『SR』で既に恋人まで達しているので、それ以上となれば『夫婦』が妥当か。でも彼も思春期で性欲はそれなりにある男子高校生だ、よからぬ妄想をしてしまう。もしかしたら自分の意のままに使役できる『メイド』とか、言ってしまえば『奴隷』だとか、思春期男子ならではの妄想が止まらない。あの上原歩夢や他の虹ヶ咲の女の子たちが自分の性欲処理をしてくれたらと思うと背徳感が半端なかった。
そうと決まれば目指すは『SSR』を引くこと。幸いにも彼は箱推しなのでガチャで誰が出ても問題はない。
それよりも当面の課題はラブカスターを集めることだ。さっきガチャを引いた分で手持ちは0個になってしまったので何とか搔き集める必要がある。説明を呼んだところキャラとの交流や毎日のログインボーナスで無料で集めることができる他、ソシャゲの代名詞とも言うべき課金で追加することもできる。だがリアルマネーとラブカスターの釣り合いが悪く、10,000円の課金でラブカスターは5,000個手に入るのだが、このソシャゲのガチャは1,500個で1連しか引けないので超絶コスパが悪い。普通のソシャゲであれば10連相当なので相当ぼったくりだが、虹ヶ咲の子たちとリアルで交流できると思えば安いものなのかもしれない。
彼はバイトをやっていない。1人暮らしがゆえに親からの仕送りがあるので、課金をするなら生活資金を削るしかないのだ。
親のお金をこんな欲望につぎ込むのはどうかと良心がまだあったので、とりあえず課金は断念することにした。
「お~い! ご飯できたよ~!」
リビングから歩夢の声が聞こえた。女の子が朝起こしてくれて、朝食まで作ってくれるなんて最高の幸福である。リビングに行くとフレンチトーストなどの洋食がテーブルに並べられ、エプロン姿の歩夢が笑顔で手招きしていた。彼女は椅子を引き、彼の着席を促す。まるでメイドのような作法に彼の欲求が大きく刺激される。
そこからは時間は極上だった。どうやら自分と歩夢は幼馴染の関係らしく、彼女の話によれば毎日朝ご飯を作りに来てくれる(設定)なんだそうだ。単に幼馴染なのだが、彼女が持つ幼馴染への深い愛はアニメを見ているから良く知っている。そのせいか彼に対してとても献身的であり――――
「このオムレツ、最近練習してやっと作れるようになったんだ。食べてみてくれる? はい、あ~ん」
一口一口食べさせてもらったり。
「もうっ、口元にケチャップが付いてるよ? ちょっと動かないでね、拭いてあげるから――――――はい、取れた」
口を拭いてもらったり。
「飲み物はいつもの野菜ジュースでいいよね? なくなりかけてたからここに来る途中で買ってきたんだ。大丈夫、あなたがいつも買ってるジュースはよく知ってるから!」
通い妻ムーヴを披露させられたり。
「あなたのことは私が一番よく知ってるから♪ これからず~っとあなたのお世話をしたいなぁ~」
持ち前のヤンデレ気質を覗かせてみたりと、上原歩夢の魅力を全力で感じられる朝のひと時だった。
そうなればもちろん、彼はこう考える。歩夢だけでは足りないと。
他の子も欲しい。他の子も自分のモノにしたい。他の子にも甲斐甲斐しくお世話されたい。そういったドス黒い感情が彼を支配する。そしてガチャをすればそれが現実となる。元々彩がなかった人生が突然鮮やかになったのだ、その原因たるアプリに憑りつかれるのは必然だろう。
朝食が終わり歩夢が片づけをしている中、彼はスマホで例のアプリを開いた。
そして行きついたのは課金画面。最初は親の金がどうこうとか考えていたが、今の彼はただただ欲望に塗れていた。そのためか、迷うことなくアプリに10,000円をつぎ込んだ。
戻ってきたガチャの画面。さっきは暇潰し程度としか考えていなかったので何もトキメクものはなかったが、事情を知った今は違う。誰が出てくるのか。次に自分にご奉仕してくれる子は誰なのか。レアリティはどれになってどんな関係になるのか。そういった煩悩に支配され、心臓もバクバクと音が聞こえそうなくらい鳴っていた。
身体が熱い。興奮と緊張で汗をかく。スマホをタップしようとする指も震えていた。
そして遂にガチャのボタンを押す。ラブカスター1,500個が消費され、先程と同じく目の前が光に包まれた。
「せんぱ~い♪」
「か、かすみちゃん……!?」
ガチャで排出されたキャラは中須かすみだった。かすみは光の中から現れたと思ったら、間髪入れずに彼の懐に飛び込んで抱き着く。元から先輩大好きキャラとして確立されているが、いきなりここまでスキンシップを取ってくる理由は――――そう、彼女のレアリティは『SR』でかなりの当たりだった。
「先輩どうしたんですか、かすみんの顔をじっと見て? もう先輩ったら、いくらかすみんが可愛いからってそんなに見つめらると恥ずかしいですよぉ♪」
そういいながらもかすみは嬉しそうに彼の胸に頬を擦り付ける。
彼女の言っていることはただの自慢ではなく、本当に可愛いくて彼は今にも彼女を抱きしめそうだった。歩夢ももちろん可愛いが、かすみも非常に愛くるしい。いつも画面の前で見ていた女の子にここまで甘えられている現状に彼の興奮度合いは飛躍的に上がっていた。
そして自分の欲求を我慢できなくなった彼は、かすみをベッドに押し倒した。
「きゃっ!? せ、先輩……?」
「ゴ、ゴメン……」
「いえ、むしろ先輩が求めてきてくれて嬉しいです……♪」
かすみは優しくはにかむと、自分の服のボタンを1つずつ外し始める。恋人は恋人でもかなり進んでいる関係性のようで、かすみは彼の行動を否定するどころかむしろ歓迎ムードだ。頬を赤くして期待を込めた目線で彼を見つめる。やる気満々のその姿勢に彼も興奮が止まず、今にもかすみに襲い掛かりそうになる。
すると、彼の部屋のドアが開き、歩夢が顔を覗かせた。
「朝ご飯を食べ終わってすぐ部屋に戻っちゃったけど、ちゃんと歯磨きしたの――――って、えぇえええええええええっ!? か、かすみちゃん!?」
「あっ、歩夢先輩! お先に失礼してま~す!」
「お先にじゃないよ! 私の方が先に来たのに!」
「でもかすみんはこの人の恋人ですから。まぁどうしてもって言うのであれば、幼馴染特権として仲間に入れてあげてもいいですよ~?」
「じゃあ入るね!」
「迷いなし!? もっと恋人同士の時間を大切にしてあげようとか、そういう気遣いはないんですか!?」
「うん。だってこの人とは幼馴染だもん♪」
「答えになってないですよぉそれぇ~……」
危うく修羅場になりそうだったが、2人の仲が良かった(?)せいか事なきを得た。むしろ歩夢まで参戦するとなって彼の興奮はよりヒートアップしている。
歩夢も服を開け、僅かに下着が見えそうなくらいの半裸となってベッドに乗り込んでくる。そしてかすみの上で四つん這いとなっている彼に抱き着くと、目を瞑って唇を近付けた。
「ちょっとダメですよ歩夢先輩! この人の唇はかすみんのモノなんですから!!」
「えぇ~? だってかすみちゃんいつもこの人とイチャイチャしてるから、今日くらいは幼馴染に譲って欲しいなぁ~って」
「じゃあかすみんがキスしてからで!」
「イヤ! 今日の初チューは私なの!」
「この人のことになるとただのワガママっ子ですよね歩夢先輩……」
彼を取り合う2人の美少女。そして彼はそんなシチュエーションが大好物だ。上原歩夢と中須かすみ、絶世の美少女たちを侍らすこの状況に全身から血を噴き出しそうなくらいの性的興奮を感じる。スクールアイドルとして活躍するこの子たちを、男なら誰でも幼馴染や後輩に欲しいと思うであろうこの子たちを、今、自分が独占しているこの快感。しかも向こうからこちらに好意を向け、献身的にお世話をしてくれたりベッドでの情事を期待されている。心の奥底から湧き上がる征服欲、支配欲、そして何より女の子のあられもない姿を見たことによる性欲が滾りに滾る。目の前に広がるは男の夢。そんな状況に対しただの高校生である彼が我慢できるはずがなかった。
「仕方ないですね、今日の初チューは歩夢先輩に譲ります」
「ありがとうかすみちゃん! それじゃあ、失礼するね……んっ」
歩夢は答えを聞く前に唇を彼の唇に押し付けた。どれだけ心待ちにしていたのか、見た目の清楚さからは考えられないほど熱い接吻である。ディープキスと言うほどでもないが、唾液の音が小さく響くくらいにはお互いに求めあっていた。
そして、その様子を見ていたかすみは当然蚊帳の外にいようとはせず――――
「先輩ってば、歩夢先輩とのキスで興奮しちゃってますねぇ~。ほらここ、膨らんじゃってますよ♪」
それから3人で性を貪り食った。キスをされながら性欲処理されるという至極のご奉仕を受けながら、この子たちに愛されているという満足感を得る。男として最高級の悦びを味わえるのならあれっぽっちの課金は惜しくない。むしろもっと、もっと彼女たちの関係性を上げたらどうなるのかと想像するだけでも性欲が湧いて出る。歩夢は『友達以上、恋人未満』、かすみは『恋人』だが、それ以上の『SSR』とは一体どうなってしまうのか。今でも十分に愛されているからこそ期待してしまう。
それにだ、虹ヶ咲の子はまだ7人もいる。2人だけでもこれだけ至れり尽くせりのご奉仕をしてくれたのだから、あと7人も追加されれば前人未到の楽園が出来上がるはずだ。
やるしかない、彼は決心した。
一通りの情事が終わり、2人があらゆる液体で汚れた布団やカーペットを洗濯してくれている中、彼は三度あのアプリを開いた。
もう見慣れたガチャの画面。今朝課金した分でまだあと2連引くことができる。あわよくばあと2人追加できると思うと今からゾクゾクが止まらない。当初このアプリを見つけた時の警戒心はどこへやら、迷いなくガチャのボタンをタップした。
結果が出る。
だが、部屋に光は現れなかった。
画面を見てみると、そこには『中須かすみ N』が所持リストに加えられていた。恐らく既に上位レアリティである『SR』を持っているせいで登場演出がカットされたのだろう。あと7人もいるのにここで被りとか非常にツイていないと思いつつ、さっき早々に『SR』が出たから確率は収束したと考えモチベを取り戻す。むしろ『恋人』関係から『友達』関係に変更して関係の変化を楽しめるから、それはそれで暇潰しにはなるだろう。
気を取り直してラスト1連。これでまた爆死したら追課金決定だ。
緊張の一瞬。ガチャのボタンをタップする。
すると部屋が光に包まれる。
これは新規キャラだと彼は心を躍らせ、その光から出てきたのは――――
「せつ菜……ちゃん?」
「はい、優木せつ菜です! 今日は新作のこのゲームを買ってきましたから、一緒にプレイしましょう!」
結果画面を見ると『優木せつ菜 N』を手に入れていた。最低レアリティなのが残念だが、新しい子が来てくれたからとりあえず良しとする。
レア『N』の関係は『友達』。だから一緒にゲームをする程度で、歩夢やかすみのような濃い関係ではないらしい。しかし、あの優木せつ菜と遊べるだけでも男としては喜ばしいことだ。それに最初の2人とは違ってオタク趣味でも気が合いそうなので、また別の刺激のある生活を送ることができるだろう。
そんな感じで彼とせつ菜は新発売のレースゲームをプレイする。肩が触れそうなくらいお互いの距離が近く、彼女が一喜一憂して身体を動かすたびに肩が触れるので、彼はあまりプレイに集中できずにいた。それでもせつ菜と一緒にゲームをするのはオタク男子からしたら夢であり、その欲望を今自分だけが叶えていると思うと優越感を覚える。それにせっかくだから彼女にいいところを見せたいと思った彼は、持ち前のゲームセンスを発揮して連続で勝利をもぎ取っていった。
「あちゃ~また負けちゃいました! お強いですね、相変わらず!」
「ゴ、ゴメン……」
「謝る必要なんてないですよ! 例えゲームであろうと真剣勝負ですから、あなたはしっかりとスポーツマンシップに乗っ取っています。だから誇っていいのですよ!」
連敗しても楽しそうにしているせつ菜を見ていると、彼まで自然と笑顔が零れる。歩夢もかすみもそうだったが、誰も彼のことを否定したりしない。女の子にひたすら甘やかされ、肯定され、持ち上げられる、そういった生活。こういった設定のネット小説は最近のトレンドで彼も想像したことはあったが、実際に自分の身に降りかかって見ると案外悪くないと思ってしまう。それにその女の子たちがあの虹ヶ咲の子たちだから、この状況を好意的に捉えない理由がない。これこそ幸せの究極系なのだろう。
せつ菜との有意義なひと時を楽しんでいると、彼の背中に突然誰かが抱き着いてのしかかってきた。
「せんぱぁ~い! かすみんとも遊んでくださいよぉ~!」
「かすみさん!? 彼は今私と遊んでいるので、例え恋人だとしても譲れません!」
「だったら次、このゲームで先輩がせつ菜先輩に勝ったらかすみんがイイコトしてあげます♪ これがかすみんとのゲームですよ~」
「わ、私が勝ったらどうなるのですか……?」
「それはせつ菜先輩がこの人にあ~んなことやこ~んなことをしてあげればいいと思います♪」
「あ、あんなことやこんなこと……!? そ、そんな破廉恥な……!!」
「いやそれだけで変な妄想をするせつ菜先輩の方がよっぽど破廉恥ですけどね……」
勝手に自分が景品に使われてしまった彼だが、結局どちらに転んでもオイシイ状況になるのは変わらずだ。恋人がゆえなのかエッチなことに躊躇はないかすみと、友達がゆえに破廉恥なことに抵抗のあるせつ菜。その違いを見ているとやっぱりレアリティの差で大きく性格も変わるらしい。そうなるとやはり『SSR』で女の子たちがどう変わるのか、見てみたい欲求がより一層高まる。
そんな感じでガチャの魅惑に憑りつかれていると、歩夢が部屋に一足遅れて入って来た。
歩夢はかすみに密着され、せつ菜とも触れ合いそうな位置にいる彼の状況を見て目を丸くして驚く。そして明らかに嫉妬してますよオーラを醸し出しながら頬を膨らませた。
「も~うっ! またそうやってデレデレしてる……!!」
「いいじゃないですか! この人は幼馴染の歩夢先輩だけのモノじゃなくて、かすみんたちみんなのモノですから! ねぇせつ菜先輩?」
「ふぇっ!? わ、私は彼とまだそういった関係ではないと言いますか……」
「「
「ち、違うんです!! 俗に言う言葉の綾という意味で……。だからと言って彼のことを何とも思っていないわけでもないですが……」
せつ菜とは友達の関係だが彼に明確な好意を抱いている。そうでなければ男子の家で一緒にゲームなんてしないのだが、歩夢とかすみが積極的だっただけに彼女とのこの微妙な距離感は新鮮であった。お互いにラブラブな関係ももちろんいいが、こうして女の子から密かに好かれているシチュエーションもこれまた一興。しかし彼にとってはどんな関係であれ虹ヶ咲の女の子たちと一緒に居られるだけで幸福を感じているのだが……。
「もうこうなったら私も抱き着いちゃう! いいよね? えいっ!」
「わわっ!? 急に割り込まないでくださいよ!? 歩夢先輩の席ねーからってやつです!!」
「わ、私もその……抱き着くのは恥ずかしいので、手、握ってもいいですか……?」
「せつ菜先輩まで!? 先輩の恋人はかすみんなんですよ!? 周りに敵が多すぎます!!」
もはやゲームはどこへやら、勝敗を決めるまでもなくご褒美をいただくことになった。1人は幼馴染として必死に彼を守り、1人は恋人としてマウントを取り、1人は友達として一途に彼を想っている構図。男の夢というべき両手に華どころか全身に美少女の状況に、彼はこれまで体験したことのない満足感を得ている。どんな感動的なアニメを見た時よりも、どんな激ムズゲーをクリアした時よりも、数量限定のオタグッズを勝ち取った時よりも、それとは比べ物にはならない満足感がある。今までの平凡な日常が華やかに彩られ、形容し難い興奮と欲望に包まれていた。
そうなるともちろん欲求は止められない。人間という生き物は一度快感を得てしまうとそれで満足できず、今度はそれ以上の刺激を求めてしまう。俗に言われる中毒症状というものだが、彼もまたガチャ中毒者となった1人だ。
でもこれは普通のガチャではない。引けば引くほど自分の周りに本物の女の子が増えるのだ。しかも相手はあの虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の美少女たち。正常な欲求をもった男であればガチャを引かない選択肢はないだろう。
みんなが昼食の用意をしてくれている中、彼は本日4度目のガチャ画面を開いていた。もはや見慣れた画面だが、残念なことにもうラブカスターがなかった。しかしもう課金は手慣れたもので、あれだけの天国を堪能できるのであれば躊躇う必要は一切ない。それに1人でも加わればに女の子たちの反応も大きく変わるので、既存のキャラたちともまだまだ楽しめる。10,000円で3連しか引けないコスパ最悪のガチャだが、生身の女の子と直接触れあるのであればむしろ安いものだろう。
そして彼はもう10,000円なんて甘っちょろい課金の仕方はやめて、豪快に30,000円をつぎ込んだ。これで10連することが可能となるため、ここで一気に新規キャラを増やそうという魂胆だ。もう1人ずつ追加なんて我慢できない。豪快に女の子たちを呼び出して自分の欲望を満たすこと、今はそれしか考えられなかった。
彼は迷うことなくガチャの10連ボタンをタップする。
すると部屋中がかつてないほどの光に包まれた。
1連目『上原歩夢 N』
2連目『優木せつ菜 R』
3連目『近江彼方 N』
4連目『近江彼方 R』
5連目『宮下愛 R』
6連目『桜坂しずく N』
7連目『中須かすみ N』
8連目『天王寺璃奈 R』
9連目『朝香果林 R』
まさかの新キャララッシュにスマホを持つ手が震える。これまで見たことのない量の光が現れたのも新キャラを一気に引き当てたからだろう。
それに彼はまだ10連目の結果を見ていない。楽しみだったのだ。ガチャを引いた瞬間に今までとは違う演出が流れたこと、つまり高レアリティが確定だったから。恐る恐る、そして期待を込めながら再び結果画面を見た。
10連目『エマ・ヴェルデ SSR』
遂に来た。彼は目を見開き画面の『SSR』の文字に目を奪われる。ここまで合計13連であり、それで最高レアリティを引き当てたのだから神引き中の神引きだろう。
部屋を包む光の色は『SSR』に合わせてか虹色となりる。そしてその光が消えた瞬間、彼の身体に何かがのしかかった。
「あなたを抱き枕にして寝るととっても暖かくて気持ちいいんだよねぇ~。彼方ちゃんの枕に就職しない?」
「あっ、カナちゃんズル~いっ! 愛さんも抱き着いちゃうもんね!」
「彼方さんも愛さんも、そんなに引っ付いたら先輩が困っちゃいますよ!」
「あら、だったら私も混ざろうかしら? 彼をいただきたいのは私も一緒だから」
「私も行く。どちらかと言うと抱きしめてもらうと嬉しいかも……」
「もうっ、皆さん!! うぅ~……わ、私の場所がない……!!」
左から彼方、右から愛、後ろから果林、前から璃奈に抱き着かれ、ベッドの上で完全にダッチワイフ状態になってしまった彼。四方八方から漂う女の子特有の甘い香り、あらゆる方向から押し付けられる女の子特有の柔らかい身体、そして女体の温もり。それだけで彼の思考を停止させるのには十分だった。複数の女の子に全身を抱きしめられるシチュエーションにただただ身を委ねることしかできない。
しかし、彼には気になることがあった。他のみんなは積極的なのにエマだけはこちらをきょとんと見つめるばかりだったからだ。ふとスマホを見てみるとそこにはエマのステータス画面が表示されており、そこにはこう書かれていた。
『あなたとの関係を選択してください』
更にその文章の下には『姉』『妹』『幼馴染』『先輩』『後輩』と並んでいた。
そこで彼は全てを察する。つまり『SSR』のキャラは自分で好きなように関係性を構築できるのだ。しかも選べるのはその5つだけではなく、他の項目も存在している。ただロックされているのでどんな関係性なのかは分からないが、どうやら交流を続けていって好感度を上げることによってアンロックされるようだ。
どんな関係が待ち受けているのか気になるところではあるが、とりあえず今は彼女に似合いそうな『姉』を選択してみた。
エマが身体をビクッとさせたかと思えば、ほんわかとした温かい笑顔でこちらに近寄り、彼の前から抱き着いている璃奈を巻き込む形で彼を抱きしめた。
「弟く~ん♪ ぎゅぅ~!」
「うっぷ、エマさん苦しい……。む、胸が……」
「あっ、ゴメンなさい璃奈ちゃん! 弟くんの顔を見たらつい……♪」
抱き着く場所がないなら覆い被さればいいと言わんばかりの強引な抱擁に、彼(ついでに璃奈)はもう受け入れざるを得なかった。それでも彼女から感じる母性はまさにアニメで見た通りで、こうして実際に肌で体感してみるとその暖かさがよく分かる。世間ではママと呼ばれるほどの彼女だが、抱きしめられているだけで安心するので甘えたくなる気持ちもよく分かる。
「ほらほら~しずくちゃんもこっちにおいでよ~。彼方ちゃんが一緒に抱きしめてあげるから~」
「わ、私もですか!?」
「なに緊張してんのしずく? 彼のこと好きなくせに清楚ぶっちゃって!」
「何を言っているのですか愛さん!? 私はそんな……」
「早くしないと私たちが彼を貰っちゃうわよ? ほら、もうこんなに気持ちよさそうにしてる」
「果林さんまで……」
この中ではしずくのレアリティだけ『N』なので、唯一この状況に抵抗を示しているのだろう。同じレアリティで排出されたせつ菜はそれなりに積極的だったので、どうやらキャラによって初期好感度は違うらしい。それでも見た感じある程度の好意は抱いているため、己の欲望に従ってこの酒池肉林に混ざるか混ざらないかで葛藤しているようだ。
「先輩はその……私に抱き着かれても嬉しいですか……?」
「う、うん……。しずくちゃんも欲しいよ……」
「ほ、欲しいってそんな……!! 分かりました、先輩がそこまで求めてくださるのなら……」
しずくは彼の告白紛いな発言に顔を真っ赤にする。そして彼方と璃奈の間、彼の脇の下に潜り込み、そのまま彼の胸に腕を回して抱き着いた。
女の子6人とベッドイン。最高の悦び、ありったけの幸福。こんな至福の状況を堪能できるのであればこれまでの課金4万円は安いもので、むしろこれで満足してしまいそうだ。たくさんの美少女たちが無条件に自分を愛して、そしてお世話をしてくれる。男にとって考えうる限りで最も贅沢な生活に、彼はあらゆる欲求(優越感、征服感、独占欲、支配欲etc…)を満たされた。
だからこそガチャの欲は未だに収まることがなかった。レアリティが『N』や『R』だけでもここまで深い関係を築くことができたのだから、全員を『SR』もしくは『SSR』の関係性にしたらどうなるのか彼は気になってならない。そう、こんな極上の状況であってもまだ通過点なのだ。その先に広がるのは花園、天国、もしくはそんなものでは言い表せないほどの極楽か。ここまで来て課金を抑えられるはずがなく、彼は史上最強の未来へ向かってガチャを回し続けた。
そして――――
~所持キャラリスト~
上原歩夢 SR、R、N
中須かすみ SR、R、N
優木せつ菜 SR、R、N
宮下愛 SR、R、N
エマ・ヴェルデ SSR、SR、R、N
天王寺璃奈 SSR、SR、R、N
近江彼方 SR、R、N
桜坂しずく SR、R、N
朝香果林 SR、R、N
全てのキャラで『SR』を手に入れた。運よく璃奈の最高レアリティも入手している。どれだけお金をつぎ込んだのか覚えていないが、ガチャを本気で回す上において金額なんて気にしてはいけない。全ては結果だ。結果が満足できればそれでいい。
エマとの関係性は同じく『姉』、璃奈との関係性を『妹』に設定した。『SR』までしか持っていない他のキャラは『恋人』の関係となる。最初は複数の恋人がいて修羅場になるかと思ったがそうではなく、みんな二股以上の関係を容認してくれているようだ。むしろ全員の関係が恋人以上になったことで彼へのアプローチはより積極性を増し、もはや彼1人では手が付けられないくらいの愛を注がれていた。
具体的には、朝になると幼馴染兼恋人の歩夢によるモーニングコール。姉(の関係)であるエマの膝枕から頭を起こし、自分を抱き枕にしている彼方を起こす。かすみと愛が心を込めて作ってくれた朝食を彼女たち手ずから食べさせてもらい、一糸纏わぬしずくと果林と一緒に朝風呂を堪能し、カラダを洗ってもらう。朝の支度が終わったら妹(の関係)である璃奈を膝の上に乗せ、せつ菜と肩を寄せ合いながらゲームで遊ぶ。昼も夜も女の子の誰かと共に過ごしており、恋人以上の関係となっているためか彼の情欲も進んで解消してくれる。彼のモノクロの人生は世界中の誰よりも華やかに彩られていた。
そんな極楽浄土の中、彼はふとアプリの存在そのものについて考えていた。
「結局、このアプリって一体……」
分からないことはたくさんある。このアプリが何なのか、どうして自分のスマホにインストールされていたのか、そもそも何故自分が選ばれたのか、考えれば考えるほど不明なことばかりだ。
でもこれは夢ではなく現実。究極の日常。これが運命でも奇跡でも、もはや何でもいい。だって現に歩夢たちは自分の周りにいるのだから。恋人や家族としてここまで献身的にご奉仕してくれるこの状況を楽しまなければ損だろう。
いつの間にか自分の部屋がかなり片付いている。歩夢たちが掃除してくれているというのもあるが、一番の要因は課金をするためにオタク向けのグッズを売っているからだろう。特に性欲処理は歩夢たちがやってくれるので、その手のグッズは全て売り払った。そのおかげか穢れた趣味に没頭することもなくなり、心なしか身も心も引き締まっているように感じる。それにみんながご奉仕してくれるおかげで規則正しい生活を送ることができており、日常にメリハリがついた。人生の彩はそういった身体的な面でも意味でも華やかになっているのかもしれない。それでも性的欲求に満ちた怠惰な時間を送ることもあるのだが、それはそれ、これはこれだ。可愛い女の子たち1つになることを求めてきているのだから、それに応えて何が悪い。
ただ、全員『恋人』や『家族』の関係に設定するのはやめておいた方がいい。みんなの思い思いの奉仕が濃厚過ぎて彼の身体が耐え切れなかったのだ。そのせいで体力が底を尽きるまで精力を搾り取られた過去がある。それでもその時の快楽が忘れられずたまに全員を『恋人』の関係にしたりするのだが、またご奉仕地獄(天国?)を受けて関係を元に戻すのが常となっていた。『恋人』設定するキャラは1人か2人がちょうどいい塩梅だ。
そして昨日は気の迷いで全員を『恋人』にしたせいかしっかり搾り取られてしまったので、今日はマイルドな関係を楽しむためにスマホで関係性の設定画面を開く。
しかし、後ろからスマホを取り上げられた。
「もうっ、最近先輩ってばスマホを見すぎですよ! 恋人のかすみんがいるんですからこっちを可愛がってくださいよ~!」
かすみは頬を膨らませて彼に直訴する。
その間にも彼の部屋に続々と女の子たちが集まってきた。スマホを取り返さないと関係性の変更ができず、全員『恋人』以上ということはまたしてもテクノブレイク寸前まで濃厚なプレイを味わうことになる。彼はその危機を察してかすみからスマホを取り返そうとしたが、『恋人』以上の関係となっている歩夢たちの熱烈なアプローチが彼の動きを止める。あっという間に身動き不能な状況、つまりハーレム状態となってしまった。
「あっ、また寝間着のまま着替えずにいる! ほら、服を持ってきたから着替えて。ふふっ、やっぱり恋人で幼馴染の私が常に一緒にいないといけないよね♪」
「この人の一番の恋人はかすみんなんですから! お世話はかすみんがします!」
「かすみさんだけではありませんよ。私たちみんな一番の恋人なのです! なので私も全力でご奉仕しちゃいますよ!」
「ちーす! 相変わらず寝ぐせ凄いねぇ~。それに歯磨きもまだなの? もう愛さんがいないとダメダメなんだから♪」
「今日はお姉ちゃんが行きつけのパン屋でオススメのパンを買ってきたよ。一緒におやつで食べようね!」
「お兄ちゃん、今日はどのゲームをする? もっとお兄ちゃんと一緒に遊びたい」
「今日のご飯当番は彼方ちゃんだよ~。今日のためにあなたが大好きな料理を練習してきたから、期待しててね~」
「あ、あのっ、朝のお風呂はいかがですか? いつもみたいに先輩のカラダ、私が綺麗にしたいです……♪」
「今日も私たちを楽しませてちょうだい。あれだけ私たちのカラダを弄んでおいて逃げるようなことは……しないわよね?」
スマホを取り上げられたことで今日も濃厚ご奉仕な1日になることが確定してしまった。それはそれで女の子の好意を最大限に感じられるのだが、果たしてこのカラダがみんなの寵愛に耐え切れるかどうか……恐らく無理であろう。
そんなこんなで彼女たちとの日常は時に色濃く、時に穏やかに過ぎていった。
そして、彼が残る『SSR』キャラを当てようとバイトを入れて奮闘したり、『SSR』のロックされている関係性を解放しようと彼女たちとコミュニケーションを深めたり、季節限定キャラとして水着や晴れ着などの衣装違いキャラを当てようと必死になったり、期間限定キャラとして高咲侑や近江遥など彼女たちに縁のある子たちまでガチャで登場して一心不乱に課金をしたりと、今までよりも一層このアプリにドハマりしてしまうのはまたの機会にお話することにしよう。
To Be Continued……(?)