堀越の助手 ~俺は天才技師のもとで暴れまわる~ 作:エタノールの神様
前作も前々作も完結してないのに…
堀越「十二試艦上戦闘機の設計図ができたぞ!早速モックアップと試作機を…」
助手「ちょっと見せてくださいよ堀越先生!」
堀越「はっ!埋潜君!これはーえーっとそのー」
助手「見せてくださいよぉ」
そう言って助手は堀越の手からかなりの枚数の丸められた設計図をもぎ取って…もぎ取るというよりは奪い取って、机の上に広げる。しかし彼は三面図を見るなり…
助手「…美しい飛行機の夢を見るのもいいですけど…僕らが作ってるのは兵器です。堀越先生の設計図を参考にもっといいものを作って見せます。」
堀越「…自分でチームを引っ張ったら設計もできないくせに」
助手「すみませんねえ!人の飛行機にけちつけて改善するしか能のない屑で!」
ばたん!
そう言って堀越の助手は扉を勢いよく閉めて飛び出していった。
堀越「僕は飛行機の設計してる時間より助手が壊した扉を社長にバレないように直してる時間の方が長いと思うんだよなあ…」
チームメンバー1「主任は人に任せると言うことを知らなさすぎです。」
チームメンバー2「何でも一人でしょい混む古風な日本人ですよ!」
チームメンバー3「しかもいまだに職人気質」
チームメンバー4「ドア直すのとか雑務のお姉さんに任せればいいのに」
堀越「雑務の人に任せたら社長に報告されて助手がクビになっちゃうだろ!」
チームメンバー5「あんなに歪みあってんのに主任と主任補佐どっちかが欠けると駄作が出来上がるんだよなぁこれが」
チームメンバー5が言う駄作とは七試単座戦闘機。史実よりかなり美しい形をしているが、実はマジもんの直線番長である。
堀越「駄作とはなんだ!あの美しくスピードのある戦闘機を駄作と言うのか!」
チームメンバー1「美しさだけが性能じゃないですよ!第一堀越主任から見て美しい機体を追い求めたらスピードと上昇力以外なにも残らないじゃないですか!」
堀越「なんだと!もう一度言ってみろ!」
チームメンバー1「何度だって言い聞かせてやりますよ!堀越主任から見て美しい機体を追い求めたら武装が貧弱な乙戦ができると!」
チームメンバー2「また始まった…チームメンバー1と堀越主任の喧嘩(泥沼の論戦)」
チームメンバー3「堀越主任に呆れるより主任の助手の埋潜の心配してやろうぜ」
チームメンバー4「あいつの現実主義は共感できる、めっちゃ共感できるけど…」
チームメンバー5「技師の性格が個性派しかいないこの三菱っていう大企業で確実主義を貫くのは精神強くないと無理だろ、あいつ絶対に胃を弱らせて胃薬飲んでるだろ。」
チームメンバー6「チームメンバー5、それよりも心配すべきことが助手にはあるぞ。」
チームメンバー5「なんだそれは」
チームメンバー6「いろいろしょい混みすぎてんだ。」
チームメンバー一同「あーーー」
チームメンバー2「あいつ『今の金星50型はダメだ!生産性も悪ければ信頼性も低い。俺なら学生が工員になったって稼働状態を維持できるエンジンにして見せる』とか『複列14気筒エンジンの時代はもうすぐ終わる。そのときに三菱が競争に負けないように金星を18気筒にする研究を始めておく。』とか言って実際にやってるしな…」
チームメンバー3「でも今までも彼が関わってきた企画はほぼ成功してるしな…」
チームメンバー4「九試単座戦闘機なんて彼がいなきゃあんな活躍する機体にはならなかっただろうな…」
チームメンバー5「あいつ『指定された機銃は弱い!機銃も設計する!』何て言ってほんとにやったからな…」
チームメンバー6「あの九六式13.2mm重機関銃設計したのあいつだったの?」
チームメンバー7「海軍に採用されたかと思ったら陸軍もうちの九六式艦上戦闘機くれ何て言ってきたしな…」
チームメンバー4「待て、それ中島飛行機のやつらがキレないか?」
チームメンバー8「夜道は気を付けような。」
チームメンバー3「…もう堀越と埋潜を結婚させちまおうぜ、三菱のために」
チームメンバー10「埋潜ってエンジンエンジニアじゃなかったか?」
チームメンバー一同「それな。」
チームメンバー11「なんで発動機屋が堀越主任の助手なんだ…」
備考、堀越も埋潜も男なので大日本帝国憲法上、結婚できません。しかもこの時代同性愛はかなり大きなタブーだった気がしないでもない。
三菱重工業十二試艦上戦闘機設計班は今日も平和です。※過労による入院者続出中
~助手視点~
助手「はーまたやっちゃったよ…」
艦上戦闘機は少数精鋭だから工数多くてもかまわないなんて絶対間違ってる。
じゃあ地上に置く戦闘機は別にありますか!?ないでしょ!?じゃあ十二試艦上戦闘機が陸上配備されますね、その通りでしょ?滞空時間六時間以上とか航続距離で考えたら絶対双発機についていけちゃう。
しかもこんな性能要求を満たす戦闘機とそれに護衛されるに見合う艦上攻撃機や艦上爆撃機作ったら絶対世の中航空主兵に傾くだろ!海軍のやつらは頭沸いてんのか!
搭載予定の無線機は絶対使い物になんないだろうし、もっといいやつ作るか。99式一号機銃なんてこのままじゃ使い物になんないよ。海軍さんは一撃必殺を求めてるだろうし機銃も作っちゃうか。
もちろんそれらの製造ラインも「新造」しちゃお。主任の名前使えばほぼ何でもまかり通るし。憎いね、三菱
あーそうだやっぱ艦載機なら汎用性だよね、50番くらいまでなら爆弾積めるようにしとこ。魚雷の懸架装置は…やめとこ、海軍の無茶がひどくなる
※九六式艦上戦闘機の出来が良すぎてそれ以来海軍の要求は無い物ねだりである。つまり十二試艦上戦闘機で要求以上の物を出してしまうと次の戦闘機の性能要求は地球上に存在しないものねだりをされることになる。
~一週間後~
埋潜「主任!設計図できたので1/10サイズの模型を持ってきました!」
堀越「僕の機体を設計し直したんだからさぞかし優秀な…」
埋潜助手が持ってきた模型を見てチームメンバーたちは言葉を失った。なぜなら彼の手には…
堀越「なんじゃこのめっちゃカクカクしただっさい機体は!」
チームメンバー1「三菱バカにしとんかわれーーー!」
チームメンバー2「こんなほっそくてせっまそうな機体に海軍さんのひよこのせられるかぼけなすーーー!」
メッサーシュミットもビックリのカクカクさの飛行機の模型があったからだ。
チームメンバー3「ちょっと冷凍庫から過冷却水持ってくる。」
チームメンバー4「ええな、それで頭冷やしてやれ」
埋潜「待ってそれされたら死んじゃう」
※実物大モックアップの風洞試験では堀越案に負けましたが積んであるものと設計思想は悪くなかったため、機体設計を堀越が手直ししながら修正していくことになりました。
1939年4月1日
各務ヶ原飛行場
そこには海軍が出した要求仕様とは大きく違う飛行機があった。
海軍のお偉いさん「発動機も機銃も、要求した仕様と違うじゃないか!」
堀越「まあまあそう怒らないでください。十二試艦上戦闘機試作一号機は要求をはるかに越える性能を叩き出しますから。」
海軍のお偉いさん「本当にそうなのだな?」
堀越「ええ。機体性能に関しては私が、発動機や機銃、無線機等の内部機器に関しては私の助手が、最高の品質であることを保証します。」
海軍のお偉いさん「それにしてもちょっと直線的なデザインが過ぎやしないかね?」
堀越「空母だけでなく陸上基地でも、運用することを考慮して、量産性も持たせています。機体の構造は以外と単純ですよ?」※熟練技師目線
海軍のお偉いさん「ん!?今エナーシャを回していないのにエンジンが回らなかったか?」
堀越「電動始動機を積んでいますから。私の助手が作った金星50型系列はみんな電動始動ですよ。」
海軍のお偉いさん「中島飛行機が辞退した理由がわかった気がする。」
堀越「でしょう?要求仕様をバカ正直に守っていたら要求性能を満たせないんですよ」
海軍のお偉いさん「すまんかったなあ」
堀越「ほら、飛び立ちますよ。」
飛び立った十二試艦上戦闘機一号機は次々と試験項目をクリアしていった。
内部装備では特に無線の性能が非常に良好で、飛行試験の観測をしていた94式偵察機に同型の無線を搭載して無線の試験を行ったが声が聞き取りやすくその音量も十分だったという。
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