【ガンカタ】さくら・ぶれっと 〜剣と魔法のファンタジー世界でどちらも使えない町娘の私はガンカタ(拳銃)で戦う。自分の生い立ちを知りたいだけで、英雄だなんて呼ばれたくないってば〜【15000PV突破】   作:くろひつじ

1 / 213
0話

 目の前には魔物の群れ。

 五体の戦闘用魔導人形。その数は、ベテランの冒険者でも、パーティを組まなければ対処する事すら難しいと言われている。

 

 怖い。今すぐ逃げ出したい。涙が出そうになる。

 こんなもん、拳銃貰っただけの、ただの町娘が立ち向かう敵じゃない。

 有り得ない非日常の光景に、手足が震える。

 冒険者ギルドで変な依頼受けなきゃ良かった。

 

 

 それでも。

 私の後ろには、まだ幼い子供たちがいる。

 泣くのを必死でこらえ、身を寄せあうチビ達がいる。

 肝試しで足を踏み入れた館に潜んでいた、この表情のない魔物たちは、この子達にとっては悪夢そのものだろう。

 

 

 守りたいものがある。助けたい人がいる。

 そして、借り物とは言え、この手に戦うための力があるのなら。

 

 

 私が退く事は、有り得ない。

 

 

 そこら中に散らばった鏡の破片に、私の姿が映し出される。

 長い黒髪、黒眼。華奢で、小さな背。自分で見ても頼りなく見える。

 だからこそ、虚勢を張り、笑う。

 

 

 腰のホルダーから紅白の拳銃を取り出し、胸元にチェーンでぶら下げた指輪(相棒)に、一言だけ告げる

 

「リング!」

「――Sakura(サクラ)-Drive(ドライブ) Ready(レディ).」

 

 聞きなれた中性的な声。頼れる相棒の言葉に、応える。

 

 

Ignition(イグニション)!」

 

【挿絵表示】

 

 

 トリガーワードと共に、私の小さな身体から、膨大な桜色の魔力光が溢れ出す。

 風に流れる黒髪を照らすように舞う、勇気をくれるいつもの光景。

 恐れが消えていく。戦意が高揚していく。

 

 切り替わる。日常から、非日常へと。

 

 

「さあ、踊ろうか」

 

 

 薄紅色を(なび)かせ、構える。

 腰を落とし、左手は前に、右手は肘を上に逆手に顔の横に。

 いつもの戦闘スタイル。

 既に慣れきった、戦うための動作。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 一体の魔導人形が襲いかかってくる。

 それに釣られるように、残りも一斉に駆け出してきた。

 

 振り下ろされる無機質な拳。

 軌道を読み、銃底で打ち逸らす。

 衝撃で腕が外側に跳ね上がり、無防備となった胸元に銃口を向け、薄紅色(サクラ)弾丸(ブレット)を撃ち込む。

 その流れのまま蹴り飛ばし、敵を足止めする。

 

 二匹目、三匹目。同時に振り回される拳

 地を舐めるように屈み、避けると同時に両手で射撃。

 近接距離から放たれた魔弾は、意図も容易く敵を撃ち抜いた。

 

 大きく踏み込み、回転。突き出された腕に頬の薄皮を削られつつ、接近。

 低い体勢のまま敵の足を蹴り払い、よろめいた所に蹴り上げ。

 踵が顎を蹴り抜き、魔導人形の動きが一瞬止まる。

 その隙を突き、両手で銃撃。乾いた音ともに、火花を散らして後ろ向き倒れ伏す。

 

 その後を追うように、加速する。

 後ろ足で地面を蹴り、そこで生まれた力を逃さず、突き進む。

 

 回転、遠心力を破壊力に変え、最後の一体の頭部を打ち抜く。

 ぐらりとふらついた魔導人形を前に、再度回転。

 くるりと身を(ひるがえ)し、その腹を蹴り飛ばす。

 その体が地に着く前に照準。狙い違わず頭を撃ち抜いた。

 

 

「リング。敵影は?」

「――検索:敵性反応無し。殲滅を確認」

「了解。状況終了」

 

 拳銃をホルダーに戻す。

 

 身に纏っていた桜色が霧散し、乾燥した空気に溶けて行った。

 

 

 

 ああぁぁぁ!! めっちゃ怖かったぁぁ!!

 人形、無表情で怖いわ! カタカタ鳴らしてんじゃないわよ!

 てか、ほっぺ! 血ぃ出てんだけど! 痛みはそこまで無いけれども!

 

 

「あの……お姉ちゃん? 大丈夫?」

「ん? あー、まあね。アンタらも怪我はしてない?」

「大丈夫! ありがと!」

 

 うん。ちゃんとお礼を言えるのは偉いぞ。

 頭を撫でたげよう。よしよし。

 

「よっしゃ。じゃあ帰るぞー。着いてきなー」

「あ、でも……僕たち、お金払えないから……」

「あん? 報酬(感謝の言葉)ならもうもらったわよ。それよりさ」

 

 アイテムボックスから、作り置きしておいたチキンカツサンドを取り出す。

 

 醤油ベースの甘だれに漬け込んで、しっかり二度揚げしたサックサクなチキンカツと、新鮮なレタスをこれでもかと挟み込んだ一品だ。

 タルタルソースを中に仕込んであるので、ボリュームがあるのに爽やかに食べられる。

 

 

「ほれ、飯だ飯。美味いもの食べて笑ってりゃ、大体の事は何とかなんのよ」

 

 一人一人に手渡しながら、ニカッと笑顔を見せる。

 

「美味しいは正義だからね!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 これは、一人の平凡な町娘が。

 数奇な運命に翻弄されながらも。

 借り物の力を手に、日々を過ごして行く物語。

 




面白い!と思って頂けたらお気軽に、画面下の方からお気に入り、感想、評価をお願いします。
とても励みになります!

もし良ければ、さくら・ぶれっと完結アンケートに御協力ください!
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSeB1L7Fokd2zpe_Z84xpto5Haj2R8Tk-6ZKIBDFpMxBImhpmw/viewform
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。